【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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21.亡者の行進 2/3

 

 森の奥深く、白昼にあっても光の届かぬ朽ちた洋館の中に、相変わらずの下卑た笑い声が響いていた。

 

「キヒヒヒッ……これはまた、面白いことになってるねェ」

 

 館の主──"不死の王(キングオブアンデッド)"の二つ名をもつドルイドン、ゾラ。彼もまた、死者の甦りには反応を示していた。

 

「よもや死者が甦るとは……。これも貴様の仕業か、ゾラ?」

 

 珍しくまじめな声色で訊くワイズルー。対するゾラの答は、「違うけど、こうなるとは思ってたよォ」という意味深なものだった。死と密接に結びついていながら、己に降りかかるそれは例外にしている男。何を考えているのか、自分自身ぶっ飛んだ思考の持ち主であるワイズルーでさえ読めていないところがあった。

 

 一方でクレオンは、どこかそわそわしている様子で。

 

「ン〜、どうしたクレオン?」

「!、あぁいやぁ……そのぅ」

「??」

 

 煮えきらないその態度に首を傾げていると、不意にガシャンと重たい足音が響いた。

 

「ムッ、何奴!」

 

 ビシィ、と効果音の付きそうな勢いで、ステッキを音の方向へ差し向けるワイズルー。ゾラに横取りされてしまったわけであるが、それでもこの館の主は自分であるという意識が消えないゆえの行動だった。

 それは置いておくとして──姿を現したのは、クレオンにとって待ち望んだ人物だった。

 

「まったく陰気な場所だ。俺の趣味ではないな」

「!!、た、た……タンクジョウさまぁ〜〜!!」

 

 だばぁと滝のような涙を流しながら、クレオンはタンクジョウに抱きついた。

 

「久しぶりだな、クレオン」

「お久しぶりでっす!!まさかタンクジョウさまが復活するなんて……!」

「不満か?」

「とんでもねーっす!!お祝いに百億兆ポイント進呈しちゃいまっっす!!!」

 

 同行していた頃、不満を抱いたこともないではなかった。しかしなんだかんだ言って、仇討ちを志向するくらいにはタンクジョウのことが好きだったのだ。甦ったその姿を見て、膨らんでいた懐古の感情が爆発していた。

 

「キヒヒヒッ……仲良きことは美しきかな、だねェ」

 

 感動の再会に、水を差すような声だった。

 

「……ゾラか。貴様のテリトリーを侵すつもりはないが、リュウソウジャーのことは俺の好きにやらせてもらう。良いな?」

「キヒヒヒッ……良いよォ。でも、一度敗けチャッタんだろォ?死人のオマエさんに、どうこうできるのかなァ?」

「ふん、貴様に心配される筋合いはないわ。──クレオン、」

「ういっす!どこまでもお供しやすっ!!」

 

 タンクジョウはリュウソウジャーとの再戦を望んでいる──それくらいしか察していないクレオンだが、今度こそ彼の勝利を見届けられると信じていた。階級(クラス)はルークだが、タンクジョウは強いのだ!

 

 去っていくふたりを見届けながら、ゾラは嗤った。

 

「キヒヒヒッ……お手並み拝見、だねェ」

「………」

「ワイズルー?」

 

 反応がないことを訝しんで目をやると、そこにはどこから取り出したのかハンカチを噛みしめるワイズルーの姿があった。

 

「じぇ、じぇじぇ、ジェラシィ〜……!!」

「……あんれまァ」

 

 ゾラは肩をすくめた。

 

 

 *

 

 

 

「てめェの知ってること、全部吐けや」

 

 恫喝にも等しいカツキの言葉に、ケント少年もまた肩をすくめていた。コタロウ親子に気を遣って外に出てきた途端、これである。

 

「……来る途中から思ってたけど、こいつホントに騎士?」

「う、疑うのも無理はないが……こう見えて良いところもあるんだ、一応は!」

「そうそう!一応、やけどね!」

 

 一応、を連呼する叡智剛健コンビを前に、威風の騎士はめきめきと青筋をたてていく。いつものことと言えばいつものことだが、騎士でないケントが被害を被ることを思えばよろしからざる状況である。

 

「ど、どうなんだケント?何がどうなって、こっちに戻ってこられたんだよ?」

 

 カツキがブチ切れる前にと、思い切って訊くエイジロウ。親友の自分が間に入ったほうが話しやすかろうという配慮もあったのだが、当のケントは所在なさげに頭を掻くばかりだった。

 

「そう言われてもなぁ……ゆうべ気づいたら森の中にいて、タンクジョウにやられた傷も治ってて。生き返ったのかと思いきやまた消えたり戻ったりなんかして……つまり、」

「つまり?」

「わっかんね!」

 

 あっけらかんと言い放った瞬間、案の定爆弾が跳ねた。

 

「ッッッてんめェもっぺん殺すぞコ゛ラァッ!!!」

「かっちゃんストップストップストップ!!エイジロウくんの友だちだから!!」

「知るかボケ!!だいたいコイツがホンモノって証拠もどこにもねーだろうがぁ!!」

「な……ケントがニセモノだっつーのかよ!?このテキトーでドライな感じ、再現できるヤツがいたら大したもんだぜ!?」

「……それ、褒め言葉ではねえよなぁ」

 

 ハハ、と冷めたふうに笑う表情は、子供の頃から変わらない。それにどのみち証明しようのない議論より、もっと考慮すべきことが他にあるのだ。

 

「も〜、そんな言いがかりつけてないでさ!タンクジョウも甦ったってほうがよっぽどヤバいやん!」

「その通りだ!既にゾラとワイズルーが周辺にいるんだ、手を組まれたら目も当てられないぞ!」

 

 ドルイドンは独立独歩の気風が強いとはいえ、敵の敵は味方という発想が彼らにないとは言い切れない。最悪の場合、三体のドルイドンと同時に戦わなければならなくなる──

 

「!、いや待て……。タンクジョウが甦ったということは、ガチレウスも、ということもありうるんじゃないか!?」

「!!」

「……遅ぇわ、気づくの」

 

 流石にカツキとイズクは、その可能性にも思い至っていたようだった。そうなれば、四体──数のアドバンテージをほぼ失うことになる。ましてこちらには、守るべきものがいくらでもあるというのに。

 

「がちれうす?」

「!、お、おう……海のリュウソウ族の国で暴れてたドルイドンなんだけど……」

「ふぅん……。そいつ、どんくらい前に倒したん?」

「てめェに関係ねえだろ」

「かっちゃん!……多分、十日くらい前だったと思うよ」

 

 イズクがそう答えると、ケントは「なんだぁ」と相好を崩した。

 

「なら心配することねーよ。死人の魂ってのは、死んでから49日はこの世に漂ってっから」

「は!?」

「そんなルールあるん!?」

「ルールっつーか……まぁとにかく今回、あの世に逝けてないヤツは甦ってないみてーだし」

「………」

 

 カツキがじとりと疑り深い視線を向ける。確かにケントが何故そこまで知っているのか。亡霊同士のことはある程度把握できるのか、それとも──こればかりは、鵜呑みにできないのも無理からぬことだった。

 

「そんなことよりさ、海のリュウソウ族って大昔に俺らと分かれたっつーアレだろ?そいつらのハナシ詳しく聞かせろよぉ、エイちゃん」

「お、おう。つーかそこの王子様が仲間になったんだけど……──そういやショートは?一緒じゃなかったのか?」

「それが、はぐれちゃったみたいで……」

「ムッ、大丈夫なのか!?」

「知るか。何かありゃモサ公が報せてくんだろ」

 

 フンと鼻を鳴らすカツキ。いつも通りご機嫌斜めな彼の姿は、ケントは引きつった笑みを浮かべていた。

 

「……あいつ、いつもあんななの?」

「い、良いトコもあんだぜ……一応」

 

 その"良いところ"をエイジロウ自身は最大限評価しているのだが、他人に説くときはどうしても"一応"がついてしまうのだった。

 

 

 *

 

 

 

 一方、宿に残ったコタロウ母子の間には、ぎこちない雰囲気が流れたままだった。

 それでも母は自分が亡くなってからのことを尋ね、子はぽつぽつとそれに答える。彼らの間にはか細いながらも、絆と呼びうる糸が繋がっていた。

 

「──それであの子たちと一緒に、旅してるんだね」

「……うん」

「そっか……」

「………」

 

 沈黙に堪えられなくて、コタロウはまだ大きいが切れ長の瞳を母に向けた。

 

「ていうかもう、話した」

「?」

「僕が、マイナソーの宿主にされたとき。……夢の中に、あなたが出てきた」

 

 コタロウの成長を傍で見届けたかったと嘆く母に、独りでも立派な大人になってやると啖呵を切った。あれは自分なりの惜別だったから、ただの夢でしかなくともかまわなかった。

 ただ──本物の母が目の前に現れてしまうとなると、複雑な思いが生まれるのも当然で。

 

「……そういえば、コタロウと話をした気がする……」

「は?」

 

 思いもよらないことを母が言うので、コタロウは目が点になった。

 

「死んじゃうとね、ずっと夢を見てるような状態なの。意識が朧気で、ついさっき何をしていたかも思い出せない。ただ……ひと目でいいからコタロウに逢いたいって、そのときは強く願っていたんだと思う」

 

 コタロウがマイナソーに心身を絡め取られ、死に瀕した状況に陥ったことで、皮肉にもその願いはかなえられたということだ。コタロウがなんと言ったかはよく覚えていないけれど、それでも満たされたような気持ちになったことだけは心に刻まれている。

 

「ねえコタロウ。──アップルパイ、一緒に作らない?」

「は?」

 

 唐突な提案だった。ただ、自分の好物を覚えてくれていたのかという驚きもある。幼い頃のコタロウは、母が作ってくれるアップルパイが何よりの大好物だったのだ。

 でももう、それを聞いて無邪気に喜んでいられるような子供でもなくて。

 

「……ここ、宿屋だよ。場所も材料も、どうするのさ」

「!、そう……だね、そうだったね……」

 

 そんな基本的なことを忘れて落胆している。母は勇者(ヒーロー)としては高名で活躍もしていたようなのだが、母親ないし主婦としてはどうにも抜けたところがあった。人間、全能(オールマイティ)とはいかないものなのだ。

 

「……材料ないか、宿の人に訊いてみるよ」

「!」

「言っとくけど、貸しだからね。タダでってわけにはいかないんだから」

 

 そう告げると、母は少女のように微笑む。どうにも照れくさくて頬を掻くコタロウだったけれど、それは親に対する思春期の少年の振る舞いとしては至って正常なものだった。

 

 

 *

 

 

 

 甦った死者たちと、人々が様々な形で過ごしている頃。

 

「あれが、リュウソウジャーのいる村か」

 

 確認がてらのタンクジョウのつぶやきに、クレオンは揚々と首肯してみせた。

 

「そうっす!さあさあ、ひと思いにやっちゃっってくださいよぉー!!」

「その前に、奴らを引きずり出してやる」

「えっ……」

 

 村の中で戦闘したほうが、連中は守勢にならざるをえず有利に戦えるのでは?そう意見しようとしたクレオンだったが、タンクジョウは既にルークレイモアを振り上げていた。

 

「──ヌウゥゥゥゥンッ!!!」

 

 

 刹那──数十本の木々を衝撃波が薙ぎ倒し、その一部はサルカマイ村内にまで及んだ。

 

「うわっ!!?」

 

 激震が村にいたエイジロウたちにも襲いかかる。彼らも既に歴戦の勇士であるから、これが自然現象などでないことは即座に理解していた。

 

「ッ、敵襲か!?」

「これは──」

「──タンクジョウ……か」

 

 狙いは自分たちか、この村か。いずれにせよ、出ていくしかない。

 

「行くぞ」

 

 紅蓮のマントを翻し、先陣切って走り出すカツキ。仲間たちがそれに続く──と言うのももう、様式美になりつつある。

 ただひとつ普段と異なるのは、勇猛の騎士たる少年が最後になるまで足を止めていたこと。無論、臆病風に吹かれたわけではない。

 

「……ケント、おめェは宿に戻っててくれ。タンクジョウは俺らで倒すから……だから、」

「わかってるよ、エイジロウ。お前ら一度、あいつを倒してるんだもんな」

 

 頷くケントは、エイジロウの脳裏にあの日の記憶──エイジロウを庇ったケントが、タンクジョウに斬り刻まれる──がフラッシュバックしていることを見抜いていた。口元だけは笑みを浮かべていても、素直な彼は本心を隠せない。

 

「もっぺん仇討ち頼むぜ、勇猛の騎士さん」

 

 冗談めかしてそう励ますと、ようやく力強い表情を浮かべて、エイジロウは駆け出していった。

 

 

 *

 

 

 

 再びドルイドンが迫っている。そうなれば村は再び警戒態勢に移行し、村人たちが避難を強いられることは言うまでもない。

 宿にいたコタロウたちも当然アップルパイどころでなくなり、取り急ぎ宿の地下蔵に身を隠すことになったのだが。

 

「………」

 

 母が足を止め、外へ険しい視線を向けていることにコタロウは気がついた。彼女が何を考えているのか、人々を救うことに人生を捧げた女傑であった以上そんなことは決まっている。わかっていても、表情が強張るのをコタロウは止められなかった。

 

「ドルイドンなら、エイジロウさんたちが倒しに行った」

「!」

「あなたが出て行ったところで、足手まといになるだけだよ」

 

 それは方便であると同時に、厳然たる事実でもあった。リュウソウ族とドルイドンの戦いに、人間が入り込む余地などない。この前例外はあったが、それは緊急避難、あるいは相手がアンデッドという特殊な存在だったからだ。

 

「……わかってる。コタロウを置いて、どこにも行ったりしないよ」

「………」

 

 母の言葉に欺瞞は窺えない。ないけれど──

 

(どの口が言うんだか)

 

 内心つぶやいた言葉は、何よりコタロウ自身の心の柔らかいところを抉った。

 

 

 *

 

 

 

「タンクジョウっ!!」

 

 待ち望んだ勇ましい呼び声に、タンクジョウは足を止めた。

 

「ようやく全員集合か、待ち侘びたぞリュウソウジャー」

「もう全員ちゃうけど……」

「?」

 

 オチャコの指摘はかろうじて届いたが、このときは無視された。

 

「よー言うわ、さっきはてめェで勝手に消えたくせに」

「村には、指一本たりとも手出しはさせない!!」

「フン……ならば、貴様らの手で止めてみせろぉ!!」

 

 ルークレイモアを振り下ろすタンクジョウ。衝撃が奔り、木々が薙ぎ倒される。天が落ちてくるような錯覚に堪えながら、騎士たちは剣に先立つ魂の装具を構えた。

 

「「「「「リュウソウチェンジ!!」」」」」

『ケ・ボーン!!──ワッセイワッセイ!そう!そう!そう!ワッセイワッセイ!ソレソレソレソレ!!』

 

 

「──勇猛の騎士ッ!!」

『カタソウル!』

 

「リュウソウレッド!!」

『ガッチーン!!』

 

 最後尾になったぶんの遅れを取り戻すかのように、真っ先に斬りかかるレッド。そして、

 

「叡智の騎士!!」

『ハヤソウル!』

 

「リュウソウブルー!!」

『ビューーーン!!』

 

「剛健の騎士……!」

『ムキムキソウル!』

 

「リュウソウピンク!」

『ムッキムキィ!!』

 

「疾風の騎士!」

『ツヨソウル!』

 

「リュウソウグリーン!!」

『オラオラァ!!』

 

「威風の騎士ィ!!」

『ブットバソウル!』

 

「リュウソウブラックゥ!!」

『ボムボム〜!!』

 

 皆が得意のリュウソウルの力を行使し、タンクジョウに猛攻を仕掛けていく。

 

「ヌゥ……っ」

 

 ルークレイモアと堅牢なボディを最大限に活かしてそれらを防いでいたタンクジョウだったが、リュウソウジャーの剣技は以前より遥かにキレを増している。ブラックの爆破を浴びたことで限界を迎え、彼は後方へと吹っ飛ばされた。

 

「──正義に仕える五本の剣ッ!!」

 

「「「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」」」

『リュウ SO COOL!!』

 

 並び立つ五人。彼らと対峙するタンクジョウは、

 

「くくく……っ、フハハハハ……!」

 

──嗤っていた。

 

「流石は、俺を倒しただけのことはある。ならばこちらも、手段は択ばんッ!!」

 

 両肩の砲口が火を噴く。弾丸が発射される。またあの、巨大だが速度の出ないものだ。

 

「こんなモンっ!!」

 

 すかさずレッドがリュウソウケンを一閃する。真っ二つになった弾丸が地に落ち──しゅう、と音がたつ。

 

「……?」

 

 たまたまそれを耳にしたグリーンは、違和感を覚えた。先ほどの遭遇のときも、同じ音を聞いた気がする。これは──

 

「ドルン兵、かかれぇ──ッ!!」

 

 考えている暇はなかった。クレオンの号令がかかり、ドルン兵たちがけしかけられる。

 

「こんなヤツら……!」

 

 わざわざ遊ぶつもりかと、レッドなどは怒りに燃えた。手段は択ばないと言っても、ドルン兵を真正面からぶつけられたところで戦闘のフェイズが無駄に増えるだけ。こちらの体力を削ろうという魂胆なら、それこそ無駄な努力というものだ。

 

「ブッ飛ばしてやる!!」

 

 迎え撃つ時間も惜しいとばかりに、五人は走り出した。衝突の瞬間、竜装のエナジーに満ちた刃を一気呵成に振り下ろす──!

 

 そして──ブッ飛ばされたのは、彼らのほうだった。

 

「ぐあぁあっ!?」

 

 いったい、何が起きたのか。地面に倒れ込みながら、混乱した頭でレッドは考える。

 

「!、そうか、あの音……!」最初に気づいたのはグリーンだった。「最初にタンクジョウが放った弾、可燃性ガスが内包されてたんだ……!今の鍔迫り合いで、火花が散ったから……!」

「じゃ、じゃあ火花散らしたらあかんってこと……!?」

 

 それでは、剣戟など不可能ではないか。にもかかわらず、ガスをばらまいた黒幕には望むところなのだ。

 

「今さら気づいてももう遅い。俺がルークレイモアを地に突き立てれば、この森一帯を呑み込むほどの大爆発になる!貴様らもあの村も、跡形もなく消し飛ぶのだ、フハハハハッ!!」

「ふはははは!」

「おまえは笑うな」

「うおぉ懐かしっ!!」

 

 理不尽な命令にさえ喜びを見せるクレオンに対し、リュウソウジャーの面々は危機感に押しつぶされそうな思いだった。火気を一片も漏らさず、タンクジョウを止めなければならない。しかし、そんな方法は──

 

「──終わりだ!!」

 

 そしてタンクジョウが、刃を振り下ろす──刹那、

 

 風のように割り込んできた巨躯が、一閃とともにタンクジョウの右腕を()()()()()()

 

「グァアアアアアッ!!?」

 

 切断面から血を噴き出しながら、タンクジョウは絶叫に等しいうめき声をあげた。死に際に爆発四散こそしたが、このように一部位を切り離されるのは当然初めてのことだった。

 

「た、タンクジョウさまぁ!?」

「ぐ、うぅ……な、何奴……!」

 

 簡素なマントを纏い、頭巾で頭までを覆ったその姿。テンヤよりひと回り以上も大柄で筋骨逞しいことくらいしか、後姿からは判別できない。

 

 誰──奇しくも敵と同じ疑問をエイジロウたちが吐き出すより早く、その男は声を発した。

 

「──今だ、ショート」

「……!?」

 

(ガチレウス!?)──そう一瞬誤認するほどに、よく似た声だった。

 しかし彼はドルイドンではなく、リュウソウジャーを庇った。そして"彼"を、名前で呼んだ。

 

「ああ」

 

 戦場に姿を現す、黄金の騎士。──彼の手には、誰も見たことのない漆黒のリュウソウルが握られていた。

 

「──クラヤミソウル!」

 

 それをモサチェンジャーに装填し、

 

『ザッバァァァン!!──ドンガラ!ノッサ!エッサ!モッサ!』

 

『めっさ!』

 

 一回、

 

『ノッサ!』

 

 二回、

 

『モッサ!』

 

 三回、

 

『ヨッシャ!!』

 

 四回。

 

『この、感じィ!!』

 

『強・竜・装!!』──トリガーを引くと同時に、黒い靄がリュウソウゴールドの身体を覆っていく。それはたちまち夜空のような漆黒の鎧へと姿を変えた。右肩には、黒竜の頭部が意匠として在る。

 

 黒竜──そう、新たな騎士竜の力が、今ここにあらわれていた。

 

 

 

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