【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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16.深き絆 3/3

 キシリュウネプチューンとアスピドケロンマイナソーが今、激突の瞬間を迎えようとしていた。

 

「ギイィアァァァッ!!」

 

 咆哮とともに放たれる炎弾を、素早い身のこなしでかわしていくキシリュウネプチューン。ただ回避しているだけではない、着実に距離を詰めようとしていた。

 

「──ナイトトライデント!」

 

 モサレックスの尾が変形した三叉の矛──ナイトトライデントを、中距離から勢いよく突き出す。

 

「!!」

 

 首を狙っての攻撃だったが、それを悟ったアスピドケロンマイナソーは瞬時に首を甲羅の中へ引っ込めてしまった。

 

「ッ、」

「問題ない。そのままブチ込め!」

 

 モサレックス……否、キシリュウネプチューンがそう言うならば!

 

「うぉおおおお──ッ!!」

 

 鋭い矛を──突き出す!

 

「ギアァァァァァッ!!?」

 

 マイナソーが限界まで首を突き出し、絶叫する。その矛は、堅牢な甲羅さえも貫き、そのはらわたを抉っていたのだ。

 

「ガッ、アァァ!!」

 

 痛みに慄きながらも憤るマイナソーは、せめてもの反撃にと炎弾を吐きつけ反撃してきた。咄嗟にナイトトライデントを前面に構えて防ぐが、衝撃までは殺せない。

 

「ッ、ぐうぅ……!」

「怯むなショート!次は──」

「わかってるさ……!」

 

 後方に吹き飛ばされながらも、両腕を突き出すキシリュウネプチューン。──拳を形作っていたアンモナックルズが、弾かれるようにして放たれた。

 

「グアァァッ!!」

 

 その直撃に、今度はアスピドケロンマイナソーの側が大きく吹き飛ばされる結果となった。その巨体が海底に叩きつけられ、激しい揺れが一帯を襲う。

 

「今が好機だ、ショート!」

「ああ……!」

 

 再びトライデントを構え、肉薄する。しかし次の瞬間、動かなくなったと思われたマイナソーの眼がぎらりと光った。

 

「!?」

 

 太い尻尾がひとりでに動き、ネプチューンに差し向けられる。──駄目だ、かわせない!

 

「──ミルニードルアタックゥ!!」

 

 そのとき割り込んできたファイブナイツが、漆黒の刃で尻尾を弾き飛ばした。

 

「!、おまえたち……」

「けっ、てめェらばっか良いカッコさせっかよ!」

「ショート、キシリュウネプチューン、同時攻撃だ!!」

 

 並び立つ二大巨人。未だ起き上がれないアスピドケロンマイナソーは、せめてもの抵抗にと猛烈な勢いで炎弾を放ってくる。

 

 巨人たちはそれを、ふたつの武器でもって弾き返した。

 

最期(おわり)だ──マイナソー!!」

 

 跳躍するファイブナイツ。ナイトランスを振り上げ──振り下ろす!

 

「「「「「ファイブナイツ、ドロップストライク!!」」」」」

 

 その一撃は、倒すに至らないまでもマイナソーの甲羅を大きく切り裂くことに成功した。そしてまだ、これで終わりではない。

 

「キシリュウネプチューン……トルネードストライクっ!!」

 

 ナイトトライデントの穂先が高速回転し、甲羅の切り裂かれた箇所に突き当たる。大暴れするアスピドケロンマイナソー、しかしそれに伴い発生した海流に、キシリュウネプチューンはびくともしない。

 

「海で我に勝るものなどいない……!」

「ああ、──穿けぇ!!」

 

 そして──トライデントが、マイナソーの胴体を貫通した。

 

「!!!!!!!」

 

 声にならない声をあげ、アスピドケロンマイナソーはその身を崩壊させていく。やがて爆炎が骸を完全に焼き尽くし、彼、あるいは彼女は海の藻屑と消えたのだった。

 

「やった……!」

「ドデカマイナソー、倒したぜ!!」

 

 元はといえば、この海の王国に来るきっかけとなったマイナソーである。エイジロウたちには感慨深いものがあったが、言うまでもなくまだ終わりではない。

 

 宮殿を覆う氷が、突如として崩れはじめたのだ。

 

「!、ガチレウスが動き出した……!」

「……皆、行こう。ガチレウスを倒すんだ」

「わーっとるわ!」

 

 騎士竜たちと別れ、六人は宮殿へと向かった。いよいよ、ガチレウスと決着をつけるときだ。

 

 

 *

 

 

 

 時間はわずかに戻り、宮殿内部。

 氷山に覆い尽くされた謁見の間で、しかしガチレウスはついにそれを打ち砕こうとしていた。──その身を赤熱し、一挙に溶融させることで。

 

「……ッ、」

「うわ熱っち!?……って、氷融けた!!」

 

 「ガチレウスさま流石ぁ!」とはしゃぐクレオンの横で、ガチレウスはぬうぅ、と怒りの声を発した。

 

「よくもやってくれたな、リュウソウ族風情が……!」

「……ッ、」

 

「ふたりまとめて、八つ裂きにしてやる」──憤懣の目に睨みつけられ、フユミが「ひっ……」と怯え声を洩らす。そんな、良くも悪くも常人の精神をもつ娘を、母たる女王は背中に庇った。

 

 そのとき、宮殿に激震が走る。──アスピドケロンマイナソーが、撃沈せしめられたのだ。

 

「ああっ、ガチレウスさま!マイナソーが……!」

「なんだと!?」

 

「──ガチレウスっ!!」

「!」

 

 そして宿敵たる彼らが、謁見の間に飛び込んできた。

 

「リュウソウジャー……!」

「あのでかぶつは倒した……!あとはてめェを倒すだけだ!」

「──俺たち、六人でな」

「!、ショート……」

 

 振り返ったショート──ゴールドは、母や姉を安心させるように小さく頷いてみせた。

 

「モサレックスに認めてもらった。──もう、大丈夫だ」

「……そう。ならショート、あとは万事おまえに託します」

 

 彼を慈しみ、育んできたからこそわかる。エイジロウたちとの出逢いをきっかけにして、ショートはひと皮剥けたのだと。

 

「ろ、六人揃っちまった……!」焦るクレオン。「となると、まさか……」

「そのまさかさ!」

 

 全員揃ったとなれば、まずすることはひとつ。

 

「──勇猛の騎士ッ、リュウソウレッド!!」

「叡智の騎士!リュウソウブルー!!」

「剛健の騎士、リュウソウピンク!」

「疾風の騎士!リュウソウグリーン!!」

「威風の騎士……!リュウソウブラックゥ!!」

 

 そして、

 

「黄昏の騎し「待って、ショート!」──!?」

 

 ゴールドの勇ましき口上を止めたのは、意外にも彼の姉であって。

 

「……どうしたの、フユミ?」

「前から思ってたんだけど……"黄昏の騎士"って、縁起が良くないわ」

「!、まぁ……確かに」

 

 衰退を辿る海の王国、父への複雑な想い──そういった感情が入り混じった結果の自称である。確かにフユミの言う通りなのだが、今言うことか?エイジロウたちはおろか、ガチレウスやクレオンも呆気にとられている。

 

「だ、だったら!──"栄光の騎士"なんて、どうかな?」

 

 咄嗟の、イズクの提案だった。栄光──海の王国を背負って立つにふさわしい称号。少なくともでまかせではない。

 

「"栄光"……そうだな、悪くねえ」

 

 ならば、改めて。

 

「──栄光の騎士、リュウソウゴールド!」

 

「っし、じゃあこっちも改めて!正義に仕える──」

 

──気高き、魂!

 

「「「「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」」」」

 

「陸と海……ふたつの騎士道、見せてやる!!」

 

「うわぉ、これは初見……」

「ええい、何故名乗り口上を聞く必要がある!──かかれ!!」

 

 自分も聞いていたことは棚に上げて、ガチレウスが怒号を発する。ドルン兵たちは慌てて戦支度を整え、攻撃にかかった。

 ただ、質はもちろんのこと物量でもリュウソウジャーとほぼ同等の数でしかない。ならば、時間稼ぎにすらなるはずがなく。

 

「一掃する……!──ハヤソウル!!」

 

 リュウソウグリーンがハヤソウルを発動する。文字通り一陣の疾風となった彼は、世界からその姿を消したかと思うと次の瞬間には明確な存在感を表した。斬撃という形で。

 

「オラァ!!」

 

 そうして空いた穴に、まずもってブラックが斬り込んだ。彼は既にツヨソウルで竜装している。

 

「行け、クレオン!」

「えっオレっすか!?いや無理ムリむり──」

「死ィねぇぇ!!」

「ぎゃあぁ!?こいつマジ怖ぇ!!?」

 

 ブラックの夜叉ぶりに、斬撃には耐性があるはずのクレオンはとことん慄いていた。もとより武器らしい武器はもたない以上、対抗するすべもない。逃げ回るのが精一杯だった。

 

「ええい、使えん……!」

「──貴様が使い方を心得ていないんだ!!」

「!」

 

 そう叫んだテンヤ──リュウソウブルーを筆頭に、スリーナイツがガチレウスめがけて突撃する。ブルーとピンクはやはりツヨソウルで武装している一方で、レッドは得意のカタソウルの鎧を身に着けている。両腕のスクリュークローから放たれる攻撃は、彼が身体を張って防ぐ役割を果たしていた。

 

「何故だ何故だ何故だッ、何故貴様らごときに阻まれる!?6,500万年もの雌伏を強いておきながら何故、俺の思い通りにならぬのだあっ!!?」

 

 6,500万年前の争いでも、この星を獲ることはできなかった。ドルイドン内部にあっても、下位のルークでしかない。──そして今、ようやく掴んだ好機さえも、たかだか百数十年しか生きていないような小僧どもによって泡沫と消えようとしている。

 

「当たり前、だろうがあッ!!」

「グオオッ!?」

 

 レッドの硬質化した刃に右手のクローを斬り飛ばされ、ガチレウスはうめき声をあげた。

 

「おめェらドルイドンは自分のことしか考えてねえッ、他人は全部都合の良い手駒だと思ってる……!そんな連中に好き勝手させるほど……この星は甘くねえッ!!」

「グワアアァッ!!?」

 

 スリーナイツの剣が横薙ぎに、袈裟懸けに、あるいは刺突するように、ガチレウスの胴体に炸裂した。

 

「グウゥゥゥ……!」

 

 後方に弾き飛ばされながらも、ガチレウスは倒れない。玉座に手をついて踏みとどまり、両肩の砲から魚雷を放った。半ば悪足掻きに近い攻撃だが、屋内ではそれなりの効果を発揮する。

 

──彼が、いなければ。

 

「サンダー、ショット……!」

 

 後方から放たれた光弾が魚雷を直撃し、誘爆させていく。それらはひとつとして標的に届くことなく、海の藻屑と消えたのだった。

 

「……ガチレウス、おまえの言動は王位継承者のひとりとして参考にさせてもらう。もちろん、反面教師としてな」

「ヌウゥ……!──ッ、クレオン何をしている!!」

「は!?」

「今すぐあの小僧からマイナソーを生み出せぇ!!この豚どもの国を粉々にするマイナソーを!!!」

 

 ガチレウスはもはや冷静さを失っていた。戦う力をもっている相手から、どうやってマイナソーを誕生させろというのか。だいたい生まれるマイナソーはある程度予測がつくといえどもランダムであって、ガチレウスが望むような能力で生まれてくるとは限らないというのに。

 

「無茶言わんでくださいよ!」

 

 そうした"不可"をひと言に集約して伝えたわけであるが、これが案の定ガチレウスの逆鱗に触れた。

 

「俺の言うことが聞けんのかッ、卑しい菌類の分際で!!」

 

 ガチレウスはよりにもよって、クレオンめがけて魚雷を放った。慌てて逃げ出すクレオンだが、当然追うもののほうが動きは速い。

 

「うぎゃああああああ!!?」

 

 結果、クレオンは爆炎に呑み込まれた。悲鳴が辺り一帯にこだまする。ガチレウスはほんの少しばかり溜飲を下げたが、その代償はあまりにも重いものだった。

 

「おまえぇッ、何やってんだ!!」

 

 怒声とともに、頭上に翳が差す。──よそ見をしている間に、グリーンとブラックが肉薄していた。

 

「グガアァッ!!?」

 

 ふたりの刃は、両肩の砲口を見事に斬り落としていた。ガチレウスはこれで、飛び道具さえも失ってしまったことになる。

 趨勢は、決した。

 

「……こいつ、救えないよ」

「どのみち救ってやる気なんざねえがな」

 

 エイジロウの言葉を聞いてもなお、ガチレウスはクレオンを道具扱いし、あまつさえ攻撃までした。クレオンに同情するつもりはなくとも、リュウソウジャーの怒りは頂点に達していたのだ。

 

「皆、息を合わせよう」ゴールドが声をあげる。「やってくれるか?」

「おうよ、もちろんだぜ!」

「わーっとるわ指図すんなや!」

 

 レッドとブラック、両極端の反応が返ってくるが、いずれもつまりは是である。当然、他の面々も承諾する。

 虫の息となったガチレウスの前で、六人の騎士が並び立った。

 

『レッド!』

『ブルー!』

『ピンク!』

『グリーン!』

『ブラック!』

 

 カラードリュウソウルをリュウソウケンに装填する五人。そして、

 

「モサブレイカー……──ファイナルサンダーショット!!」

 

 輝ける鏑矢を放ったのはゴールドだった。それに一瞬後れて、五人がクインティプル・ディーノスラッシュを放つ。

 

 放たれた剣のエネルギーが、オーラとなって後方から電光弾を包み込む。そうして光の珠はひと回り膨れ上がり、虹色に輝き出したのだ。

 

「ヌウゥ……オォォォォッ!!」

 

 もはや逃げる余力もないガチレウスは、せめてもの抵抗にと唯一残された左手のクローを振りかざした。──刹那、衝突したエネルギーが、彼の身体を大きく押しやっていく。

 

「こんな……!こんな、馬鹿な、ことが……!!」

「終わりだ……!ガチレウス!!」

 

 血塗られた歴史に、決着をつける。海のリュウソウ族にとって、今この瞬間がそのはじまりだ。

 

「俺は、まだ、終わ……!」

「うぜェ、とっとと死ねやクソゴミ野郎!!」

 

 言葉は悪いが、根本の感情はみなに共通するもの。──それゆえに、弾丸の威力はよりいっそう上昇した。

 

 ばき、と音をたて……クローが破壊されてしまえば、もう一瞬だった。

 

「おのれェ、リュウソウジャアァァァ──!!」

 

 それが、断末魔となった。

 

 紅蓮の劫火が爆ぜ、それが収まったときにはもうガチレウスの姿はどこにもない。──勝った。倒したのだ、六人のリュウソウジャーが。

 

「──俺()()との出会いを、後悔しろ」

 

 皆が喜びを噛みしめる中で、ゴールドが静かにつぶやいた。

 

「う、うぅぅ……」

「!」

 

──そうだ、まだ終わっていない。襤褸切れのようになったクレオンが、這々の体で逃げ出そうとしている。

 

「いい加減年貢の納めどきだ、クレオン!!」

「ひ、ヒィ……!」

「……なんか良心が痛むなぁ、アレ見たあとやと」

「同情してんじゃねーわ丸顔、コイツはコイツで自業自得だ」

 

 確かに──今は怯えるだけの子供のような姿を晒していても、この怪物はマイナソーを生み出して人々を苦しめている。今度こそ、終止符を打たなければ。

 

「ショート、もういっぺん同時攻撃だ!」

「ああ……──!」

 

 そのときだった。彼らの頭上をにわかに飛び越して、人影が割り込んできたのは。

 

「!、おまえ……兵士?」

 

 一般の兵士の姿かたちをした男。──それが何故、クレオンを庇うように立ちはだかっている?

 

「てめェ、まさか──」

「──HAHAHAHAHA、そのまさか☆SA!」

 

 兵士の姿がぱん、と弾け……その蒼い本性が露わになる。無駄に良い声の、エンターティナー。

 

「ワイズルーさま……!」

「ワイズルー!?」

「おまえ、生きてたのか……!?」

 

 驚く一方で──少なくともイズクとカツキには、その予感があった。ビショップクラスのドルイドンが、そう簡単に斃れるはずがないと。

 

「ガチレウスのおかげでどこもかしこもカオスだったからね、兵士に化けて潜入するのも簡単だったよ」

「次はおまえが相手ってわけか。この国を侵す者は、誰であろうと許さねえ」

 

 意気込むリュウソウゴールドであったが、

 

「ノンノンノン!今日は戦うつもりはないさ。だいたいこんな寂れたステージ、私の好むところではNothing!」

「だったらてめェ、何しに来やがった!?」

「決まっているだろう?相棒を救けに来たんだよ」

「!?」

 

 言うが早いかワイズルーは、クレオンをさらりと抱え上げてしまった。いわゆる、お姫様抱っこの状態。

 

「さあ……私と帰ろう、クレオン」

「わ、ワイズルーさま……!」

 

 クレオンの目に涙が浮かぶ。──先ほどとは打って変わって感動的な主従の光景だが、絆されてなどいられない。

 

「逃がすか……!ハヤソウル!!」

 

 グリーンが再びハヤソウルで竜装し、一気呵成に距離を詰めようとする。しかし相手は、ガチレウスより一枚も二枚も上手だった。

 

「ショータァイム!」

「ッ!?」

 

 勢いよくその身が翻されたかと思うと、ステッキが一閃する。リュウソウケンもろとも、グリーンは後方へ弾き飛ばされていた。

 そして態勢を立て直すより早く、彼らは忽然と姿を消していた──

 

「また南の大地で会おう!ハッハッハッハ、ハッハッハッハッハ──!」

「……ッ!」

「ハッハッハッハ、ハーッハッハッハァ!ハハハハハ、ハハハハハハハハ!!」

 

「ハハハハハハハ──」

「……いや、長いッ!」

 

 悔しがる以上に、突っ込まざるをえなかった。

 

 

 *

 

 

 

 それから休息と少しばかりの観光も兼ねて丸一日滞在したあと──途中、イズクに剣を向けた兵士から謝罪と感謝を述べられるひと幕もあった──、エイジロウたちは海の王国を発つことになった。

 

「皆さん、この国を守っていただき本当にありがとうございました。この御恩、子々孫々に至るまで語り継いでいきたいと思います」

「い、いやそんな……!僕たちこそ、とても良い体験ができました」

 

 海底の幻想的な風景に、豊富な魚介を使った料理の数々──何より、六人目のリュウソウジャーとの出逢い。

 

「あ、そういえば……あの掟って、どうなるんですか?」

 

 この国を訪れた者に課せられる、ふたつの掟──海のリュウソウ族について他人に口外しないことと、贈られた宝箱を決して開けてはならないこと。

 

「ひとつ目については、守っていただきたいわ。でも、ふたつ目は……少なくとも貴方がたには、意味がないものなのです」

「?」

 

 女王の隣に控えるフユミが、そっと宝箱を手にした。その鍵は既に開かれていて……何も、入ってはいなかった。

 

「この箱に閉じ込めているのは、この海の王国で過ごしたぶんの年月……つまり、その者の年齢なのです」

「えっ……?」

「私たち海のリュウソウ族と契った人間は、私たちと同じ時を生きるようになるの。本人も、知らないうちに……」

 

 そうして本人の身に降り積もるはずだった年月は、宝箱の中に封じられる──そこまで聞いて、イズクが「そうか!」と手を打った。

 

「人間である王配殿下が僕らと同じく長寿だったのは、その宝箱があったから……」

「じゃあ、宝箱を開けたら二度と戻れないっていうのは──」

 

 蓄積していた時が一気に流れ込み……あるいは、人間の寿命を超えてしまうから。

 

「……だから、貴方がた同じリュウソウ族には不要なのです。もとより、二日しか滞在なさっていないのだしね」

「………」

 

 言葉にできない。それほど恐ろしい掟だと、そう思った。陸に戻ったとき、何百年もの時が流れていて──宝箱を開けてしまえば、肉体は一気に老いていく。

 しかしそれで、この女王を責めることはできなかった。彼女自身、そのために幾度となく涙を呑んでいる──そう、想像がついたから。

 

「あ、そういや……ショートは?最後に挨拶、していきたいんスけど」

「──俺ならここだ」

「!」

 

 噂をすればというべきか、入室してきたのはショートだった。それ自体は驚くようなことではない。ただ、

 

「……その荷物は?」

「………」問いに直接は答えず、「親愛なる女王陛下。第三王子ショート、彼らの供として陸に上がりたいと思います」

「ええ、息災でね」

「え……え!?」

「ええ──ッ!?」

「ハァ!?」

 

 予想だにしない言葉に、ただただ口を開閉することしかできない一行。

 そんな彼らに、ショートはフッと笑いかける。

 

「ふつつか者だが、よろしく頼む」

 

 

──大禍去り、今度は黄金の嵐が吹き荒れようとしていた。

 

 

 つづく

 

 





「気安く名前呼ぶな半分ヤロォ!」
「そいつのことは気に食わん!!」

次回「賢者vs猛者」

「いい加減に……しろおぉぉッッッ!!!」


今日の敵‹ヴィラン›

アスピドケロンマイナソー

分類/レプタイル属アスピドケロン
全長/213.5m
体重/408t
経験値/888
シークレット/海に棲むといわれる巨獣"アスピドケロン"を象ったマイナソー。既に完全体に至っており、通常の巨大化マイナソーとは比較にならない巨体を誇っている。その内部は基地仕様に改造され、ガチレウスの拠点として利用されていたぞ!
ひと言メモbyクレオン:でかい!馬鹿でかい!クソでかい!!リュウソウジャーを海に沈めてやった!……までは良かったんだけどなあ。


ガチレウス

分類/ドルイドン族ルーク級
身長/191cm
体重/287kg
経験値/503
シークレット/冷酷無比なドルイドンのルーク級幹部。深海での活動を得意とし、海の王国を執拗に攻撃していたぞ!その容赦なさは敵以上にむしろクレオンを苦しめたとか……。
ひと言メモbyクレオン:ザマァーーーーーみろ!!!!!
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