【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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27.地の底に棲むもの 3/3

 結成されたマイナソー討伐部隊は集落を発ち、地下迷宮の内部を進軍していた。

 

「きみら、本当についてくるつもりなのか?」

 

 確認するような──できれば心変わりしていてほしそうな──メゾウの問いに、コタロウは躊躇なく頷いた。それに後れて、ロロララ兄妹も。

 

「マイナソーは勇者(ヒーロー)でも難渋するような相手です。僕は多少なりとも、マイナソー退治を傍で見てきていますから……何かアドバイスできることが、あるかもしれない」

 

 言うまでもなく、マイナソーは千差万別の能力の持ち主である。豊富な実戦経験をもつイズクとカツキなどに比べれば、思考面でもできることは限られているだろうが。

 それでも同じ人間が戦うのに、安全な場所で待っているだけというのは嫌だった。人間には誰しも有形無形問わず役割があって、それは状況によって変化する。少なくとも今は、守られるだけではいられないと思った。

 

「コタロウが行くなら、僕らだって……!」

「コタロウくんは、わたしたちがまもる!」

 

 そう言うロロはダガーを、ララは銃、と見せて水鉄砲を握っている。あくまで護身用の武器、前線に出て戦おうなんて言うのではなく、コタロウの護衛役を務めてくれるつもりのようだった。

 

「……わかった。何かあれば遠慮なく指示してくれ」

 

 頷き、ひたすら歩を進める。闇雲に歩いているわけではない、一行の中には犬獣人に似た姿よろしく嗅覚にすぐれた者がいて、マイナソーの発する独自のフェロモンを追っているのだ。

 

 そうして進むこと小一時間──犬獣人の青年が、鋭い声をあげた。

 

「匂いが強くなりゃしたっ、もう近いですッ!!」

「!、皆構えろ!」

 

 一斉に武器を構える戦士たち。直後、岩べりの隙間をこじ開けるようにして、真なる化け物が姿を現した。

 

「ドッチィ!!」

 

 アリの腹部を揺らしながら、獅子のごとく咆哮する──ミルメコレオマイナソー。獲物を狙う光る眼は、相手がどんな姿をしていようが関係ない。ある意味では平等な、捕食者たる存在だった。

 

「攻撃開始!」

 

 部隊のうち弓をとった者たちが矢をつがえる。複数が横薙ぎの雨のように放たれ、マイナソーの視界を封じた。

 しかし、有り合わせの弓矢が通用するのなら、そもそもリュウソウジャーの出る幕などない。矢はかわすまでもなく弾かれ、その武具が無意味と気づくや、躊躇なく突撃してきた。

 

「ッ、」

 

 布に隠れた口を引き結んだメゾウは、一瞬コタロウに目配せをした。頷くコタロウ。ここまで来るより前に、既に彼らに伝えてはある。

 

──マイナソーに通常の武器は効かないと思ってください。規格外の力で、打ちのめすしかありません。

 

「ぬうぅおおおおおッ!!」

 

 半ば巨人のような体躯の大男が、常人では持ち上げることもかなわないような大斧を振り下ろす。その重量から放たれる一撃に怯んでか、前進一本だったマイナソーが咄嗟に後退した。

 

(規格外の力……!怪物の、力!)

 

 人々から疎まれ恐れられたこの肉体で、真なる化け物を討つ!

 メゾウが拳を握りしめると同時に、皮膜で繋がった副腕の先がぼこりと盛り上がる。主の腕と同じように拳が現れるが、それは人間としては並外れた大きさのものだった。

 

「喰らえ──怪物ッ!!」

 

 大斧とは逆方向から、振り下ろされる六つの拳。逃げ場を失い混乱するマイナソーは、腕もしくは前脚によってそれを防ごうとする。

 それらが接触した刹那、

 

「────ッ!?」

 

 凄まじい地揺れが、コタロウたちを襲った。

 立っていられないほどの衝撃に、岩壁に手をついて耐える。ロロもまた同様にしつつ、自分の身体に妹をしがみつかせていた。

 砂塵に苦しみつつも、かろうじて目を開ける。そこには驚くべき光景があった。メゾウが殴りつけた場所から周囲に、大きなクレーターが広がっていたのだ。

 

(なんてパワーだ……)

 

 ムキムキソウルを使ったオチャコ並かもしれない。いや彼女は見た目には普通の女の子なので、本来比較対象に挙がってくるのもどうかという話なのだが。

 拳は残念ながら直撃とはならなかった。しかしミルメコレオマイナソーの片足は隆起した地面に挟み込まれ、身動きがとれない状態に陥っている。おそらく数秒の隙だが、メゾウはそこで一気に勝負をかけるつもりだった。

 

「──終わりだ!」

 

 手の先が鋭く尖っていく。爪……なのだろうが、もはやそれは鎌のようだった。それが横薙ぎに一閃され、

 

 マイナソーの身体を、両断した。

 

「!!!!!」

 

 獅子の顔が驚いたように目を見開きながら岩壁まで吹っ飛ばされ、べしゃりと地面に崩れ落ちる。残ったアリの下半身は、司令塔を失ったことで力なくその場に崩れ落ちた。

 

「……すご、」

 

 思わずそんな声を洩らしてしまったコタロウである。リュウソウジャーたちでさえ撃退にはそれなりに時間をかけているというのに、一瞬で勝負を決めてしまうとは。

 

「──この怪物は獅子とアリの半身をそのまま合成したような姿をしている。その繋ぎ目なら、脆いだろうと考えたんだ」

 

 読みが当たってか、心なしか弾んだメゾウの言葉。コタロウが半ば呆気にとられていると、後ろからぽんぽんと肩を叩かれた。

 

「ドンマイ、コタロウ」

「いやドンマイって……」

 

 思った以上にメゾウの洞察力が優れていたために、コタロウがここに来た意味は薄れてしまったのは確かだった。まあ、それならそれで喜ばしいことである。

 むしろコタロウは、心身ともにマイナソーと渡り合える人間が、こうして地下に逼塞していなければならない現状を憂えた。"普通の"人々が彼らを受け入れさえすれば、彼らは己の望むまま活躍できるのだ。メゾウなら勇者になれる、地底に棲むものたちのリーダーを立派に務めていることを思えば為政者にだってなれるだろう。それなのに。

 

 コタロウはペンを取り、手帳に書き記した。彼らの奮戦を、そうした己の想いを──

 

──しかしそれを書き終えようとしたとき、異変が起こった。

 

「ドッチィ……」

「!」

 

 死んだと思ったはずのマイナソーが身じろぎしたかと思うと──泣き別れた半身双方から、失われた部位が再生しはじめたのだ。

 獅子の上半身からは、アリの下半身が。アリの下半身からは、獅子の上半身が。

 再生を終え、怪物()()は同時に立ち上がる。──ミルメコレオマイナソーが、二体に増えてしまった。

 

「馬鹿な……っ」

 

 これにはメゾウ以下戦士たちも動揺を隠せない。怪物を倒したどころか、その数を増やしてしまった。誰も予想しえない結果だった。

 

「「ドッチィ!!」」

 

 双生児と化したマイナソーが同時に襲ってくる。分裂しても、その能力までもが分割されたわけではない。さらに少なからず浮足立った戦士団は、敵の攻撃にあっという間に総崩れになって追い込まれていく。

 

「そんな……」

 

 呆然とするコタロウたちに──標的をあらかた狩り尽くしたマイナソーの片割れが、じろりと視線を向けた。

 

「「「ドッチィ……?」

「──!」

 

 ロロとララが、咄嗟にコタロウの前に飛び出す。

 

「こ、こないでぇ!」

「こ、ここここコタロウにはっ、指一本触れさせないからな……!」

「ロロ……!ララちゃん……っ」

 

 駄目だ、彼らではどうにもならない。死ぬ順番が入れ替わるだけだ。コタロウは己の無力を呪った。一度は守り手たちを否定しておきながら、自分の力では何も守れない──!

 

(お母さん……!僕はいい、このふたりを──)

 

 別れを告げた母に、それだけはと願いをかけた刹那、

 

『モッサァ!!』

『ボムボム〜!!』

『ビューーーン!!』

 

 地底の闇を光の塊が通り抜けたかと思うと、続いて疾風のような影が複数飛び込んできて、ミルメコレオマイナソーに激突した。

 

「「ドッチィィ!?」」

 

 同時に撥ね飛ばされるマイナソー。前兆のない状況の変転だったが、何が起こったのかコタロウはすぐに察知した。

 

「──良かった、間に合った……!」

「ア゛ァ?ンで同じマイナソーが二匹もいやがる」

 

 疾風と威風の、緑と黒の騎士。そして、

 

「コタロウ、ロロ、ララ、無事か!?」

「!、エイジロウさん、みんな……」

 

 わずかに後れて、また別々の色の持ち主たちが駆けつけてくる。合わせて六人。いや、今日は生身を晒している少年がもうひとりいる。

 

「ロロ、ララ!」

「にいちゃん……!」

「ロディおにいちゃあん!」

 

 兄に飛びつくふたり。そんな彼らをぎゅっと抱きしめ、ロディはほっと息を吐いた。弟妹は大丈夫と信じる気持ちも真実だが、だからといって心配でないなんてことはない。今だって、リュウソウジャーの手が届かなければどうなっていたか。

 一方、そのリュウソウジャーたちはというと、躊躇うことなく前面に飛び出していた。

 

「皆さん、どうしてここが──」

「ロディくんから聞いたんだ、この地溝帯の下には迷宮のような空間が広がっていると!」

「キケソウルにクンクンソウルを使いまくってやっと見つけ出したんだぜ。にしても──」

 

 彼らの視線がメゾウたちに向く。はっとしたコタロウは、慌てて声を張り上げた。

 

「皆さん、その人たちは──」

「──大丈夫、わかっとるよ!」リュウソウピンクが応じる。「マシラオくんとかツユちゃんみたいな人たち、ってことでしょ?」

 

 そうだ。彼ら……というか自分も含めて、既にそういう人々には出逢っていた。ここにいる人たちほど露骨に怪物然としていないからかろうじて表の世界に踏みとどまっていた彼ら。しかしそこにも懊悩はあって、このリュウソウ族の少年たちはそれにふれてきたのだ。

 

「コタロウたちを救けてくれてあんがとな!」

「僕らはマイナソー……あの怪物退治の専門家です。あとは任せて!」

「!、……了解した。こちらこそ、感謝する」

 

 そう言って、メゾウたちは後退していく。──ここからは、リュウソウ族の騎士たちの独擅場だ。

 

「勇猛の騎士!リュウソウレッド!!」

「叡智の騎士ッ!リュウソウブルー!!」

「剛健の騎士!リュウソウピンク!」

「疾風の騎士ッ、リュウソウグリーン!!」

「威風の騎士……!リュウソウブラックゥ!!」

「栄光の騎士、リュウソウゴールド!」

 

「……風塵の騎士、リュウソウブラウン」

「えっ」

 

 つぶやくような声。皆の視線が集中した先は、ロディ少年だった。はっとした様子の彼はぶわっと一気に顔を赤らめ、口元を押さえている。

 

「な、ななななんでもねえ!……続けてくれ」

「お、おう。じゃあ……──正義に仕える気高き魂!」

 

「「「「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」」」」

 

「俺たちの騎士道、見せてやるッ!!」

 

 口上の締めとともに、リュウソウケンを突きつける。実に惚れ惚れするような封切りだとは常日頃思っているが、今日はそのまま戦わせるわけにはいかない。

 

「そいつを迂闊に斬らないで!分裂する!」

「は!?」

「……なるほど、二体いるのはそういうことか」

 

 「だったら俺の出番だ」と、ゴールドがクラヤミソウルを構える。と同時に、二体のミルメコレオマイナソーが飛びかかってきた。

 

「「ドッチィイ!!」」

 

 先ほどの遠距離攻撃をゴールドの仕業と看破しているようだ。そのうえでそれが一番の脅威になるとも気づいている。見かけに反して、なかなかに頭の回るマイナソーではないか。

 しかしゴールド単独ならいざ知らず、彼には柔軟に動ける仲間がいる。

 

「カツキ!」

「わぁってンよォ!──カタソウル!!」

 

 『ガッチーン!!』と声が重なり、レッドとブラックの右腕に水晶のような硬質の鎧が装着される。こちらから斬るのが駄目なら、

 

「「ドッチィ!?」」

 

 弾いてしまえばいいだけのこと。

 

『──強・竜・装!』

 

 そしてその隙に、ゴールドは漆黒の鎧を纏うことに成功していた。

 

「ふっ!」

「ドッチ!?」

「ドッチィイ!!?」

 

 暗黒物質弾の直撃を受け、二体まとめて問答無用で弾き飛ばされる。

 

「よし、このまま一気に決める」

 

 そう、一気に──分裂などしようもないやり方で。

 

「ファイナル、ブラックホールショット──!」

 

 ひときわ濃密なエネルギー弾が放出され、マイナソーの片割れを貫く。刹那その背後にエネルギーが拡散、巨大なブラックホールを形成した。

 

「「ドッチィイ!!?」」

 

 外のものを吸い込まんと吹く風に、マイナソーは確実に引き込まれていく。二体とも。とりわけ撃ち抜かれた片割れは、既に捕らわれたも同然の状態で。

 結局抵抗もむなしく、その姿は闇の彼方へ消えていった。残る一体も、あと少しで──

 

──刹那、緑色をした塊がいくつも飛来した。

 

「!?」

「ドッ、チ……──ドッチィイイイイッ!!」

 

 リュウソウジャーの面々は経験則上、何が起きるかを知っていた。──あと一歩、遅かったのだ。

 

 分厚い岩盤をぶち破り、巨大化していくミルメコレオマイナソー。見上げんばかりのおぞましい姿が、夜空を背景にこちらを見下ろしていた。

 降りそそぐ瓦礫を避け、あるいはコタロウやロディたちを守りながら、彼らは叫んだ。

 

「ティラミーゴ、みんな、頼む!!」

 

「──待ってたティラアァ!!」

 

 戦場に駆けつける巨大な鋼鉄の恐竜たち。こういう事態に備えて、同行せず迷宮の外で待機してもらっていたのだ。昼間のように空飛ぶ敵というわけでもない。同じ巨大戦力で、一気に決着をつける──!

 

「竜装合体!」

 

 ティラミーゴと、四体の騎士竜。そしてモサレックスが従騎士竜アンモナックルズとひとつとなり、二体の竜神が誕生する──

 

「「「「「キシリュウオー、ファイブナイツ!!」」」」」

「キシリュウネプチューン!」

 

 地溝に半ば埋もれながら、対峙する竜神と怪物。先んじて動いたのは、後者だった。

 

「ドッチイィ!!」

 

 重たいアリの下半身を四本の脚で支えながら、飛びかかってくる。無論上半身には、獅子の前脚が発達した腕がそびえているのだ。

 

「そんなモンで!」

 

 ナイトランスを構え、敵の一撃を受け流す。そのまま反撃に転じようとして、はっとした。

 

「ッ、斬撃は駄目だ。また分裂させてしまうかも……!」

「だぁっ、とことん騎士泣かせなヤツ……!」

「──問題ねえ」

 

 後方に回り込んだネプチューンが、アンモナックルを放つ。巻貝が変形した巨大な拳が直撃し、マイナソーは悲鳴をあげながら吹き飛んだ。

 

「そうか、打撃なら!」

「ああ。……任せろ」

「任せるか!」

「かっちゃん!?」

 

 恒例、威風の騎士の独断専行が始まった。──ジョイントチェンジ。キシリュウオーの纏う騎士竜の鎧や武器がその配置を変えていく。そして最後に、頭部がブラックリュウソウルに差し替わった。

 

「これは──」

「キシリュウオー、ファイブナイツブラックだァ!!」

 

 黒主体となったファイブナイツが、当惑するネプチューンとゴールドを置き去りにして再び戦闘に入る。ナイトメイスを振り上げ、叩きつける。たったそれだけの、シンプルだが容赦ないにも程がある戦い方。

 

「……なぁ、あれ誰の主導だと思う?」

 

 地上、というか岩盤の割れ目から戦闘を見守っていたロディが、弟妹とコタロウに訊く。

 

「誰ってそんなの……」

「……ねぇ?」

「うん!」

 

 皆、イメージは一致していた。何がなんだかという様子のメゾウたちを置いて、彼らは苦笑するほかないのだった。

 

──そうこうしている間にも、戦闘はいよいよ佳境に入っていた。

 

「終わりにしてやんよ、ライオン……アリ……アリライオン野郎!!」

「えー……そのまんまやん」

「きみをもってしてもネーミングが難しかったか」

「ウルセェ!!」

 

 ともあれ、グロッキー状態の標的に肉薄し、

 

「「「「「ファイブナイツブラック、アルティメットブレイク!!」」」」」

 

 ファイブナイツ全体のエネルギーを注ぎ込まれ、破裂寸前にまで膨れ上がったメイスを──叩きつける!

 

「!!!!!!」

 

 獅子もアリも引っくるめて叩き潰され、ミルメコレオマイナソーは哀れ爆散したのだった──

 

「おー、お見事。しかしすげぇな、騎士竜たちがあんな姿になるなんて」

 

 タイガランスとミルニードルしか、実物としては知らなかったロディたちきょうだいである。カツキの戦い方には引いたが、キシリュウオーやネプチューンの勇姿に釘付けになっていた。

 

(……良い仲間ができたんだな、あんたらも)

 

 良いチームだ、そう思った。先ほど"風塵の騎士"なんて名乗ったが、それが本当になったら。そんなふうに考えて、小さく笑った。自分はこれからも弟妹と助け合いながら生きていく。足るを知り、空を飛べる。そしてこの先世界を救ってくれるであろう騎士たちの手助けができたのだと胸のうちで誇ることができれば、それで十分だった。

 

「Pi……」

「!」

 

 ポケットの中で休ませていたピノが、不意に鳴いた。

 

「ピノ、目ぇ覚めたか?」

「PiPi!」

 

 ひとまずはそれだけでもと安堵するロディたちだったが、プルス・ウルトラ、ポケットから飛び出したピノはその容積をむくむくと増していく。そしてあっという間に、人数人を背に乗せて飛べるだけのサイズに戻ったのだった。

 

 

 *

 

 

 

「──我々のようなものを守っていただいて、感謝の言葉もない。本当なら、心尽くしの礼をしたいところだが……」

 

 心底惜しげなメゾウの言葉に、エイジロウたちはいやいやとかぶりを振った。自分たちはただ駆けつけて、マイナソーを倒したというだけ。この場の主役ではない。

 それにタイムロスを取り戻すべく、彼らはすぐにでも再出立するつもりでいた。

 

「皆さんは、これからどうするんですか?」

 

 コタロウの問いに、メゾウは「同じさ」と即答した。これからも自分たちは、この地下迷宮で生き続けると。

 その生き方を否定するつもりは毛頭ない。表の世界はまだ、彼らを受け入れる土壌を備えていないのだから。

 でも、だからこそ──

 

「僕、皆さんのことを大勢の人たちに伝えます。姿かたちが普通でなくても、普通の人以上の正義と優しさをもって、生きている人たちがいると」

「……コタロウくん」

「それがうまくいったら、また会いましょう。今度は、日の当たる場所で」

 

 そう言って、コタロウは右手を差し出した。メゾウのそれに比べ、なんと小さく、汚れていない手か。しかし今は、包み込むような大きさに見えた。

 

「……喜んで」

 

 ピンクの巨鳥に乗り、少年と仮面の騎士たちは飛び立っていく。メゾウはいつまでも、その姿を見送っていた。

 

 

 果たして第二の別れも間近に迫っていた。夜通し飛び続けたピノのおかげで、夜明けに一行は西の玄関口である砂丘に到着することができたのだ。

 人里の近くで降ろしてもらい、代金を支払う。それをロディが確認して了とすれば、契約は満了となる。

 

「毎度あり。じゃーな、リュウソウジャー。なかなかスリリングな旅、楽しませてもらったぜ」

「うん……ありがとう、ロディ。またきみに逢えて良かった」

 

 踵を返したロディが立ち止まる。

 

「……そーかい、そーかい。ま、俺らは暫くこの辺りを行ったり来たりしてる。また会うことも、あるかもしんねえな」

「……うん。いや、また会おう。必ず」

「………」

 

 ロディはもう何も言わなかった。ただ、待ち受ける先でピノが涙をこらえて震えている。イズクには、それだけで十分だった。

 一方で、

 

「カツキさん、かっこ良かったよぉ!」

「また救けてくれてありがとう!」

「だあぁっ、ひっつくなガキども!」

 

 やはりカツキに懐いているロロララ兄妹。しかし彼らは彼らで、再会までとは異なる、新たな友誼を結んだことは言うまでもない。

 

「ロロ、ララちゃん」

「!」

 

 カツキに振り落とされる勢いも手伝って、ふたりはコタロウのもとに駆け寄った。

 

「……僕を守ってくれようとして、ありがとう」

「え、あ、あー……ふふん!子供を守るのは年長者の務めだからね!」

 

 良くも悪くも兄の影響を強く受けているロロに対して、ララの物言いは率直だった。

 

「コタロウくん、おわかれ?」

「……うん、僕は行くよ。僕なりにできることを、見つけるために」

「………」

「ロロ。ララちゃんのこと、ちゃんと守ってやれよ」

「!、当たり前だろ!誰にモノ言ってんだ!」ぷりぷり怒りつつ、「……コタロウ。きみはきっと僕よりずっと早く大人になっちゃうんだろう。それでも僕ら……友だち、だよね?」

「!、………」

 

「──もちろん」

 

 ふたりは約束をした。いつかロロが成人を迎えたら、ともに酒を飲み交わそうと。そのときにはコタロウも、随分いい歳になってしまっているだろうけれど──

 

 

 絆を深め、新たな友を得──惜別を胸に秘めながら、彼らはそれぞれの旅路へつくのだった。

 

 

 つづく

 

 




「眩しすぎる、きみ……!」
「失ってしまったのは……おそらく、"勇気"だ」
「俺、リュウソウジャー失格だ……!」

次回「レッド・ライオット」

「逃げるな、使命を果たせ。それがきみの責務だろう」
「自分で決めたこの生き方だけは、絶ッ対曲げねえ!!」


今日の敵‹ヴィラン›

ミルメコレオマイナソー

分類/ビースト属ミルメコレオ
身長/222cm
体重/175kg
経験値/406
シークレット/獅子の上半身とアリの下半身をもつ合成怪獣"ミルメコレオ"のマイナソー。原典のミルメコレオはその肉体ゆえ、食事でまともな栄養がとれず餓死してしまうと言われているが、マイナソーなのでその弱点は克服しているぞ!しかも上半身と下半身を切り分けられても、死ぬどころか分裂してしまうのだ!
ひと言メモbyクレオン:ぶっちゃけキショい!あとアリジゴクみたいな能力使えるのはまさか、ダジャレ?
※アリジゴク=アントライオン

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