【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

36 / 164
12.アジれティラミーゴ!? 3/3

 タイガランスは苦渋を極めていた。目の前には、スト決行中云々のたすきやのぼりを一向に手放そうとしない石頭の騎士竜仲間たち。同じ任務を与えられたはずのミルニードルは、とっくに匙を投げて置物と化している。

 

 そもそも騎士竜同士だからといって、皆が皆格別に固い絆で結ばれているわけではない。タイガランスにしてみると、長らく行動をともにしたミルニードルは友だちだが、他の騎士竜たちは協力関係にある、くらいの認識なのだ。ティラミーゴたちとは合体したこともあるが、それで劇的に心理的距離が縮むというものではない。

 にもかかわらず説得などという信頼関係を必要とする役割を任されたうえ、相手は何を言っても(?)意志を曲げないへそ曲がりたちなのである。元々真面目な性格の彼も、いい加減辟易しはじめていた。

 

 そのときだった。タイガランス!と、相棒の呼ぶ声が彼方から聞こえたのは。

 

「!!」

 

 身体ごと振り向いてみれば、すっかり夜の闇に溶け込んでいたミルニードルも黄色い眼を光らせて動き出そうとしているところだった。──相棒たちの身に何かあった。十中八九、昼間のマイナソーが現れたのだ。

 

 今度は首だけを傾けて、再びティラミーゴたちのほうを見る。彼らはまだそっぽを向いていて──ああ、これは駄目だとひと目でわかった。彼がもし言葉を話せたならこう言っただろう、「勝手にしろ」と。

 

「……ティラ、」

 

 彼らが去ったあと、ティラミーゴは一転してしゅんと項垂れた。それを認めたトリケーンとアンキローゼが本当にこれで良いのかと問いかけてくる。彼らも内心、迷っているのだ。

 しかし迷っているだけでは、ここから一歩は踏み出せない。そして今さら引けないという思いが、ティラミーゴにはあった。

 

 

 *

 

 

 

「ディ、メェェェ〜〜!!」

 

 勇ましい咆哮とともに、ディメボルケーノが火炎を吐き出す。もう何度目になるかわからない攻撃、彼の体温は近づくだけで火傷してしまいそうなほどに上昇しているが、それでも難なく行動できるタフさである。

 しかしそれでもなお、ヘカトンケイルマイナソーは進撃を続けていた。炎に灼かれた皮膚も、短時間で元通りに戻ってしまう。

 

「ッ、これが完全体のマイナソーなのか……!」

 

 完全体といえば、リュウソウ族の村に攻め入ってきたドラゴンマイナソーを思い浮かべるエイジロウたち。このヘカトンケイルマイナソーは、それに輪をかけて強力だった。ディメボルケーノだけでは当然もたない、五人の騎士も積極的に攻撃を仕掛けていくが、焼け石に水なのは昼間と変わりなかった。

 

 そこに、タイガランスとミルニードルが駆けつけた。一瞬、兜に隠れた顔に喜色を貼りつけるエイジロウだったが、そのあとにティラミーゴたちの姿はない。

 

「やっぱり……来ちゃくれねえか……」

 

 仕方がない、自分たちが行動を起こすのが遅かったのだ。今は全力で、このマイナソーに立ち向かうしかない。

 

「いけッ、タイガランス!!」

「ブチ砕け、ミルニードル!!」

 

 相棒たちの指示に従い、緑と黒、二体の騎士竜がディメボルケーノと入れ替わるようにして突撃していく。そして、

 

「テンヤくん、ハヤソウルで左右から同時攻撃だ!」

「わかった!──オチャコくん、きみはオモソウルでヤツの動きを鈍らせてくれ!」

「オッケー、任せて!」

 

 まずピンクがオモソウルを発動し、マイナソーを重力の渦に捕らえる。動きが鈍ったところで正面から騎士竜たちが相手を引きつけ、そこに──

 

「「ダブル、フルスロットルディーノスラァッシュ!!」」」

 

 相手がぎりぎりまで気づかないほどの超高速で迫り──ふたり同時に、剣を振り下ろす!

 

「グオォ……!」

 

 うめき声をあげるヘカトンケイルマイナソー。怒りのままに複腕を振り回すが、

 

『カタソウル!ガッチーン!!』

 

 すかさずカタソウルで竜装したレッドが前面に出、その腕のうちいくつかを真正面で受け止める。

 

「──ッ!」

 

 それでも衝撃を殺しきることはできず、大きく後方へ吹き飛ばされる。幸いにしてその身体は、とどまっていたピンクが受け止めてくれた。

 

「エイジロウくん、大丈夫!?」

「ッ、おうよ!流石オチャコ、漢らしいぜ!」

「それ褒めてないっちゅーの!」

 

 軽く胸をどつきつつ(エイジロウはごふっと呻いた)、今度は彼女が前に出た。カツキ──リュウソウブラックの隣に、並び立つ。

 

「カツキくん、私がきみをカルソウルでめっちゃ浮かせるから、爆破で急降下して攻撃してみて!」

「ア゛ァ!?命令すんな丸顔!」

「命令じゃなくて提案!……ああ、カツキくんには無茶だったかな〜?」

「てんめェ……良い度胸じゃねえか……!」

 

 しかし、煽られるとつい乗っかってしまうのがカツキ少年の悪癖であった。イズクに聞いたというわけでもない、女の嗅覚とでもいうべきものか。剛健の騎士オチャコもまた例外ではなかった。

 

「──カルソウル!」

「ブットバソウル……!」

 

 同時にリュウソウルを装填し、

 

『フワフワ〜!』

 

 ブラックの身体が重力から解放され、空中へ浮き上がっていく。それに気づいたマイナソーが腕を突き出してくるが、邪魔はさせるかとばかりにミルニードルが針を飛ばして主を守った。タイガランスも攻撃に加わり、マイナソーを牽制する。

 その間に、ブラックは豆粒ほどにも見えないほどに上昇を遂げていた。

 

「よ〜し……──解除っ!」

 

 その瞬間を見計らって、カルソウルのエフェクトを"解除"する。途端、再び重力に引っ張られるようになったブラックの身体は墜落を始めた。凄まじい風圧が、リュウソウメイル越しにも彼の身体に襲いかかる。

 

「は……こんなモン!」

 

 そんなもの、威風の騎士たる彼にとっては取るに足らない。ブットバソウルの力でリュウソウケンから爆破を起こし、むしろ速度をあげていく。そうして、数秒としないうちにマイナソーの頭上に迫った。

 

「死ィねぇぇぇぇッ!!」

 

──BOOOOM!!!

 

 ひときわ激しい劫火がヘカトンケイルマイナソーを呑み込む。その際の衝撃で落下速度を相殺することで、ブラックは態勢を崩すこともなく華麗に着地してみせた。

 

「流石、かっちゃん……!でもそこは死ねじゃなくて技名を……せっかく合体技なんだし"ゼログラビティ=ダイナマイトディーノスラッシュ"とかそんな感じの……」

「うるっっっせえぞクソナード」

 

 いずれにせよ、この攻撃はかなり効き目があった。ヘカトンケイルマイナソーの腕のあちこちが焦げ、まともに動かなくなっている。騎士たちは勢いに乗ろうとしていた。

 

 しかし彼はまだ、戦意を失ってはいなかったのだ。

 

「──ウオォォォォォッッッ!!!」

「!!」

 

 身体から白煙を上らせながらも雄叫びを発したマイナソーは、野山を劈くようなそれとともにすべての腕を力いっぱい地面に叩きつけた。大地が激しく軋み、幾つもの亀裂が生まれる。それは蜘蛛の巣状に拡がって、瞬く間に迫ってくる。

 

「────、」

 

 騎士竜たちでさえ抗えないほどの衝撃、少年たちなどひとたまりもない。ただリュウソウメイルのおかげで消し炭にはならずに済んだ彼らも、たちまち紙のように吹き飛ばされていた。

 

「……ッ、」

「ぐ、うぅ……っ」

 

 何が起きた?いや、それは一目瞭然だった。では一体、あれほどのパワーがどうやって湧き出てくるというのか。

 リュウソウメイルは装着者を守る代わりに限界を迎え、エイジロウたちの生身は剥き出しになっている。それでもテンヤなどは鋼鉄の鎧を纏っているが、ヘカトンケイルマイナソーの規格外の腕力を前にしては裸でいるのとなんら変わりがないだろう。

 

 そしてスケールの面でマイナソー相手に太刀打ちできるタイガランスたちもまた、襤褸切れのようになって地面に横たわっていた。かろうじて動けるのはディメボルケーノだけだ。

 

「まず、い……。このままでは……!」

「……ッ、」

 

(ティラミーゴ……っ)

 

 これほどの危機を前にしても見て見ぬふりをするほど、俺たちに愛想を尽かしてしまったのか。

 エイジロウは拳を握りしめた。浮沈する怒りは、誰に向けてのものか。ただひとつ、間違いなく言えることは。

 

「このままこいつらの好きにさせて、本当に良いのかよ……!」

 

 6,500万年の昔、この麗しき故郷をこいつらに荒らされ、数えきれない仲間を失った。だから騎士竜たちは、リュウソウ族と手を携えてでも戦う道を選んだのではなかったのか。

 

「おめェらが選んだ俺らを見捨てて……仲間の騎士竜たちを見捨てて……!そうまでして通さなきゃいけない意地なのかよ、それは!?」

「エイジロウくん……っ」

 

 テンヤとオチャコもまた、それぞれの相棒たる騎士竜の顔を思い浮かべる。生身とはいえない身体をもっていながら、彼らは間違いなく心に血の通う存在だった。

 

「何がおめェらをそこまで駆り立ててんのかはわかんねえ!でも、俺らは絶対逃げねえ!わかんねえならわかるまでぶつかるから!」

 

「──だから、おめェらも逃げんな!俺らと一緒に……戦え──ッ!!!」

 

 宵闇を切り裂くような叫びが一帯に響き渡る──それと同時に、ヘカトンケイルマイナソーが拳を振り上げていた。

 

「──ッ、」

 

 やられる──!

 

 

「ティイィィラァァァァァ!!!」

 

 エイジロウのそれに負けぬ咆哮とともに、紅蓮の鋼竜がマイナソーに突進した。

 

「グオアァ!?」

 

 不意打ちだったためか、マイナソーは初めてまともに吹き飛ばされた。木々を薙ぎ倒し、森の深くまで雪崩れ込む。

 そんなことよりも今は、彼らが駆けつけてくれたことだ。

 

「……待ってたぜ!」

「ティラ……」

 

 ティラミーゴが何かを口ごもっている。エイジロウにはその気持ちがちゃんと伝わった。言葉にしなくとも、通じ合うことはできるのだ。

 

「ティラミーゴ!」

「!」

 

 そこに歩み寄ったのが、他でもないディメボルケーノだった。

 

「奴は絶大な腕力を誇っている。しかしタイガランスたちはもう動けん、ここは貴様と俺で合体するのだ!」

「!、ティラ……」

 

 事の元凶(?)ともいえるディメボルケーノとの協力には、今少し躊躇いのあるティラミーゴである。彼がまず見たのは、同じ神殿に封印されていた仲間の騎士竜たち。彼らは、黙って頷いてくれた。スピードに長けたスリーナイツより、そのほうが適していることは彼らもわかっているのだ。

 でも、それでも──

 

「──ティラミーゴ、頼む」

「!」

 

 エイジロウの言葉が、ティラミーゴの心を動かす。他でもない彼にその名を呼ばれることには、特別な意味がある──名付け親は、エイジロウその人なのだから。

 

「グガアァァッ!!」

 

 怒り狂ったマイナソーが、森をかき分けるようにして再び姿を現す。もう猶予はない、ティラミーゴは腹をくくった。

 

「──ティラァ!!」

 

 そのひと鳴きが合図となり、並び立つ二体。エイジロウも同時に、再びレッドリュウソウルを構えた。

 

「──リュウソウチェンジ!!」

『ケ・ボーン!』

 

『ワッセイ!ワッセイ!そう!そう!そう!ワッセイ!ワッセイ!それそれそれそれ!!』

 

『リュウ SO COOL!!』──真紅のリュウソウメイルが、再び少年の身体を包み込む。あれだけ傷つけられても、装着者にその意志ある限り何度でも修復されるのが竜装の鎧なのだ。

 

「いくぜティラミーゴ、ディメボルケーノ!──竜装合体!!」

「ティラアァァッ!!」

 

 雄叫びとともに、ティラミーゴが竜神キシリュウオーへと姿を変える。同時にディメボルケーノが幾つもパーツに身体を分割され──そうなっても生命維持にまったく影響がないのが騎士竜の強みである──、鎧兜や剣、さらには肩に担ぐ形の砲へと姿を変えた。

 そして最後に胸元──ティラミーゴの頭部が突き出していたそこに、ディメボルケーノのそれが取って代わる。その棘々しさは、ファイブナイツをも凌駕していた。

 名付けて、

 

「キシリュウオー、ディメボルケーノ!!」

 

 

「ウオォォォォッッ!!!」

 

 同等の背丈をもつ鋼鉄の騎士を前に、ヘカトンケイルマイナソーはますますいきりたった。複腕を一見むちゃくちゃに、その実絡み合わぬよう巧みに振り回しながら、こちらに迫ってくる。

 

「そう簡単に、近づけさせるかっての!」

 

 パイロットが言うが早いか、キシリュウオーディメボルケーノは早速固有能力を発揮した。肩の砲口が火を……もとい火砲を噴いたのだ。

 

「グオォッ!?」

 

 うめくマイナソー。その巨躯に比べれば豆粒ほどとはいえ、高温でもって勢いよく発射される炎の弾は手痛い攻撃には変わりないのだ。

 そうして一度は停滞しかかったマイナソーだが、次第に熱に慣れてきたのか、複腕で身体を庇いながら再び進撃を開始した。構わず撃ち続けるが、徐々に距離が詰まっていく。

 

 そこに、青と桃、二体の巨獣が割り込んだ。

 

「ナイトソードっ!!」

「ナイトハンマー!」

 

 同時攻撃を受け、再びマイナソーの速度が鈍る。

 

「援護は俺たちに任せてくれ!」

「合体しなくたって、できることはある!」

 

 テンヤとトリケーン、オチャコとアンキローゼ。エイジロウ&ティラミーゴのコンビと同じように、彼らも選び選ばれたのだという特別な絆がある。

 

「よ〜しッ、メラメラいこうぜキシリュウオー!」

 

 調子を上げたリュウソウレッドは、自らの意思でキシリュウオーディメボルケーノを前進させた。

 

「うおぉぉぉぉッ!!」

 

 雄叫びをあげながら燃えさかる鉄扇"ナイトファン"を振るい、灼熱の旋風をマイナソーに浴びせかける。それで怯んだところに、炎刃"ナイトメラメラソード"を袈裟懸けに振り下ろした。

 

「グワァァッ」

 

 右腕数本をすっぱり斬り落とされ、マイナソーはくぐもったうめき声をあげる。斬ると同時に傷口から炎が侵入し、体内で渦を巻くのだ。その苦痛は筆舌に尽くしがたい。

 

「っし、燃えるぜぇ!!」

 

 凄い力だ。破壊力だけならファイブナイツにも匹敵するのではないか。

 ならばこの強敵を──焼き尽くす。

 

「エイジロウくん、僕らと同時攻撃だ!」

「!」

 

 地上からイズク──グリーンが声を張り上げる。彼とその幼なじみの攻撃もまた、スケールの違いを加味しても侮れない。

 

「おうよ!──メラメラソウル!!」

『強!リュウ!ソウ!そう!──この感じィ!!』

 

 燃えさかる炎を模した鎧を装着すると同時に、レッドはリュウソウケンを振り上げた。

 

「はあぁぁぁぁぁ──!」

 

 主の意志に従い、前進を開始するキシリュウオー。合わせて地上のグリーンとブラックが、必殺の構えをとる。

 

「いくよ、かっちゃん!」

「命令すんなやクソデクゥ!!」

 

 五十年もののテンプレートな台詞を吐きつつ──ふたりは跳んだ。力いっぱいのジャンプは、等身大でありながらキシリュウオーの肩のあたりまで到達する。

 

「とどめだ──!」

 

 

「キシリュウオー、バーニングスラァッシュ!!」

「「ダブルディーノスラァァッシュ!!」」

 

 騎士竜と騎士たちの斬撃が炸裂、

 

「!!!!!!!!」

 

 声にならない断末魔とともに、ヘカトンケイルマイナソーの残る腕がすべて斬り落とされる。そのエネルギーの余波は、彼に苦悶すら与えずに爆発を起こしたのだった。

 

「っしゃあ、完全勝利!!」

 

 タイガランスとミルニードルは傷ついてしまったが、誰も死なせず強力なマイナソーを葬り去ることができた。ワイズルーに続き、快進撃と言えるだけの成果を挙げられたのだ。

 

 

 *

 

 

 

「エイジロウくん、オチャコさん。そっちをお願い!」

「おうよ!」

「は〜い!」

「イズクくん、これはどうすれば良い?」

「ああ、それはね……」

 

 すっかり平穏を取り戻したダイノ古代遺跡群において、リュウソウジャーの面々は化石の発掘作業を行っていた。

 

「かっちゃん、これここに置いとくね」

「ん、」

 

 皆が掘り出した化石をカツキが受け取り、専用の道具を使って精錬していく。手慣れた様子は、エイジロウが村で見た友人の実家での作業にも劣らぬものだった。

 

「あいつ、マジでなんでもできちまうんだな……」

「天は二物も三物も与えるとは、このことかもしれないな!」

「あの性格じゃなければ完璧やったのにね……」

 

 そんなおしゃべりをしていたらば、案の定カツキに睨まれてしまった。慌てて作業に戻る一同。

 

 そこに、ティラミーゴたちがやってきた。

 

「ティラ……」

「おう、ティラミーゴ。どした?」

 

 屈託のない笑顔を向けるエイジロウに対し、ティラミーゴはどこかそわそわした様子だった。すぐ後ろについてきたトリケーンとアンキローゼが、彼の背中もとい尻尾を後押しするようなしぐさを見せる。

 

「ティ、ラ……」

「?」

 

 ティラミーゴの大きな口が、ゆっくりと開閉する。

 

「グォ……メ……ン、ティラ……」

「!」

 

──ごめん、ティラ。

 

「おめェ……喋れるようになったのか!?」

「ティラ、」

「スゲーな、流石だティラミーゴ!」

 

 その言葉が仮に謝罪でなくとも、エイジロウの反応は変わらなかった。ティラミーゴが言葉を話せるようになったことに喜び、無邪気に飛び跳ねる。そういう少年を、ティラミーゴは相棒に選んだのだ。

 

「おい、クソ髪」

「ん?──うぉっ」

 

 カツキから唐突に投げ渡されたのは、金の縁取りにオレンジの──ディメボルケーノとはすこし色合いの異なる──リュウソウル。見たことのないものだった。

 

「これ、今造ったばかりの?」

「おー。てめェの騎士竜に使ってみろや」

 

 ニヤリと悪戯っぽく笑うカツキ。いったいどんなソウルなのか。不安はあったが、エイジロウはその言に従うことにした。

 

「とりゃっ」

 

 いつも通りリュウソウケンに装填し、

 

『チーサソウル!ミニミニっ!』

 

 新たなリュウソウル──チーサソウルの力がティラミーゴの全身に染み渡っていく。するとその巨体が、みるみるうちに縮みはじめたではないか。

 

「てぃ、ティラミーゴ!?」

「ティラァ!」

 

 すっかり可愛らしい声、姿かたちになったティラミーゴ。手乗りサイズ……というには今少し大きい彼は、ぴょんとエイジロウの肩に乗ってきた。

 

「ティラ、ティラァ!」

「ひゃははっ、くすぐったいぜティラミーゴ!」

「おおっ、かわええ!」

「このソウルがあれば、騎士竜たちも街に入れるな!」

「!」

 

 もしや、カツキの狙いはそれだったのか。ならば彼は、自分たちのために便宜を図ってくれたことになる。尤も彼は再び作業に集中しはじめ、こちらを見てすらいなかったが。

 

「……ありがとな、カツキ」

 

 今回の遺跡探訪、成果は新たなリュウソウルだけではなかった。絆というかけがえのないものを、改めて得ることができた──エイジロウは、そう確信していたのだった。

 

 

 *

 

 

 

 その頃クレオン一行もまた、リュウソウジャーを追って南下を続けていた。

 

「ワッセイワッセイ!」

「ドルゥゥ……!」

「そうそうそう……ホラ右舷弾幕薄いよ、何やってんの!?」

 

 クレオンの指揮のもと、ワイズルーの入った棺を運ぶドルン兵たち。しかし数体がかりとはいえ、あまりといえばあまりの重さである。彼らは無駄に疲弊させられていた。

 

「……これのどこがエンターテインメントだよ」

 

 自身は口を出すばかりで楽をしつつ、ごちるクレオン。──そんな彼の前に、突如として紫電のごとき影が姿を現した。

 

「……ビショップクラスのドルイドンがそのざまか、情けない」

「うわっ、なんだおまえ!?」

 

 当惑するクレオン。その一方で、

 

「ドーーーン!!」

「ドルゥ!?」

 

 棺桶を蹴破るようにして飛び出すワイズルー。その衝撃で何体かドルン兵が吹き飛ばされるが、そんなことを気にする男ではなかった。

 

「いきなり現れてその物言い!相変わらず無作法なguyだな!」

「………」

「だんまり!?……ゴホ、オホン!それで、なんの用かな?」

 

 紫電の鎧騎士は、ため息のような声で応じた。

 

「……リュウソウジャーは、南の大地へ向かおうとしている」

「!」

「このままでは、"ヤツ"に手柄をとられるぞ」

 

「それだけだ」──そう告げて、鎧騎士は靄のように姿を消した。

 

「消えた……!?なんだったんだ、アイツ……」

「……彷徨う鎧、ガイソーグだ」

 

「ヤツまで動き出したとなれば……くくくっ、面白いショウが、見られそうだよ」

 

 ただし、最後に中心で踊るのは自分だ。譲れぬ矜持とともに、ワイズルーは再び棺桶に横たわった。

 

 

 つづく

 

 




「幽霊船が来たぞぉ!」
「俺たちが、この町の平和を取り戻します!」

次回「出航!南へ」

「海の上にも、人間は生きているんだな」


今日の敵‹ヴィラン›

ヘカトンケイルマイナソー

分類/ジャイアント属ヘカトンケイル
身長/57.2m
体重/899t
経験値/554
シークレット/ギリシア神話に登場する巨人、ヘカトンケイルに似たマイナソー。屈強な体躯を誇るがその最大の特徴は肩口から無数に分かれた複腕である。それらを巧みに操って敵を叩き潰し、あらゆるものを打ち壊すぞ!
ひと言メモbyクレオン:完全体にまで育った貴重なマイナソー……なんだけど、ここまで育てるのはマジひと苦労……。野良に限ってよく育つんだよなぁ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。