【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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コラボもので描かれるのってデク・かっちゃん・轟くん・お茶子は固定で、プラス飯田くんor切島くんってな具合が多いんですよね

なんだろうこの、痒いところに手が届かない感じ…(リュウソウメンバー的な意味で)


21.亡者の行進 1/3

 暗い地の底で、何かが蠢いている。

 

「………、…………」

 

 聞き取れないほどちいさな声。しかしかすかなそれは、確実に這い上がってこようとしている。

 這い上がる──地の底から。

 

 

「……エイジ、ロウ」

 

 

 *

 

 

 

 サルカマイ村にとどまること三日。エイジロウたちリュウソウジャーの面々は引き続き、騎士竜たちと連携して警戒を続けていた。

 

「──エイジロウくん、オチャコくん!そちらはどうだ?」

「特に異常ナシ、だぜ!」

「こっちも!あのゾラってヤツ……ほんとに生きてるのかなぁ?」

 

「──かっちゃん、ゾラはまた攻めてくると思う?」

「愚問だわ。ああいう手合いは執念深ぇ、ヘラヘラしながら俺らに怨み燃やしてやがるに決まっとる」

「……だよね。まだ倒す方法見つけられてないし……はぁ」

「けっ、なんのためにナードやってんだ」

「いやナードにも限界あるから……。──それはそうとショートくん、どこ行ったんだろ?」

 

 ショートとは本来、一緒に行動する予定だったのだが。

 

 

「──モサレックス、いないのか?モサレックス!」

 

 その頃イズクたちの前から姿を消していたショートは、モサレックスが仮の住処としている沼を訪れていた。モーニングコールのつもりか、いつも朝にテレパシーが飛んでくるのだが、今日はそれがなかったのだ。ただそれを素直に言ってしまうと「ガキかよ」とカツキに嘲笑われそうだったので、黙って来てしまった。もとよりそう長居をするつもりもない。

 

「モサレックス!!」

 

 返事がないことに不安を覚えて大声で叫ぶと、ばしゃあ、と激しい水飛沫が上がった。黄金の巨竜が、ショートの身体を空からすっぽり覆い隠してしまう。

 

「……良かった。連絡とれないから、心配したぞ」

「ムゥ……すまなかった。今朝は気が動転していてな……」

「何かあったのか?」

「うむ……沼に手をつけてみろ」

「?、ああ」

 

 言われるままにしゃがみ込み、水中に手を差し入れる。刹那──彼は、目を見開いていた。

 

「これは……」

 

 海のリュウソウ族は、水に身体を浸すことでその内部の様子を感じ取ることができる。それでわかった。

 

──生命の気配が、ない。無論、モサレックスを除いてだが。

 

「突然だ。昨日までは魚たちがたくさん泳いでいたというのに」

「寝ぼけて食べちまったんじゃねえのか?」

「な……!──海の王国の第三王子ともあろう者が、そのようなつまらない冗談を言うな!!」

「第三王子は関係なくねえか……?」

 

 それはそうと、いったい何が起こっているというのか。魚が消えたというだけでは皆目見当もつかないショートだが、モサレックスはそうではなかった。

 

「これはただごとではないぞ、ショート」

「!、まさか、マイナソー?」

 

 その問いに、モサレックスが答えようとしたときだった。もとより鬱々としていた空がいっとう暗くなり、漆黒の稲妻が落ちてきたのは。

 

「ッ!?、なんだ、今の……!」

「やはりかッ!──行けショート、"ヤツ"を放っておいてはいけない!」

 

 モサレックスの言う"ヤツ"が何者なのか、訊かぬままに駆け出したショート。──その先で、目の当たりにしたものは。

 

「……!」

 

 

 *

 

 

 

 村でまた、騒ぎが起きている。

 それを聞きつけたエイジロウたちスリーナイツは、哨戒を中断して駆け戻ってきたのだが。

 

「何これ……?お祭り?」

「ではないと思うが……襲撃という雰囲気でもないな」

 

 村人たちはとにかく混乱している様子だったが、恐慌して逃げまどっているわけではない。こんな様子、自分たちの村にいた頃も経験があった。

 

「!、せや。急に赤ちゃん生まれる〜ってなったとき、こんな感じちゃうかった?」

「あー……なるほど」

「我が家も俺が生まれるとき、父と兄が右往左往していたと聞いたことがあるな!」

「つまり………どういうことだってばよ?」

 

 雁首揃えて考え込んでいても仕方がない。たまたま傍を通りかかった男を捕まえ、何があったか尋ねてみる。

 

 と、返ってきたのは思いもよらない答だった。

 

「いきっ、生き返ったんだ!!死んだヤツらが!!」

「は!?」

「生き返ったとは!?」

「まんまの意味だよ!村長ンとこの早くに亡くなった娘さんとか、隣んちのばあちゃんとか……!ウチも去年病気で死んだ兄貴が帰ってきて大変なんだ!悪いけど、じゃあな!!」

 

 まくし立てて、走り去ってしまう。内容も内容なだけに、呆然と立ち尽くすほかないスリーナイツ。

 そこに間髪入れず、小さな赤い影が飛びついてきた。

 

「大変ティラァ!!」

「うおっ、ティラミーゴ!?おめェ、こんなとこまで出てきて……」

 

 ミニミニ化しているのと皆それどころではないので、村内を堂々と走り抜けても気に留められなかったのかもしれないが。

 

「コタロウが……!コタロウがぁ!」

「コタロウに何かあったのか!?」

 

 ティラミーゴは相当混乱しているようだ。もとより言葉も覚えたばかりだから、上手く説明できないのもむべなるかな、というところではあるが。

 彼が落ち着くのを待つより、自分の目で確かめるほうが早い。エイジロウたちはコタロウのいる宿へ向かった。

 

「──コタロウ!大丈夫か!?何が、あっ……」

 

 扉を勢いよく開け、部屋に飛び込んだ三人。無事を問う声は、途中で固まって、消えた。

 

──妙齢の女性に、コタロウが抱きしめられている。コタロウのほうはというと、まるで人形のように硬直してしまっていて。

 

「……確かに、大変ではあるな……」

 

 ある意味、ではあるが。

 

 

 *

 

 

 

 少し時を戻そう。森の中で哨戒を続けていたイズクとカツキもまた、漆黒の落雷を目撃していた。

 

「かっちゃん、今のって……」

「──行くぞ」

「ッ、うん!」

 

 駆け出そうとするふたり。──しかし次の瞬間、彼らは強烈なプレッシャーに襲われて。

 

「──デク!!」

「ッ!」

 

 同時に跳躍し、地面を転がる。身のこなし軽やかで、実に鮮やかな所作。しかし彼らの表情は、揃って危機感に歪んでいた。

 

「久しぶりだな、リュウソウジャー」

「!、てめェは……!?」

 

 夢か幻か。しかしビリビリと皮膚を粟立たせるようなこの威圧感は、現実の、実物でなければ説明がつかない。

 分厚い鎧に、光る一対の赤い目。まるで城壁のようなその姿は──まぎれもない、

 

「タンクジョウ……!」

 

 討ち果たしたはずの、過去の亡霊。

 

「ふ……、何故生きているとでも言いたげな表情(かお)だな」

「……ッ、」

「理由なぞ、早晩嫌でもわかるだろう。──今、貴様らがすべきことはひとつ!」

 

 そのようなこと、言われるまでもない。ふたりは揃ってリュウソウルを構えた。

 

「「──リュウソウチェンジ!!」」

『ケ・ボーン!──リュウ SO COOL!!』

 

 リュウソウメイルを纏うと同時に抜剣、左右に分かれて斬りかかる。しかし細身の刀剣であるリュウソウケンに対し、タンクジョウの持つルークレイモアは主の上背ほどもある。ばらばらの方向から振り下ろされた刃を、同時に受け止めることすらできてしまう。

 

「実体がある……やっぱり幻じゃない!」

「わーっとるわ!」

 

 この一帯を支配しているのは、"不死の王(キングオブアンデッド)"なのだ。死んだはずの者たちをこうして顕現させるすべをもっていたとしても、不思議ではない。

 

「ふ……、以前より剣捌きのキレが増したようだな。だがふたりでは、俺を倒すことはできんぞ」

「言ってろや!──ブットバソウルッ!!」

 

 『ボムボム〜!』と音声が流れ、ブラックの右腕に黒にオレンジをあしらった鎧が装着される。

 

「もっぺん死ねぇ!!」

 

 その勢いのままに肉薄し、刃を振り下ろす。果たして触れたところから爆発が起き、タンクジョウの重量感あるボディを"吹っ飛ぶ"と形容できるかどうか、というところまで後退させることに成功した。

 

「ふぅむ……その力、やはり侮れん。──ならば!」

 

 言うが早いか、タンクジョウは両肩の砲口からオレンジ色の塊を撃ち出した。弾丸というには巨大なそれは、威圧感こそあるが勢いはない。歴戦のふたりには、止まって見えるほどだった。

 

「こんなもの!」

 

 同時に刃を一閃し、真っ二つに斬り捨てる。果たして地面に転がったその残骸から、ふしゅうと音をたててガスが噴き出したのだが、ふたりはそれに気づかなかった。

 

「かっちゃん!」

「言われるまでもねーわ!!」

 

 グリーンリュウソウルとブラックリュウソウルを、リュウソウケンに装填──

 

『グリーン!』

『ブラック!』

 

「「ダブル、ディーノスラァァッシュ!!」」

 

 エネルギーを刃に込め、振り下ろす!

 

──刹那、ブットバソウルによるものでない爆発が、ふたりに襲いかかった。

 

「ぐあぁっ!?」

「ッ!?」

 

 森に広がる紅蓮の炎。自分たちがダメージを受けた以上に、このままでは大火になってしまう!村が森の中にある以上、それだけは避けねばならなかった。

 

「ッ、ミストソウル!!」

 

 咄嗟にミストソウルを発動させ、濃厚な水分を蓄えた霧を周囲に拡散させる。そんなグリーンを庇うように、ブラックが前面に立つ。霧で視界を奪われてしまう以上、危険は覚悟のうえ……だったのだが。

 攻撃が、来ない。それどころか、あれほど感じていたプレッシャーも忽然と消えてしまった。よもやと思い我武者羅に突撃したブラックだったが、やはりそこにタンクジョウの気配はなかった。

 

「かっちゃん、どうしたの!?」

「……あのヤロウ、消えやがった」

「消えたって……」

 

 迅速に撤退したのか、それとも今消し止めた火のように存在ごと消滅したのか。普通なら前者しかありえないところだが、相手は死人だ。

 

 

「──ヤツはまだ現世(こっち)に戻ってきたばかりだからな。存在が安定してないんだよ」

「!!」

 

 突然こだまする男の声。男というより、自分たちとそう変わらない少年のそれだ。

 身構えるふたりの前に、声から想起した通りの年若い少年が霧の中から姿を現した。ひょろりと背が高く、顔立ちはとりたてて特徴はないが整っている。村を去ったばかりのハンタを思い出させる容姿だが、彼に似ているというわけではない。

 

「お前ら()、リュウソウジャーだろ?」

「……誰だ、てめェ」

 

 警戒心を露に問いただすカツキ。人間の姿をしているからといって、油断はできない。それ自体はイズクも同じ考えだ。知らないヤツにおまえ呼ばわりされる筋合いはないなどと自分を棚に上げて毒づくのは、カツキの特権だろうが。

 相手の態度を気にしたふうもなく、少年は応じた。

 

「俺は……エイジロウの、幼なじみってヤツ」

「エイジロウくんの……?」

「そ。──あいつ、今どこにいる?」

 

 エイジロウの幼なじみが、こんな場所にいるはずがない……普通なら。しかし東の大地で斃れたはずのタンクジョウが姿を見せた以上、その意味するところは明らかだった。

 

 

 *

 

 

 

「ごめんなさいね、驚かせてしまって」

 

 美女の言葉に、エイジロウとテンヤは揃って顔を赤くしながらぶんぶんと首を振った。そんなふたりをオチャコが冷たく睨みつけている。

 

「……本当なのですか?あなたが、コタロウくんの御母上とは……」

 

 確かにその顔立ちは、どことなくコタロウと似通った部分もあるけれど。

 

「……ええ。この人は間違いなく僕の母親です、生物学上は」

「!」

 

 目を逸らし、素っ気ない物言い。母への執着を乗り越え、旅の中で笑顔を見せることも増えたコタロウだが、実物を前にして態度を決めかねているようだった。少なくとも、諸手を挙げて感動の再会というわけにはいかない。

 それは置いておくとして、

 

「いったいどうなってんだ……?こんな次々と、死んだはずの人たちが甦るなんて」

「ゾラの仕業なんかなぁ……アンデッドやし」

「ゾラというか、マイナソーによるものという可能性はあると思うが……。いつ、どこで誰が宿主になったのか、現状では見当がつかない」

 

 クレオンが密かに侵入して村人を襲ったにしても、異常をきたしている者は見当たらない。ただ、村内でこれだけの現象が起きている以上は、この近辺に原因があることは間違いないはずだ。

 

「………」

 

 ともあれ、エイジロウはコタロウの様子も気にかかっていた。彼が母との交流に迷っているなら、自分は何をしてやれるだろう、と。解決を最優先に考えることが騎士として在るべき姿なのかもしれないが、目の前で苦悩している子供を放っておけないのがエイジロウという少年である。

 

「……コタロウ。もしかしたらマイナソーの仕業かもしんねーけどさ、死んだ人に会えることなんて、多分これっきりだぜ」

「ッ、わかってます!そんなこと!」

 

 声を荒げるコタロウ。わかっているからこそ、葛藤している。赦せないのはもちろんのこと……再会を喜ぶ気持ちだって、自覚しているのだ。

 

「……コタロウ、」

 

 そんな我が子を、既にこの世のものでない母は悲しげに見つめている。

 

 しかしこの空間は、良くも悪くも彼らだけのものではなかった。

 

「──なに扉開けっぱなしにしとんだ、てめェら」

「!!」

 

 突然の声に振り向けば、そこには仏頂面のカツキと、なんともいえない表情のイズクの姿。彼らの視線がコタロウの母に向けられるのを認めて、エイジロウは咄嗟に声を張り上げようとした。

 

「聞いてくれよカツキ、イズク!このひと、コタロウの──」

「──エイジロウ!」

「!!」

 

 忘れられるはずがない、記憶に刻み込まれた呼び声。赤い瞳が見開かれ、おもむろに滑っていく。

 

「……ケン、ト」

 

 それはまぎれもない、故郷で死に別れたはずの幼なじみの姿で。

 

「────ッ、」

 

 彼が口を開くより先に、エイジロウは彼に飛びついていた。

 

「うわっ」

 

 エイジロウより上背があるにもかかわらず体重は軽いその身体は、遠慮なしの突進によってあっさりバランスを崩してしまう。尻餅をついたケントに、エイジロウはかまわずぎゅうぎゅうと抱きついた。──ケントが今、こうしてここにいる。それを証明するかのように、その細い身体は温かかった。

 

「ケント……ケントぉっ」

「おいおい……泣くなんて漢らしくねーぞ、エイジロウ」

「だって……っ、また、おめェに会えるなんて……!」

 

 今ばかりは、漢らしくないと言われてもかまわなかった。ケントと特別親しかったわけではないテンヤとオチャコもまた、揃って目を潤ませている。

 

 ケントの少しかさついた手が、赤髪をくしゃりと撫でた。

 

 

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