【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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揺るぎのないことし最後の投稿どぇす


29.うなれ鉄拳 1/3

 

 マイナソーの宿主となった少女の健康観察も兼ね、リュウソウジャー一行は旅の一座が逗留する宿を借りることになった。

 夕食も平らげ、夜も深まった頃合い。休みたいのはやまやまというか、そのためもあってマイナソー追跡も断念したわけだが、こういう状況なので即座に就寝というわけにはいかない。皆、ひとつの部屋にすし詰めになって、明日以降の方針を改めて確認する場を設けていたのだが。

 

「騎士竜の、封印?」

 

 その報せをもたらしたのはリュウソウジャーのメンバーではないけれど、エイジロウの基準に照らせば既に仲間も同然の青年だった。

 

「……ああ。これを見てもらって、い、いいかな」

 

 先輩格であるというのに、やたら遠慮した物言い。原因として、彼がそういう性格なのが九分、カツキが彼を睨んでいることが一分というところか。

 

「これは……地図、ですか?」

「この周辺の……かな?」

 

 イズクが疑問形で言ったのは、地図がかなり古いものなのか、町などの表記が一切ないためだ。しかも海岸線を中心に、ところどころ地形が現在と異なっている。海面上昇や地殻変動などの影響もあり、昔より海際が陸地に迫っているのだ。このムスタフの町もいずれ海に呑まれてしまうかもと言われているのだが、そこまではエイジロウたちの知るところではなかった。

 その中でも「ここ」とタマキが指差した部分は、陸地がそこだけ歪に出っ張ったような形をしていた。さらにその上から、赤く印が付けられている。

 

「ここに騎士竜"パキガルー"がいる……はず」

「"はず"だァ?」

「ヒッ!い、いる!……きっと、おそらく……」

 

 結局推定を外せないタマキに対し、カツキは表情に侮蔑を張りつけた。イズクが注意してもどこ吹く風なのは、今さらの話である。

 

「……今、この岬は海面上昇で孤島になってる……。──ショート、くん。きみとモサレックスの力、借りてもいいかな……?」

「もちろん。つーか、ンな遠慮しないでください。こっちがいたたまれないんで」

「……すいません……」

 

 消え入りそうな謝罪の言葉。苦笑する者が大勢だが、カツキなどは露骨に苛立ちを深めている。

 

「じゃあ明日、早速……」

「──あ、ちょ、ちょっと待ってください!」エイジロウが声をあげる。「俺ら、まだ昼間のマイナソーを倒せてないんス。先にそいつ見つけ出して倒さねえと、あのミナって娘が……」

 

 ガイソーグの妨害は、間違いなく痛手だった。マイナソーごとワイズルーたちを取り逃がしてしまい、その行方は杳として知れない。彼らの性格上、このまま隠れっぱなしということはなさそうなのが不幸中の幸いというくらいか。

 主張するエイジロウに対し、タマキは眩しいものを見るかのように目を背けた。何か言いたげな様子であることはありありと伝わってくる。ただ彼は過去のトラウマゆえ、相手と意見を戦わせることに極めて臆病になっているのだ。安心させるように、エイジロウは鋭い歯を見せてにかっと笑ってみせた。

 

「言いたいことは言ってくださいよ、タマキセンパイ。俺ら、ちゃんと受け止めますから!」

「!、……ッ」

 

 ぎゅっと唇を引き結ぶタマキ。しかしエイジロウに「センパイ!」とにじり寄られ、彼はあっさりと観念した。

 

「……ワイズルーより強いドルイドンが北方、それに宇宙にも存在している……。そいつらがいつきみたちのことを聞きつけて襲ってくるかわからない、だからっ!……だからきみたちは、一刻も早く、もっと強くならなければ駄目なんだ……そう、思って……」

「センパイ……」

「……俺は、リュウソウジャーじゃない。決めるのはきみたちだ、それでいいと思う……」

 

 やはり、遠慮が先に立つ。タマキの言い分は決して間違っていない。しかしリュウソウジャーとして、優先すべきは目の前の人命である。明日すぐにでもマイナソーを倒し、そのうえで騎士竜パキガルーに会いにいく、それしかないとエイジロウは思ったのだが。

 

「──では、こうするのはどうだろう!?」

 

 不意にテンヤが、いつも通り張りのある声をあげる。ただここはそう広くはない宿屋の中である。イズクが「しぃー」と唇に手を当てる。「すまない」と頬を赤らめて謝罪しつつ、テンヤは続ける。

 

「奴らの第一の狙いは我々リュウソウジャーだ。移動する我々を発見すれば、あとを追ってこずにはいられないだろう。つまりだな──」

 

 道中、とにかく目立つようにしながら、ワイズルーたちを誘き出す。奴らが追いついてきたところで戦闘し、最低でもマイナソーだけは必ず倒す。それがテンヤのプランだった。

 

「なるほどな。それなら両取りできるかもしれねえ」

「うん、僕も良いと思う。テンヤくんのプランをもとに、具体的なアクションを詰めていくのでいいんじゃないかな。ね、かっちゃん?」

「けっ、叡智の騎士サマの面目躍如ってワケかよ」

 

 コタロウも含め、頭脳明晰組が集まって作戦会議を始める。一行七人のうち五人までもが頭の回転が速いというのは、リュウソウジャーの大きなアドバンテージだとエイジロウは思う。尤も自分は残るふたりの片割れなのだが、人には向き不向きというものがある。

 そしてもう一方の片割れはというと、にやにやしながらタマキの脇腹を肘でつついている。

 

「!、な、何……?」

「なかなかやるでしょ、ウチのブルー!まあ実践じゃ、まだまだデクくんたちには敵わないんだけどねぇ〜」

「なんでおめェが偉そうなんだよ、オチャコ?」

「だってぇ〜」

「……仲良いんだな、きみたち……。俺にはそういう仲間、ミリオ以外には……」

 

 なんでかまた陰鬱な雰囲気を纏い出すタマキだったが、それも長くは続かなかった。慌てた様子で、男が部屋に飛び込んできたのだ。

 

「!、あなたは、一座の──」

「ミナが……ミナが、いなくなった!」

「え!?」

 

 和やかな雰囲気は雲散霧消した。

 

 

 眠っているはずのミナが姿を消したのは、見守っていた座長が小用に立った三分ほどの間だったという。ならばそう遠くへは行っていないはずだと考え、エイジロウたちは足を動かす前に感覚強化系のリュウソウルを使用した。

 結果、ミナはすぐに見つかった。彼女は公演が行われるはずだったステージの上にいたのだ。スポットライトも聴衆もないその場所で、彼女は軽快なステップを踏み、身体をくるりと回転させる。──その美麗なダンスにエイジロウなどは、一瞬魅了されかかったのだけど。

 

「ミナっ、何やってるんだ!?」

 

 座長がステージに駆け上っていく。エイジロウたちも慌ててそれに続いた。

 果たして彼女は動きを止めたが、それが随意によるものかはわからなかった。上司に駆け寄られた途端、彼女はふっと脱力して寄りかかる形になってしまったので。

 

「なんて無茶するんだ……!おまえは消耗してるんだぞ!?」

「だって……っ、皆にアタシの踊り、見てもらいたいから……!そのために、この町に来たんだから……っ」

「ミナ……」

 

 ミナは疲れ果てていたが、しかしその黒目がちな瞳には力がこもっていた。しなやかな身体に漲る気迫に、思わず息を呑む。

 しかし、圧倒されてばかりはいられない。覚悟を決めたエイジロウは、彼女に歩み寄っていった。

 

「明日!」

「!」

「明日には、あの化け物を倒す。そうすりゃあんたも解放される。だからそれまで、ちょっとだけ待っててくれねえか?」

 

 「頼む」と、エイジロウは小さく頭を下げた。騎士として、彼女の命も矜持も守る。そのためなら何をするにもまったく躊躇いはなかった。

 ややあって、不意にミナが口を開いた。

 

「……アタシね、こんな肌の色してるせいで、親に捨てられて……この一座に拾ってもらうまで、独りで生きてきたんだ」不意の告白だった。確かにそのピンク色の肌は、常人離れしていて。「だからアタシには、踊りしかない……ううん、踊りと出逢って、初めて生きてて良かったって思ったの」

「……そう、だったのか」

「信じて、いいよね。あんたたちのこと──」

 

 ミナの瞳が、初めて不安に揺れる。勇気と心の強さを持ち合わせた彼女が、弱みを晒してくれている。その信頼に応えないわけにはいかない。

 

「もちろん。俺たちリュウソウジャーに、任せとけ!」

 

 そう言って、エイジロウは己の胸を叩いた。

 

 

 *

 

 

 

 翌朝。

 

「じゃあコタロウ、行ってくるな!」

「タイガランスとミルニードルを近くに残していくから、何かあったら頼ってね」

「はい。皆さんも、お気をつけて」

 

 コタロウには町で留守番をしてもらい、一行は出立した。岬──もといかの孤島に行くには、ここの港からでは遠回りになってしまう。最短ルートで移動するための入り江を、タマキが知っていた。

 

「流石っスね、タマキセンパイ!」

 

 エイジロウの手放しの称賛に、タマキが顔を赤らめながらも何故か距離をとるひと幕もありつつ。

 さて、その道中である。隠密ではなく、むしろその逆。ワイズルーたちの目をひくため、徹底的に目立つ必要がある──とは、テンヤの提案であるが。結果、彼らはこんな行動をとっていた。

 

「うおおーーッ!!この先の孤島にいる騎士竜パキガルーに会いに行くぜ〜〜っ!!」

「ティラア!ティラアァ〜!!」

「新たな騎士竜に会えるとは、超超超超イイ感じだなあーーッ!!!」

「ホンマやねえーーッ!!」

 

 そのままの大きさの騎士竜たちを率い、大声で叫びながら練り歩く。もはや奇人変人の集団である。スリーナイツ、そしてイズクはがんばっていたが、ショートはどうにも声が小さく、カツキに至っては歩きながらリュウソウルを磨いている有様。タマキは……言うまでもないだろう。

 カツキに言わせれば馬鹿みたいな取り組みであったが、彼らの意図は達成していた。遥か潜伏地点から、ワイズルーが遠眼鏡を使って彼らを監視していたのだ。

 

「ヤツら……新たな騎士竜の封印を解きに行くつもりか……?」

「──どーします、ワイズルーさま?このままマイナソーにエネルギー吸わせときゃ、完全体にできますけど……」

 

 クレオンの問いに対し、振り向いたワイズルーはチッチッチと人差し指を振ってみせた。

 

「そんなの、芸がナッシングにも程がある!即座に出撃するのでショータァイム!!もちろん、セルケトマイナソーも連れてな」

「……ハイハイ、そっすね。そう言うと思ってました」

 

 ワイズルーは卑怯だが、自分なりの美学をもって戦争(ステージ)に臨んでいる。馬鹿らしいと思いつつ、それでこそという気持ちもクレオンにはあるのだった。

 

 

 *

 

 

 

 入江に到着したところで騎士竜たちをチーサソウルで小型化し、待ち合わせていたモサレックスと合流する。そしてショートが使える数少ない魔法をかけてもらい、水中に適応した身体となったところで、彼らは潜航を開始した。

 透明度の高い、明るい日差しの差し込む海中を進んでいく。色とりどりの海藻や珊瑚礁、その周囲を泳ぎ回る大小様々な魚たち。見目に心地よい光景だったが、見惚れているゆとりはない。

 

「奴ら、我々を発見したようだ。まだ遠いが、確実にあとを追ってきているぞ」

「そうか……テンヤの作戦、大成功だな」

「海ではおそらく仕掛けてこないだろうけど……孤島に着いたら、いつでも戦えるようにしておかないとね」

 

 そう──騎士竜の発見と同時に、この先では戦闘も待っている。そうでなくては困るのだ。今日必ずマイナソーを倒すと、ミナに約束したのだから。

 

 

 孤島に到着したのは、それからおよそ半刻後のことだった。

 

 

 

 

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