【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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17.賢者vs猛者 3/3

 平穏そのものだった夜の海底が、おどろおどろしい怪物のすみかに成り果てている。

 

「うあ、ああ……ッ」

「ぐうぅ──!」

 

「──皆……!?」

 

 野営地に戻ってきたふたりは、絶句した。大量の触手によって、エイジロウたちが絡め取られている。チーサソウルで小型化していることが災いして、騎士竜たちも同様の状態に陥っていた。

 そしてその触手たちの根元に、あまりに悍ましい魚人の姿があった。魚というのも形状から推測できるという程度の話で、具体的な種に比定できるわけでもない。

 

「ッ、おい!何があった!?」

「ぅ……かっ、ちゃ……。わから、ない……寝てたら、突然……!」

 

 不意打ちを受けたということか。実際モサレックスも、ぎりぎりまでその気配に気がつかなかったのだ。

 

「マド、ニ……マドニ……」

 

 意味のわからない言葉を呪文のようにつぶやきながら、マイナソーは皆を締めつけている。──その個体名を"ダゴンマイナソー"と言うのだが、カツキたちは当然そんなことは知らない。

 

「チッ……おい、半分野郎。マイナソーを先にブッ殺したほうの勝ちだ」

「これが第三試合ってことか?」

「クソデク風に言うならな」

 

 「わかった」と頷くショート。対決姿勢とは裏腹に──彼らは同時に、リュウソウルを構えた。

 

「「リュウソウチェンジ!!」」

『ケ・ボーン!!』

 

『ワッセイ!ワッセイ!そう!そう!そう!』『ドンガラハッハ!ノッサモッサ!』

 

『ワッセイ!ワッセイ!それそれそれそれ!!』『エッサホイサ!モッサッサッサ!!』

 

 ふたつの起動音声がかしましく重なり合い、黒と金のちいさな騎士たちが輪になって踊り狂う。

 そして、

 

『リュウ SO COOL!!』

 

 ふたりは一瞬にして、リュウソウメイルの装着を完了した。

 

「──いくぞおらァ!!」

 

 先手必勝とばかりに、カツキ──リュウソウブラックが走り出す。ツヨソウルで竜装し、ダゴンマイナソーとの距離を詰めていく。

 無論マイナソーも、ただ黙って見ているわけはない。残る触手をこれでもかとばかりに差し向けてくる。

 

「どんだけウネっとんだ、クソが!!」

 

 独特のワードセンスで吐き捨てつつ、触手を切り裂く。しかし本体は遠い。ブットバソウルなら、もっと強引に迫れるのだが。

 それでも地道に斬りつけていたらば、マイナソーはより卑劣な手段に出た。ブラックの面前に、よりによってイズクを突きつけたのだ。

 

「ッ、デク……!」

 

 これには流石のカツキも躊躇わざるをえなかった。そしてその隙に、背後から触手が迫る──!

 

 刹那、激しい破裂音が響き渡った。

 

「!」

「背後に気をつけろ、カツキ」

 

 振り向けば、冷静な声音で告げるゴールドがモサチェンジャーを構えていた。その勢いに乗じ、彼は正確無比な射撃で触手を撃ち貫いていく。

 

「チッ、そりゃあ裏切るヤツの台詞だクソが!!」

「そうか、悪ィ」脊髄反射のような謝罪をしつつ、「俺が援護する。構わず、本体に突っ込め」

「!、てめェ……」

 

「"倒したほうが勝ち"だろ?」──そう言って不敵に笑う栄光の騎士の姿に、カツキは腹の中がぐわっと熱くなるような錯覚を覚えた。それは常日頃渦巻く憤懣とは似て非なる感情だったけれど、ここは戦場だ。そのことに思いを致している暇はない。

 

「──なら、そのまま倒したらぁ!!」

 

 己を奮いたたせ、ブラックは再び前進を開始した。そのたび迫るダゴンマイナソーの触手は有言実行、ゴールドの射撃が防いでくれている。彼がたしかな実力の持ち主であることは、カツキも認めるところだった。

 と、触手が届かないことに焦ってか、マイナソーは再び卑劣な人質戦法をとってきた。今度はとりわけ念入りに拘束されたエイジロウが、目の前に突き出される。

 

「ッ、俺に構うな……!やれ、カツ「うぉらぁぁぁッッ!!」……えっ」

 

 確かに彼は構わなかった。それこそエイジロウを一刀両断にするつもりなのではないかという勢いで、刃を振り下ろす。同じく囚われた仲間たちも、まさかと思うような光景。

 

「ふッ!」

 

 しかしそこにゴールドの支援があるとなれば、話は変わってくる。彼はすかさず触手を撃ち抜き、エイジロウを拘束から解放したのだ。

 

「うお──ぐほッ!?」

「邪魔だクソ髪!!」

 

 地に伏せたエイジロウを容赦なく踏みつけ、跳躍するブラック。「あんまりだぜ……」とさめざめ泣くエイジロウは、今後暫く同情を集めることになる。

 

「死ねェ、キモ魚野郎!!」

「……!」

 

 リュウソウケンの柄に手をかけ、

 

『それ!それ!それ!それ!──その調子ィ!!』

 

「マイティ、ディーノスラァァッシュ!!」

 

 刃に込めたエネルギーを、薙ぐようにして飛ばす。

 

「マ、マドニィィッ!!?」

 

 直撃をとった。その衝撃で触手群から力が抜け、皆がばらばらと解き放たれていく。皆、程度の差はあれきつく締めつけられていたので、すぐに起き上がることはできなかったが。

 しかし──ダゴンマイナソーに致命傷を与えるには、至っていない。

 

「チッ……死ねっつったら死んどけや、クソが」

「──カツキ!」

 

 ゴールドが背後から駆け寄ってくる。その間の悪さ、カツキは余計に苛立ちを覚えた。どうせなら、これを好機と捉えて迅速にマイナソーにとどめを刺せば良いものを。

 

「あいつ、見かけより硬ぇ。もっと強い力……ディメボルケーノのソウルを使うんだ」

「あ゛?……アホか、海ン中じゃ火は弱まンだよ」

 

 だから今もブットバソウルを封印しているし、宮殿ではあのクレオン相手に苦戦を強いられたというのに。

 

「俺の雷の力と合わせれば、本来の……いや、それ以上の威力を出せる。前にモサレックスが教えてくれたんだ」

「!」

 

 モサレックスが。きっとかつての戦いで、ディメボルケーノとともに実践したことがあるのだろうとショートは考えていた。ならば、自分たちも。

 

 考え込む様子を見せるブラックに対し、傍らからまさしくそのメラメラソウルが投げ渡された。

 

「使え、カツキ……!」

「!、クソ髪……」

「おめェらの連携プレー、見せてくれよ!」

 

 "連携プレー"──その言葉に、意外にもさほどの反感は抱かなかった。カツキにとってショートは、業腹であると同時に、対抗意識をもつくらいには高い実力の持ち主と認めた存在でもあるのだ。

 

「ならそのまま這って見てろや。──メラメラソウル!!」

 

 燃える焔のリュウソウルが、初めてブラックの剣に迎え入れられる。

 そして、

 

『強!』

 

 一回、

 

『リュウ!』

 

 二回、

 

『ソウ!』

 

 三回、

 

『そう!』

 

 四回。

 

『──この感じィ!!』

 

 

『メラメラソウル!メラメラァァ!!』

 

 ブラックの胴体を覆うように、焔が巻き起こり……それがそのまま、燃えるオレンジの鎧へと変わる。

 

 さらに、栄光の騎士も。

 

『──強・竜・装!!』

 

 黄金の鎧を纏うと同時に、合身銃剣モサブレイカーを構える。

 

「は──行くぞオラァ!!」

 

 再び駆け出すブラック。その背にゴールドが──銃口を向ける。

 

「──ファイナル、サンダーショット……!」

 

 放たれる電光弾。先ほどの「背後に気をつけろ」という言葉と相まって、本格的な裏切りにも思える行動だが、当然そうではない。

 すわ背中に着弾かという瞬間、振り向いたブラックが刃でもって弾丸を受け止めたのだ。

 

 それは弾かれることも対象を弾き飛ばすこともなく、リュウソウケンそのものに吸収されていく。バチバチと火花が散り……刹那、驚くべきことが起こった。

 

 刀身が光をまとって赤熱し、周囲の水分を蒸発させはじめたのだ。水剋火の原理にさえ打ち勝つほどのエネルギー。

 

「マド、ニィ……!」

 

 業を煮やしたダゴンマイナソーが残る触手を差し向けてくるが、もはや趨勢は決している。光り輝くリュウソウケンは一閃とともにそれらを切り裂き、焼き尽くす。──残るは、本体のみ。

 

「──インディグナントォ、ディーノスラァァァッシュ!!!」

 

 光輝を纏いし焦熱の刃が、深淵の眷属に振り下ろされた。

 

「!!!!!!!」

 

 断末魔の悲鳴とともに、ダゴンマイナソーが真っ二つに切り裂かれる。マイナソーは所詮エネルギーの集合体なので、生物に見えても内臓などが飛び散ることもない。ただ爆発を起こし、跡形もなく消滅するだけだ。

 

「やったな、カツキ」

 

 寄ってきたゴールド──ショートが、事も無げな口調で喜びを表す。毒気を抜かれるとはまさにこのことか。

 しかし次の発言は、聞き捨てならないもので。

 

「でも……これで第三試合は、俺の敗けか。あまり無茶な命令はしないでもらえると助かる」

「ハァ!?」

 

 何を言っとるんだコイツはと思ったが、確かに直接とどめを刺したのはカツキに違いなかった。

 

「……完膚なきまでに叩きのめすっつったろうが。てめェに力借りてマイナソーブッ殺したとこで、勝ちとは言えねえんだよ」

「……つまり、引き分けっつーことか?」

「もうそれで良いわ」

 

 「そうか」とつぶやくショートは、鉄兜の下で笑っているようだった。ほんとうに、掴みどころのない男だ──

 

「……ぁ、いあ……くとぅるふ……ふたぐん……」

「!」

 

 不気味な声が地の底から響き出したのは、その直後だった。

 身構えたのもつかの間、黒い霧を噴出しながら蛸に似た巨大な怪物が姿を現す。ダゴンマイナソーに輪をかけて悍ましい、見ているだけで心を犯されるような姿かたちをしていた。

 

「もう一匹いたのか……!?」

「チッ、子分やられて、親玉が出てきたっつーわけかよ」

 

──クトゥルフマイナソー。確かにダゴンマイナソーを支配する存在であった。そして"子"を害するほどの獲物を感知して、闇の中より姿を現したのである。

 

「いあ……いあ……」

 

 やはり意味不明な鳴き声を発しながら迫るマイナソー。身構えたふたりだったが、そのとき背後から『ケ・ボーン!!』と声が響いた。

 

「選手交代だ。カツキ、ショート!」

「俺たちも使命を果たさなければ!」

 

 騎士竜たちも既に意気軒昂である。巨大な敵を相手にしては、彼らの存在抜きでは戦えない。

 

 

「──竜装合体!!」

 

 四人と四匹がひとつとなり、キシリュウオータイガランスが誕生する。彼()はそのスピードでもってクトゥルフマイナソーの背後に回り込み、斬撃を繰り出した。

 

「よし!この調子で……」

 

 相手は反応も、動きも鈍い。キシリュウオータイガランスのスピードでもって切り刻んでいけば、勝利はそう遠くない。

 しかしこの深淵の魔物に対して、それは甘い考えと言わざるをえなかった。

 

「ふんぐるい むぐるうなふ」

 

 不気味な声が響いたかと思うと、マイナソーの身体からまたあの黒い霧が発生した。それはあっという間にキシリュウオーを包み込んでしまう。

 

「なんだ……?」

「目くらましか、こんなもの──!」

 

 目くらましなどではなかった。

 

「ティラ、アァァ……!?」

「!、どうしたティラミーゴ!?」

 

 ティラミーゴだけではない。霧に直接触れた騎士竜たちは皆、一様に異常をきたしはじめたのだ。当然キシリュウオーは動けず、その場に膝を屈することとなった。

 

「うがふなぐる ふたぐん」

 

 巨人をその場に虜にして、クトゥルフマイナソーはゆっくりと触手を伸ばしはじめた。ダゴンマイナソーと同じ行為。しかし、

 

「あれに取り込まれたら、戻ってこれねえ……そんな感じがする」

「チッ、だったらやるこたぁひとつだろ」

 

 もとより傍観者でいるのは性に合わない。──それは、"彼ら"も同じだった。

 

「──ショートォ!!」

「!」

 

 来た!振り向いたふたりは、しかし驚愕を覚えさせられた。

 泳ぎくるモサレックスの隣に、駆けるディメボルケーノの姿があったのだ。

 

「おまえたちの協力する姿を見て、目が覚めた……!」

「我らは過去の怨讐を乗り越えなければならなかった……。──もう一度、()()と力を合わせて戦う!!」

「モサレックス……!」

「ディメ公……」

 

「「──我ら、心をひとつに!!」」

 

 刹那、さらに驚くべきことが起きた。モサレックスとディメボルケーノ、双方の身体がばらばらに分離したかと思うと、一ヶ所に寄り集まったのだ。そこに従者たるアンモナックルズも駆けつけ、ひとつとなる。──心だけでなく、身体も。

 

「これは……!」

「「騎士竜、スピノサンダーだ!!」」

 

 陸海の結合の象徴。合身騎士竜スピノサンダーは、果敢にも黒い霧の中に突き進んでいく。

 

「こんな闇……!」

「我らの力で、振り払ってくれる!」

 

 言うが早いか、スピノサンダーはモサレックスそのままの頭部から雷を放った。それは放出と同時に激しい閃光をばら撒き、闇を呑み込んでいく。──霧が、晴れていく。

 

「いあ いあ……!」

「「貴様もこの雷を受けてみよ!!」」

 

 今度は露になったクトゥルフマイナソーに対して、放つ。スパークする電撃はその高温でもって、海中にもかかわらず発火を促す。触手が燃え上がり、マイナソーは悲鳴じみた声をあげた。

 

「キシリュウオー、動けるか!?」

「ッ、」

 

 闇に蝕まれていたキシリュウオーが、ぎこちなくも立ち上がる。スピノサンダーの光が、それを消し去ってくれた以上は。

 

「僕らだって、負けてられない……!」

「ああ……!いくぜ!!」

 

 ナイトランスを振り上げ、キシリュウオータイガランスは跳び上がった。

 

「「「「タイガーソニック、ランサー!!!」」」」

 

 その鋒がクトゥルフマイナソーに突き立てられ──戦いは、終わった。無論、リュウソウジャーの勝利という形で。

 

 

 *

 

 

 

「では兄弟……改めて、よろしく頼む!」

「こちらこそ、兄弟。──では出発するぞ!!」

 

 泳ぎだすモサレックス。その背にはエイジロウたちリュウソウ族の面々、そしてディメボルケーノ以下ミニ騎士竜の姿がある。──二匹の和解により、当初の予定通りモサレックスに乗って移動することになったのだ。

 

「はぁ〜……いっときどうなるかと思ったけど、無事仲直りできてよかったねぇ」

「うむ、仲良きことは美しきかな!」

「……あの人たちもですか?」

 

 コタロウが指差した先では、

 

「おらデクゥ、とっとと次の対決考えろや。ン?」

「そうだぞイズク。このままじゃ俺たち、収まんねえ」

 

 カツキとショートが、イズクを左右から挟み込むようにしてねちっこく絡んでいた。当然イズクは困り顔である。

 

「ちょっ……なんだよきみたち、十分仲良くなってるじゃないかぁ!」

「なっとらんわ、アホか」

「イズク、頼む。早く」

「もおぉ!」

 

「へへ……また賑やかになりそうだな!」

 

 これからの前途を思って、エイジロウは笑みを浮かべるのだった。

 

 

「たいへんティラ!カツキにほっとかれて、ミルニードルがすねてるティラ〜!!」

「えぇっ?」

「ハァ!?」

 

 早速暗雲が立ち込めているのは……まあ、ご愛嬌である。

 

 

 つづく

 

 




「温泉!」
「この地を、私色に染め上げてやるでショータァイム!」
「姉さんを、救けて……!!」

次回「秘湯の死闘」

「僕たちの騎士道……見せてやるッ!!」


今日の敵‹ヴィラン›

ダゴンマイナソー

分類/アクアン属ダゴン
身長/205cm
体重/147kg
経験値/293
シークレット/深淵の魔物"ダゴン"に似たマイナソー。深海の暗闇にひそみ、近づいてきた獲物を捉えて引きずり込むと言われている。
実は後述のクトゥルフマイナソーの眷属にすぎない。

クトゥルフマイナソー

分類/アクアン属クトゥルフ

身長/46.8m
体重/732t
経験値/853
シークレット/深淵の魔物"クトゥルフ"に似たマイナソー。眷属であるダゴンマイナソーと同様、触手で獲物を絡め取る。またその身から放出される漆黒の霧に取り込まれた者は、心身に異常をきたしてしまうぞ!

ひと言メモbyクレオン:海底に体液をばら撒きまくったら生まれたヤツら……なんだけど、ガチレウスには制御できなくて放置されてたっぽい!実際けっこーヤベェヤツらなんだけどやられちゃったね!残念!!


クトゥルフネタはもっとガチな敵に使いたかったんですが、海系のマイナソーはここしかないと思って出しました。しょっぱい扱いですみません……(作者より)
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