【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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21.亡者の行進 3/3

 

 時は、天より漆黒の落雷があった直後にまで遡る。

 それを目撃したショートは、稲妻のあった地点にまで走っていた。「"ヤツ"を野放しにしてはいけない」という、相棒の言葉に押される形で。

 

 "ヤツ"とはいったい何者か。ドルイドンやマイナソーを指しているのではないのか?疑問は色々あったが、ショートはあれこれ訊くより自分の目で見たほうが早いと考えるタイプである。ただ、とにかくモサレックスが焦るというか、逸っている様子なのが気にかかった。

 

 そして──たどり着いた先には、驚くべき光景が広がっていた。

 

「なんだ……これは」

 

 何もない。ぽっかりと、虚無としか言いようのない空間がそこには広がっていた。

 ただ落雷の衝撃で木々が薙ぎ倒されたなら、その残骸は残されていて然るべきだ。しかし、その痕跡すらないのはどういうことか。

 

(……モサレックス、ここに何が──)

 

 目で見てわからない以上、訊くしかない。テレパシーを通じて、相棒へ交信を試みるショート。

 しかし次の瞬間、背後から黒い影が迫っていた。

 

「ッ!!」

 

 その気配を感じ取った途端、ほとんど反射的にショートは飛び退いていた。同時に、オッドアイが自然と上滑りしていく。

 

──果たしてそこに在ったのは、見上げんばかりの黒竜の姿だった。

 

「!、おまえ……騎士竜……?」

「………」

 

 血に染まったような赤眼が、ぎらりと獰猛な光を放つ。──刹那、

 

「ガァアアアアッ!!」

 

 咆哮とともに、ショートへと襲いかかってきた。

 

「な……!?」

 

 何故、騎士竜が襲いかかってくる!?しかも相手は本気だ。今のだって、呆けていれば喰い殺されていたかもしれない。

 

 モサチェンジャーを構えつつ、距離をとるショート。しかしそれを狙い澄ましていたかのように、黒い騎士竜が口から漆黒のエネルギー塊を放出した。

 

「ッ!?」

 

 身構えていた以上、その直撃を避けるのは難しいことではなかった。しかしショートの身体すれすれを飛んだそれは、彼の背後でぶわあっと広がりを見せたのだ。

 

「ぐ────ッ!!?」

 

 凄まじい突風が、ショートに襲いかかる。──引きずり、込まれる。

 

「こんな、モンに……!」

 

 鍛えた体幹で踏ん張りながら、ショートはゴールドリュウソウルをチェンジャーに装填する。──リュウソウチェンジと唱える余裕すらないまま、彼はリュウソウゴールドへと姿を変えた。その勢いを駆って、突風の中から離脱する。

 

「よせ……!何故、俺たちが戦う必要がある!?」

 

 リュウソウゴールドの姿を見てもなお、騎士竜の戦意は揺らぐことがない。その禍々しい姿と相俟って、ショートは彼に疑念を持ちはじめていた。操られているのでは、いやそれ以前に、本当に騎士竜なのかとさえ──

 

「そいつを止めたくば、力を認めさせるしかない」

「!」

 

 にわかに響いた声。それは忌々しい記憶として、ショートの心に刻みつけられているものだった。

 

「その声……ガチレウスか!?」

 

 そんなはずはないと思いながら、振り向く。──果たしてそこにいたのは、マントと頭巾で姿かたちを隠してはいるけれど、まぎれもない人間だった。少なくとも、ガチレウスでないことは明らかで。

 

「……誰だ?」

「俺のことはいい。それより、本気で戦え。おまえの全力、そいつにぶつけてみせろ」

「………」

 

 確かに、躊躇っている場合ではない。だいたい巨大化したマイナソーを相手にしているだけあって、騎士竜は頑丈だ。

 

「俺との出逢い、後悔するなよ……!」

『──強・竜・装!!』

 

 黄金の鎧を纏い、モサチェンジャー改めモサブレイカーを構える。──全力を、ぶつける。

 

「ファイナル、サンダーショット!!」

 

 稲妻の塊が放たれ、漆黒の騎士竜に襲いかかる。口内にブラックホールを発生させて呑み込まんとした騎士竜だったが、それでも衝撃で大きく後方へ吹き飛ばされる結果となった。

 

──これで、どうだ。

 

「………」

 

 何事もなかったかのように起き上がった騎士竜が、再びショートを睨めつける。しかしその視線に、先ほどまでの敵意は感じられなかった。

 

「騎士竜"シャドーラプター"は、おまえを認めたようだ……ショートよ」

「………」

 

 竜装を解き、今度はショートが男を睨む。どうやら敵ではないようだが、どこの誰かもわからない人間に呼び捨てられる謂れはなかった。

 

「……で、おまえは誰だ。どうして俺のことを知ってる?」

「………」

 

 返答の代わりに、男は頭巾に手をかけた。露になっていく顔、頭髪──それを目の当たりにした瞬間、ショートの心は一瞬にして百年の昔に戻った。

 

「……久しぶりだな、ショート」

「────、」

 

 

「……親、父……」

 

 

 *

 

 

 

 戻って、現在。

 

 騎士竜シャドーラプターの力を得て、リュウソウゴールドは新たなる竜装の鎧を纏っていた。

 

「………」

「げぇっ、なんかヤバそうなフォルム……」

「ッ、そもそも、貴様は誰だ……!」

 

 東の大地で斃れたタンクジョウは、当然ながらリュウソウゴールドを知らなかった。

 

「海の王国第三王子、ショート。またの名を栄光の騎士、リュウソウゴールド」

「王子なら、宮殿でおとなしくしていろ!──ヌンッ!!」

 

 失った右腕の激痛を覚悟しながら、タンクジョウは再び巨砲を放った。のろのろとしたそれを撃ち落とそうとしたゴールドだったが、

 

「撃つなショート!!」

「!」

「それは可燃性ガスの塊なんだ、火気を与えると大爆発する……!」

 

「──問題ない」

 

 やはりガチレウスそっくりな声で、男が告げた。尤も、かのドルイドンより落ち着いた声音ではあるが。

 

「クラヤミソウルは狙ったものをすべて吸い込む。弾丸もろとも、ガスを吸い尽くせ!」

「……チッ」

 

 リュウソウ族の鋭い聴覚が、微かな舌打ちを捉えた。どう考えても距離的に不自然だと思いつつも、一同の視線が自ずと常習犯に向けられる。

 

「……俺じゃねえ」

 

 彼自身呆気にとられていたのか、珍しく小さな声音で否定の言葉を吐く容疑者。

 ともかく、ショートは不機嫌の極みにいた。思いがけぬ父との再会。しかしこの戦闘に馳せ参じることを優先したために、百年以上抱え込んできたものをぶつけることさえできていないのだ。彼の父への反感は、今となってはコタロウの母へのそれ以上に深刻なものがあった。

 それでも、第三王子であると同時に騎士として。その憤懣は、敵にぶつける──!

 

「──ファイナル、ブラックホールショット……!」

 

 モサブレイカーの引鉄が引かれ、漆黒の塊が音もなく発射される。塊……否、それはエネルギーの濃縮体ではなく、異空間への扉だ。黒々と蠢くのは、扉の向こうの虚無の世界の一部でしかない。

 シャドーラプターの力の一端であるそれは弾丸を呑み込み、さらには周囲一帯に漂っていた可燃性ガスをも吸収してしまった。

 

「なんだと!?」

「ウソぉ!?」

 

 予想だにしない状況の変転に、ドルイドンの二体は目に見えて狼狽する。

 そしてその好機を、二度目の仇討ちに燃える"彼"は逃がさなかった。

 

『それ!それ!それ!それ!──その調子ィ!!』

「!?」

 

 振り向いたタンクジョウの眼前に、勇猛の騎士が迫っていた。

 

「──アンブレイカブル、ディーノスラァァァッシュ!!!」

 

 巖のごとく硬度を高められた刃が、タンクジョウの右肩から左脇腹にかけてを袈裟斬りにした。

 

「グァアアアアアア──ッ!!?」

 

 堅牢を誇る鎧が裂け、鮮血が噴き出す。声を涸らすほどに叫んだタンクジョウは、その場にがくんと膝をついた。

 

「た、タンクジョウさまあぁぁッ!!?」

 

 タンクジョウのそれに負けぬほど声を震わせたクレオンは、半ば縋りつくように駆け寄った。右腕を失い、胴体から夥しい血を流すその姿は、一度目の死に際とは比べものにならないほど痛々しい。

 

「タンクジョウさまっ、し、しっかり!お気を確かに!!」

「ぐ、うぅぅ……ッ。よもや、ここまでとは……!」

 

 腕を斬り飛ばしたのも、可燃性ガスを奪ったのも計算外の連中であったとはいえ。

 今の一撃ひとつとっても、その腕に大きく磨きがかかっていることにタンクジョウは気づいてしまった。──彼自身、歴戦の猛者であるからこそわかるのだ。今の彼らは、()()()()()()()()()と。

 

「俺たちは生きてる。生きて、前に進み続けてる!死人のおめェに、俺たちは超えられねえッ!!」

 

 レッドの啖呵は、他ならぬ六人の総意でもあった。彼らは成長著しい少年の身で、ドルイドンやマイナソーと幾度となく刃を交えている。旅の中で、大いに実力をつけていた。

 一方で、タンクジョウにも譲れぬ想いがあった。

 

「死人だからこそ!!……たった一度のこの好機、易々とは手放せん!!」

「た、タンクジョウさま!ここはいったん退きましょう!オレから頼めば、ワイズルーさまもゾラさまも動いてくれますって!!」

「黙れ!」

「うぎゃ!?」

 

 タンクジョウの左手がクレオンを突き飛ばす。しかしその手つきは、クレオンに痛みを与えるものではなかった。

 

「……ポイントは、これで帳消しだな」

「!!、そ、そんなこと……」

「立ち去れ。貴様にもう用はない!」

「……ッ、」

 

 タンクジョウの覚悟を見てとったクレオンに、もはや命令に従う以外の選択肢は残されてはいなかった。

 ずるずると液状化して地面に沈み込んでいくその姿を見届けると、タンクジョウは傍らに転がったルークレイモアを拾い上げ──

 

──己の腹に、突き立てた。

 

「な……!?」

「自害──いや、違う!!」

 

 ルークレイモアはぐっさりと腹腔から背にかけてを貫いていた。人間であれば、確かに自害としか言いようのない暴挙。

 しかしタンクジョウは、その一撃によって体内に宿した大地のエネルギーを暴走させようとしていた。そのために、クレオンを遠ざけたのだ。

 

「ウォオオオオオオオオオオオ──ッ!!」

 

 咆哮。それは事実上の断末魔でもあった。

 本来の姿かたちを捨て、見上げんばかりに巨大化していくタンクジョウ。一度はそれを目の当たりにしているエイジロウたちも、その壮絶さに息を呑まざるをえないほどだった。

 

「狼狽えるな、リュウソウジャー!」

 

 それが場に染みつくより先んじて、ショートの父──エンジが声を張り上げた。

 

「気迫に呑まれれば勝てるものも勝てん。──貴様らは強い、己を信じろ!」

「う、ウス!」

 

 どこの誰かもよくわかっていない状態でも、不思議なほど説得力を感じさせる言葉。これでもかと歴戦の猛者であることを全身全霊で主張しているのだ、彼は。

 

「知らねーオヤジが偉そうに……!──いくぞてめェらぁ!!」

 

 タンクジョウにもあの男にも、呑まれてなるものか。カツキの意地を第一に、騎士たちは奮い立った。

 

「──ティラミーゴ、来てくれ!!」

「頼む、モサレックス。──シャドーラプター」

 

 ショートの呼びかけにより、彼を認めし新たな騎士竜が駆けつける。黒いボディ、真っ赤な眼。

 

「あれが、クラヤミソウルの騎士竜……?」

「ああ。その力、見せてやる」

 

 飛んできたモサレックスが変形し、巨人の姿かたち作っていく。そこに、

 

「ォオオオオオッ!!」

 

 雄叫びとともに、シャドーラプターがばらばらに分割される。通常の生物であればスプラッタ極まりない光景であるが、彼ら騎士竜にはあらかじめ備わっている機能である。

 彼、そしてアンモナックルズがモサレックスとひとつになり──そして、新たなる海神が誕生する。

 

「竜装合体──キシリュウネプチューン、シャドーラプター!!」

「俺たちもいくぜッ、竜装合体──」

 

「「「「「キシリュウオー、ファイブナイツ!!」」」」」

 

 並び立ち、タンクジョウと対峙する二大巨人。相手は身体の欠損までは癒しきれなかったのか、右腕は欠け、胴体には大きな傷が走っている。それでもその赤い眼には戦意が漲り、烈火のごとき激情が燃えさかっていた。

 

「ヌゥウウウウッ!!」

 

 左腕で血塗れたルークレイモアを振り上げ、向かってくるタンクジョウ。なるほど気迫にあふれた姿だが、馬鹿正直に受け止めてやるつもりはない。

 

「新入りの出る幕じゃねえッ、ニードルキャノン!!」

 

 意地では誰にも負けないブラックが叫び、ファイブナイツのミルニードル部分から無数の針が放たれる。

 それらはタンクジョウの全身に突き刺さり、彼の動きを鈍らせた。

 

 すかさずこちらから肉薄し、

 

「トリケーンカッター!!」

「タイガースラッシュ!!」

 

 ブルー、そしてグリーン。矢継ぎ早に放たれる斬撃。かつてタンクジョウを破ったファイブナイツの力だ、それは間違いなく通用した。傷ついたボディから、火花と血飛沫が散る。

 

「ッ、」

 

 それでも態勢を立て直そうとするタンクジョウだったが、

 

「悪いが、見てるだけのつもりはねえ」

 

 漕手の言葉とともに、キシリュウネプチューンシャドーラプターが銃撃を仕掛ける。咄嗟にルークレイモアでそれを防ぐが、その隙に相手は距離を詰めてきた。

 

「ふっ」

 

 至近距離から発砲しつつ、同時に格闘も仕掛ける。遠近両用……と言うより、遠も近も同時にこなすスタイル。バトルセンスに長けたショートでなければ、初戦から自在に操ることは困難だろう。

 

「うおお、やっぱスゲーぜショート……!」

「褒めてんじゃねえクソ髪!俺だってあんくれぇ余裕だわ!!」

「……まぁた張り合ってる」

「否定はしないが……」

 

 しかし、タンクジョウの執念も相当のものだった。満身創痍の身体で大地のエネルギーを吸い出すと、それをそのまま砲弾に錬成して撃ち出したのだ。一発二発ではなく。

 

「ッ!!」

 

 直撃をいなす二大巨人だが、熱と衝撃は容赦なく襲いかかる。その激しさは、ファイブナイツとネプチューンをもってしても後退を強いられるほどだった。

 

「……あいつ、強ぇな」

「でも、いっぺん倒したんだ……!今度だって!」

 

 言うが早いか、レッドはあるリュウソウルを構えた。それは、

 

『プクプクソウル!ムックムク〜!!』

 

 かつてタンクジョウを倒す決め手になったプクプクソウル。しかし忘れえぬそれを、タンクジョウはせせら笑った。

 

「舐めるな……!同じ手を二度も喰らうか!!」

 

 飛んでくるピンク色のエネルギー波を、タンクジョウは次々とかわしていく。それ自体ファイブナイツから直線で飛んでくるから、あらかじめわかっていれば先読みするのは容易かった。

 

「ふん、馬鹿のひとつ覚──」

 

 嘲笑の台詞は、最後の最後で途切れた。

 

「──ヌウゥ!?これは……」

「引っかかったな、タンクジョウ!」

 

 得意げに言い放つレッド。──タンクジョウは、膨れ上がった大木に四方を囲まれ身動きがとれなくなっていた。

 

「こ、んなもの……!」

 

 木を力ずくでへし折ろうとするタンクジョウ。隻腕では時間はかかるだろうが、彼のパワーをもってすれば不可能ではない。

 だからその前に──決着をつける!

 

「ショート、おめェが決めろ!」

「!、……良いのか?」

「あいつに迂闊に近づくのは危ねえし、ファイナルキャノンは延焼のおそれがあるからな!」

 

 なるほどエイジロウという少年、無鉄砲に見えて土壇場では思慮深い。ショートの鬱憤を少しでも晴らしてやろうという気遣いもあるのだろう。

 同時にシャドーラプターの力を見てみたいという少年らしい思いもあるのだが、お互いそれを口にするほど迂闊ではなかった。

 

「いくぞ、キシリュウネプチューンシャドーラプター」

 

 巨人の右腕がぐぐぐと持ち上がり、拳と一体になった銃──クラヤミガンの銃口が、タンクジョウに突きつけられる。

 

「──キシリュウネプチューン、ブラックホール……キャノン!!」

 

 果たして放たれた光線は、未だ木々の檻を脱せないタンクジョウを直撃した。

 

「ヌゥ……!?」

 

 衝撃はあったが、痛みはない。拍子抜けしかかったタンクジョウだが──己の運命が今この瞬間決したことを、寸分のちに思い知らされることとなった。

 

 背後に出現した巨大なブラックホール。それは凄まじい吸引力でもって、タンクジョウを吸い寄せていく。

 

「な、なんだこれは……!?」

「言ったはずだ、シャドーラプターはなんでも吸い込む。地獄よりよほど遠い、異次元にな」

 

 

「──俺たちとの出逢い、後悔しろ」

 

 もがきながら吸い込まれていくタンクジョウ。しかしいよいよ消えようかという瞬間、ふぅと鮮明な吐息とともに身体の力を抜いたように見えたのは気のせいだろうか。

 あるいは彼は、これでようやく力への妄執から解放されたのかもしれない。歓喜の中にほんのわずか苦いものの混じった、そんな勝利だった。

 

 

 *

 

 

 

 苦い、といえば、明確に省みるべきこともあった。

 

「森……だいぶ、荒れちまったな」

 

 看過できないほど荒廃した目の前の光景に、エイジロウが唸るようにしてつぶやく。

 なるほどタンクジョウの攻撃による爆発、極めつけに巨人同士の戦いによって相当量の木々が焼けたり、あるいは倒れてしまったのだ。作戦とはいえ、それを助長するようなこともしてしまった。

 

「この森で採れる果実は、サルカマイ村でも常食されてる。……荒れてしまった森をもとに戻すには相当な時間がかかるから、村の今後の食糧事情にも影響が出るかもしれない」

「ッ、我々の、力不足か……!」

 

 彼ら騎士の目的は、世界の平和を……そこに生きる人々の暮らしを守ることだ。それが為せなければ、どれほどドルイドンを屠ったとて騎士たるに値しない。

 

「………」

 

 漂う沈痛なる沈黙。──それを破るように、漆黒の竜が姿を現した。

 

「シャドー、ラプターか……」

 

 強力な騎士竜だ。心強いことは言うまでもない。──ただすべてを呑み込みこの世から消し去るその力は、危険ともいえた。

 しかし己の危険性を重々承知しているがゆえに、彼は独りではなくて。

 

 くわ、と開かれる口。吐き出されるブラックホール。思わず身構えたエイジロウたちだったが、今度のそれは吸収ではなく排出のためのものだった。

 

「!!」

「白い、騎士竜?」

 

 そう──シャドーラプターと対をなすような、純白の騎士竜が姿を現したのだ。

 

「ハアァァァ……」

 

 それは女性のため息のような声で鳴くと同時に、虹色の光線を森に向かって吐き出した。まばゆいそれに、思わず目を閉じる。

 

──そして再び目を開いたとき、驚くべき光景が広がっていた。

 

「!?、も、森が……」

「元に、戻ってる……?」

 

 言葉の通りだった。まるで最初から壊れてなどいなかったかのように、森はもとの瑞々しい姿を取り戻していたのだ。

 

「──あれはシャインラプター。光と再生を司る、シャドーラプターと対をなす騎士竜だ」

「!!」

 

「……親父、」

 

 白い騎士竜の正体を明かしながら再び現れた父を、ショートは睨みつけた。

 

 

 つづく

 

 





「マイナソーが死んだら甦った死者たちもみィんな消える」
「あの世で首ィ長くして待ってんぜ」

次回「光と闇のはざまで」

「これが、てめェの望んだ死だ」


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