「「「リュウソウチェンジ!!」」」
『ケ・ボーン!!──リュウ SO COOL!!』
小さな騎士たちが鎧の欠片となり、そしてリュウソウメイルへと変わる。エイジロウたちを、リュウソウジャーに変身させるのだ。
「俺たちの騎士道、見せてやる……!──ティラミーゴっ!!」
「トリケーン!」
「アンキローゼ!」
「ティラアァァ!!」と咆哮が響く。赤き騎士竜が、仲間を引き連れ駆けつける。その鮮烈なる姿は、夜の暗闇にあってもなお燦然と煌めいていた。
「では、手筈通りに頼むぞ!」
「おう、任せとけっ!」
テンヤ──リュウソウブルーの言葉に頷き、跳躍するエイジロウ──レッド。その身がティラミーゴの体内に吸い込まれていく。
そしてティラミーゴは、再び麗しき巨人へと姿を変えた。
「いくぜティラミーゴ……いや、キシリュウオー!」
走り出すキシリュウオー。同時にその尾が分離し、左腕に装着される。
「うぉらぁッ!」
地上に飛び出した頭部はすべて、キシリュウオーを狙って襲いかかってくる。素早くかわしつつしなるテイルウィップを振るい、それらに叩きつける。そうして痛めつけ、本体を地中から引きずり出すことが第一目標。
だが旺盛すぎる食欲に支配されたワームマイナソーとて、本体ごと飛び出してしまえばそれまでだと判断する程度の知能はある。そして、目の前の獲物を狩るために策を弄することも。
──刹那、キシリュウオーの背後からまたひとつ、ワームマイナソーの頭部が飛び出した。
「!!」
如何に小回りのきくキシリュウオーといえども、目の前の敵に専心している状況では後方にまで対処はできない。
むろん、キシリュウオーとシンクロしているエイジロウはそのことを理解している。もとより、彼はひとりで戦っているのではないのだ。
そう──キシリュウオーの背を庇うように、トリケーンとアンキローゼが立ち塞がる。
トリケーンの双角がミミズの頭部に突き刺さり、アンキローゼの尾を構成するナイトハンマーが叩きつけられる。堪らず地面に潜ってゆこうとする頭部だが、そうはいかない。
「ノビソウル!」
『リュウ!ソウ!そう!そう!──この感じィ!!』
『ノビソウル!ビロ〜ン!!』
ピンクの右腕に空色の鎧が装着されたかと思うと、その手中にあるリュウソウケンが──伸びた。柔らかくしなる刃はワームマイナソーの頭部に巻きつき、それ以上の潜降を阻む。
「う、ぐぐぐ……っ」
しかしその巨体を保たせておくことは、如何に剛健の騎士たるリュウソウルピンクでも困難なことだった。身体の質量が数千、数万倍も違う相手だ。本来なら、力比べにすらならない。
ならばどうするか。相手を、軽くしてしまえば良いだけの話だ。
「カルソウルッ!」
すかさず真紅のリュウソウルを装填するブルー。『フワフワ〜!』と気の抜けた音声とともにリュウソウケンの切っ先から波動が放たれ、ワームマイナソーを包み込んでいく。
すると、オチャコの腕にかかる負担が一気に軽減された。カルソウル、文字通り対象の重量を軽くするリュウソウルである。
「よ〜し、このまま……──うわぁ、それでも重っ!」
軽減されたといえど、人間もといリュウソウ族が引きずり出すにはワームマイナソーはあまりに大きい。咄嗟にテンヤが支えようと手を伸ばし……引っ込めた。
「ちょっ……テンヤくん!なんで手伝ってくれないん!?」
「い、いや俺たちは妙齢の男女であるからして……気安く身体に触れるわけには……」
「そんなこと言ってる場合ちゃうでしょ!」
オチャコが気にせずとも、テンヤにとっては切実な問題である。
尤も彼が恥を忍んで助けに入ったところで、ワームマイナソーのスケールを前には焼け石に水と言うよりほかにない。彼よりも適任の存在が、この戦場には居た。
「よ〜しッ、俺らに任せとけ!」
頭部の群れが戦闘どころでなくなったのを良いことに、キシリュウオーも引きずり出しに加勢した。両腕で根本を掴み、懸命に引っ張り上げる。トリケーンとアンキローゼもまた、牙を使ってそれに加勢してくれる。
「お、おお……ありがとうトリケーン!しかし……くっ、俺にもノビソウルがあれば……!」
「テンヤくん、やることないなら応援して!」
「応援!?……よ〜し任せろっ!」
こういうとき、とにかくノリが良いのがテンヤの特徴である。「オーエスオーエス!」と拳を振り上げシャウトを開始する。
さらに、
「!、そうだ!コタロウくん、きみも一緒に応援してくれ!!」
「は!?なんで僕が……」
半ば観客と化していたコタロウ少年。当然応援などしてやる義理はないのだが、目の前の常軌を逸した光景にたかだか十を過ぎた少年が呑まれるのも時間の問題で。
「……お、お〜えす。おーえす……」
蚊の鳴くような声であるのが、彼の最後の理性を象徴していたが。
ともあれリュウソウ族ふたりと騎士竜三体による実働、そしてリュウソウ族ひとり・人間ひとりによる応援により、ワームマイナソーは着実に地上へと引きずり出されていく。
「う、おおおおお〜ッ!!」
「オーエスオーエス!!」
「出て、こいや〜!!」
「おーえすおー……何やってんだ僕」
そして、
「グォオオオオオオオ──ッ!!」
「!!」
大地を裂くようにして、ワームマイナソーの巨体が引きずり出された──
「ッ!」
危うく巻き込まれそうになり、咄嗟に飛びのくキシリュウオーたち。そう、前後を頭に囲まれているということはつまり、彼らの足下にワームマイナソーはいたということだ。
そしてその本体を目の当たりにして、エイジロウたちは言葉を失った。
無数のミミズ頭が、キシリュウオーを呑み込めるほどの一本の太い胴体に繋がっている。そしてその果てに……竜の、頭部があった。
「グァアアアアッ!!」
怒りの雄叫びをあげる竜頭。それを目の当たりにして、テンヤが声をあげる。
「!、そうか……!俺たちが頭だと思っていたのは尻尾だったんだ!」
「えっ……じゃああいつ、お尻からヒト食べてたってこと?」
「そういうことになる!」
「うげ」と蛙の潰れたような声を発するオチャコ。そんな食われ方は御免である。いや食われること自体受け入れられることではないのだが。
ワームマイナソーは敵に背?を向けたまま、尾部のミミズ頭で喰らいついてくる。テイルウィップでそれらを牽制させつつ、エイジロウは叫んだ。
「テンヤ、オチャコ!──合体だ!」
「合体……!」
「よし来たっ!」
トリケーンとアンキローゼも意気軒昂である。──ここからが、騎士竜戦隊の本領発揮だ。
「──竜装合体!!」
その言葉が合図となった。トリケーンがキシリュウオーの右腕に、アンキローゼが左腕に喰らいつく。一見するとフレンドリーファイアのような一撃だが、それは新たなる騎士を生み出すための行為であった。
二体の騎士竜が、その形態を変えていく。──キシリュウオーを包み込む、鮮烈な鎧となる。
そして自らが選んだ騎士たちを体内に取り込むことで、キシリュウオーはその真なる力を解放するのだ。
名付けて、
「「「キシリュウオー、スリーナイツ!!」」」
スリーナイツ──神殿から甦ったときの姿となったキシリュウオーは、トリケーンの頭部が変形したナイトソードを構えて敵と対峙する。敵──ワームマイナソーはミミズ頭を触手のようにして、差し向けてきた。
「ンなモン……!」
ナイトソードを振るい、それらを切り飛ばす。後ろを向いた竜頭が悲鳴をあげるが、手加減などしていられない。ミミズ頭を着実に減らしていけば、それ即ちワームマイナソーの戦力を削ぐことに繋がるのだ。
「行儀の悪ィミミズ頭、全部切り落としちまえ!キシリュウオー!」
「全部切り落としたら本体を叩く!やね!」
「そういうことだ!」
トリケーンとアンキローゼという新たな鎧を纏ったスリーナイツだが、その身のこなしは損なわれていない。むしろ出力が上がっているだけあり、単純なスピードであればさらに上昇しているともいえる。
当然ながら、その破壊力も。
「っし、ジョイントチェンジだキシリュウオー!!」
エイジロウの求めに応え、ナイトソードが右腕から分離──脚に移される。
そしてその刃が、回し蹴りの形で一挙に振るわれた。
「ガアァァッ!!?」
複数の尾を一気に切り取られ、竜頭がいよいよ絶叫する。刹那、慌てて地面へ齧りつき、地中へと逃げ込もうとする。その時点で勝負はついたようなものだったが、
「そうは、いかないっちゅーの!」
残った尾の付け根を掴み、強引に引きずり出す。そうして逃亡を阻むと、今度はその胴体めがけてアンキローゼのテイルハンマーを叩きつけた。
その一撃が効いてか、ぐったりと力が抜ける。エイジロウたちはいよいよ勝利を確信した。あとは、とどめを刺すだけだと。
「っし、行くぜ──!!」
再びソードを腕に戻し、跳躍するキシリュウオー"スリーナイツ"。剣を振り上げ──振り下ろす。その一瞬で、すべてが決まる。彼らはそう信じて疑わなかった。
──彼らはわかっていなかったのだ。マイナソーという自然の摂理からは外れた生命体が、それゆえに他のどんな生き物よりも生に執着するのだということを。
果たしてそれは、失われたミミズ頭の尾ががばりと姿を現すことで顕在となった。
「!?」
突然のことに、空中から降下の真っ最中だったキシリュウオーは対処できない。新たに生えてきた複数のミミズ頭に全身を絡め取られ、拘束されてしまう。
「んな……っ、なんだよこれ!?」
「ッ、こいつの尾は切っても元に戻るんだ……!トカゲのように!」
「……!」
その結果が今──決したはずの趨勢をひっくり返されたと言うほかないこの状況か。三人はそれぞれ己の慢心を後悔したが、何もかもが遅い。幾重にも巻きついたミミズ頭はキシリュウオーの四肢や胴体を完全に縛りつけており、如何なる武装をも振るうことを許さない。
もがくキシリュウオーを嘲笑うかのように、竜頭がぐりんと反転してこちらを向いた。逆さになった血のいろの眼が、復讐の炎を揺らめかせている。開かれた口には歯のひとつもないが、それが却ってこのあとのことを否が応でも予測させた。
「こいつ、キシリュウオーごと俺らを丸呑みにする気か……!?」
「うわああっ、嫌やぁこんなヤツに!」
「どんな奴でも嫌だ!ッ、なんとかしなければ……!」
なんとかしなければと言っても、そこに具体的な方策があるわけではない。叡智の騎士といえども、まだ若く未熟なテンヤには限界があった。
「くっそぉ……!」
──万事、休すか。
絶望的な状況にエイジロウが拳を握りしめた、そのときだった。
「──もう大丈夫、」
「僕らが来た!!」
その声は柔らかく、それでいて鮮烈に響いた。
ゆえにそれは、突破口を求めるあまり生み出した幻聴などではない。──現れたのだ、救世主が。
「見て、あれ!」
真っ先にそれを認めたのは、オチャコだった。
草木を拓き、夜を駆けるふたつのシルエット。一方は深緑の猛虎に似た姿を、もう一方は夜に溶けそうなほど漆黒の、鋭い針を背負った剣竜の姿をしている。
だが、エイジロウたちにはひと目でわかった。──彼らもまた、騎士竜なのだと。
「行こう、タイガランス!」
「ミルニードル、ブッ殺せ」
それは、彼ら新たな騎士竜の体内から響いたものだった。
その内なる声に応じ、タイガランスと呼ばれた緑の騎士竜がワームマイナソーの尾に齧りつく。同時にミルニードルと称された黒の騎士竜が背中から無数の針を放ち、マイナソーの胴体に突き立てた。
「グァアアッ!!?」
突然の、かつ容赦のない猛攻撃に、悲鳴をあげるワームマイナソー。そのためにキシリュウオーを拘束していたミミズ頭たちの力が一瞬、大きく弛んだ。
「ッ!」
その隙を逃さず、全身全霊でぬるついた触手の群れを振り払う。果たしてキシリュウオーは解放され、再び大地を踏みしめることができた。
「今だ、リュウソウジャー!」
再び、声が響く。わずかな余裕ができた今、二度目ということもあって、もしやという思いがよぎる。いや……騎士竜の体内に入る資格を有していて、自分たちをリュウソウジャーと知っているのだ。間違いない。
ならば尚更、彼らのつくってくれたチャンスを無駄にするわけにはいかないのだ。
「キシリュウオー、今度こそとどめだ!」
キシリュウオーになったティラミーゴは、恐竜形態のときのように「ティラ!」とは叫んでくれない。しかし問題はない。その体内に宿ることで、返答がなくともその意志は感じとることができるのだ。
「テンヤ、オチャコ、いくぞ!」
「うむ!」
「おう!」
三人の呼吸を合わせ、
「「「──キシリュウオー、ファイナルブレードッ!!」」」
リュウソウケンを、一挙に振るう。その所作に同調し、キシリュウオーもまたナイトソードを振り下ろした。
「!!!!!」
刃が胴体にめり込む。声にならない声とともに抵抗しようとのたうつワームマイナソーだがもう遅い。光を纏った剣は一瞬のうちに体内へ入り込み、断ち切っていく。
そして遂に、頭と尾とが完全に分かたれた。
──刹那、紅蓮の炎が辺り一面を照らし出した。
「ッ、ふぅ……」
倒した。──勝った。
再びドルイドンの脅威を打ち破ったリュウソウジャー。しかし彼らだけの力でなしえた勝利ではない。
新たな二体の騎士竜たちが、じっとこちらを見つめている。
*
夜明けが訪れ、草原に光と
エイジロウたち三人は相棒の騎士竜を離れ、その上に降り立つ。果たして向かい合う先には、タイガランス、そしてミルニードルと呼ばれた二体の騎士竜の姿があって。──その体内からも、ふたつの人影が飛び出してきた。
「俺たち以外の、リュウソウジャー……?」
「………」
「疾風の騎士、リュウソウグリーン」
「……威風の騎士、リュウソウブラック」
風が吹く。涼やかで、烈しい風が。
つづく
「てめェらとつるむ気はねえよ」
「早くマイナソーを倒さなければ、あの人が……!」
次回「トラ・トラ・トラ!」
「人の想いは、そんな浅いものじゃない……!」
ソウルをひとつに!行け、騎士竜道‹バトルロード›!
今日の敵‹ヴィラン›
ワームマイナソー
分類/ドラゴン属ワーム
身長/72.8m
体重/942t
経験値/451
シークレット/巷で"人喰いミミズ"と噂されていた怪物の正体。普段は地下に潜伏しているが、獲物を見つけるとミミズに似た無数の頭が地上に飛び出し一挙に喰らいつくのだ!
実はミミズ頭は尻尾であり、真の姿はヘビに似た手足のない竜である。その姿は伝説上の生物ワーム、そして日本神話に登場するヤマタノオロチにも似通っているぞ!
ひと言メモbyクレオン:ボクのかわいいペット……でした……。うがぁああああ覚えてろリュウソウジャアァァァ!!!