「俺が、あのドルイドンと同じ……アンデッドだからだよ」
──それは少なくとも、カツキにとってだけは唐突な告白ではなかった。ハンタの言った通り、察していたからだ。尤もマイナソーの宿主でありながらなんともないという時点で、確信へと変わっていたのだが。
「アンデッドの知識、ひけらかしたのが仇になっちまったか。……まァ、しょうがねーけど」
「……どういうことだよ、ハンタ。おまえがアンデッド……あいつと同じって」
隠しごとについては気づいていても、そこまでは予想だにしていなかったデンキである。目に見えて動揺するのも無理からぬことだった。
そんな相棒を宥めるように、ハンタは続ける。
「もう何千年も前のハナシになるけど……西の大地じゃ、死んだ人間の肉体を腐らせず遺すことができれば、いつか魂が還って復活できるという言い伝えがあった」
その言い伝えに従い、人々は自らの骸を保存するよう試みた。腐敗せぬよう、干からびさせてまで。
「……ンな迷信、」
「そうだな、迷信だ。でも……ンなくだらねえもんから生まれた死体が地殻変動で飛び出してきて、
「それが、おまえか」
「まぁ、そゆこと。いわば俺は、魂が入ってるってだけの……ただの死体ってわけ」
「そん、な……だって、こんな元気に──」
「………」
す、と表情を消したハンタは相棒のもとに歩み寄り──その手を、自らの胸元に当てさせた。
「あ……」
デンキはもう一度、言葉を失った。──鼓動が、ない。
「この通り、生命活動はしてない。だからまぁ、メシもいらねえんだ。食えなくはないけど、消化できないし」
「……そういうこと、だったのか……」
自分の前でほとんど飲食をしなかったのも、過度な接触を嫌ったのも。すべて、自分が魂をとどめただけの肉塊でしかないことを知られないために。
「そ。……ごめんなデンキ、今まで騙してて」
「ッ、」
それ以上ハンタから、伝えるべきことは何もなかった。──それだけなのだ、泣いても笑っても。
「そうかよ。だったらもう、未練はねえな」
言うが早いか──カツキは、リュウソウケンをハンタの喉元に突きつけた。
「!?、何すんだ、カツキ!!」
「──てめェも知ってンだろ、半分野郎。宿主が死ねば、マイナソーは消える」
「だからって──!」
割って入ろうとするショートだったが、意外にもそれを押しとどめたのはテンヤだった。
「テンヤ!?おまえまで……!」
「違う!……カツキくんは以前、コタロウくんにも同じことをしようとした」
「だったら尚更──」
「しかしコタロウくんは生きている!……大丈夫、彼を信じよう」
既にそう言えるだけの間、肩を並べて戦っているのだという自負がテンヤにはあった。テンヤだけではない──入れ替えられてまともに動けない、他の面々も。
「……未練、か」唇をゆがめ、「見ての通り、俺はガキのうちに死んじまったから。無いと言えば嘘になるけど……まァ、今となってはもう十分だとは思ってる」
「………」
「おまえのおかげだ、デンキ。……楽しかったよ、今まで。ありがとな」
「ハンタ……っ!」
静かに目を閉じるハンタ。それを合図と見てとったのか、カツキは勢いよくリュウソウケンを振り上げた──
「………」
薙ぎの威風を頬に感じたハンタだったが──しかし、刃はいっこうに自分の首を穫りにはこない。
恐る恐る目を開けると、そこには相棒であって相棒でない、少年の背中があった。
「ショー……デンキ?」
「……ッ、」
リュウソウケンの刃先が、彼の首もと数センチにまで迫っていた。──庇ったのだ、彼は。ハンタを。
「……ハンタは、誰にも殺らせねえ……!」
「……そいつはもう、死んでんだぞ」
「死んでねえ!!くだらねえハナシして笑いあったり、喧嘩したり……生きてるから、できることじゃねえか!!」
難しいことはわからない。でも生きているから、ハンタと出逢うことができた。それだけは誰にも否定させないという強い意志が、デンキの瞳には宿っていた。
「デンキ……」
「おまえもおまえだよッ、バカヤロー!!」怒号とともに振り向き、「勝手に満足しやがって!!俺はまだ、おまえと一緒に旅してえ……。勝手に終わらせようと、すんじゃねーよ……っ」
黒々とした自分の瞳に対して、灰と紺碧に分かたれたオッドアイのなんと美しいことか。そんなものが涙の膜に揺らめきながら、自分を射抜いている。無論これはショートの肉体だ。ただ、本来の姿かたちである飴色の瞳であったとしても、まったく同じ感想を抱いただろうとハンタは思った。
「けっ、おアツいこって」
吐き捨てるように言い放ちつつ……カツキは、剣を下ろした。
「マイナソーブッ殺しゃ済む話だ。
「カツキおまえ、最初からそのつもりで……」
デンキの心を試したのだ、カツキは。それにしてもやり方が過激すぎると、半ば呆れもしたが。
──と、再び半鐘が鳴り響いた。非常事態を告げるけたたましい音。すなわち、出撃のときだ。
「ッ、もう再来したのか……!」
「チッ……おい鳥、ババア、握り飯!てめェらはここでおとなしくしてろ、良いな!?」
「ピィ、ピイィ!(すまねえ!)」
「ババアて……」
「………(早くなんとかして!!)」
今動けるのはカツキ、テンヤ、ショートとデンキ。──そして、
「俺も行く」
「!」
「曲がりなりにも俺から生まれた化け物だ。落とし前は、自分でつける」
心臓の動いていないハンタにも、滾る心はある。とうに消えているはずだった生命であれ、生きられるものなら生きたい。だがそのことで、他人を傷つけることだけは許せないのだ。──半ばデンキに引きずられる形とはいえ彼が
宿を飛び出し、五人はひた走った。人数だけならショート加入前のリュウソウジャーと同じではある。ただ万全と言えるのは宿主でありながらエネルギーを吸われていないハンタだけで、あとの面々は慣れない身体である。
「──そういや、どうしてハンタはエネルギーをもっていかれねえんだ?同じアンデッドでも、ゾラは吸われ続けてたのに」
「あ、あー……」
ショートの純然たる疑問に対し、ハンタは自嘲ぎみに頭を掻いた。
「最上級のアンデッドは、生きた人間以上の生命エネルギーをもつと言われてる。俺のエネルギーがゼロなら、あいつは無限……ってな感じなんだと思う、多分」
「多分だァ?」
「いや万事知ってるわけじゃないからさ、俺も」
それにドルイドンなどという連中は、自分が本来天寿をまっとうすべきだった数千年前には影も形もなかった。アンデッドといってもハンタは生前至って平凡な少年だったのだから、比較にならない規格外の存在なのだ。
(そんなヤツらと戦ってんだな、こいつら)
とんでもない時代に甦ってしまったと最初は思ったものだが、案外悪くなかったかもしれない──今となっては、そう思えた。
*
「オラオラ、しゃっきり働けマイナソー!!」
「カェ、テェ……!」
クレオンに背中を蹴ら……もとい押され、マミーマイナソーは手当り次第に包帯をばらまいていた。
「ぎゃああぁ!!」
「うわあああ!!?」
「ニャ──ー!!」
包帯に全身を覆い尽くされ、他と魂を入れ替えられる村人たち。人間同士ならまだ良いようで、動物、果ては頭を垂れる稲穂にされてしまう者もいる。
「ニャーーー!!(な、なんで私がネコになってるのぉ!?)」
「………(う、動けない……!救けてくれぇ!!)」
「カエテェ……!」
「おっ、元気出てきたな!その調子その調子ィ!!」
鼓舞するクレオンだったが、彼らのやりたい放題は長くは続かなかった。
「そこまでだッ!!」
「!?」
聞き覚えしかない大地を震わせるような怒声に、クレオンは反射的に肩をびくつかせた。何度「死ねェ!!」と爆破をかまされたかわからないのだ。
ただ駆けつけてきた五人は、マイナソーの親である一名を除いては既に入れ替えられているわけで。
「叡智の騎士!リュウソウブルー……ではなくてブラック!!」
「めんどくせぇから名乗んじゃねえ!!」
「うぇっ!?名乗らせてくれよぉ!!」
気の抜けるような会話。しかもリュウソウジャーでない生身の人間が混ざっていることに、クレオンは拍子抜けした。そういえば、残る三人は戦える状態にないのだ。
「いつものやんないならこっちからいくぜぇ!!マイナソー、ドルン兵、やっちまえぇ!!」
「カェテ……!」
「ドルドルッ!!」
今度は堂々たる侵攻であるためか、ドルン兵を引き連れてきたクレオン。敵の頭数だけは多いことに、カツキは舌打ちした。
「俺の身体で舌打ちはやめてくれ、カツキくん!!」
「るせぇ!!……おい叡智の騎士さんよォ、どうするよこの状況?」
「!」
カツキに献策を乞われた!嬉しくなるテンヤだったが、戦場で頬を緩めているわけにもいかない。コンマ数秒後には、頭脳をフルスロットルで働かせていた。
そして、
「俺ときみはドルン兵の掃討を。マイナソーにはショートくんとデンキくん、ハンタくんの三人であたってもらおう!」
「そーかよ。──ブットバソウルよこせ、ハヤソウルと交換だ」
「うむ!」
肉体と精神、どちらに合わせて戦うべきか──彼らは、後者を選んだ。
「おらァ、いくぜぇ!!」
──BOOOOM!!
爆破とともに彼方まで跳び上がり、降下とともに爆破を浴びせかける。その派手な一撃に、防御などなんの意味もなくドルン兵の一部が吹き飛ばされる。
『ハヤソウル!──ビューーーン!!』
そして爆炎に紛れるようにして、テンヤ……もといブラックは一陣の風になっていた。運良く紅蓮に呑まれず済んだ兵たちに肉薄し、一刀両断、斬り捨てる。そのスピードは、いかにすぐれた動体視力をもっていようとも捉えきれぬものだった。
「ふぅむ……!身体が思ったように動くッ!」
テンヤより細身とはいえ、無駄なくみっちりと筋肉のついたカツキの身体である。瞬発力にも長け、ハヤソウルによるスピードアップにもまったく遅れをとっていない。ブットバソウルという人を選ぶソウルをメインで使っているだけある、やはり彼は才能マンなのだ。
「たりめーだ!!」
反応しつつ、カツキも悪い気分ではなかった。テンヤの身体でも、ブットバソウルを問題なく操ることができている。リュウソウジャーの中でも群を抜いた体格は、見せかけだけではないのだ。性格は合わないが、身体の相性は悪くない──
一方で、デンキたちとマミーマイナソーの戦闘も始まろうとしていた。
「カエテェ!!」
マイナソーが両腕を突き出すと同時に、覆った包帯がひとりでに外れて標的へ襲いかかる。先端が収束してドリルのように鋭く尖っているから、入れ替えではなく明確に攻撃を志向したものだ。直撃すればリュウソウメイルでだって防ぎきれるかわからないし、生身であればひとたまりもない。
にもかかわらず、ハンタは臆することなく前面に出た。
「いちいち、似てんじゃないっての!」
言うが早いか、彼の袖の中から同じく包帯が飛び出した。前進するそれはマイナソーのものに接触すると、意志をもっているかのように絡みついて動きを阻害してしまう。
「カェ、テェ……!」
「……ッ、」
あとは純粋な力比べだ。といっても華奢な──栄養をとっていないのだから無理もないが──ハンタでは、マイナソーの中では腕力のないアンデッド属が相手であろうと拮抗できるわけもない。彼が抑えていられる数秒の間に、文字通りの二の矢を放つつもりだった。
──そして、破裂音が響く。
「……!?」
凄まじい衝撃に、マイナソーは半ば反射的に包帯を引っ込めてしまった。恐る恐る自分の身体を見下ろすと、胸元に小さな穴が開いている。
「……お前らの嫌いな聖水入りの弾丸だ。よく、味わえ」
拳銃を構えたショートが、眉ひとつ動かさずに言い放つ。──刹那、
「グァ、ガ、アァ……!?」
聖水が体内に浸透を開始し、悶え苦しみはじめるマイナソー。既にゾンビマイナソーという前例もあるが、やはり効果は覿面だった。
「………」
あのときとは違い、ハンタは十分な数の弾薬を用意してくれている。さらに彼が敵の動きを封じているのを良いことに、ショートは二発目、三発目を次々と撃ち込んだ。
「グッ!ガアァ……エェテェェ!!!」
「!」
身体を侵していく聖水はマイナソーをさらに苦しめたが、同時に怒り狂わせた。両腕に力を込めてハンタの包帯を引きちぎると、凄まじい勢いでショートめがけて突撃したのだ。
言うまでもなく今のショートはデンキの身体で、生身である。マイナソーの怒りをその身に受ければ、生命など容易く吹き飛んでしまう──
「──やらせねえよ、俺の身体ッ!!」
マイナソーの特攻は予想の範疇にある行動だった。それゆえにすかさず、リュウソウゴールドが割り込んだのだ。
「お、らぁ!!」
「カエテェ!!?」
モサブレードを力いっぱい振り下ろす。一刀両断……とはいかなかったが、その刃はマイナソーの胴体を大きく斬り裂いていた。
「っし!」
「おまえ……剣も扱えるんだな」
「トーゼンっしょ!近づかれたら一巻の終わりなんて、銃使いとしてンな情けねえハナシはないからな」
胸を張るデンキ……もといゴールド。モサブレードが短剣に近いつくりであることも幸いしていた。よほどの自信家を除いて、ガンマンはダガーやナイフなど、護身用の近接武器も形態しているので。
いずれにせよ、マイナソーはかなり弱っている。──今がチャンスだ。
「ちょうどいい。デンキ、モサブレードをモサチェンジャーと合体させろ」
「へ?──えーっと……こうか?」
言われるがままに、剣を銃と合身させる。"モサブレイカー"と呼ばれる形態なのだが、その名称をデンキが知ることはなかった。
「ビリビリソウルを装填するんだ」
「ビリビリ……これか!──ビリビリソウル!!」
『ザッバァァァン!!』
「ウェッ!?」
威勢の良すぎる音声にのけぞるデンキだが、本番はここからだ。ドンガラノッサと声は続き、そして、
『──強・竜・装!!』
リュウソウゴールドのボディに、黄金の鎧となって顕現した。
「うおー……かっけえ」
「……まあな。そのまま一気に、決めろ」
「オーケー、やってやるぜ!」
すかさず踵を返す。宿主からエネルギーを供給できないため、マイナソーはダメージからなかなか立ち直ることができない。それでも回復されてしまえば、また振り出しだ。
だからその前に、とどめを刺す──!
「いくぜ……!──ファイナル、サンダーショットォ!!」
引鉄を引き、特大の電光弾を撃ち出す──身構えていなかったデンキは、その際の衝撃で大きく後方へ吹っ飛ばされた。
「デンキ!?」
「痛てて……っ、これ、やべぇ……」
その"やばい"弾丸が、マイナソーを呑み込んでいく。
「カェテ……!カェ、テェェェ──!!」
当然、ひとたまりもない。マイナソーはその身を一瞬にして削りとられ、跡形もなく消滅するのだった──
──マイナソーが消えれば、その奇術による効果も失われる。
「ッ!……戻った」
正真正銘、リュウソウゴールドの姿かたちになった己の身体を見下ろし、つぶやくショート。彼らも。
「ムッ!戻れたか……。だが、きみの身体も悪くなかったぞ!」
「きっめェこと言うな!……あとで筋トレのやり方、教えろや」
ともあれ、決着はついた。あとは──と思っていたらば、クレオンがいない。皆がマイナソーやドルン兵に集中している間に、形勢不利を悟って逃げ出していたらしい。
「マジかぁ……あんなもん生み出してくれちゃった礼、してやりたかったのに」
「ウェッ!?ハンタくん、こわぁ〜〜い」
「え〜?怒ると怖いんだぞぉ、ハンタくんはぁ」
乳繰り合うふたり──片やアンデッドである──を「イチャついてんじゃねえ!!」と一喝づるブラック。単純に腹が立つというのももちろんあるが……何より、戦場独特のひりついた空気が未だ解けていなかったのだ。
その予感は、的中した。
「キヒヒヒ……ヒヒヒ……」
「!」
一度耳にこびりついたら離れない、不気味な笑い声。直後、森の彼方に巨大なシルエットが出現した。
「あれは、ゾラ!?」
「てめェが巨大化すんのかよ……!」
「ヒヒヒッ……余興も愉しまなくっちゃねェ」
侵攻の継続……というより、遊んでやろうというつもりなのか。腹立たしいことこのうえないが、放っておくわけにはいかない。
「カツキくん、ショートくん、いこう!」
「仕切んな!」
「ああ。──デンキ、ハンタ、おまえたちは避難してくれ」
「わかった。いこうぜ、デンキ」
「名残惜しいけどぉ……頼んだっ!!」
巨大化した"不死の王"相手に、聖水弾など焼け石に水にもならない。常人である彼らの出番は、ここまで。
──あとは、リュウソウジャーの為すべきことだ。
「モサレックス、頼む」
「うむ……ショートよ、もう二度と入れ替わってくれるなよ」
ともあれ、
「竜装合体!!」
変形したモサレックスにアンモナックルズが合体し、深海の王──キシリュウネプチューンが誕生する。
「いくぞ……!」
「キヒヒヒッ……良いねェ!」
向かってくるネプチューンを、ゾラはあえて両手を広げて迎える。不死ゆえの無防備な姿に腹が立ったが、乗ってやらない理由もない。
「はっ!」
ナイトトライデントを力いっぱい振り下ろすネプチューン。果たしてゾラのボディは斬り裂かれ、彼はそのまま糸の切れた人形のように仰向けに倒れ伏した。
しかし、これで終わるはずがないことはわかっている。──ゾラは、死なないのだから。
「良い攻撃だねェ……!」
「ッ!」
逆再生のように起き上がる。と、今度はトリケーンとミルニードルが前に出た。
「まだ終わりではないぞ!──ナイトソードッ!!」
遠距離からミルニードルが針を飛ばして動きを鈍らせ、その隙にトリケーンが肉薄してナイトソードを振り下ろす。
これも効き目はあったが、趨勢を決めるようなダメージではない。騎士竜単体では、どうしても火力に欠けるのだ。
「そろそろ、こっちからいくよォ」
「!!」
ふざけるな、と反駁する暇も与えられず、ノーモーションの魔法が放たれる。最初に旋風、
「ぐ、うぅ……!」
「まだまだァ」
そして炎。風に巻かれて、それは紅蓮の竜巻となってネプチューンや騎士竜たちに襲いかかった。
「あ、熱い……!」
「ッ、こんなもん……!」
「……ッ」
(まだなのか、エイジロウたち……!)
彼らももとに戻っているはずだ。早く、その力を──!
刹那、魔法を上回る勢いの劫火が、ゾラに襲いかかった。
「グォッ!?」
「!、これは……」
考えるまでもない。
「待たせたな、皆!!」
「待ってねえわ!でも遅ぇ!!」
「いやどっちやねん!?」
「戻れたは良いけど、色々騒ぎが起こっちゃって……収めるのに時間かかったんだ。ごめん!」
タイガランスとアンキローゼが攻撃を仕掛ける。動きを封じたところでキシリュウオーディメボルケーノが追撃を加えようとしたが、そこで予想だにしないことが起こった。
「!、なんだ……?ソウルが光って──」
突如輝き出すレッドリュウソウル。──それだけではなかった。
「俺のもだ」
「ショートも?もしかして──」
「その通り!!」
「うおっ!?」
いきなりディメボルケーノが大声を出したものだから、レッドは盛大に肩をびくつかせた。
モサレックスが続ける。
「ショートよ、おまえはまた陸の者に心を寄せたようだな。複雑だが……やむを得ん。ソウルをひとつにするんだ!」
「ソウルを……ひとつに」
「ひとつに!」
「ティラアァ!!」
ティラミーゴが吼えた瞬間、
キシリュウネプチューンがばらばらのパーツとなり、いったん分離したディメボルケーノともども新たなキシリュウオーの鎧へと変わる。右腕にはティラミーゴの、左腕にはモサレックスの頭部。
その名も、
「「──ギガント、キシリュウオー!!」」
陸と海、ふたつの力が混じりあった──竜神。
「キヒヒヒッ!!」
新たな合体を前に相変わらず不気味な笑みを洩らすと、ゾラは魔法による攻撃を仕掛けてきた。
しかし紅蓮の炎にも雷撃にも怯まず、ギガントキシリュウオーは進撃する。
そして、
「「ギガントサンダーキィック!!」」
電撃を纏った回し蹴りが、ゾラの胴体を打った。
「グァ……!」
「まだまだァ!!」
キックとくれば、次はパンチ。拳と化した二体の頭部が「ティラァ!!」「モサァ!!」と雄叫びをあげながら、獲物に喰らいついていく。
「ッ、やってくれる、ねェ……!」
後退したゾラは、再び魔法で炎を発生させた。紅蓮がギガントキシリュウオーに向かっていく。
しかし、
「「ギガントファイヤーストーム!!」」
炎には炎。容易く魔法のそれを呑み込むと、渦となってゾラを閉じ込めた。
「グアァァ!!?あ、熱い、ねェ……!」
「たりめーだ!なんたって、俺たちの情熱だからな!!」
「──俺たちとの出逢い、後悔させてやる」
決着の
「ギガント──」
「「──ダブル、バイトォッ!!」」
鋭い牙の群れが──獲物を、噛みちぎった。
「!!!!!!」
身体を砕かれ、ゾラは炎とともに跡形もなく消滅していく。まぎれもない勝利だ──普通なら。
「………」
しかしゾラが"不死身"を標榜している以上、手放しに喜ぶわけにはいかないのだった。
*
「じゃ、俺らはお先に」
「わりィな……最後まで力になれなくて」
デンキの詫び言に真っ先に反応したのは、意外にも(?)カツキだった。尤も内容は、「てめェらの力なんざいらねーわ」という彼らしさ極まったものであるが。
──如何にゾラが不死身のドルイドンといえど、このまま跋扈させて先へは進めない。リュウソウジャーの面々はサルカマイ村にとどまり、彼との戦争を続けることになった。
竜装の使命に、彼らをいつまでも付き合わせるわけにはいかない。生命の危険もある。ゆえに彼らとは、ここで別れることにしたのだ。
「俺ら、必ずゾラを倒してみせる。そしたらまた、一緒に温泉入ろうぜ!」
「え〜、男と温泉入る約束してもなぁ」
「おまえなぁ……。──ま、アンデッドの俺が言うのもナンだけど……そう言うからには、死ぬなよな」
「誰に言ってんだしょうゆ顔」
「かっちゃん!……きみたちも、どうか気をつけて」
惜別の時間は限られていた。最後に希望する者どうしで固い握手をかわし、踵を返す。それから彼らはもう、振り向くことはなかった。
「行ってしまったな……」
「せやね……。デンキくんはちょっとミネタ男爵みあってアレやったけど……でも、賑やかやったのになあ」
軽薄だが陽気なふたりのおかげで、この陰鬱な村の中にあっても楽しく過ごすことができた。たとえ片方が、アンデッドであっても。
「……なぁ、ひとつ気になってることがあるんだが」
不意に、ショートがそんなことを言う。
「なんだよ、ショート?」
「マイナソーは、宿主のいちばん強力な欲求に従って行動するんだろ。……ハンタは、何を"替えて"ほしかったんだろうな」
「あ、あー……」
そういえば、考えてもみなかった。マイナソー退治と、ゾラの攻略法に気をとられていたので。
「決まってンだろ、あいつはアンデッドだぞ」
「!、まさか……でも、そんな──」
亡者は生者になりたがる、それは本能のようなものだ。
──彼らの友情が永遠であることを、今となっては祈るしかないのだった。
つづく
「生き返ったんだ!!死んだヤツらが!!」
「また、おめェに会えるなんて……!」
「騎士竜"シャドーラプター"は、おまえを認めたようだ」
次回「亡者の行進」
「もっぺん仇討ち頼むぜ、勇猛の騎士さん」
今日の敵‹ヴィラン›
マミーマイナソー
分類/アンデッド属マミー
身長/221cm
体重/105kg
経験値/319
シークレット/内臓を抜くなどして腐敗を抑え、乾燥させた死体ーー通称"ミイラ"のマイナソー。包帯を巻きつけた者同士の魂を入れ替えてしまう。人間同士に限らず、動植物、果ては非生物との入れ替えもできてしまうのだ!
ひと言メモbyクレオン:ワイズルーさまが喜びそうな能力だったのになァ、もったいない!でもゾラさまも楽しそうだったし……案外この人たち、似た者同士なのかも?