【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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今回は場面切り替えのたびに
キャラのデフォルメ顔がどたどた~と駆け抜ける感じの演出(鬼滅の蝶屋敷編のあれ)をイメージしてどうぞ


17.賢者vs猛者 1/3

「ふつつか者だが、よろしく頼む」

 

 こうして海の王国の第三王子・ショートは、リュウソウジャー一行に加わることになったのだった──

 

 

「──って、ッッッンでだァ!!?」

 

 仄暗い海底に、噴火のような叫びが響き渡った。

 

「……どうしたんだカツキ、急に大声出して?」

「気安く名前呼ぶな半分ヤロォ!てめェとモサ公は海の守護者なんだろーがッ、それがなんで俺らについてくるなんて話になってンだ、ア゛ァン!?」

「……マジで声でけぇな」顔を顰めつつ、「俺は生まれてこのかた、海から上がったことがない。おまえたち陸のヤツらに初めて出逢って……なんつーか、すげぇビックリした」

「な、なんかざっくりした言い方やなぁ……」

「だがわかるぞ、その気持ち!」

 

 エイジロウたち三人にしても生まれて初めてリュウソウ族の村を飛び出して、何かと衝撃を受けることばかりだった。この海底はそれ以上に外界と隔絶されているから、尚更だろう。

 

「でも……ガチレウスは倒したとはいえ、またドルイドンが襲ってくる可能性はないとは言えないでしょ?きみとモサレックスが離れて、本当に大丈夫なの?」

「──それなら心配ない」

「!?」

 

 いきなりモサレックスが目前に現れたものだから、ショートを除いてはぎょっとするのも無理はなかった。

 

「この国の状況は、水を通じて逐一感じ取ることができる。何かあればすぐに飛んで戻るさ」

「戻るまでの間は十分保たせられる。この国の兵は数少ないが、そのぶん精強だ」

「そうか……。それなら、躊躇う理由はねェな!」

 

 ショートの仲間入りが嫌なわけではない。気懸かりさえ解消されるなら、むしろ。

 

「よろしくな、ショート!モサレックス!」

 

 力強く肩を組まれたショートは「お、」と声を洩らしたが、満更でもないようだった。

 

「ふむ……これでリュウソウジャーが六人になるわけか。しかもモサレックスは、キシリュウオーとは別に巨人形態になれると来た!」

「ショートくん、魚以外食べられるんかなあ……?」

「ショートくんの竜装するゴールド、僕らと違って遠距離攻撃が主体みたいだけどそれが正式に加わるとなると戦術の幅が増えるな、新しいフォーメーションを編み出さないと……あぁなんか燃えてきたぞ……!」

 

 三者三様の反応、しかしショートの加入を歓迎しているのはエイジロウと同じなのだ。──さらに言えば、彼も。

 

(良かった……。これでキシリュウネプチューンが見られる!)

 

 モサレックスがアンモナックルズと合体して誕生したキシリュウネプチューン。気を失っていたコタロウは、その勇姿を見ることができなかったのだ。彼としては、騎士竜やその巨人形態のこともきっちり記録しておきたいところなのだった。

 

(……とはいえ、)

 

「〜〜ッ、ッンでだクソがァ……!!」

「………」

 

 眦をこれでもかと吊り上げ、反対に形の良い唇を台無しなほどにへの字に曲げている少年が隣にいる。少年と言ってもこの面子の中では最年長者なのだが、リュウソウ族は数歳の違いを"年齢差"とは捉えないようなので誤差の範疇である。まあ、それはともかく。

 

("カツキさんは、ショートさんに蛮族呼ばわりされたことを相当根にもっているようだ”……と)

 

 本日の出来事として、手帳に記す。水中でも陸上と同じように活動できる魔法の効果は、モノにも作用してくれているのが幸いした。そうでなければ執筆どころか、手帳じたいダメにしてしまうところだったので。

 

 ただ、コタロウは気づいていなかった。

 

 カツキのほかにも、ショート……というよりその相棒のことを、冷たい目で睨みつけている男?がいることに。

 

 

 *

 

 

 

「ワイズルー、それにクレオンなるドルイドンは、確かに南へ向かったようだ。この波の様子だと、既に上陸しているかもしれん」

 

 海水を通してこの海の状況を知り尽くしているモサレックスの発言で、エイジロウたちは南の大地へ向かうことを改めて確認した。そこはワイズルーが以前本拠にしていた地でもある。再びヤツの"ショウ"で、無辜の人々を苦しめさせるわけにはいかないのだ。

 

「私の背に乗れ。途中何事もなければ半日ほどで上陸できる」

「!、良いのか?ショートはともかく、俺たちまで」

 

 実際、モサレックスの存在は渡りに舟そのものである。ただ彼は、太古の記憶ゆえエイジロウたち陸のリュウソウ族には微妙な思いを抱いているはずだ。ショートが仲間になった今でも。

 

「……おまえたちを乗せなければ、ショートも乗らないだろう」

「な、なるほど……そういう」

「まぁ、そうだな」

 

 涼しい表情で頷くショート。彼は育ちゆえか存外に素直なところがあって、当初エイジロウたちに冷たい態度をとっていたのもモサレックスの影響をそのまま受けてのことだった。無論、モサレックスとの相棒関係を守るためという考慮もあってのことで、愚鈍ではない。騎士竜たちも含む大勢は、彼に対し好感を抱きつつある。

 ただ、集団の意志が百パーセント一致するなどそうはありえない。それは人間に限らず、騎士竜の世界においても同じことだった。

 

「俺は乗らん!!」

 

 声高にそう言い放ったのは──海とは最も縁遠かろう炎の騎士竜・ディメボルケーノ。皆の視線が、自ずとその巨体に集中する。

 

「な、なんでだよ。ディメボルケーノ?」

「いくら仲間に加わったといっても、モサレックス(そいつ)のことは気に食わん!背に乗るなどまっぴらごめんだ!!」

「なんだと!?」これにモサレックスも反応する。「貴様、まさか6,500万年前の喧嘩をまだ根にもっているのか?器が小さいぞ!」

「貴様に言われたくないわ!!」

 

 海中であるにもかかわらず、バチバチと熱い火花を散らす二大騎士竜。喧嘩というと微笑ましくも聞こえるが、この巨体同士が遠慮なしにぶつかったら周囲への被害は甚大ではない。

 

「ちょっ……やめろって!これからみんなで力ァ合わせて戦うんだぜ!?」

「そもさん、汝に問う!!」

「!?」

「貴様には男として譲れぬものはないのか!?」

「へ……い、いやそりゃあ、あるけど……」

「そういうことだ!!」

 

 いやそういうことだと言われても、既に手を握った相手を過去のことを持ち出して拒絶するというのはエイジロウの美学ではない。無論ディメボルケーノにはディメボルケーノの信念があるのだろうが、それでもこの星の守護者たる使命を何より優先すべきではないのか?

 仲間たちの力も借り、彼を説得しようと試みるエイジロウだが、それを実行に移すより先に思わぬ敵増援が現れた。

 

「ディメ公の言う通りだわ。いきなり借りつくって、あとで何要求されるかわかったモンじゃねえ」

「は!?」

「ちょっ……かっちゃん!何言ってんだよ、そんな──」

 

 イズクが慌てるが、こうなるとカツキも頑ななのである。その視線はモサレックスよりむしろ、同じリュウソウ族であるショートに向けられていた。

 

「……俺はむしろ、一緒に行動できて有難いと思ってる。見返りを要求するなんて、あるわけねえ」

「はっ、どうだかなァ。腹黒半分野郎?」

 

 モサレックスと異なり、ショートは整った眉をハの字にして困惑するばかりだった。それがますますカツキを苛立たせるのだと、文字通り一朝一夕の付き合いである彼に知るよしもない。

 

 

 *

 

 

 

 さて、不穏分子?を抱えたまま出発したリュウソウジャー一行。結局モサレックスの背は使えず、ひとまずは地道に歩いていくことになった。効率は当然あまりにも悪く、一時しのぎである。カツキとディメボルケーノの機嫌が上向いたところを見計らって、再度説得するということでメンバーの意見は一致していた。

 

 それまでは新メンバーと、のんびりおしゃべりタイムである。出会って日が浅いからこそ、コミュニケーションは肝要なのだ。

 

「細ぇから最初わかんなかったけど、おめェテンヤと同じくらいタッパあるんだな。羨ましいぜ!」

「本当にね……!やっぱり魚介食べ放題なのが大きいのかな、王国の人たち、みんな結構体格良かったし……」

「そうか。でもテンヤだったか、おまえこそ何食べたらそうなるんだ?ガタイ良すぎるだろ」

「なんでも良く食べ良く寝て良く鍛錬する!これに尽きるな!!」

「逆にオチャコはあんだけ食っててどこに消えてんだ?」

「……女性にそういうこと訊くものじゃないですよ」

「わぁ流石コタロウくん、誰かと違って紳士やわ〜」

「……スンマセンした」

 

 わいわいと盛り上がりながら歩く一行、続く騎士竜たちも一部を除いてはご機嫌である。

 一部を除いて……ヒューマン組にも当てはまる言葉であるのは、言うまでもあるまい。

 

「……けっ」

 

 先頭をずかずか歩きつつ、吐き捨てるカツキ。もとより四六時中不機嫌のような少年だが、とりわけ露骨な態度である。果たしてこれが上向くことがあるのかと、ショートとの雑談を楽しみながらも内心では皆、不安と戦っているような状況だった。

 そしてショート殿下、良くも悪くもそういった空気を読まない少年だった。

 

「なぁ、カツキ」

「!!」

 

 よりによって今話しかけるか!?皆の間に戦慄が走る。

 幸か不幸か、カツキはその呼びかけを黙殺した。しかしショートはあきらめない。

 

「カツキ」

「………」

「おいカツキって。……ひょっとして、大声出しすぎて耳イッちまってるのか?」

「ちょっ」

 

 いっそ称賛したくなるほどの挑発である。問題はショートの表情が、心底気遣わしげなものだということだ。

 

「アア゛ァ……!?」

 

 そしてカツキは煽りに弱い。不機嫌なんてモノではない、案の定般若の顔で振り返ったのだけれど、次の瞬間それどころではなくなった。

 

「──ッ!?」

 

 いきなり足下数センチが音をたてて爆ぜたかと思うと、大量の水が噴き出してきたのだ。いや……直接飛沫を浴びずとも感じるこの熱は。

 

「……だから言おうとしたのに。この辺りは間欠泉がそこらにあって危ねえ、って」

「〜〜ッ、こんなモン大したことねえわ!」

「間欠泉を舐めたら駄目だぞ。まともに浴びたら消えねえ痕になる、俺の顔みたいに」

「……んん?」

 

「ちょっと待って。つまりその火傷って……間欠泉(これ)にやられたの?」

「ああ。コタロウ、言ってなかったのか?」

「別に……言う機会もなかったですし」

 

 そう──ショートとの直談判の際、コタロウは思い切って火傷痕について訊いていたのだ。ただ彼も口数が多いほうではないので、自分から積極的に広めることはしなかった。

 

「50歳くらいのときだったか。この辺で遊んでいるとき、うっかり」

「う、うっかり……」

「そうだったのかぁ……てっきりなんか重い事情があるもんだと」

 

 "火の部族"だったという父親がかかわっているのでは──そこまでは口には出さないが、そんなふうに思っていたエイジロウである。やはり憶測であれこれ考えるモノではない。

 

「まあ、そういうわけだ。おまえ、ただでさえ裸同然の格好なんだから、気をつけろ」

「ア゛ァ!?人を露出狂みてぇに言いやがって……!」

 

 ギリギリと歯を食いしばったカツキは、一転不信にあふれた目でショートを睨みつけた。

 

「てめェ……ボケボケしてりゃ馴染めると思ったら、大間違いだからな」

「……どういう意味だ?」

「信用ならねーって言ってんだよ。他人サマを蛮族呼ばわりするようなスカした王子サマが、キャラ変にも程があらぁ」

「………」

 

 ショートの表情が曇る。初対面の彼と今の彼の振る舞いは、大きく異なる──それは事実である。

 しかしどちらが実際の性格なのかと言えば、間違いなく今だろう。太古の忌まわしき呪縛から解き放たれ、星を守る同志としてショートはリュウソウジャーを受け入れたのだ。そしてそれを、存外他人の機微に敏いカツキが理解していないはずがない。

 

 つまりカツキは、わかっていて意地悪を言っている──そう判断したイズク以下仲間たちは彼を咎めようとしたのだが、

 

「貴様、先ほどから黙って聞いていれば!ショートのことなど何も知らないくせに、中傷をするな!!」

 

 先に激したのはほかでもない、モサレックスだった。その紅い瞳が鋭くカツキを睨むが、負けじとカツキの赤目も睨み返した。

 

「陸のリュウソウ族……他の者たちはともかく、貴様は正しく蛮族のようだな!!」

「ア゛ァ!?」

 

 争いはこれにとどまらなかった。モサレックスがショートを援護するなら自分もとばかりに、オレンジ色の巨体がカツキの隣に並んだのである。

 

「黙れ元兄弟!汝に問う、貴様こそこの小僧の何を知っているというのだ!?」

「このような罵詈雑言しか吐けぬ者のことなど、知りたくもないわ!!」

「なんだと!!」

「やるか!!」

 

 衝突するモサレックスとディメボルケーノ……物理的に。お互いキロトンを超える巨体の持ち主である、ぶつかるたびに地面が大きく揺れ、せいぜい7、80キロしかない少年たちはひたすら翻弄される羽目になった。

 

「ちょっ……もおぉぉぉ!!」

「こんな出発早々争うのはやめよう!!本当に!!」

「オエッ……酔う……」

「だいさんじ、ティラアァ〜!!」

 

 そんなさなかでも、カツキとショートも揺れながら睨みあっている。リュウソウ族同士でも衝突が起こるとなれば、いよいよ収拾がつかない──!

 

 

「──いい加減に……しろおぉぉッッッ!!!」

 

 やや甲高い少年の怒声が響き渡ったのは、そんな折だった。

 

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