作者も大好きソウルくん
内通者ショックと同時に来てどういう気持ちでいればいいかわからない月曜日でした
どうでもいいですが人?名入りサブタイが3話連続で続いてしまいました
オウスの街の西方に広がるステップ地帯で、巨人と巨獣とが死戦を繰り広げていた。
「ッ、ショート、モサレックス!合体だ!」
「──ああ!」
"竜装合体"──キシリュウオーディメボルケーノとキシリュウネプチューンがひとつとなり、より巨大かつ重厚なる竜神が誕生する。
「いくぜ、ギガントキシリュウオー!」
ティラミーゴとモサレックスとディメボルケーノ、それぞれ単騎でも絶大な力を誇る騎士竜たちの集合体である。並のマイナソーに対抗できるはずがない。攻撃をすべて弾き返され、その何倍にも及ぶ猛攻に追い込まれていく。
そして、
「とどめだ──」
「「ギガント、ダブルバイトォ!!」」
両腕のティラミーゴヘッド、モサレックスヘッドを交互に叩き込む。紅蓮の炎と黄金の雷を併せた力に、マイナソーは耐えきれず爆散したのだった──
「っしゃあ、勝った!」
「たりめーだ、喜んでねーでとっとと行軍再開すっぞ」
「……もうちっと労ってくれよなぁ。なぁ?」
「ティラァ!!」
*
ワイズルーとクレオンが、西方へ向かった。
旅人等からの目撃情報を総合してそう判断したリュウソウジャー一行がオウスの街を出立して、既に三日が経っていた。その間彼らが行きずりにつくったのだろうマイナソーと遭遇戦を演じること、幾度目かにもなる。
「目指すは、西!」
「西!お母ちゃんお父ちゃんの故郷があったところやぁ……」
「マスターレッドもな!」
そういうわけで、特にエイジロウとオチャコはわくわくしていた。無論これまでとは異なる、険しい化外の地であることは承知している。砂嵐が吹き荒れ、照りつける太陽を妨げるものもろくにない灼熱の世界だと。そういった環境もあり、リュウソウ族の多くは東方の村に移住してきたわけだが、大勢いる人間たちはそうではない。未だあちこちに集落や街を築き、生活を営んでいる。
無論、メリットもある。激しい熱波と砂嵐を嫌ってか、ドルイドンもあまり寄りつかないのだ。厳しい環境ゆえに、安寧が約束された地。しかしそこに、ワイズルーは食指を伸ばそうとしている。
平和を破らせはしない。そのために、エイジロウたちは新天地へ向かい歩を進める──
──のだが、
「な、なんだよこれ……!?」
「………」
行く手に立ちふさがる光景を前に、一行は言葉を失っていた。──断崖絶壁。ひと言で言い表すならそんなところだが、その先に続く大地もあちこちが隆起して歪な峡谷を形作っている。
「西への道は、かくも厳しいものなのか……!」
「……いや、違うよ。前はこんなじゃなかった」
「前にも言ったろ、大陸のあちこちで地殻変動が起きとる。ここもたぶん、そう以前のことじゃねえはずだ」
「……ワイズルーたちは、本当にここを渡ったんでしょうか」
「まあ、連中はドルイドンだからな。どうにでもするだろう」
しかし自分たちはそうではない。人間より平均して身体能力の高いリュウソウ族、その中でも選びぬかれた騎士たちとはいえ、ここを越えていくには相当難渋するだろう。誤解されたくないので口にはしないが、普通の人間の子供であるコタロウだっているのだ。
「何か渡る方法を考えなければな……」
「………」
「──デクくん、どうかした?」
なんともいえぬ表情を浮かべていたイズクは、それに気づいたオチャコの問いにはっと笑顔を浮かべた。
「い、いやぁ……空を飛んでいけたらな、って思っただけ」
「空!」
その瞬間オチャコの脳裏に浮かんだのは、自分を先頭にした長箒に皆で跨りびゅんと飛んでいく姿。
「……ごめぇん、私がいつまでも魔法覚えないばっかりに」
「!、い、いや違っ、そういうことじゃなくて……!」
オチャコのコンプレックスを無自覚につついてしまったことに気づき、慌てて弁解するイズク。その一挙一動を嘲るように鼻を鳴らしつつ、カツキは峡谷の遥か向こうに目をやった。
「……空、なァ」
「カツキ?」
「………」
と思ったら、あっさり踵を返す。長年一緒にいるイズク以外は、まだまだ彼の行動を読みきれない。
「おい、どこ行くんだ?」
「ここでウダウダやってるより、地元の連中にハナシ聞いたほうが早ぇだろうが。別について来たくねえなら来んでいいぞ」
「そんなこと言ってねえだろ〜?まったくもー、すぐそうやっておめェは……」
その独断専行にはなんだかんだついていく一行だが、当然訊くべきことは訊いておきたい。まあカツキも最近どこまで本気で突き放そうとしているか、というところなのだが。
*
ステップ地帯を南に二時間も歩いたところに、ヤービン村という小さな集落がある。南国情緒あふれるオウスの街と異なり、イモの栽培や家畜の飼育によって生計を立てている質素な村だった。
「なんか、私たちの村思い出すなぁ……」
オチャコのつぶやきに、エイジロウとテンヤも同意を示す。旅に出て数ヶ月──リュウソウ族の時間感覚ではさほどの期間ではないはずだが、村でのことは既に懐かしい記憶になりつつある。郷愁に駆られるスリーナイツにショートが無邪気に話しかけた。
「お前らの村か。もとに戻ったら、俺も行ってみてぇな」
「!、お、おうもちろん!大したもんはねえけど、ウチにも遊び来いよ!」
「うちにも是非来てくれ!皆、喜ぶと思う!」
「うちのごはんめっちゃ美味しいよ!」
「そうか、楽しみだな」
そのときはコタロウや、仲間になった騎士竜たち皆で──村の人々、とりわけ騎士団の面々は大いに驚くだろう。その日が楽しみだ、だからこそ──
決意を新たにするスリーナイツを尻目に、風を冠する幼なじみふたりは村人からかの峡谷について聞き出すことに成功していた。
「じゃあやっぱり、あの峡谷は最近になってできたものなんですね」
「ああ。元々西のほうとはそれほど交流もなかったし、あれのおかげで砂が飛んでくることも減ったから、ウチの村としちゃかえって有り難いんだけどねぇ」
「あんたらはそうかもしれねーが、俺らはいい迷惑しとるんだ」
「かっちゃん、言い方……」
イズクがやんわり注意するが、幸いにして村人の男に気を悪くした様子はなかった。
「西へ行きたいのかい?だったら、"運び屋"に頼むといいよ」
「運び屋?」
「少し前にウチの村に住み着いた、あんたたちくらいの男さ。でかい鳥を手懐けてて、そいつに人や荷物を乗せて空を飛ぶんだ。オレも乗せてもらったが、速いし怪物に襲われる心配もないし、何よりすごく気持ちいいぜ」
「ちっと怖いけどな」とからから笑いながら、頭上を見上げる村人。──と、その目がまさしくそのものを捉えた。
「ウワサをすれば、戻ってきたよ」
「!」
つられて上空を見やるふたり。──果たして彼らの対照的な色をした瞳は、揃って見開かれていた。
「あれ、まさか──」
「デク、行くぞ」
「うん……!──ありがとうございました!」
村人にお礼だけ言って、戻ってきた大鳥を追って駆け出す。突然のことに戸惑うエイジロウたちも、彼らを追って走るほかなかった。
怪鳥と言うべき巨大な鳥は、そのまま村の片隅にある川の傍に着陸した。背中から、するりと複数の人影が降り立つ。
「ふぃ〜、お仕事終了!おつかれさん、ピノ」
「Pi!」
「ロディおにいちゃん、わたしたちは〜?」
「へいへい、お前らもおつかれさん。ロロ、ララ」
「へへ、にいちゃんもおつかれさま!」
それは三人の少年少女だった。うちひとりは青年と呼んでも差し支えない年齢で、上背もある。皆共通して、この辺りでは見かけないような彫りの深い顔立ちをしている。そして"にいちゃん"という呼称から、彼らはきょうだいであるようだった。
「きょうも稼いだことだし、ぼちぼち食材恵んでもらいにいきますかね。なに食いたい?」
「僕、ハンバーグ!」
「わたしも!」
「オーケーオーケー。じゃあピノ、ここで待ってな「!、Pi!Pii!!」──うおっ、どした!?」
急に鳥が翼をばたつかせて騒ぎ出したものだから、少年たちは当然びっくりした。いつもなら、こんな喚き方はしないのだが。
そのとき、
「──ロディ!!」
「!」
同じ男にしては甲高い、柔らかな声音。かつて聞いたのと然程も変わらないそれに、ロディと呼ばれた少年は弾かれるように振り返った。
そこに立っていたのは、
「──デク……?」
「ロディ……!」
彼──イズクはそのまま、躊躇なく川に入って駆け寄ってくる。浅い清流だが、脛あたりまでは水に浸かってしまうだろうに。尤もそれを気遣う余裕は、ロディにもなかった。
川を飛び越えてきたイズクは──その勢いやまず、ロディに飛びついた。
「うおっとぅ!?……おいおい、いきなり熱烈だな、勇者サマ?」
「だって、きみとこんなところで
「……ああ。
ロディだけではない。ロロもララも、ピノと呼ばれた大鳥も皆、イズクの傍に群がっている。その光景を目の当たりにして、追いかけてきたエイジロウたちは当然ながら戸惑った。
「あ、あのデクくんが自分から飛びついていくなんて……!」
「しかも呼び捨てとは……」
「カツキ。あいつとおまえたち、どういう知り合いなんだ?」
「ア゛ー?どういうも何も、ただの知り合いだわ」
「なるほどな、ダチか!」
「ンなこと言ってねーだろうがクソ髪ィ!!」
キレるカツキへの対処に困っていた一同だったが、向岸のイズクは早くこっちにおいでと手招きをしている。幸いすぐ傍に小さな橋がかかっていたので、皆そちらから川を渡ったのだった。
ロディの自宅までの帰途を歩きながら、イズクは彼らのことを紹介した。
「彼はロディ。で、この子たちが弟妹のロロくんとララちゃん。それと──」
「──ピノ。俺の相棒さ」
ロディが引き継いで言う。「Pi!」と、ピンク色の大鳥が鳴いた。
「やっぱりこの子、ピノなんだ……。随分でっかくなったね」
「懐に余裕できたから、一緒にメシ食わせてたらどんどん成長して、コレよ。おかげで
「カッチャン言うな!」
マントにひっつく子供たちを、カツキは鬱陶しげに振り払っている。しかしその仕草すら、どこか親しげで──
「ロディとは、昔オセオンっていうここからずーっと西にある国で出逢ったんだ。そこで大きな事件に巻き込まれて──」
「──この勇者サマふたりに救けてもらったってワケ。あ、ひょっとして、こいつらもリュウソウ族のお仲間?」
「!?」
「うん、そうだよ!同じリュウソウジャーなんだ」
「!!?」
エイジロウたちは当然ながら驚いた。このロディという少年、リュウソウジャーならまだしも、リュウソウ族のことを知っている?
「リュウソウ族のことまで、彼に話しているのか?」
「ア゛ァ?なに言ってやがる」
「だって、あんまり言いふらしたらあかんって言うとったやん……!」
昔の話とはいえ、それを自ら──昔?
「昔って、いつ?」
「ああ……昔って言っても、そんな前じゃないよ。七、八年くらい前かな」
確かにリュウソウ族基準の七、八年は昔というには最近だが、問題はそこではなかった。
「それだとロディさん、まだ子供だったんじゃないですか?」
コタロウの言葉が真理だった。さらに五、六歳くらいにみえる末の妹のララなどは、生まれてすらいなかったのではないか。しかしイズクもカツキも、当然のようにロディを対等に扱っていて、ララのことも知っている──
「まさか、おまえたち……」
「──そ、」
不意に立ち止まったロディが、悪戯っぽく笑って告げた。
「俺たちも、リュウソウ族ってワケ♪」
「………」
「えぇぇ────ッ!!?」
本日二度目の驚愕だった。