【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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蛙吹家CV案(コンセプト:アオちゃん恐縮!大先輩来たる)

サミダレ:渡辺久美子(ケロロ・七宝など)
サツキ:小桜エツ子(タママ・ジバニャンなど)
ベル:渡辺久美子(サミダレと二役・あたしんちのお母さんっぽい感じで)
ガンマ:青空球児(ゲロゲーロ)

サミダレくんは大本眞基子さんも良いかなと思いましたが、やはりカエル繋がりで
でも大本さんのクールな少年ボイスも捨てがたいのでこちらはコタロウくんのCVということにします



18.秘湯の死闘 2/3

 サミダレ少年の一家が営む宿は"かえらずの沼"という名前らしい。響きだけ聞くとなんだか縁起が悪い感じもするが、宿泊したお客様が温泉を気に入るあまり帰らなくなってしまう──というコンセプトなんだとか。実際イズクがかなり気に入っている様子で、なおかつカツキがそれを否定しないというのはエイジロウたちにとって相当の価値になる。

 

 しかしその愉しみを共有できるかどうかは、これからの戦いにかかっている。犠牲を出さずにワイズルーたちを倒す、最低でも少年の姉から生まれたというマイナソーは。

 

「──敷地をドルン兵が巡回してる。ワイズルーのやつ、本格的にここを拠点にするつもりかも」

 

 外から様子をうかがうイズクが、そんな推察を洩らす。実際建物には、ドルイドンの紋章をあしらった旗が掲げられていた。侵略するだけして人間を苦しめるばかりの連中だが、いちおう領土意識というものはある。それはワイズルーとて例外ではないらしい。

 

「強行突破は不可能ではないだろうが、最悪人質をとられることも考えられるな」

「っつっても、潜入は難しいんじゃねえか。俺たちは目立ちすぎる」

 

 いちばん目立つ頭髪の持ち主が言う。それは置いておくにしても、皆でぞろぞろと忍び込んで、というのは確かに現実的ではない。

 

「かっちゃん。陽動、やってくれる?」

「ア゛?陽動ォ?」

 

 片眉を吊り上げるカツキだったが、それは拒絶ではなかった。

 

「連中まとめて、ブッ殺しゃ良いんだろ」

「あはは……そうだね」

「──なら俺も残ろう!この通り身体が大きいからな、隠密には向かない」

 

 自ら申し出るテンヤ。──彼とカツキのふたりで猪のごとく突っ込み、派手に戦って敵の目を引きつける。その隙に残りの面子が裏口から侵入し、サミダレの家族を救出するという作戦だ。

 そしてそのサミダレは、「僕も行きます」と主張した。

 

「宿の中のこと、わかってる人間がいたほうがいいでしょう」

「……わかった。でも、僕らの傍から離れないで」

「ケロ、もちろんです」

 

 

──こうしてコタロウと騎士竜たちを残し、リュウソウジャーは二手に分かれた。エイジロウたちが裏へ回っていくのを見届けて、カツキが立ち上がる。

 

「足引っ張んなよ、クソメガネ」

「言うと思った。任せてくれ、きみの背中はきっちりカバーしてみせる!」

 

 カバーしてもらう必要など感じていなかったが、カツキのほうももう彼の性格には慣れたものだった。敵は多数、こちらの目的は陽動だから、あっと驚くような戦術が立てられるわけでもない。どうせなら一応周囲に気を配りつつ、楽しく戦うのが正解ではないか?

 

「だったらせいぜいついてこいや、──ブットバソウルッ!!」

 

 BOOOOM!!と文字通りの爆音を響かせ、カツキは敵の面前に飛び出していった。

 

 

「──カクレソウル!」

『カクレソウル!ドロンッ!!』

 

 ダイノ古代遺跡群で入手した新たなリュウソウルのひとつ、カクレソウルをイズクが使用する。それによって彼自身、そして周囲に集った面々の姿が風景に完全に溶け込み、不可視となった。

 

「ケロ……完全に消えちゃった」

 

 リュウソウルの強力な効果に、サミダレはただただ呆気にとられているようだった。実際、魔導士の中にはこういった魔法を使うものもいるが、それを傍目には玩具にしか見えないような小道具で簡単に再現しているのだ。

 

「これで視覚から見つかる心配はない。ただ足音や触れた感触は誤魔化せないから、気をつけて」

「おう!」

「おっけ!」

「あと……この通り、僕ら同士でも姿が見えない。基本的にサミダレくんの指定したルートで進む、そこから外れる場合は合図してね」

 

 てきぱきと指示を行き渡らせると、イズクはサミダレ少年の──透明になった──手を握った。

 

「サミダレくんは手、放さないようにね」

「ケロ……わかりました」

 

 どことなく斜に構えたような容貌に反して、サミダレ少年はとても素直で聡明な子だとイズクは知っていた。そしてとても家族想いであるとも。

 

「──行こう!」

 

 表から爆発音が響いたのを合図に、彼らは裏口から侵入を果たした。

 

 

 *

 

 

 

「ハァ〜……良いお湯だあ、傷に沁みる……」

 

 その頃のワイズルーはといえば、呑気にひとり温泉に浸かっていた。

 

 突然だが、湯治という言葉がある。湧き出す温泉にはふつうの水とは異なる豊富な成分が内包されていて、それが傷や病気によく効くと言われている。

 実のところリュウソウレッドにやられた傷が未だ癒えていないワイズルーは、その効能に目をつけたのだ。

 

「世界初、温泉を愉しむドルイドン……んふふ、エクセレント」

「──ワイズルーさまあ!!」

 

 穏やかな(?)ひとときに水を差す大声と、どたどたという足音。正直気分を損ねたワイズルーだったが、緊急事態だろうと当たりをつけて鷹揚に振り返った。

 

「ン〜、どうしたんだいクレオン?」

 

 緑のキノコ男、クレオンがちょうど浴場内に飛び込んでくる──と思ったら、ややぬめった床に足をとられて盛大にすっ転んでしまった。

 

「痛でッ!?……た、大変ですッ!!」

「見ればわかる!」

「じゃなくて!リュウソウジャーのヤツらが、表で暴れてまっす!!」

「!」

 

 一瞬驚きを露にしたワイズルーは、次いで「Oh…」と肩をすくめた。この温泉は知る人ぞ知る秘湯であり、沼地の奥深くという立地ゆえ人間もドルイドンもめったに訪れない。そのため今まで脅威に晒されずに済んでいたというのもあるが。

 いずれにせよ、遅れて上陸したリュウソウジャーが気づくことはないと思っていたのだ。逃げ出した子供から聞いたのだろうが、運が良いことだ。こういう番狂わせがあるから、戦争というのは面白い。

 

「どうします、人質とって叩き潰しますか?」

「表にいるのは、何人だい?」

「へっ?確か、リュウソウブルーとブラックのふたり……あっ」

 

 クレオンもようやく察しがついたようだった。

 

「残りの坊やたちはそのスキに乗じてこの中に侵入しているだろう、今さら動いてもtoo late!」

「そ、そっか……サーセン」

 

 肩を落とすクレオンだったが、

 

「問題ナッシング!むしろここにいる()()()を餌に、誘き寄せてやるの☆DA!」

「!、ラジャー!!」

 

 生き生きと敬礼して、今度は転ばないよう気をつけながら走り去っていく。なかなか可愛くなったものだとワイズルーは思った。ガチレウスに苛められたのが、よほど堪えたのだろう。まあ、どうでも良いことだ。

 

「眠り姫から抜け出た悪霊が、キミたちを待っているよ……リュウソウジャー」

 

 濁った水中にひそむ肉の塊を感じながら、ワイズルーは嗤った。

 

 

 *

 

 

 

 サミダレの家族四人中三人は今、厨房に集められていた。集められたうえで、ワイズルーのために作業をさせられていたというほうが正しいか。

 

「………」

 

 暗い顔で材料の皮剥きをしているのは、サミダレの父にあたるガンマ。名前の通り、ガマガエルに似たふっくらとした容姿だが、今は殴られたのだろう青痣が痛々しい。この宿の主人でもあった。そしてその横で、彼の妻であるベルが盛りつけを行っている。

 

「サツキ、これをあっちに運んでちょうだい」

「う、うん」

 

 そして末の娘である少女、サツキ。兄と比べて半分ほどの背丈しかないが、一応もののわかる年齢には達している。無作法にも厨房に入り込んでいるドルン兵たちが、嗜虐心を剥き出しにして自分たちを監視している──その事実に、恐怖と緊張を感じるくらいには。

 

 

「……みんな、」

 

 その様子を透明になった身体で覗き見やりつつ、サミダレ少年は唇を噛んだ。皆が逃してくれたおかげで、こうして救けに来ることができている。しかしそのために、監視はよりきつくなっているのだろう。父が傷をつくっているのを見ると、忸怩たる思いに駆られる。

 

「ドルン兵が三、いや、四体か……」

「私たちといっしょの数やね。それなら、一気に──」

「!、待って。死角にひそんでるのがいるかもしれない、もしかしたらマイナソーも」

 

 イズクは流石に冷静だった。これ以上誰にも手出しさせることなく、迅速に救出しなければならない。迅速と拙速は似て非なるものだ。

 なるほどなとショートは感心していたのだが、それもサツキが転んで熱湯をドルン兵の足元にぶちまけるまでだった。

 

「ドルッ!?──ドルゥゥッ!!」

 

 人間より余程皮膚の厚いドルン兵にとって調理用に熱した湯くらいわけもないのだが、それでも侮辱されたととったらしい。年端もいかない少女の胸ぐらを掴み、吊り上げてしまう。

 

「ゲコッ!?や、やめてくれ!!」

 

 慌ててガンマが縋りつくが、突き飛ばされてしまう。彼とサツキ、そしておろおろしているベルにまで、ドルン兵の魔槍は突きつけられた。

 

「ッ、あいつら──!」

 

 なんて非道なことを。エイジロウが怒りを燃え立たせたときにはもう、つい今しがた「待って」と指示していた少年が飛び出していた。

 

「この野郎ッ!!」

 

 童顔を最も際立たせる大きな瞳が、憤怒に染まっている。それを認めたドルン兵は次の瞬間、一刀両断に斬り伏せられていた。

 

「ッ、相変わらず漢らしいぜイズク!!」

 

 こういうところは誰かにそっくりなのだと思いつつ、エイジロウたちも突撃した。剣を叩きつけ、斬り伏せる。唯一ショートは、後方からの銃撃で金星を挙げていた。

 

「他に敵は……いねえみたいだな」

「皆さん、大丈夫ですか!?」

 

 訊くイズクの顔は、主人たちも記憶していたらしい。「あなたは、」と声があがる。

 

「──父さん、母さん、サツキ!」

 

 我慢ならなくなったサミダレが飛び込んできて、父にぎゅうぎゅうとしがみついた。

 

「サミダレ!ゲコ……無事で良かった!」

「ケロ……イズクさんたちが救けてくれたんだ」

「!、そうでしたか……ありがとうございます、本当に」

 

 心から謝意を述べるガンマたちに対し、イズクは柔和な笑みを浮かべて応じた。

 

「当然のことをしただけです。それより、ツユちゃんは?」

「ゲコ……ツユは魂を抜かれたようになって、怪物に連れていかれました。たぶん、大浴場のほうです」

「……わかりました。ツユちゃんのことも、僕らが。皆さんは逃げてください、サミダレくんも」

「ケロ、でも──」

「大丈夫だよ。かっちゃんたちが暴れてるおかげで敵はほとんど外に出てるし、大浴場なら道はわかるから」

 

 そう言って、イズクはサミダレの頭を撫でた。その姿を見て、先ほどのある種狂暴ともいえる義憤の嵐は見間違いだったのだろうかとすらショートは思った。リュウソウジャーの中ではいちばん小柄な少年だが、誰より測り難いものを感じる。

 

「エイジロウくん、万が一があるといけないから、サミダレくんたちの護衛についてくれる?」

「おう。ワイズルーブチのめせねえのは残念だけど、まかせとけ!」

「ありがとう。オチャコさん、ショートくん、僕らは大浴場へ。きっとそこにマイナソーもいる」

「うん!」

「わかった」

 

 エイジロウとサミダレたちをその場に残し、三人は再び走り出した。今度は見つかってもかまわないので、カクレソウルは使わない。ただ、先ほど言葉にした通り、ドルン兵たちの姿はもう見当たらなかった。

 先行するイズク。その背中を見ながら、

 

「なぁ、」

「!」

 

 突然ショートに話しかけられて、オチャコはびっくりした。彼は割と自然体というか、こういうときでも落ち着いた表情を浮かべている。海の王国を守っていた期間はオチャコたちが旅に出てからの期間より長いし、ほとんど独りで戦っていたのだから、もう場慣れしているのかもと思った。

 

「あいつ、いつもああなのか」

「……デクくん?」

「ああ。この前のときもそうだけど、柔けぇのに芯は硬ぇっつーか……なんか、難しいな」

 

 確かに、振れ幅の大きい少年ではある。カツキもそれは一緒なのだが、彼のように気難しいわけではなくて、困っている人、苦しめられている人をなんとしてでも救けなければという意志の強さというのだろうか。オチャコだって、まだそう付き合いが長いわけではないのだ。

 だから、言えることはひとつだけ。

 

「でも……イヤな感じ、ちゃうでしょ?」

「!、……ああ。そうだな」

 

 そう応えて、ショートは微笑んだ。──やはり、顔が良い。異性としてどきりとするものは感じるが、イズクが"ツユちゃん"と呼んでいたときほど強い感情ではなかった。

 

(私、どうしたんだろ……)

 

 150年余り生きてきて初めて味わう不思議な感覚に、オチャコの心は確かにかき乱されていた。

 

 

 大浴場は男湯と女湯に分かれていた。キケソウルで敵の気配を感じ取り、前者に忍び込む。女性のオチャコも一緒だが、非常事態なので遠慮はしなかった。

 

「♪〜」

 

 小さな脱衣場に入ると、通常の聴覚でも呑気な鼻歌が聴こえてくる。それが誰の声かは、既に考えるまでもなくて。

 

「──チェンジだ」

 

 言われるまでもなかった。

 

「「「リュウソウチェンジ!!」」」

『ケ・ボーン!!』

 

『ワッセイ!ワッセイ!そう!そう!そう!』『ドンガラハッハ!ノッサモッサ!』

 

『ワッセイ!ワッセイ!それそれそれそれ!!』『エッサホイサ!モッサッサッサ!!』

 

 重なりあう音楽。踊る騎士たち。

 そして、

 

『リュウ SO COOL!!』

 

 三人の身体が、リュウソウメイルに覆われた。

 

「行こう!正義に仕える──」

「──三本の!!」

 

 口上を叫びながら、浴場に突入する──

 

「ツルぅ──ッ!?」

 

 ツルッ──そう、三人はぬめった床に足をとられ、雪崩を打つように転けてしまった。

 

「痛だあッ!?」

「ッ、なんなんコレ!?」

「……尻打った」

 

 皆が痛みに顔を──鉄兜に隠れているが──顰めていると、湯けむりの中から気取った笑い声が響いた。

 

「HAHAHAHA、なかなかの道化っぷりだな坊やたち。コメディアンへの転職をオススメしまショータァイム!!」

「ッ、その澄ました声は──!」

 

 ざばあ、と湯が横溢し、声の主が姿を現す。勿体ぶるまでもない、ワイズルーである。

 

「よく来たNA、リュウソウジャー!今ここの床はとってもヌメヌメなので、気をつけるがよろしい!」

「ッ、何してくれてんだ!」イズクが怒鳴る。「滑って頭打ったら大変なんだぞ!だからちゃんと掃除を行き届かせてるのに……!」

「心配ナッシング、今日からここは永遠に貸切だ!!」

 

 そんなこと、許さない。許すわけがない。

 

「この温泉はツユちゃんたちの……そして皆のものだ!絶対に取り戻すッ!!」

 

 ぬるつく床に耐えながら、グリーン、そして続くふたりも立ち上がった。

 

「騎士竜戦隊!」

「「「──リュウソウジャー!!」」」

 

 

「僕たちの騎士道……見せてやるッ!!」

 

 困っている人を救ける──そんな、騎士道を。

 

 

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