【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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予約日まちごうてました


7.働け!スリーナイツ 3/3

 二日目は幸いにして何事もなく過ぎた。強いて言うなら、猛獣の群れと遭遇して一触即発になったくらいか。そこにすかさずティラミーゴが駆けつけてくれて、恐れをなした猛獣たちが逃げ出さなければ、エイジロウたちは彼らを皆殺しにしなければならなかっただろう。食糧を確保するための狩猟ならともかく、ただ殺すというのはできるだけ避けたいエイジロウたちである。

 

 そうして、三日目。時々休憩は挟みつつ、この日も朝から歩き通しだった。温暖湿潤な過ごしやすい気候とはいえ、そうしていると流石に熱気もこもってくる。

 

「ふぅ……汗が止まらへん。ローブ脱いでも暑いわぁ」

「ははは、オチャコくんは暑がりだな!」

「そういうテンヤくんも汗すごいで!?」

 

 汗をだばだばと流しながら、爽やかに笑うテンヤ。傍目には強がっているようにしか見えないのだが、鎧を脱ごうともしないあたり素でこうなのだ。ちょっとばかり引いてしまうオチャコであった。

 

「はは、このぶんだと夕方にはカサギヤの街に到着できますよ。頑張りましょう」

 

 同じくなんでもないように笑うケイタ青年。羊毛のぎっしり詰め込まれた荷車を引いて、彼はこの道を何往復もしているのだ。あるいは、カサギヤの街よりさらに遠方まで。一見すると痩せていると思われた体躯は、エイジロウなどに負けず劣らず鍛えられていた。

 

「そういやケイタさんは、どうしてこの仕事を始めたんスか?」

 

 エイジロウの問いかけに、ケイタは笑みを浮かべて答えた。

 

「儲かるからです」

「あ、ああ……そういう」

 

 わかりきってはいるが、なかなか反応に困る答である。エイジロウがなんと言おうか迷っていると、

 

「……というのも商売なのでもちろんありますけど、一番は、生きているという感じがするからですね」

「生きてる……っスか?」

「そう!こうやって重たい荷車を引いて何日も歩いて、商品を仕入れて、また歩いて売って……こうまとめると単純なことの繰り返しのようですけど、実際にはどの工程でも何が起こるかわからないんです。今回だって、オルデラン村と往復する契約で連れてきた護衛が怪我で途中離脱する羽目になって、村に着くまで生きた心地がしませんでしたよ」

 

 語っているうちに、ケイタの切れ長の目が輝いていく。心の底から今を楽しんでいる、そういう人間だけができる瞳だった。

 

「僕にとって働くことは、生きることなんです。だったら何が起こるかわからない、そして何が起こっても自分の力で切り拓いていけることを、生業にしたいじゃないですか」

「……そうか……なんか良いっスね、その考え方!」

「はは、どうもありがとう。──あ、カサギヤの街が見えてきましたよ」

 

 ケイタが指差した先、遥か地平線の彼方に、城壁で覆われた街のシルエットが見える。まだとても到着とはいえない距離だが、それでもエイジロウたちの心に達成感めいたものが湧きあがった。

 

「や、やった……!これならカツキくんの言ってた期限に間に合うかな!?」

「この様子なら二時間もあれば到着するだろう。ぎりぎりではあるが、きっと間に合うさ!」

 

 テンヤとオチャコが喜びを露にする一方で、コタロウが複雑そうな表情を浮かべたのをエイジロウは見逃さなかった。街に到着するということは、エイジロウたち一行とケイタが別れるということ。──つまりコタロウも、そのどちらについていくか、決断しなければならない時が近づいているということなのだ。

 

(……コタロウ、)

 

 彼はまだ、迷っている。声をかけたい気持ちは山々だったけれど、エイジロウはそれを心のうちにとどめた。彼に対し、言うべきことは言った。それ以上はお節介になるだけだろう。コタロウはもう、他人に甘えようとはしていないのだから。

 

 そのときだった。前方に立つ、不審な影を一行が目撃したのは。

 

「……何、あれ。また野盗?」

「だが、独りだぞ。それに鎧を纏っている──」

 

 そう、そこに立っているのは全身を銀と紫で塗り固めた鎧騎士だった。顔、というより頭部まで完全に覆い隠しているから、性別さえも判然としない。ただ、その視線がこちらへ向けられているだろうことはわかった。

 

「……いったん止まってください。俺らで様子を見てきます」

 

 なんの意図があって待ち構えているのか、ともかく戦わずに済むに越したことはない。そう考えて一歩を踏み出したエイジロウたちの前で、鎧騎士は地面に剣を突き立てた。

 

 そして──稲妻が地を奔った。

 

「ッ!?」

 

 咄嗟にリュウソウケンを構え、その衝撃を受け流す。とはいえ勢いを殺しきれず、重武装のテンヤを除くふたりは地面に転がされた。

 

「痛ッ……!」

「大丈夫かっ、ふたりとも!?」

「う、うん……。でも──」

 

「なんなんだ、こいつは」──無音の疑問に答えるように、鎧騎士は初めて声を発した。

 

「……我が名は、ガイソーグ」

「ガイ、ソーグ……?」

「貴様、人間か……!?気配が普通ではないぞ!!」

 

 だが、ドルイドンとも違う──理屈でないところで、三人はそう感じた。いずれにせよ、醸しているのは強烈な負の情念。攻撃されたことも相俟って、快い相手でないことに間違いはない。

 そして鎧騎士──ガイソーグは、彼らの問いに答えるつもりはなかった。

 

「おまえたちの力、試してやる──リュウソウジャー」

「!」

 

──こいつは、俺たちのことを知っている!

 

「どうやら、退いてはもらえないらしいな……!」

「しょうがねえ、いくぜふたりともっ!」

 

 レッド、ブルー、ピンク。それぞれのカラードリュウソウルを、ブレスに装填する。

 

「「「──リュウソウチェンジ!!」」」

『ケ・ボーン!!──ワッセイ!ワッセイ!そう!そう!そう!ワッセイ!ワッセイ!それそれそれそれ!!』

 

 三人の周囲を取り囲み、踊る小さな騎士の群れ。彼らが寄り集まって鎧となり、騎士竜に見出されし少年たちを竜装の騎士へと変える。

 

『リュウ SO COOL!!』

「──正義に仕える三本の剣ッ!」

 

「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」

 

 構える三人を前に──ガイソーグは、肩を揺らして笑ったようだった。

 

「来い。おまえたちの騎士道、見せてみろ」

「ッ、言われなくても!」

 

 リュウソウケンを携え、真っ先に斬り込んだのはエイジロウ──リュウソウレッドだった。ブルーとピンクがそれに続く。明確な役割分担があるわけではないが、先陣を切るのはエイジロウの役目に固まりつつあった。

 

 いずれにせよ、三つの刃をひとりで受け止めることになるガイソーグ。しかしそのうちどれひとつとっても、彼を穿つことはできない。

 素早く身を翻しつつ、彼もまた剣を構えたのだ。

 

「!、おめェその剣……」

「──!」

 

「貴様が何故、リュウソウケンを持っている!?」

 

 そう──ガイソーグの持つ剣は、リュウソウケンに酷似していた。リュウソウルを装填するための竜頭の鍔まで存在している。違うのは、色だけだ。

 

「………」

 

 ガイソーグは、答えない。──姿勢を低くしたかと思えば次の瞬間、その姿がかき消えていた。

 

「な……どこに──」

「──ここだ」

「!?、ぐあぁっ!」

 

 衝撃とともに、エイジロウは前方へと弾き飛ばされていた。背後から、斬りつけられたのだ。

 

「エイジロウくん!?ッ、なんて速さだ……!」

「ぜ、全然見えへんかった……!」

 

 三人もいて、姿を捉えられないとは。しかしスピードなら負けるわけにはいかないと、ブルーがハヤソウルを構える。

 

『ハヤソウル!ビューーーン!!』

 

 たちまちブルーの脚力が強化される。目にも止まらぬ速さで、走り出す。

 相対したガイソーグは、

 

「……くくっ」

 

 喉を鳴らすと同時に、自らも地を蹴った。

 

『ビューン!』

「………」

『ビューーン!!』

「………──ふんっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

 押し負けたのは、ブルーだった。

 

「そんな、テンヤくん……!」

「ッ、オチャコ!」立ち上がるレッド。「こいつ、俺らより強ぇ……!ひとりじゃ駄目だ、連携を!」

「わ、わかった!──ノビソウル!」

 

 リュウソウケンが鞭のようにしなり、意志があるかのように獲物に喰らいつく。やはりと言うべきか、ガイソーグはこともなげにそれをかわしていってしまう。だが、少しでもそちらに意識をとられてくれていれば──!

 

「カタソウル……!」

『リュウ!ソウ!そう!そう!──この感じィ!!』

 

 リュウソウレッドの右腕に、結晶の鎧が装着される。──のんびりはしていられない。

 

「とぅッ!」

 

 素早く跳躍し、ガイソーグの頭上をとる。差す翳に気づいた相手が、咄嗟に剣を突き上げる。直撃──しかし、

 

「ッ、効かねえ、よっ!!」

 

 今度は、こちらの番だ!

 

「アンブレイカブル、ディーノスラァァッシュ!!」

 

 必殺の剣が、ガイソーグの肩口に触れ──

 

 

──袈裟懸けに、斬り裂いた。

 

「ぐぅ……ッ!」

 

 うめき声をあげ、ガイソーグが後退する。必殺技を直撃させたのだ、これで──!

 

「……くくく、ははははっ。今ので、勝ったつもりか?」

「!、こいつ……効いてねえのか!?」

 

 切札が通用しなかった──というのは、エイジロウたちに少なからず衝撃を与えた。見るからに堅牢な鎧を纏っているとはいえ、その防御力はあのタンクジョウを上回っているということになる。

 

「次は、こちらの番だ……!」

 

 剣の鍔──つまり竜の顎に手をかけ、閉じ、再び開く。その動作は、エイジロウたちがリュウソウルの力を発動させるのとなんら変わりのないもので。

 

「まずい……!オチャコ、俺の後ろに!」

「う、うん!」

 

 オチャコが背中にしがみついてくるのと、ガイソーグが剣を振り上げるのが同時だった。

 

「エンシェント……ブレイクエッジ──!」

 

 闇を塗り固めたような毒々しい剣波が──放たれた。

 

「──ッ!」

 

 リュウソウケンとカタソウルの力で、それを受け止めようと踏みとどまるレッド。しかしその衝撃は、想像を遥かに上回るもので。

 

「ぐぅうううう……ッ、あああああ──ッ!!」

 

 そして──爆炎が、ふたりを呑み込んだ。

 

「ぐ、あぁ……っ」

「うう……っ」

 

 炎の中から放り出されるように、地を転がるふたり。竜装こそ解けてはいないが、鎧はあちこちが黒く焦げ、元の鮮やかな色が台無しにされていた。

 

「……ここまでだな、リュウソウジャー」

「く、そぉ……っ」

 

 この鎧騎士が何者かはわからない。──ただ、強い。あまりにも。

 

 

 そして雇い主の商人とその従弟の少年は、リュウソウジャーが追い詰められていくのを固唾を呑んで見守ることしかできなかった。

 

「なんなんだ、あれは……?」

「………」

 

 沈黙するコタロウは、その実血が滲むほどに拳を握りしめていた。自分には、なんの力もない。エイジロウたちが絶体絶命の状況に陥っている中にあって、ただ見ていることしかできないのか──

 

──俺は助かったけどな。

 

 エイジロウの言葉が、不意に思い起こされて。

 

(あきらめるな、考えろ!何かあるはずだ、僕にもできることが……!)

 

 ずっとずっと、考えてきた。母にとって自分はなんだったのか、なぜ母は自分でなく世界のために身をささげたのか、遺された自分はどうやって生きていけばいいのか──

 

 今この瞬間、何ができるか。その答を出さなければ、この先どんな大口を叩こうが、りっぱな大人になどなれないとコタロウは思っていた。

 ガイソーグが一歩、また一歩とリュウソウジャーに迫っていく。もう、猶予はない──!

 

 そのときだった。二日前の記憶とともに、閃きが脳裏に降り立ったのは。

 

「そうだ……!──ケイタ!羊毛ひと袋、僕に買い取らせて!」

「は!?いきなり何を……」

「頼む……!みんなを、救けたいんだ!」

 

 コタロウの瞳に、言葉に、尋常でない覚悟を感じとったのだろう。ケイタは何かを悟ったような表情で、大きく頷いた。

 

 荷車から羊毛の入った麻袋をひとつ受け取り、それを抱えて前線へ飛び出す。その行動には当然、エイジロウたちも目を剥いた。

 

「コタロウ!?おめェ何して──」

「黙ってて!──オチャコさん、一昨日の水魔法を使うんだ!」

「え……う、うん!」

「エイジロウさんはこの袋をあいつの頭上にぶん投げて!」

「お、おう!」

 

 意図まで説明している時間はない。エイジロウたちもそのことを理解し、即座に行動へと移った。コタロウを、信じて。

 

「お、らぁッ!!」

 

 パンパンに膨れた麻袋を、指示通りガイソーグの頭上に投げる。当然、相手が反応しないはずもない。剣が一閃、刹那の停滞のあとに袋はすっぱりと両断された。

 

 ガイソーグは当然、麻袋の中身が何かなど知らなかった。それゆえ見事に割れた麻袋の中から、ぶわあっと大量の羊毛が降りそそいだのには面食らった。

 しかし羊毛ひとつひとつは綿毛のように軽い。そのままでは目眩ましにもならないだろうが、だからこそコタロウはオチャコにも声をかけていたのだ。

 

「──今だ!」

 

 コタロウが号令を発すると同時に、オチャコが魔法を放った。空気中の水分が寄り集められ、ぐにゃぐにゃと蠢く球体へと変わる。

 それが弾け──ガイソーグと羊毛を、まとめて呑み込んだ。

 

「ッ!?」

 

 羊毛は吸水性に優れる。そして水を吸えば当然、重くなる。ばらばらと空気中を舞っていたそれらは一気に質量を増し、ガイソーグの周囲に積み上がったのだ。

 

「やった……!」

 

 作戦成功。あとは、エイジロウたちの手に託された。

 

「テンヤ、オチャコ!一斉攻撃だ!」

「うむ……!」

「よーし……!」

 

 カラードリュウソウルを装填──ティラミーゴが、トリケーンが、アンキローゼが、彼らに力をくれる。

 

「はぁああああああ──!!」

 

 

「「「トリプル、ディーノスラァッシュ!!!」」」

『剣・ボーーーン!!!』

 

 纏わりつく羊毛をガイソーグがようやく振り払ったときには、三つの力が目前にまで迫っていて──

 

──刹那、爆発。

 

「やったか……!?」

 

 三人同時の攻撃だ、今度こそ──

 

「……ッ、」

「な……!?」

 

 黒煙が晴れたとき……果たしてガイソーグの姿は、健在だった。ただ、先程までは影も形もなかった大盾を構えている。

 

「……俺に、盾を使わせるとは」

「ッ、こいつ……!」

 

 盾を持ち出したということはリュウソウジャーの攻撃に危機感を抱いたことに相違なかろうが、三人併せての必殺技までもが破られた事実は変わらない。もはやエイジロウたちに逃げる以外の打開策はないのだが、この拓けた草原でどこへ逃げ込めというのか?いずれにせよ、コタロウとケイタを置いてはいけない。

 

 しかしガイソーグに、なんとしてもリュウソウジャーを葬り去るのだという意志はもとよりなかった。

 

「今日は、こんなところか」

「何……!?」

「また会おう、リュウソウジャー」

 

 地面に剣を突き立てる。と、まるで地雷でも埋まっているかのように辺り一面から爆発が起きる。エイジロウたちは爆風から身を守ることに精一杯で、とてもではないがガイソーグに喰らいつくことはできなかった。

 そして炎が収まったとき、彼の姿は消え──

 

──代わりに、黒いキシリュウオースリーナイツの巨躯があらわれていた。

 

「なんだ、あれは……!?」

「き、キシリュウオーのパチもんやん!?」

 

 キシリュウオー、それもスリーナイツの偽物まで創り出すとは……ガイソーグ、いったい何者なのか。

 

「ッ、考えるのはあとだ……!──ティラミーゴ、来てくれ!!」

 

 程なく「ティラアァ!」と雄叫びをあげ、真紅の騎士竜が山岳を駆け下りてくる。傍らには青、そしてピンクの騎士竜の姿も。

 

「いくぜ、──竜装合体!」

 

 リュウソウルを装填し、ティラミーゴがキシリュウオーへと変身を遂げる。そしてその両腕に、トリケーンとアンキローゼが喰らいつき──

 

「「「キシリュウオー、スリーナイツ!!」」」

 

「ニセモノ野郎、ブッ飛ばしてやる!」

 

 意気軒昂、目の前の敵に向かっていくキシリュウオースリーナイツ。対する偽スリーナイツもまた、同様に前進を開始する。

 3、2、1、あっという間に距離は詰まり、瓜二つの姿をした鋼鉄の騎士が激突する。その衝撃で、地の草花が大きく揺れた。

 

「喰らえぇいッ、スピニングニー!!」

 

 オチャコの叫びとともに、アンキローゼのドリルを装着した膝が突き立てられる。火花をあげて後退する偽スリーナイツ──しかし、

 

「!?、きゃあっ!」

 

 相手もまた、すかさずスピニングニーを打ち込んでくる。その揺れがダイレクトに伝わり、エイジロウたちは挿し込んだリュウソウケンにしがみついた。

 

「ッ、ならば!──キックスラァッシュ!!」

 

 ナイトソードを右脚に装着し、回し蹴りを放つ。しかしその動作もまた、完全に模倣されてしまっていて。

 

「ぐっ!?駄目か……!」

「くそっ、ニセモノのくせに互角かよ……!」

 

 このままでは、埒が明かない。いやこちらは生身である以上、ジリ貧としか言いようがないだろう。

 

(やっぱり、あいつらがいてくれれば……)

 

 一方的に恃むようなことはあってはならないと己を戒めながらも、別れた同輩たちの顔を思い浮かべたときだった。前ぶれもなく無数の針が偽スリーナイツに襲いかかったかと思えば、緑の影がその巨体を突き飛ばしたのだ。

 

「──もう大丈夫、僕らが来た!!」

「!、イズク、カツキ……!」

 

 待ち望んでいたけれど、来るはずもないとあきらめていた援軍だった。

 

「チッ、債権回収に来ただけだわ」

「さ、さい……?」

「ああもう、難しい言葉で意地悪言わないのかっちゃん!──それにしてもあいつ、キシリュウオーのニセモノ……?マイナソーじゃない、よね」

「おう……多分。とにかく、説明はあとだ。ファイブナイツで一気に決めようぜ!」

「うん!」

「仕切んな!」

 

 再び、竜装合体。タイガランスとミルニードルを迎えることによって、キシリュウオーはひとつの完成形へと至る。

 

 偽スリーナイツがようやく態勢を立て直したときには、既に重武装の騎士が目の前に立ちはだかっていた。

 

「……!」

 

 それでも、意思をもたぬ彼は怯まない。唸り声めいた音を発しながら、剣を振り上げ迫る。それが必殺、ファイナルブレードの構えであることは、こちらが本家なのだから当然判る。

 スリーナイツ同士なら焦っただろうが、こちらは既にファイブナイツだ。そのエネルギーごと、叩き斬る。

 

「「「「「ファイブナイツ、アルティメットスラァァッシュ!!!」」」」」

 

 時が止まったかのような静寂が一瞬、場を支配して。

 次の瞬間、偽スリーナイツのナイトソードが根本から切り落とされる。そして、偽スリーナイツ自身も。

 定形が保てず、ばらばらに崩れ落ちていく黒い塊。それは接地もままならないまま、跡形もなく消滅するのだった。

 

 偽物のスリーナイツと、本物のファイブナイツ。勝つのはどちらか、火を見るより明らかということだった。

 

 

 *

 

 

 

「色々ありましたが無事たどり着けました。護衛、感謝します」

 

 ケイタ青年の謝辞に、エイジロウたちは頬を赤らめて応じた。あれからは何事もなく、日没早々にカサギヤの街に到着することができたのだ。

 

「では、こちらが報酬になります。ご確認を──」

「あ、ケイタ……ひと袋のぶんは僕が」

 

 "買い取る"と啖呵を切ったことを忘れていないコタロウだったが、ケイタは小さくかぶりを振った。

 

「いいよ。あれは俺からの化粧料代わりだ」

「えっ……」

「だってもう、決めたんだろう?この人たちと一緒に行くって」

 

 「あのときの顔を見てればわかる」と、ケイタは笑う。図星だった。コタロウはもう、エイジロウたちの旅に同行すると決心していたのだ。

 

「皆さん、コタロウのこと……どうか、よろしくお願いします」

 

 再び、深々と頭を垂れる。そこに込められた想いは、先ほどのそれとは比べ物にならない。ともに暮らした時間はそう長くなくとも、彼はコタロウの兄に等しい存在だった。エイジロウたちも覚悟をもって、それを受け止めた。

 

「じゃあ、元気でな」

「……うん。今までありがとう、ケイタ」

 

 最後に握手をかわして、ケイタは街の雑踏へと消えていく。その姿が完全に見えなくなるまで、コタロウは見送り続けていたのだった。

 

 一方で、

 

「じゃあカツキ、約束のぶん」

 

 受け取った報酬の大部分を、そのままカツキに渡す。眉を顰めて請求書と見比べたあと、彼は「確かに」とつぶやいて銅貨を懐にしまい込んだ。

 

「用は済んだ。いくぞ、デク」

「……はいはい」

 

 何を言っても無駄だとあきらめたのだろう、エイジロウたちに申し訳なさそうに両手を合わせてカツキについていくイズク。彼らふたりとの距離を埋めるのは、やはり容易ではないようだ。

 

「ま、地道に頑張るしかねえよな。……な、コタロウ?」

「え……──まぁ、そうですね」

 

 それでもコタロウという、リュウソウジャーではないけれど余人をもって替えがたい仲間を得ることができた。この先の展望は明るいと、エイジロウたちは信じているのだ。

 

 

 *

 

 

 

「はー……はー……」

 

 荒ぶる呼吸を他人事のように聞きながら、クレオンは床に横たわっていた。周囲は彼の身体から噴き出した粘性の体液でどろどろに汚れている。無数の罠にかけられ、普通の生物ならとうに死んでいるところだ。実際、彼の付き人ならぬ付きドルイドンだったドルン兵たちは全滅している。

 

「いないなら、いないって言えよぉ……ワイズルーのバカヤロー……」

 

 館の主に向かって、届かぬ罵詈雑言を投げかけたときだった。

 

「ハハハハ!私を探していたのか〜い、クレオン?」

「!」

 

 と思いきや、ぬうっと視界を占拠した青白い顔。クレオンはがばりと身を起こした。

 

「わ、わ、わ、わ──」

 

「──ワイズルーさま……!」

 

 

 新たなるドルイドン・ワイズルー。その魔の手がいよいよ、リュウソウジャーに迫ろうとしていた──

 

 

 つづく

 

 




「イッツ・ショーーーータァイム!!」
「どすこいどすこいどすこいどすこい!!」

次回「フルスロットル・スモウキング」

「人々を守るために、晒せない恥などない!」


今日の敵‹ヴィラン›

偽キシリュウオースリーナイツ

分類/???
身長/50.0m
体重/2600t
経験値/1
シークレット/謎の鎧騎士ガイソーグの手により生み出された、キシリュウオースリーナイツの偽物。その能力は本物とまったく互角だ!
ひと言メモbyクレオン:えっ、何これ?

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