【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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28.レッド・ライオット 3/3

 

「──もう逃がさんぞ、ワイズルー!!」

 

 町の片隅にある廃屋に潜んでいたワイズルーたちを発見したエイジロウを除くリュウソウジャーは、そのまま戦闘に突入しようとしていた……のだが。

 

「ふん!こちらには人質がいること、忘れていないか〜い?」

「ほら見ろよぉ。この女、宿主になったクセに意識あんだぜ!すごくね!?」

 

 クレオンに拘束された踊り子の少女・ミナ。彼女は苦しそうに浅い呼吸を繰り返しながらも、拘束から逃れようともがいている。ステージを乗っ取ったワイズルーに臆さず食ってかかる心の強さ、そして踊りで鍛えた身体──それらが、彼女を支えているのだろう。

 

「ッ、卑怯な……!」

「!、待ったデクくん!」

 

 "卑怯"という言葉にワイズルーが喜ぶことを知っているピンクは、グリーンを咄嗟に制止した。

 

「耳、貸して」

「えっ……あ、あぁうん」

 

 ごにょごにょごにょ。耳打ちを受け、「……なるほど」と頷く。なんだなんだと歩み寄ってきた他の三人にもふたりがかりでそれを行う。

 

「なんだ、何をひそひそと……」

「おぉぉーーい、こそこそ作戦会議なんて騎士らしくねぇぞぉー!」

「……ユウキィ」

 

 野次るクレオン。しかし宿敵の打って出た行動は、彼らの予想だにしないものだった。

 

「黙れよ腰巾着、自分ひとりじゃ何もできないくせに!」

「なぁ……っ!?」

 

 ただの罵詈雑言ではない、あまりに的を射た反撃に、クレオンは思わず絶句してしまう。「Oh……」と肩をすくめるワイズルーにも、その火の矢は降りかかった。

 

「何回人質をとれば気が済むんだっ、いい加減食傷気味だぞー!!」

「!?」

 

 演出家もといエンターティナーには痛いひと言。さらに、

 

「このド三流ー!!」

「駄作量産機!!」

「アホボケカス、死ねぇぇ!!」

「おまえのショー、単純に面白くねえ」

 

 約一名ちょっと方向性は異なるが、とにかくワイズルーの痛いところをつく罵倒が続く。立ち直りかけたクレオンがフォローしようとすると、再びそちらにも。

 そんなことを幾度となく繰り返された結果──彼らは、立ったまま真っ白な灰と化してしまっていた。

 

「……やられた……。言葉の刃に、斬られてしまった……」

「腰巾着……ひとりじゃ何もできない……」

「ゆ、ユウキィ!?」

 

 マイナソーが慌てている。奴にしてもこちらから注意を外したのは僥倖だ。──チャンスは、今しかない。

 

「デクくん今や!」

「うん!──ノビソウル!!」

『ノビソウル!ビロ〜ン!』

 

 ドルイドンコンビがはっと我に返ったときには、伸びた刀身がミナの身体に巻きついていた。

 

「獲った!」

「ああっ、やっべぇ!」

 

 クレオンが焦燥に駆られた声を発するが、時既に遅し。絡め取ったミナの身体は、ピンクがしっかりと確保していた。

 

「人質奪還、成功!」

「よもやあのような悪口が効くとは……」

「は、クソ雑魚メンタルどもが」

「言葉は刃物だって姉さんが言っていたが、本当だな」

 

 言われたい放題である。普段はめったに開閉しない口でぐぬぬとハンカチを噛み締めながら、ワイズルーは猛然と立ち上がった。

 

「よくも……よくもコケにしてくれたなぁ!絶対に許さないのでショータァイム!!」

 

 結局ショータイムと言ってしまうものだから迫力も何もあったものではなかったが、ワイズルーは本気だった。ステッキを掲げ、天にめがけて光線を放つ。その動作が何を意味するか、リュウソウジャーの面々も経験済みだった。

 

「ッ!」

 

 光の刃の雨が降りそそぐ。リュウソウケンで防御の構えをとりつつ、最悪の場合は己の身を犠牲にしてでもミナを護らなければと覚悟を決める。大局より先に、目の前の命──以前マイナソーの宿主となったコタロウに刃を向けたカツキでさえ、言葉にはせずともそれを前提に行動している。

 ならば、"彼"は。

 

「────ッ、」

 

 『ガッチーン!!』という聞き慣れた音声とともに、その姿が割り込んでくる。彼は硬質化した肉体と剣を最大限に駆使して、ワイズルーの放つ刃の雨をほぼひとりで防ぎきった。

 

「!、エイジロウくん……」

「………」

 

 髪は黒く、べったりと垂れたままだ。しかし仲間たちにはわかった。その背中が、漢の覚悟と矜持を纏っていると。

 

「おやおや、誰かと思えば弱虫レッドくんじゃアーリマセンカ〜?」

「セルケトマイナソーに勇気を吸われたおまえに、今さら何かできると思ってんのかよぉ!?バァカ、バーーーカ!!」

 

 先ほどの意趣返しも込めて最大限の嘲笑をぶつけるワイズルーとクレオン。対するエイジロウは、

 

「……は、」

 

 笑って、いた。

 

「……確かに俺は弱ぇよ。俺みてーなヤツが本当にリュウソウジャーにふさわしかったのか、正直わかんねえ」

 

「──でもな、」

 

「一度決めたら、貫き通す!自分で決めたこの生き方だけは、絶ッ対曲げねえ!!」

 

 レッドリュウソウルが輝きを放つ。その光を、エイジロウはなんの躊躇もなくリュウソウチェンジャーに喰らわせた。

 

「リュウソウ……チェンジ!!」

『ケ・ボーン!──リュウ SO COOL!!』

 

 リュウソウチェンジャーから無数のパーツが飛び出し、エイジロウの身体を覆っていく。手足、胴体──そして、頸。血より鮮やかな、勇猛の証たる真紅の鎧。

 さらに、

 

『強!リュウ!ソウ!そう!──この感じィ!!』

 

 赤いリュウソウメイルの上に、きらきらと星屑のようなエナジーが生成される。それらが寄り集まってひとつとなり、宇宙の象徴たる鎧へと姿を変えるのだ。

 

『コスモソウル!!』

「勇猛の騎士──リュウソウレッド!!」

 

 名乗りをあげると同時に、走り出す。その猛烈な勢いに圧されたワイズルーは、ヒステリックな声で叫んだ。

 

「でえぇぇぇいッ、何をしているセルケトマイナソー!ワンモア、ヤツから勇気を奪ってしまいナサ〜〜イ!!」

「ユウキィ!」

 

 マイナソーが前面に出てくる。と同時にその尻尾が勢いよく伸び、レッドの真正面に迫ってきた。

 恐怖を覚える。剣を持つ腕がわずかに震える。それでも彼は、足を止めることだけはしなかった。

 

(俺はもう逃げねえ、)

 

「必ず──使命を果たすッ!!」

 

 宇宙のエナジーを纏った刃が一閃し──尾を、切断していた。

 

「ユウキイ゛ィ……ッ!?」

「やべっ、尻尾が……!」

「えぇぇいっ、何をやっている!こうなれば──」

 

 再びジョーカーたるフィニッシュブローを放たんとするワイズルー。しかし彼は失念していた。敵はレッドだけではないのだ。

 

『ハヤソウル!ビューーーン!!』

「でぃやぁッ!!」

「G☆WA☆A☆A!!?」

 

 疾風のごとく肉薄する緑の騎士に斬りつけられ、ワイズルーは悲鳴をあげた。

 

「お前らの相手は、」「──俺たちだァ!!」

 

 BOOOOM!!と文字通りの爆音を響かせ、漆黒の騎士がやはり文字通り飛んでくる。彼だけではない、叡智の騎士と剛健の騎士。彼らもまた次々と標的に攻撃を仕掛けていく。ステッキ一本でどうにか対抗しているワイズルーだが、人数差もあって明らかに不利だ。少なくとも、レッドの行動を妨害するような余裕はない。

 

「うわ、これまた大ピーンチ……。目ぇつけられないうちに退いとこ……」

 

 抜き足差し足忍び足。戦場からこっそり遠ざかろうとするクレオンであったが、

 

「──うぎゃあ!!?」

 

 背中から強烈な痺れと衝撃が奔り、クレオンは悲鳴とともにもんどりうって倒れた。

 

「逃げられると思ってんのか?」

「げぇ、ご、ゴールド……」

 

 淡々とした中に感情を滲ませた声音が、ブラックに対するのとはまた異なる恐怖をクレオンに味わわせる。

 ともあれ幹部二体は完全に抑えた。あとはレッドがマイナソーと決着をつけるだけ。

 

「うおぉぉぉぉ──ッ!!」

 

 獣のように雄叫びをあげながら、その実彼は思考を巡らせていた。セルケトマイナソーの硬い甲殻は、生半可な斬撃を通さない。ならば最大火力の一撃で、一気に決着をつける──!

 

「ふ──」

 

 (そら)を背に跳躍し、

 

「コズミック、ディーノスラァァァッシュ!!」

 

 光と闇のシナジーを宇宙(そら)のエナジーに変えて、叩きつける!

 

「おぉぉぉぉ──ッ!!」

「ユ、ウ゛、キィ……ッ!」

 

 耐えている。やはり、硬い。

 しかし甲殻には確実にヒビが入りつつある。あと少し、あと少し踏ん張れば、倒せる──!

 

 

「──エンシェント、ブレイクエッジ」

 

 はっと顔を上げたときには、闇の刃が目前に迫っていた。咄嗟に受け身をとるも、大きく吹き飛ばされるレッド。

 

「ぐうぅ……ッ!?」

「エイジロウ!?」

「エイジロウくんっ!」

 

 ドルイドンへの牽制を中断し、仲間たちが駆け寄ってくる。とはいえ追撃しようなどという余裕はワイズルーたちにしてもなかったが。

 

「今の攻撃──」

「!、あれ……」

 

 陽炎の向こうから重々しく現れる、紫苑色の鎧騎士。二度にわたってリュウソウジャーの前に立ちはだかったその姿は、それをきっかけに波乱が巻き起こったこともあっただけにはっきりと記憶に刻み込まれていた。

 

「ガイ、ソーグ……!」

 

 リュウソウメイルに似た鎧。リュウソウケンに似た刃。それらを身に纏っていながら、彼(彼女?)は、

 

「……その強さ、喰らい尽くす……!」

 

 くぐもった声でそう言い放ち、斬りかかってきた。

 

「ッ!」

 

 六人がかりで応戦するリュウソウジャー。ワイズルーたちは呆然としていて、ガイソーグと共闘する様子もない。人数のアドバンテージは確保できているにもかかわらず、彼らは攻めあぐねていた。

 

「ッ、こいつ、やっぱり……!」

 

──強い。

 

 目にも止まらぬ鎌鼬のような剣技は、疾風の騎士であるリュウソウグリーン以上。それでいて一撃の重さは、腕力に秀でたピンクさえ上回っているようだった。

 そんな中、コスモソウルのもつ宇宙の力を引き出すことでレッドは目の前の敵に喰らいついていた。

 

「……怯懦を捨て去ったか。見事だ、リュウソウレッド……」

「ッ、おめェは……」

 

 いったい、なんなんだ。ドルイドンの味方なのか?しかしワイズルーたちに助太刀しようという意図は窺えないし、彼らもそう受け取っている風ではない。そうだとすれば、連携して攻めてくるところだろう。

 

「ッ、てめェいい加減にしろや!!」

 

 ブチ切れたブラックが、猛然とリュウソウルを剣に装填する。一番の矢面に立つレッドを除く面々も、それに追随した。

 

『ブラック!』

『グリーン!』

『ピンク!』

『ブルー!』

『イタダキモッサァ!!』

 

「「「「クアドラプル、ディーノスラァァッシュ!!」」」」

「ファイナルサンダーショット!!」

 

 ファイブナイツを構成する四大騎士竜、そしてモサレックスのエネルギーがひとつとなり、ガイソーグに襲いかかる。それは見事に直撃し、ひときわ大きな爆発を引き起こした。

 

「ッ、今度こそ……!」

 

 半ば祈るような気持ちだったが、それは届かない。

 

「………」

 

 盾を前面に構えることで、ガイソーグは己へのダメージを極限まで軽減していた。これまでと変わらない結果だった。

 

「……以前より力が増している。そうでなくては──」

 

 声は相変わらず淡々としたものだったが、端々に悦びが滲んでいる。リュウソウジャーの面々が、長期戦を覚悟したときだった。

 

「──う、ぐ……ッ」

 

 突如頭を押さえ、苦しみだすガイソーグ。手放された盾が落下し、ごとりと重々しい音をたてる。

 

「なんだ……?」

「!、見て、兜が!」

 

 しゅうう、と音をたてながら、兜が粒子状になって消滅していく。それは皆、とりわけブラックの剣を握る手に力を漲らせた。そこに隠されているものが、思い描いた通りなのか、否か──

 

「ッ!」

 

 しかし兜が完全に消え去ろうという寸前、ガイソーグはリュウソウルらしきものを剣に装填、可視の強大な竜巻を生み出した。襲いくる暴風。衰弱しているミナを守るためにも、彼らはその場に踏ん張る以上のことができない。「どさくさ紛れにセイグッバイ!」という、ワイズルーの巫山戯た声が聞こえてなお。

 果たして竜巻が消え失せ、空気が凪に戻ったときにはもう、ガイソーグの姿もワイズルーたちの姿ももうどこにもなかった。

 

 

 *

 

 

 

 その後暫くを捜索に費やしたものの、町の中にワイズルーやクレオン、マイナソーの影を発見することはできなかった。

 

「奴らめ、どこへ行ったんだ……!」

 

 悔しげに拳を握りしめるテンヤ。皆も同じ気持ちではあったが──間もなく日が沈もうとしている。

 

「……今日はここまでだ。明日にすんぞ」

「え、でも──」

 

 カツキの思わぬ言葉に反論しようとするスリーナイツ組だったが、

 

「町ン中は探し尽くした。あとは町の外しかねえが、夜の砂丘に出ンのはリスクが大きすぎる」

「昼間が嘘みたいに寒くなるし、目印らしい目印もないからね……。方角がわからなくなって彷徨った挙げ句、凍え死になんてことにもなりかねない」

 

 ただでさえ皆、行軍からの戦闘で消耗しているのだ。ワイズルーたちの行動原理──リュウソウジャーとの死闘(ダンス)──を鑑みても、今は追跡より体力の回復を優先させようという判断だった。

 

「……わかった。おめェらがそう言うなら」

 

 是非もないと頷くエイジロウの髪は、ふたたび赤く染まっていて。それは彼が、勇気を取り戻したことの証左だった。

 

「そういやテンヤ、オチャコ。昔の俺のこと、皆に話したんだろ?タマキセンパイから聞いたぜ」

「!、う、うむ……すまない、勝手なことを……」

「ホンマごめん……!お詫びといっちゃアレやけど、私たちの黒歴史も暴露してええから!たとえばほら、見習い騎士だった頃、テンヤくんが合宿所でおねしょしてもうた話とか──」

「オチャコくん!!?」

 

 慌てて右往左往するテンヤを見て、皆ひとしきり笑った。その尾を引いたまま、エイジロウが言う。

 

「いいよ、俺が弱虫だったことも、それがスタートだったことも事実だからさ。でもひとつだけ、訂正させてほしい」

「な、なんだろうか?」

 

 事実でない部分があったとしたら、それは単なる悪口だ。ふたりの顔に不安が浮かぶが、エイジロウの表情は朗らかなままだった。

 

「俺が憧れたのは、親父やタイシロウさんだけじゃねえ。──おめェらもだよ」

「え、私たち……?」

 

 首を傾げるふたり。彼らは無自覚なのだろうが、幼少期、何事にも一生懸命に取り組み、困っている仲間に手を差し伸べることを知っていた彼らの姿は、エイジロウの心に火をつけたのだ。

 

「歳の近いおめェらに負けてらんねえ、追いつきたい、追い越したい!そう思ったのが、俺が変わった最初のきっかけなんだ」

「エイジロウくん……」

 

──騎士になるまでの日々、苦楽をともにしてきたスリーナイツ。六人のチームワークというものを前に主張しない、する必要がないくらい、彼らの絆は固く結ばれたものにほかならなかった。

 

「さ、急ごうぜ。コタロウたちが首ながーくして待ってっからな!」

 

 駆け出す六人。その姿を密やかに見つめる影には、誰も気づくことはなかった。

 

「……彼らなら、あるいは」

 

 つぶやくと同時に、手元に目を落とす。古びた羊皮紙に描かれた地図、その中心に打たれた赤い目印。

 

 竜の咆哮が、タマキの耳に届いた。

 

 

 つづく

 

 






「ここに騎士竜パキガルーがいる」
「会いたい、父ちゃん!」
「俺たちを信じろ、チビガルー!」

次回「うなれ鉄拳」

「「「キシリュウオー、パキガルー!!」」」
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