【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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33.旋律の砂塵 3/3

 

 裏街の片隅にある地下酒場を乗っ取り、悪しき魂たちは潜伏していた。

 

「まったく、あんなソングごときで逃げ出すとは!情けなくて涙がでちゃうでショータァイム!!」

 

 ワイズルーにぷりぷり怒られ、「ビートォ……」と萎れるヘラクレスマイナソー。モモの美しい歌声にこれほどダメージを受けるというのは彼らにしても理解できないことだったが、マイナソーは宿主の欲望を拡大解釈したような特異な体質の持ち主ばかりである。弱点はその裏返しともいえた。

 

「まァ、そろそろ回復したみてーだし……。ワイズルーさま、ライブ再開といきやしょう!」

「YES!」

 

 サムズアップをかわしあって──ヘラクレスマイナソーも真似している──、揃って動き出そうとしたときだった。

 

『クサソウル!モワッモワ!!』

「!?」

 

 どこぞで聞き覚えのある音声が響いたかと思うと、反応する間もなく茶色いガスが室内を満たしはじめた。

 そして、

 

「「──臭っせぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」

「ビートォォォ!!?」

 

 悶絶。そのひと言で言い表すほかなかった。倒れ込んで地面をのたうち回る三体の悪魔。果たして今度は『ビューーーン!!』というこれまた聞き慣れた音声が響き渡ったのだけど、もはや気づくことすらできなかった。

 

「ゲホッ、ゴホッ、オ゛エ゛ェェェェ……!!」

「うわ汚っ!ッ、こんなもの!こんなものォ!!」

 

 ブンブンとステッキを振るい、ガスを排除するワイズルー。果たして空間はようやく清浄なものに戻り──臭いはところどころこびりついているが──、視界もクリアになった。

 そこではたと気づいた。宿主兼人質として転がしておいた、少女の姿が消えている──

 

「What!?まさか──」

「──そのまさかさ!」

 

 雪崩込んでくる鎧の竜騎士たち。青、桃、黒、金──そして最後は、唯一彼らとは異なる生身の少女。

 

「りゅ、リュウソウジャー!?なぜここが……」

「あっ!きっとなんたらソウル使ったんスよ!」

「正解!」

 

 意気揚々とピンクが声を張り上げる。キケソウルはリスクがあるので今回は除き、ミエソウルとクンクンソウルで逃走経路を炙り出したのだ。

 そういえば、レッドは今さらにしても、グリーンもいない。と思ったら、疾風怒濤のごとく飛び込んできた。

 

「皆、キョウカさんは安全なところに預けてきたよ!」

「おおっ!」

「!、ありがとうございます、えっと……デクさん?」

「いや、イズ……デクでもいいです」

 

 複雑な気分ではあるが、今は肯定的な──"頑張れって感じ"──意味も含まれているのでよしとする。

 ともあれ、これで舞台は整った。

 

「ええい……!こうなればヘラクレスマイナソー、今度こそ貴様の死のライブを完遂させるの☆DA!」

「ビートォォ!!」

 

 マイナソーが六弦に手を伸ばす。ショート──リュウソウゴールドはすかさずモモに目配せをした。頷いた彼女が、マイナソーの演奏が開始されるとほぼ同時に歌を口ずさみはじめる。

 狂騒のごとき邪悪な演奏と、麗しく澄んだ歌声がぶつかり合う。単純な音の大きさでいえば、前者に明らかな軍配が上がるのは当然のこと。しかし先ほどもそうであったように、音が大きいほうが相手を呑み込むというような単純な勝負ではない。

 あらゆる攻撃に耐性をもつ不死生物が、神聖なる力には滅法弱いように──ヘラクレスマイナソーの演奏は、美しいしらべには力をもたないのだ。

 

 演奏は次第に歌声に押し返され、かき消されていく。やがてそれが到達した瞬間、ヘラクレスマイナソーは苦悶の声をあげはじめた。

 

「ビィ……トォォ……!?」

「ま、まずい!負けてるっスワイズルーさま!!」

「どうシンキングしてもあちらの歌声のほうが上等だから仕方ない!……と言いたいところだがライブは完遂するのだ!──ドルン兵、かからっしゃーい!!」

 

 店の奥やカウンターの中から次々にドルン兵が飛び出してきて、襲いかかってくる。標的はもちろん、美しい歌声を披露し続けているモモその人だ。

 

「そう来ることはわかっているんだ!」

 

 言うが早いか、リュウソウジャー五人もモモを守るための布陣を敷いた。この局面においては、彼女の歌声が何よりの武器になる。それを守るために、全力を尽くす──!

 

「いくぜてめェらぁ!!」

 

 相変わらず仕切りたがりのブラックの号令により、迎撃が開始された。まずゴールドの射撃で敵が遠距離にいるうちにできるだけ数を減らし、それをすり抜けてきた者をグリーンとブラックがノビソウルで打ち払う。それさえも乗り切れた幸運な者は、待ち構えていたブルー&ピンクと斬り結ぶことになるわけだが、リュウソウジャーとドルン兵のどちらに軍配が上がるかは目に見えていて。

 

「ノオォォォ〜!!押されている……!」

「ワイズルーさま、構わずやっちゃって!」

「やむをえまい……!──とうっ!」ステッキを振り上げ、「チェックメイト・デ・ショータァイム!!」

 

 光の矢が放たれ、天井を突き破って急上昇する。それもつかの間、今度はやはり天井を抜けて落ちてきた。リュウソウジャーの頭上めがけて。

 

「ッ!」

 

 軌道そのものは既に肌で知り尽くしている彼らは、リュウソウケンを咄嗟に構えて光の雨を防いだ。とはいえその威力は伊達ではなく、彼らは大きく後退を強いられる。

 

「ッ、クソが……!」

「こいつ、ドルン兵たちを巻き添えに……!?」

「──フン、尊い犠牲でショータァイム!!」

 

 鼻を鳴らしながら、当然のように言い放つ。ワイズルー自身は"尊い"と表現しているだけドルン兵に手厚いつもりでいるのかもしれないが、リュウソウジャーの面々にはどうしようもない下衆と映った。エイジロウたちと出逢う以前のカツキでさえ、自分の愉しみのためだけに敵ですらないものを手にかけたことなどないというのに。

 

「だったらてめェが犠牲になれや……!──メラメラソウル!!」

 

 メラメラっと紅蓮の鎧がリュウソウブラックに装着される。そして彼は刃に炎を纏わせ、ワイズルーに突撃した。

 

「オラアァァァ!!」

「ちょっ……ここ酒場DEATH!?」

「関係ねえんだよカスがぁ!!」

 

 酒に含まれたアルコールに引火させるほど短絡的ではない。猛り狂っているように見えて、威風の騎士の行動は殆ど冷徹な計算の上に成り立っている。

 そして明晰な頭脳が導き出した回答を、優秀な肉体が違えることはない。一見すると我武者羅に剣を振りかざしながら、備品の類を燃やしたり壊したりはしていない。けちをつけるなら、炎の余波で床を多少焦がしているくらいだろうか。それとて計算には入っていて、彼は許容範囲と認識しているというところなのだが。

 

「よし、今のうちに僕らはマイナソーを!」

「うむっ、ショートくんは引き続き彼女の護衛を!」

「ああ」

 

 疾風と叡智、剛健の騎士が同時に走り出す。そに行手に立ちはだかろうとするクレオン。

 しかし、

 

「……やっぱ無理ぃ!」

 

 猛威に恐れをなしてか、あっさり液状化して逃げ出してしまう。慌てるヘラクレスマイナソーのもとに、三人はなんの障害もなく到達することができた。

 

「うおぉぉぉぉ──ッ!!」

「どりゃあぁぁぁぁ──ッ!!」

「はあぁぁぁぁぁ──ッ!!」

「ビートォォッ!!?」

 

 歌に苦しめられるヘラクレスマイナソーは、三人の剣に翻弄される一方だ。今は硬い甲殻でかろうじてダメージを低減しているが、彼らにはドッシンソウルという切札たりうる武器もある。

 

「こ、これは……またしても大大大ピ〜ンチ!?」

「今度こそこのまま死ねやアァァァ!!」

 

 ブラックの怒声と烈火に、ワイズルーまでもがすっかり逃げ腰になっている。実は彼も、メラメラソウルの一撃で敗れ、マグマの中に墜落したことが密かなトラウマになっているのだ。あのときの相手はリュウソウレッドだったが、ブラックはそれ以上に迫力がある。

 

 守護者たちがそうして勝利へと向かっていることを、歌い続けながらモモは誇らしく思っていた。自分がドルイドンと、ドルイドンの生み出した怪物を退治するためのキーパーソンになることができている。それも、両日のうちに二度も。勇者(ヒーロー)としてこれ以上の誉れはないだろう。

 ゆえにその想いは、少々変化を兆してもいた。勇者であるために生家に反発するのではなく、むしろ──

 

 そのときだった。不意にぞっとするような気配が背後から襲ってきたかと思うと、ゴールドが咄嗟に割って入ったのだ。

 

「!、危ねえ──ぐあぁッ!?」

「ショートさんっ!?」

 

 モモを庇ったために、彼は直撃を浴びた。黄金のリュウソウメイルはそのダメージに耐えきれず瓦解し、苦悶に揺れるショートの表情が露わとなった。

 

(この攻撃は……!)

 

 まさか、と思った通りだった。陽炎の向こうから姿を現したのは、紫苑色の鎧を纏った狂戦士だったのだ。

 

「不快な歌だ……消し去ってやる……!」

「ッ、タマキ、先輩……っ」

 

 いや、あれはガイソーグだと思い直す。カツキのように冷徹に割り切ったとはいえないが、その声音も口調もタマキのそれとまったく異なっているのは明らかだった。

 

「ショートさんっ、だいじょ「俺に構うなっ、歌い続けろ!!」──!?」

 

 モモを慄かせるほど強い調子で言い放ったショートは、次いで唇の端を吊り上げて笑みを浮かべた。

 

「死力を尽くして、皆を守る……。そういう勇者に、なりたかったんだろ……?」

「──!」

 

 モモは目を見開き──次いで、はっきりと頷いた。再び歌いはじめた彼女と背中を向け合う形で、ショートはガイソーグを睨みつけた。その鉄仮面からは、いかなる感情も窺い知ることはできない。いや──憤怒や憎悪、怯懦、そして絶望といった、あらゆる負の感情があふれ出しているようにも見える。タマキ自身の心を構成するものというより、タマキの心がその一部として取り込まれてしまっているのだろう。

 それでも、

 

「あんたは、俺が止める……!」

 

 言うが早いか、ショートはモサブレードを構えて飛び出した。射撃で牽制を仕掛けてくると予想していたのだろう、ガイソーグは明らかに面食らっている。その隙に、懐へ飛び込む!

 

「ッ!」

 

 ガキン、と金属同士のぶつかる音が響く。高速振動するモサブレードの刃は、残念ながらガイソーケンに弾かれてしまった。しかし今さら銃に持ち替えようなどという気もない。自ら距離を詰めてしまった以上、このまま剣を振るうのみだ。

 

「ッ、いい加減目を覚ませ、タマキ先輩!あんたも、リュウソウ族の騎士だろう……!」

「………」

「今のあんたを見て、死んだミリオ先輩がどう思う!?あんたは今、彼のことも穢してんだぞ!!」

「──ッ、黙れ!!」

 

 ガイソーグの声が明らかに揺らいだ。しかしそれは致命的な隙とはならず、むしろショートは力まかせに押し破られた。

 

「ぐあぁ……ッ!?」

 

 俯せに地面に転がったところに、背中を踏みつけられる。痩せ型に見えるとはいえタマキは長身で、騎士としてみっちり鍛えた肉体をもっている。そこに鎧の重量が加われば、同じく鍛えているとはいえ少年の背骨を踏み砕くなどわけもないことだった。

 

「ぎッ、あ゛、あ゛あ……ッ」

「死ね……!死んでしまえ……!」

 

 苦悶するショートの声を聞き、仲間たちも助けに入りたいのは山々だった。しかしワイズルーもヘラクレスマイナソーも手強い敵であって、守勢に回りながらも離れる隙を与えてはくれない。そのことで焦れば、今度は攻勢をかけようと仕掛けてくる。

 

「ッ、ショートくん!くそっ……!」

「このままでは──!」

 

 ショートが、殺されてしまう──!

 そのときだった。小さな赤い影が飛来したかと思うと、ガイソーグの頭部に衝突したのは。

 

「ッ!」

 

 怯んだガイソーグの足が背中から離れる。その隙を逃さず、ショートは床を転がるようにして距離をとることに成功した。

 そして、見たものは。

 

「ティラアァッ!!」

「!、ティラミーゴ……?」

 

 小さなティラミーゴが、懸命に噛みついている。振り払おうとするガイソーグだが、そのスケールの差でかえって翻弄されているような状況だ。

 

「ッ、おのれ!」

 

 苛立ったガイソーグが剣から衝撃波を放ったことで、ようやくティラミーゴは吹き飛ばされた。尤もミニマライズされていても騎士竜は尋常でなく頑丈な肉体の持ち主なので、その程度では怯むだけだったが。

 それ以上に、ガイソーグの精神的な揺らぎのほうが大きかった。勇猛の王たる、赤き騎士竜。彼が現れた、ということは。

 

「そこまでだぜ……センパイ、」

「………!」

 

 自分より小柄な少年に肩を預け、ゆっくりと歩き来る赤髪の青年。「エイジロウ、」と、ショートはその名を呼んだ。

 

「おまえ……」

「悪ィなショート、出しゃばっちまって。でも、こっからは俺のターンだ」

「それはいいが、大丈夫なのか?」

「今のおめェと同じくらいにはな」

 

 ショートは思わず笑いを噛み殺した。ガイソーグに踏みつけられた背中がじくじくと痛む。エイジロウの怪我はそれより酷いがおそらく治りかけ、条件は同じようなものだ。

 

「コタロウ、ティラミーゴ、サンキューな。あとは任せてくれ」

「わかりました。……お気をつけて」

「がんばるティラ、相棒!」

 

 ふたりが下がっていく。それを穏やかな笑みとともに見送ると──彼は、一気に好戦的な表情を浮かべた。

 

「勝負だ……センパイ!」

「ッ!」

 

 羽織っていた上着を脱ぎ捨て、包帯を破り去る。──背中に残る塞がりかけた傷は、臆病者の烙印ではない。友を信じたという勲章だ。それが裏切られたとしても、決して後悔しない。

 

 ただ──もう一度友と呼ぶ、そのために。

 

「リュウソウチェンジ!!」

『ケ・ボーン!!』

 

『ワッセイワッセイ!そう!そう!そう!ワッセイワッセイそれそれそれそれ!!』

 

『リュウ SO COOL!!』──踊り狂う小さな騎士たちがひとつになり、エイジロウの身体をリュウソウメイルとなって覆い尽くす。それと同時に、

 

『カタソウル!ガッチーーン!!』

 

 右腕を水晶の鎧が覆い、その全身をダイヤモンドのように硬化させた。

 

「勇猛の騎士──リュウソウレッド!!」

 

 名乗りを挙げながら、走り出す。ガイソーケンの剣波が襲いくるが、硬度を上げた身体とリュウソウケンで弾き飛ばす。衝撃でじくじくと傷痕が痛むが、それだけだ。一気に肉薄し、斬り結んだ。

 

「……ッ!」

 

 バチバチと火花が散る。オチャコのことさえ頭から追いやれば腕力には自信のあるエイジロウだが、ガイソーグとは拮抗しているとしか言いようのない状況で。

 

「その強さ……喰らわせろぉぉっ!!」

「タマキ、センパイ……!」

 

 タマキの意識はガイソーグに乗っ取られているのか。しかし歴代の装着者の思念と記憶を内包したそれは、一方的に支配するだけでなくタマキからの影響も確実に受けているはずだ。──ショートがミリオの名を出したとき、明らかに動揺を見せたのがその証拠である。

 ならば必ず、手立てはある──!

 

「なあセンパイ……俺も、大切なダチを死なせちまったことがあるんだ……!」

「……!」

 

 ガイソーグがわずかに身じろぐ。それを認めて、レッドはさらに言葉を紡いだ。

 

「あいつらがいたから、俺は強くなれた……優しくなれた!あんたにとってのミリオセンパイと同じだ、俺はきっとひとりじゃ輝けなかった!」

 

「だから、俺は太陽なんかじゃねえ……!」

 

 でも、それがなんだというのか。自力で輝こうがそうでなかろうが、自分にはひとを救うための大いなる力があって、それを今振るっている。その矜持さえ失わないことが、すなわち騎士だ。

 

「タイシロウさん……マスターレッドだって、あんたにそう教えたんじゃねぇのか!?」

「……黙れ──ッ!!」

 

 その叫びがタマキによるものなのか、それともガイソーグによるものなのかはわからない。ただ、感情的になっているのは明らかだった。次の瞬間、鎧から放たれた闇の波動を浴び、レッドの身体は後方へ吹き飛ばされた。

 

「ぐぅ……ッ!」

 

 宙を舞いながら──エイジロウの脳裏には、鮮烈な光景が焼き付いていた。

 燃えさかる、おそらくは人の集落だったもの。それを目の前にしながら、記憶の持ち主が慟哭する。その激しい感情が、一瞬自分自身のものと誤認しかかるほどに、鮮明に流れ込んできたのだ。

 

(これがおめェの背負ってるもんなのか、ガイソーグ……!)

 

 自分やタマキだけではない──この呪われた鎧もまた、そうなるに至るまで惨たらしい過去を経てきている。タマキを救けるためには、その歴史に終止符を打つしかない。

 

「センパイもおめェ自身も、俺が解放するっ!!」

 

 そう叫び、地面を半ば滑走しながらも着地する。同時に、リュウソウケンの柄に手をかけた。

 

『それ!それ!それ!それ──』

「………」

 

 ガイソーグもまた、その動作に応える。静謐の中の対峙、刹那が永遠のようだった。

 それでも、時は動き出す。

 

『──その調子ィ!!』

「アンブレイカブル、ディーノスラァァッシュ!!」

「エンシェント、ブレイクエッジ──!!」

 

 ふたつの思念がぶつかり合い、弾けた。

 

 

『ドッシンソウル!ドッシンッ!!』

「でいやあぁぁぁぁ!!」

 

 騎士竜パキガルーの加護を得た拳を猛烈に叩きつけられ、ヘラクレスマイナソーは見るも無惨な状態で吹き飛ばされていた。

 そこに「ノォオオオオオ!!」と悲鳴をあげながらワイズルーも転がってくる。メラメラソウルの力を受けし焔の刃により、彼の身体もあちこちが焼け焦げていた。

 

「今度こそ、マイナソーが成長しないうちに──」

「──まとめてブッ殺したらぁ!!」

 

 並び立つグリーンとブラック。負けてはいられないとばかりに、ブルーとピンクも続く。

 

「いくぞ、オチャコくん!」

「オッケー!」

 

 リュウソウケンを振り上げ、

 

「「ダブルディーノスラァァッシュ!!」」

 

 そして、

 

「ボルカニックディーノスラッシュゥ!!」

「ディーノソニックブロー!!」

 

 力と力、また力。完全に調和したそれらが標的へ喰らいつく。ワイズルーとクレオンはというと、すかさずマイナソーを盾にして逃げ出した。

 

「ビートッ!?──ビ、ビートォォォォ……!!?」

 

 身内の裏切りを呑み込めないまま、ヘラクレスマイナソーは跡形もなく消滅していった──

 

 

 一方、リュウソウレッドとガイソーグの対決は痛み分けに終わっていた。

 

「ッ、う、ぐ……っ」

「……ッ、」

 

 竜装が解けてしまったエイジロウに対し、ガイソーグはその鎧を纏ったまま。先に立ち上がろうとしたのもそちらだった。

 しかし、

 

「!?、グゥ、ガ、ア゛ァァァ……!」

 

 頭を抱えて苦しみ出すガイソーグ。エイジロウがはっと顔を上げると同時に、その兜が崩れ落ちた。──窶れ果てたタマキの顔が、露になる。

 

「センパイ、元に戻っ「すまない……エイジロウ、くん……」──え……?」

 

 その瞳は、紫に染まったままだった。

 

「俺はもう、これ以上……──だから、」

「────!」

 

 そしてタマキは剣を振るい、妖霧の中へ消えていった。

 

 

 *

 

 

 

「……カさん、キョウカさん!」

「……ん……」

 

 耳慣れた声に薄目を開く。と、こちらを見下ろす少女の姿があった。

 

「お嬢……様……?」

「良かった……。お加減は、いかがですの?」

 

 「平気です」と言葉少なに応じつつ、キョウカは目を伏せる。マイナソーを生み出してしまったことは、意識が混濁しながらもはっきりと覚えている。モモや街の人々に迷惑をかけてしまったこと──そして、"夢"を露にしてしまったこと。

 

「──キョウカさん、」

 

 呼びかけられて、顔を上げる。その表情は、慈しむような笑みに彩られていて。

 

「一度、家へ戻りましょうか」

「え……?」

 

 それは予想だにしない言葉だった。二の句が継げないキョウカに対し、彼女は笑顔のまま続ける。

 

「そうすればあなたは任を遂げたことになる。命令を果たしたうえで……改めて、わたくしと一緒に旅に出ませんこと?」

「旅って、ウチはそんな──」

「キョウカさんもまだ知らない素敵な音楽が、世界にはたくさんあると思いますわ」

「!」

 

「夢に向かって飛びましょう──ふたりで、一緒に」

「お嬢様……」

「モモとお呼びくださいな、キョウカさん」

「……モモ、ありがと」

 

 二度と戻るまいと決めていた生家への帰還。それはきっと短いけれど、充実したものになるだろう。

 

 

 *

 

 

 

 死闘の爪痕残る戦場跡に、エイジロウは立ち尽くしていた。

 

「……タマキセンパイ……」

 

──俺はもう、これ以上……──だから、

 

「──救けよう、必ず」

「!」

 

 振り向けば、そこには仲間たちの姿があった。「救けよう」──そう言ったのはイズクだったが、テンヤとオチャコ、ショートははっきりと頷き……カツキもまた、渋い表情ながら沈黙を守っていた。

 

「……おう!」

 

 俺たちの、ソウルはひとつだ。

 そこにタマキが加わる日が来ると、エイジロウは信じていた。

 

 

 つづく

 

 





「あのバカは、俺がやる」
「もっと力を、強さを見せろぉぉぉ!!」
「俺たちのソウルは、ひとつなんだ!!」

次回「慟哭の夜をこえて」

「やっぱりきみたち、眩しすぎるよ……」


今日の敵‹ヴィラン›

ヘラクレスマイナソー

分類/ヴァーミン属ヘラクレス
全長/246cm〜49.7m
体重/298kg〜665t
経験値/338
シークレット/筋骨逞しい甲虫に似たマイナソー。何故か?弦楽器をぶら下げており、痛烈なビートを刻むことで聴いた者の脳に音を刻み込み、他の音を一切遮断してしまう。それは他の感覚にも影響を及ぼし、行動を著しく阻害してもしまうのだ!
ひと言メモbyクレオン:超絶うるっっっせ!!あのコの歌のほうが良かったなぁ……。

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