TSして魔法少女になったけど質問ある? 作:TS百合好きの名無し
前半に掲示板、後半に過去話となっております。
それではいつも通りリラックスして本編を楽しんでいってね!
107:TS魔法少女
という感じで同僚ちゃんと久々のお出かけを楽しんできました
108:名無し@魔法少女親衛隊
近況報告たすかる
元気そうでなにより
109:名無し@魔法少女親衛隊
無粋なナンパ男共にきちんと制裁加えられてえらい
110:名無し@魔法少女親衛隊
新鮮なてぇてぇをありがとう
これで来週も生きていける
111:TS魔法少女
なんというかさ、最近は本当に平和で良いなって感じてる
夜間に叩き起こされることもなくなったし、仲間と普通に休日を楽しめるし、面倒な魔獣もそこまで多く発生しないから負担も減ってるし
112:名無し@魔法少女親衛隊
それが普通だよ
未来ある若者としてもっと人生楽しんでどうぞ
113:名無し@魔法少女親衛隊
やりたいことをどんどんやればいい
君はもう十分働いたんだから
114:名無し@魔法少女親衛隊
>>112
同意する
今ある平和は他でもない君たちが勝ち取ったものだ
115:名無し@魔法少女親衛隊
最近は魔獣の大被害が〜ってニュースをほとんど見かけないからな
本当に平和だよ
116:TS魔法少女
ありがとう
というか軽く振り返ってみても私が過去戦った敵って面倒なやつだらけで我ながらよく無事だったなと思う今日この頃
117:名無し@魔法少女親衛隊
そういや魔人や魔獣の個体ごとの詳細データって一般的には周知されてないけど何処かで見れたりするの?
118:名無し@魔法少女親衛隊
機関のサイトで一応そこそこ詳しく見られるぞ
一部情報が隠されているのもあるが
119:名無し@魔法少女親衛隊
マジ? 見られるの知らんかったわ
120:名無し@魔法少女親衛隊
>>118
これ意外と知られてないよね
121:名無し@魔法少女親衛隊
後で見に行ってみようかな
122:名無し@魔法少女親衛隊
ところでイッチが過去に戦ってきた魔人・魔獣の中でも面倒なのって例えばどんなのがいたの?
あ、無理だったら答えなくてもいいから
123:名無し@魔法少女親衛隊
イッチの過去戦闘話か
俺も気になるな
124:TS魔法少女
うーん、そうだなぁ……
ぶっちゃけ色々いすぎて特にコレだっていうのが決めづらい
125:名無し@魔法少女親衛隊
厄介度に順番はつけずにパッと思い浮かんだ敵でいいよ
126:TS魔法少女
そう? じゃあ今思い出したやつで――【色欲の魔人アマなんとか】
名前なんてもう覚えてないけど、こいつの戦い方は最悪だったから結構印象に残ってる
127:名無し@魔法少女親衛隊
アマ……?
聞いたことがないな
128:名無し@魔法少女親衛隊
機関のサイトを定期的に見てるがアから始まる魔人でそれっぽいやつがいた記憶がない
もしかして訳アリ魔人か?
129:名無し@魔法少女親衛隊
そいつはどんな魔人なんや?
130:TS魔法少女
ええと、こいつはいわゆる色欲魔人衆の一人なんだけど
まさかの強制絶頂光線(通称アクメビーム)をメインウェポンに戦うっていうふざけたやつだったよ
こちらの陣営に結構な数の人的被害が出て当時は大変だったんだよなぁ
131:名無し@魔法少女親衛隊
エッッッ
132:名無し@魔法少女親衛隊
……へ?
133:名無し@魔法少女親衛隊
うん……うん?
134:名無し@魔法少女親衛隊
おかしいな見間違えか……?
今なんだかすごい単語が見えたような気がする
135:名無し@魔法少女親衛隊
いやまあ、魔人にそういうタイプの存在がいるってのは聞いたことがあるが……うん
136:名無し@魔法少女親衛隊
メインウェポン名がど直球すぎる
137:名無し@魔法少女親衛隊
ママー、【アクメ】ってなに?
138:名無し@魔法少女親衛隊
それはね、フランス語で頂点を意味する言葉よ
139:名無し@魔法少女親衛隊
ためになるなあ
140:名無し@魔法少女親衛隊
くそっ、電車の中なのに変な声出たじゃねえか
141:TS魔法少女
当時は後輩ちゃんとツーマンセルだったから二人だけで現地へ突入
たしか先に突入した部隊と連絡がとれなくなって応援として向かった気がする
あちこちにアクメビームの被害者である魔法少女やら一般人やらが倒れていて、辺りにはものすごい匂いが充満中……まさに地獄だったなぁ
後輩ちゃんがすごい顔してた
そんでそこにアイツ――名前覚えてないから以降アクメ魔人とするね――がいたんだ
なんか黒いマント羽織った中二病みたいな見た目の魔人だった
142:名無し@魔法少女親衛隊
うわぁ……
143:名無し@魔法少女親衛隊
ごめん、アクメビームの字面が強すぎて内容が頭に入ってこない
144:名無し@魔法少女親衛隊
アクメ魔人……エロゲとかにめっちゃいそう
145:名無し@魔法少女親衛隊
っていうかこれまだチームが揃ってない時代の話か
146:名無し@魔法少女親衛隊
JSになんてモノを見せているんだ……
147:名無し@魔法少女親衛隊
これは一般公開できませんわ
148:TS魔法少女
さて、ここで皆さんに一つ問題です
このアクメ魔人だけど最終的にコイツに付けられた危険度ランクはいくつだったでしょうか?
回答時間は今から2分間
149:名無し@魔法少女親衛隊
うーん、特に戦闘力が高いような気はしないからD〜Cくらい?
150:名無し@魔法少女親衛隊
メインウェポンに殺生能力がなさそうだからCランクと予想
151:名無し@魔法少女親衛隊
C〜B-くらい
152:名無し@魔法少女親衛隊
いやまておまえら、コイツはどう考えてもB以上あるやろ
153:名無し@魔法少女親衛隊
同意
よく考えなくても持ってる能力がヤバすぎる
154:名無し@魔法少女親衛隊
え、じゃあBランクとか?
155:TS魔法少女
はい、では解答の時間です
正解は――――――【A−】ランクでした!
156:名無し@魔法少女親衛隊
ファッ!?
157:名無し@魔法少女親衛隊
ええええええええ!?
158:名無し@魔法少女親衛隊
ヤバいですね!?
159:名無し@魔法少女親衛隊
……え、コイツそんなに危険だったの?
160:名無し@魔法少女親衛隊
さらっと予想を越えてきた……やべぇ
161:名無し@魔法少女親衛隊
なんでそんなに高いんだ???
162:TS魔法少女
コイツがこのランクになった理由だけど、最大の要因はやっぱりアクメビームだね
このスレにもし女性の方がいるなら戦場で強制的に絶頂させられることのヤバさがよく分かるんじゃないかなと思う
163:名無し@魔法少女親衛隊
女性だとよく分かる……?
164:名無し@魔法少女親衛隊
あー、私分かったかも
確かに……これはヤバいわね、凶悪だわ
165:名無し@魔法少女親衛隊
え、どういうことなの
166:名無し@魔法少女親衛隊
※下ネタ注意!! 閲覧は自己責任で!!
結構センシティブな内容になるんだけどさ、男の子って一回イクと賢者タイムがすぐに訪れるじゃん?
でも女の子の場合違うのよ
必ずしも全員がそうだというわけではないけど、大抵の女の子は一回イッても絶頂の快感の波がなかなか引かないし、それどころかさらに追加で絶頂が訪れることもよくある
絶頂時に感じる快感も女性の方が強いと言われているくらい
つまるところこのアクメビームってやつは女の子が受けたらほぼその時点で行動不能になる
そして魔法少女は全員女の子
結果としてこの攻撃は魔法少女に対して大特攻を持っているってことになる
167:名無し@魔法少女親衛隊
……やばくね?
168:名無し@魔法少女親衛隊
確かに男と比べて女は何回もできるって聞くしな
169:名無し@魔法少女親衛隊
なるほどよく分かった
間違いなくこれは危険度Aクラスだわ
170:名無し@魔法少女親衛隊
エロゲみたいな敵が現実に出てくるとこんなに危険なのかよ……
171:名無し@魔法少女親衛隊
っていうか多感な時期の少女が人前で絶頂なんかさせられたら心に一生消えない傷を抱えることになるんじゃ……
172:名無し@魔法少女親衛隊
不特定多数の人間に自分のイキ様を見られるとかガチで自殺もんだぞ
173:名無し@魔法少女親衛隊
マジで天敵じゃんか
174:名無し@魔法少女親衛隊
あー……その、イッチはそのアクメビームとやらをくらっちゃったりは……
175:名無し@魔法少女親衛隊
エッ、イッチがイッちゃったかもしれないって!?
176:TS魔法少女
実を言うと何発かくらっちゃったんだけど、私は状態異常回復魔法を自身にかけ続ける荒業で無効化できたのでなんとかなったよ
というかコイツこんなに凶悪な武器を持っていながら自身を対象とした素早い転移魔法まで使えたんだよねえ
177:名無し@魔法少女親衛隊
状態異常回復魔法をかけ続ける……確かにそれなら無効化できそう
というかアクメビーム×転移魔法とか何その最凶コンボ
178:名無し@魔法少女親衛隊
力技だけど間違いじゃなさそう
179:名無し@魔法少女親衛隊
ヤバすぎて草枯れる
でもさすがイッチやで
180:名無し@魔法少女親衛隊
あれ? ちょっと待って
私【は】?
181:名無し@魔法少女親衛隊
ん?
182:名無し@魔法少女親衛隊
どうし……あっ
183:名無し@魔法少女親衛隊
あっ(察し)
184:名無し@魔法少女親衛隊
あっ(察し)
185:名無し@魔法少女親衛隊
ふむ……
現場に向かったのはイッチと後輩ちゃんの二人
飛んでくるアクメ魔人のアクメビーム!
イッチは状態異常回復魔法を【自身に】かけ続けて無効化に成功!
魔人の自慢のメインウェポンが効かないなんて流石イッチ!
あの、ところで一緒にやって来た後輩ちゃんは……
186:名無し@魔法少女親衛隊
ねえイッチ、後輩ちゃんって回復系魔法が使えたりは……
187:TS魔法少女
※後輩ちゃんはバリバリの戦闘特化タイプ
※そもそも回復系統の魔法が使える魔法少女はごく小数
※アクメ魔人は転移魔法による不意打ちが得意だった
188:名無し@魔法少女親衛隊
あっ
189:名無し@魔法少女親衛隊
あっ
190:名無し@魔法少女親衛隊
あっ
191:名無し@魔法少女親衛隊
お労しや後輩ちゃん……
192:名無し@魔法少女親衛隊
>>191
ま、まだ確定ではないやろ!
193:TS魔法少女
後輩ちゃんは……まあ色々あったけど最悪の事態は避けられたとだけ
真面目な話をすると、こういう搦め手でくる敵は純粋に力で押してくる敵よりも厄介なことがほとんどだから侮れない
特にこの手のやつは被害者のアフターケアも手がかかるしね
194:名無し@魔法少女親衛隊
搦め手を使うやつは基本的に狡猾だからなぁ
195:名無し@魔法少女親衛隊
アフターケアってどんなことをしたの?
196:TS魔法少女
一般人については本部の魔法少女が魔法で記憶処理をしてそもそも魔人災害に巻き込まれたこと自体を忘れてもらった
被害にあった魔法少女については個別のメンタルケアを行った後に、望んだ者には記憶処理をして復帰または引退だったね
197:名無し@魔法少女親衛隊
記憶処理か……確かそういうこと専門の魔法少女がいるんだっけ、聞いたことがある
198:名無し@魔法少女親衛隊
嫌な記憶を忘れられるのって結構な救いだよね
199:TS魔法少女
>>198
そうだね
ただ、何度もかけられると耐性が付いて記憶が甦っちゃうから利用できる回数が限られているらしいよ
200:名無し@魔法少女親衛隊
えぇ……
201:名無し@魔法少女親衛隊
マジ? 回数制限あるのかよ
202:名無し@魔法少女親衛隊
でも魔人のいなくなった今なら利用者そのものが減っているのでは?
203:TS魔法少女
>>202
うん
そもそもの利用者が減っているから制限回数が問題になることはないと思う
204:名無し@魔法少女親衛隊
>>203
それはよかった
205:名無し@魔法少女親衛隊
>>203
ホッとした
206:名無し@魔法少女親衛隊
今更だけど初期と比べて日本もだいぶ平和になったんだなって
207:名無し@魔法少女親衛隊
魔人が消えてから目に見えて国が明るくなったもんな
奴らの最後っ屁で魔獣は残っちゃったけど
208:名無し@魔法少女親衛隊
ぶっちゃけ魔人はやべー奴が多すぎた
209:名無し@魔法少女親衛隊
>>208
それな
210:名無し@魔法少女親衛隊
時々ふと考えちゃうんだよな
もしもあの日、俺たちの希望が負けていたらどうなっていたんだろうかって
211:名無し@魔法少女親衛隊
それは……
212:名無し@魔法少女親衛隊
きっと……いや、間違いなく人類の終わりだった
213:名無し@魔法少女親衛隊
あの戦いから約半年
それを「もう」半年と捉えるか「まだ」半年と捉えるかは人それぞれ
214:名無し@魔法少女親衛隊
なんか改めて今の平和の持つ意味を実感できたような気がするわ
215:名無し@魔法少女親衛隊
お前らとこうやって駄弁ることもなくなってたと思うと恐ろしいな
216:名無し@魔法少女親衛隊
ま、つまりは……
217:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
218:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
219:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
220:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
221:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
222:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
223:名無し@魔法少女親衛隊
魔法少女万歳!
224:名無し@魔法少女親衛隊
感動したので今月の食費を機関に寄付してきます!
魔法少女万歳!
225:TS魔法少女
>>224
ちゃんと自分のご飯に使いなさい!!
226:名無し@魔法少女親衛隊
草
◆ ◆ ◆
一年と四ヶ月前――東京都
「うわっ、薄気味悪い色の結界ですね。見てるとなんだかぞわぞわします」
その日、魔法少女アリスとサファイアが本部より緊急の応援要請を受けて向かった先にあったのは都内のとある野球場とその周囲一帯を覆う紫色のドーム型結界であった。
『既に突入した部隊とは通信途絶。現地では本日ちょうど女子ソフトボールの大会が開かれていたらしく、その参加者たちがほぼ丸ごと魔人の結界内に囚われています。確認されている魔人は一体のみですが十分に注意を』
「了解です。これよりチームステラは結界へ突入、目標を捕捉次第討滅します」
「サクッと終わらせるので大丈夫でーす」
『……ご武運を』
インカムの通信が切れたのを確認し、アリスはサファイアと共に結界内部へと足を踏み入れた。
「――ッ!?」
「うえっ! な、なんですかこの臭い!?」
結界内に入った瞬間に二人が感じたのはひどく鼻につく謎の臭いであった。
結界内に充満する甘く匂い立つ濃密なそれに驚き、思わず揃って鼻を押さえてしまう。
「敵の攻撃、というわけではなさそうだね……サファイア、大丈夫?」
「うぅ、慣れるまで時間がかかりそうです……」
「一体何の臭――あれは!」
アリスは視界に映った横たわる人らしき影に気付き駆け出す。
近づくと見えてきたその人物はソフトボール部のものらしきユニフォームを着た中学生ぐらいの女の子であった。
――恐らく被害者の一人。もしかしたら何か情報が得られるかもしれない。
「これは……」
「彼女、気絶しちゃってますね」
ぴくぴくと小さく痙攣を繰り返す少女の瞳は閉じられており、念のため回復魔法をかけつつ声をかけてみるも反応はなかった。
「というかこの臭い……」
その際にアリスは目の前に横たわる少女からもこの場に充満する臭いと同じ臭いが放たれていることに気付く。
悪いと思いつつも少女の体を細かく調べていくアリス。その結果分かったのは少女のユニフォームの股間部が妙に濡れているということだけだ。
「あっ……(多分失禁しちゃったのかな。思ったよりそれっぽい臭いはないけど)」
アリスは意図せずうら若き乙女の痴態を暴いてしまったような気がして申し訳なくなった。
「分からない。彼女に一体何が起こったんだろう」
「この人……それにこの臭いって……」
「サファイア?」
「あ、いえ! なんでもないです!」
何はともあれまず魔人を見つけて討滅せねば。
気持ちを切り替えようとしたその時、彼女たちは何らかの魔法の発動を感じ取った。
「向こうだ! 行こうサファイア!」
「はい!」
◆ ◆ ◆
「おっ? また新しい獲物がやって来たか。歓迎しようではないか!」
野球場の応援スタンドの前列に彼女たちの目標である魔人は腰掛けていた。
見た目は紫色の眼帯とマントを付けた若い青年のようだ。一見すると人間に見えなくもないが人間ではありえない青色の肌が彼を魔人だと告げている。
周囲には大勢の被害者たちが荒い息と共にビクビクと謎の痙攣を繰り返しながら倒れており、その中には先に突入した魔法少女だと思われる姿も混じっていた。
「お前がこの結界を張った魔人だね?」
「そうとも! 我が名は魔人アメクマン! 君たちに忘れられない快楽と羞恥を刻み込む者さ!」
軽薄な笑みを浮かべてベンチから立ち上がった魔人にサファイアが嫌そうな顔で一歩後ずさった。
「せんぱい、私コイツ苦手です」
「安心して。私も大嫌いだから」
相対して一分も経っていないがよく分かる。コイツは絶対ろくでもない奴だ。
軽いやりとりをしつつもアリスは周囲の情報を少しずつ集めていく。
――恐らく被害者のほとんどはこの場に集められている。
――敵に仲間の姿や存在は感じられないので単独犯の可能性は高め。
――倒れている一般人と魔法少女のどちらにも目立った外傷は見られないので戦闘能力が不明。
「……(可能性として考えられるのはコイツの戦闘能力がずば抜けて高いか、もしくは――)」
「せんぱい、多分この場の敵はアイツ一人と考えて良さそうです」
「うん」
「私は回復系魔法がつかえないので、せんぱいは先に他の人たちを頼みます」
「分かった。できるだけ早く済ませるけど気をつけてね」
「作戦会議は終わったかな? 二人でまとめてかかってきても構わないぞ?」
「……大した自信だねぇ!」
双剣を召喚したサファイアが魔人へと斬りかかるのを視界の端に入れつつ、アリスは倒れている被害者たちへ駆け寄り彼女たちの状態を素早く確認していく。
「皆さん大丈夫ですか!?」
「は、ああぁ……んんっ♡」
「ひっ、んんんんんっ……んああ♡」
「お゛♡……んお゛ぉっ♡」
「ッ――♡――――ッッ♡♡」
「――――――――――♡♡」
(やっぱり大きな傷を負っている人は一人もいない……でもそれじゃあ彼女たちのこの様子は一体……)
彼女たちへ向けて自分が使える回復系魔法を全て使ってみるも特にこれといった変化は見られない。それどころか刺激を与えてしまったのかプシャッと何かが噴出するような音と一緒に足下に謎の水たまりが広がった。もっとも、その前から既に周囲の地面には何かの染みのようなものがまばらに存在していたのだが。
魔人や魔獣によって酷い傷を負って苦しむ人間の姿はこれまで何度も見てきてたし癒やしてきた。でも目の前にいる彼女たちの様子はそれらとはひどくかけ離れているのだ。
生まれて初めて遭遇する状況にアリスはひどく困惑した。
(ど、どうしよう訳が分からない……っていうかあんまり考えないようにしていたけど彼女たちの様子は苦しんでいるというよりもまるで――)
頭に一瞬浮かんだのは最低な予想。だができれば外れて欲しいとアリスは思った。もし予感が当たっているならアイツは満場一致で女の敵だ。塵一つ残らず消し去らねばならない。
「あ、なた……魔…ほんんっ♡」
「……! 君、意識があるの!?」
目の前の状況に困惑していたアリスはハッと声の方を向く。声の主は先行して突入していた魔法少女たちの一人であった。
「気を…つけて……アイツの光線んんっ♡ に当たっちゃ……んああ♡」
「無理しないで! ……光線に気をつければ良いんだね?」
「お願……はあぁ……♡ もうだめ――――♡」
「……ありがとう」
光線に気をつけろ――それだけを伝えると彼女は気を失った。
(原因はアイツの光線か……なんだか嫌な予感がする。現時点で治療が必要な重傷者はいないし急いでサファイアの加勢に行こう)
周囲の人間たちを守るためのバリアをその場に展開し、アリスはサファイアの元へ向かった。
◆ ◆ ◆
アリスが被害者たちの様子を確認している最中、魔人とサファイアの二人は球場の応援スタンドを縦横無尽に飛び回っていた。
「このっ!」
「フハハハ! 今のも惜しかったが残念! 体がもう少し大きければ届いたかも知れぬな! ハッハッハ!」
高笑いと共にするりと剣の射程から逃れられる。
その顔に浮かぶのは出会った時から変わらぬ軽薄な笑み。戦意というものがまるで感じられず、それでいて攻撃をかわすたびにからかうような声をかけてくる魔人。
その上で繰り出す攻撃をことごとくかわされ続け、サファイアの鬱憤は溜まりに溜まっていた。
(うがああああっ!! ムカつくムカつくムカつくぅ!! さっきから逃げ回るだけで全然攻撃してこないし何なのコイツ!!)
このままでは埒が明かないと判断し一旦攻め手を止めるサファイア。そのタイミングで魔人はアリスのいる方を見て馬鹿にするような声色で呟いた。
「さっさと向こうで遊んでいる相方を呼んだらどうだ?」
「別に遊んでるわけじゃない。せんぱいにはあの場の人たちの治療を先に頼んだだけだから」
「フフッ、先にやって来たお仲間たちの戦線復帰を狙っているのなら無駄なことだ。そもそも向こうにいる人間共に治療など全くの不要だというのに」
「……は? 不要ってどういうこと?」
自信ありげにそう言った魔人が気になり彼女は眉をひそめる。
「なんせ――
「…………」
短いの沈黙の後、サファイアは恐る恐る口を開いた。
「……や、やっぱりお前の能力って」
最初の被害者を見た時点で薄々感づいてはいたものの、せんぱいの前では言い出しづらかった予想がどうやら正しかったらしい。
サファイアが引き攣った顔で魔人を見れば、彼は全てを悟った彼女を見て憎たらしいほど愉しそうに笑っていた。
「ではそろそろ君にも我が奥義を味わわせてあげるとしよう。忘れられぬ快楽と羞恥の味を……ね!」
スッと手のひらをこちらに向けた魔人を見て慌ててその場を飛び退くのと同時、どぎついピンク色の光線が着弾した。
「ひっ……(い、いやあああ絶対当たりたくないいいいいぃ!!)」
「フハハハ! 逃げろ逃げろ! だがいつまで避けていられるかな小娘!」
一転攻勢。
先程までとは打って変わって攻撃的になった魔人が両手からビームを乱射しつつサファイアに迫った。
当たれば自分も彼女たちの仲間入り……それだけはゴメンだと彼女は悲鳴を押し殺して光線から逃げ回る。
完全に逆転してしまった力関係。
だが彼女は必死の形相で逃げ回りつつも次の一手を打つタイミングを窺っていた。
客席スタンドから下のグラウンドへと飛び降りた彼女は、魔人が彼女を追って地面に着地するタイミングでその一手を打った。
「――ここ!」
「ぬうっ!?」
突然足下に現れた氷塊によって下半身を地面に固定された魔人が慌てる。両手で氷塊を壊そうとするも成長し続ける氷塊によって両手も固定され、彼はあっという間に頭だけを残して完全に氷漬けとなる。サファイアの一手が完全に決まったのだ。
「しまった!? これでは身動きが――」
「これで終わりだ変態!!」
後はトドメを刺すだけ。
致命的な隙を突かれた魔人へ彼女の刃が迫ったその時。
「――なんてね」
瞬きの間に魔人の姿が消失した。
「えっ」
空を切る刃。
そしてほんの一瞬動きが止まってしまった彼女を背後から一本の光線が貫いた。
「チェックメイト。我が奥義の味をご堪能あれ」
「あ、え……ん゛ッ♡」
バチン! と一瞬で全身を駆け抜けたそれ。
一般的なそれ自体には一応の経験はあるものの、普段のようにじわじわと高めるのではなく、無理矢理一気に天辺まで高めるような強引すぎる未経験の強烈な刺激に一発で彼女の思考は真っ白になる。
(な、んで……)
チカチカと点滅し、ゆっくり倒れていく視界がどこか他人事のように見えた。
「あぅ……♡ う……♡」
ビクッ!
「ひゅッ……♡」
立て続けに第二波が襲いかかりビクンと腰がはねる。だが波はまだ終わらない。
「あ……あぁあ♡(またくる……キちゃう……やだ、やだぁ……)」
気力をふり絞って体を動かそうとするがどこにも力が入らず、ぴくぴくと痙攣を繰り返すだけ。
そうして抵抗虚しく次の波がやってくる。
「あ゛♡ あ゛ッ♡ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡」
――その瞬間、彼女の幼い脳は本能によりそれ以上の認識を拒んだ。
まるで全ての神経が麻痺してしまったかのような真っ白な感覚。
身も心も焼き尽くそうとする暴力的な快楽に彼女の心は一瞬で折れかける。
「ふ……うぅ♡ あぁ……♡(だ……め、耐えなきゃ……理沙は負け……ない……!)」
辛うじて意識は保たれていたが、既に行動不能。次の波が来てしまえば終わりだという予感もある。それでも意地で諦めることだけは認められなかった。
「……これは驚いた。このような幼子がここまで耐えるとは。先程の者共はたった一度で意識を手放したというのに……うおお!?」
「――〈スターバレット〉!」
待ち望んだ声と共に星の形をした無数の弾丸がその場に殺到し、魔人が再び姿を消す。
続いてサファイアの傍に降り立ったアリスがすぐに彼女へと魔法を放った。
「〈エンジェリックキュアー〉!」
温かな癒やしの光に体を包まれながらサファイアは来るはずだった次の波がかき消されたことを理解したが、失った体力は当然戻っておらず、全身を襲う快感もそのまま残っている。今はなんとか目と口を動かすことで精一杯であった。
「せ、ん…ぱ……」
「大丈夫!? 怪我は!?」
「だ…ぁ……」
「ごめん。イエスなら1回、ノーなら2回瞬きして」
体が上手く動かせないことを悟ったアリスはすぐに問答の仕方を切り替えてくれた。
「怪我はない?」
――1回。
「このまま安静にしていれば状態は良くなる?」
――1回。
「こうなった原因はアイツの光線?」
――1回。
「アイツは純粋な戦闘タイプ?」
――2回。
「ありがとう。後は任せて」
――1回。
そこでサファイアの意識は一度途切れた。
◆ ◆ ◆
「フッ、小娘その2よ、我を放置して呑気に会話とは油断しすぎじゃあないか?」
アリスたちの背後に回った魔人が得意の光線を放つ。
死角から放たれた光線は彼の狙い通り、無防備に立つアリスに直撃した。
「フフフ……これでお前も小娘たちの仲間入りだ!」
「……」
新たな犠牲者の痴態をもう少し近くで眺めようとワクワクしながら魔人は彼女の元へゆっくりと近づき、そこで異変に気付く。
「……ん?(おかしいぞ。なんでコイツはさっきから普通に立っているんだ?)」
「――〈
一閃。
彼はふと何かが自分の真横を駆け抜けたような気がして――確認するために右を見て、地面に落ちていく自分の腕を見た。
「は?」
予期せぬ出来事に一瞬硬直した彼が再び前を見ると既にそこに彼女の姿はなかった。
「……なるほど。どうやらお前にとって私は最高に相性が悪い相手みたいだね」
彼の背後から聞こえる声。振り向くとそこに純白の剣を右手に持って立つ彼女がいた。
その佇まいは見るからに自然体で、何の変化の兆候も現れていなかった。
「なっ!? 何故! 我の奥義は確かに命中したはずだ!」
「ああ、確かに当たったけど……魔法で絶え間なく体の異常を取り除き続ければ効かないみたいだね」
「……は?」
「お前のその魔法は厄介だけど体に作用する初動さえ潰してしまえば無効化できる。そして私の魔力量ならこの戦いが終わるまでそれを維持し続けることは難しくない」
「…………は?」
つまるところ、自分の一番の武器はもう通用しないぞと宣言された魔人は固まった。
彼はその強力無比なメインウェポンとそれを確実に当てるための転移魔法を活かした不意打ち技術で敵を倒し続けてきたが、逆に言えばそれしかできない存在。これらの能力を除いてしまえば彼に残るのは同族の中で平均以上に高い回避能力だけである。
「フ、フハハ…………小娘よちょっと話し合わないか?」
「あははっ…………するわけないでしょこの変態野郎が!」
数分後……情けない断末魔が一つ、静かな野球場に響いて消えていった。
★魔人アメクマン
色欲魔人衆の一人。
対象を強制的に絶頂させるアクメビームと初見殺しである転移魔法の最凶コンボを駆使する。逆に言うとこれ以外の戦法がないが、正しく対応できる相手がそもそも少ないのでほとんどの魔法少女にとっては天敵と言える魔人。
回避能力が高く、なんだかんだでアリスの猛攻から数分間生き延びたがジリ貧には変わらないのでそのまま敗北した。
★色欲魔人衆
基本的にエロい攻撃ばかりしてくる最低最悪の魔人たちの総称。ロクな奴がいない。
★アリス
TS魔法少女。アメクマン視点だと天敵以外の何者でもない。色欲魔人衆と戦うのはこれが初めてだった。
★サファイア
この戦いをきっかけに本格的に性に目覚めてしまった。
女の子の成長は早いから仕方ないね。
がんばれアリス! 負けるなアリス! 君なら勝てる!(何に?)
追記
前回はたくさんのご感想をありがとうございます。いつも執筆の励みになってます。
今後の方針
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日常生活(イチャイチャ)メインで!
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本編(シリアス)カモン!