TSして魔法少女になったけど質問ある? 作:TS百合好きの名無し
それはそうと、最近あることに気付きました。
実は作者の密かな夢の一つは自作小説のファンアートをもらうことなのですが、つい先日、「あれ? 作者名を匿名にしてマイページへのリンク切ってたらそもそもファンアートが来ないし受け取れないのでは?」と気付いてしまいました。馬鹿かな?
というわけで匿名剝がしました。誰かイッチたちを描いてくれないかなーチラチラ(期待の目)
(あといつも誤字報告、素敵なご感想をありがとうございます)
さて、前置きが長くなりましたが今回は掲示板なしの日常回です。いつも通りリラックスして読んでいってね。
私が通う中学校の校舎裏には、学校創立から一本の巨木が存在している。
通称【告白の大樹】。
歴代のOB・OGによって現代まで語り継がれてきた噂話によると、この木の下で結ばれた男女には永遠に幸せな未来が約束されるらしい。まるでどこぞの恋愛ゲームにでも登場しそうな伝説の木だ。
多感な時期の少年少女はこの手の話が大好物なのだろう。このことは全校生徒が知っており、この木の下ではそこそこの頻度で告白を行う男女の姿が見られる。
そして今日もまた、一組の男女がそこで恒例の告白イベントを発生させていた。
――いやあ青春だねぇー……などと呑気にしている場合ではない。
「好きだ! 姫宮凜さん……どうか俺と付き合って欲しいっ!」
(えー……)
何故なら告白されているのが他ならぬ私だからだ。
(この人……たしかサッカー部のエースとして有名な3年の先輩だったよね)
自信に満ち溢れ、キラキラの陽キャオーラを纏った自分よりずっと背の高い先輩の顔を見上げながら、私はぼんやりと考える。
彼の顔立ちは確実にイケメンの部類に入る。噂を聞く限り性格も悪くなさそうだし運動・勉強は共に優秀。女子視点で見るならば普通に優良物件なモテ男であることは間違いない。ぶっちゃけイケメンであるというだけで人生の勝ち組だ。
とはいえ既に私の返事は決まっている。というか一択だ。
「ごめんなさい。先輩とは付き合えません」
魔法少女化のせいで完全な女の子になってしまった私だけど、自意識は男の時のままなので恋愛対象として見ることができるのは女の子だけ。当然これまでも男相手に一切そういう気持ちを抱いたことはない。当然ながら0に何をかけても0なのである。
実際こうしてイケメンに告白されてもまるでときめかないのだ。
私はできる限り申し訳なさそうな顔をつくり、頭を下げて彼の告白を断った。
「なっ!? 一体僕のどこが不満なんだい? この学校に僕ほど君にふさわしい男はいないはずだ!」
「先輩……?」
「もしや既に付き合っている相手でもいるのか!?」
「いえ、いませんけど」
「ならば何故断る! 君のように優れた人間は同じく優れた人間である僕と付き合うべきだろう!」
――おや? なんかこの先輩普通にヤバい人なのでは?
ぞわりと鳥肌が立った。私は本能的な身の危険を感じ、興奮した様子で詰め寄ろうとする先輩から距離をとろうと後ずさりし――
「待――「バウバウ!」――ぐはあっ!?」
彼が突然横から現れた大型犬に突き飛ばされる姿を目撃した。
「へ?」
「ぐっ!? な、なんだこの犬っころは!? 一体どこから現れ「ピィー!」――うわあああ鳥の糞が僕の顔にいいぃ!!」
敵機直上急降下。
起き上がろうとした彼に追い打ちをかけるようにどこからともなく鳥の糞が降ってきて顔面に直撃。
さらに彼を突き飛ばした大型犬は地面で悶える彼に向けて情け容赦なく股間の主砲を発射した。
ジョボボボーーー……
「うわあああああああ!?!? 生温かい! 臭い! 気持ち悪い!」
「え、えぇー……」
「「「「ピィーーーー!!」」」」
「あっ(察し)」
これで終わりかと思いきや、最後に鳥の群れがやってきて彼に怒涛の糞爆撃をお見舞いして飛び去っていった。無慈悲。
憐れ。後に残ったのは糞尿塗れで地面をのたうち回る一人の男だけである。
「えっ? えっ? これどうすればいいの?」
「凜ちゃん」
「ひゃ!? ひ、ひより、いつからそこに?」
「日直の仕事が終わったから迎えに来たの。凜ちゃんの用事も今終わったみたいだしこのまま一緒に帰ろ?」
いつの間にか足下にやってきていた大型犬の頭を慣れた様子で撫でながらひよりは私にそう言った。
「え、でも先輩が」
「先生を呼んでおいたから大丈夫だよ」
「そ、そうですか……」
先生が来るなら……後は任せて帰っていいな! ヨシ! 後のことは知らん!
私たちは彼を残し、その場を後にするのだった。
◆ ◆ ◆
帰り道。
「これで今月に入って5回目だっけ?」
「うん。告白はされる方も疲れるんだってことをものすごく実感してるよ……」
「大変そうならもう呼び出しの時点で無視しちゃったら?」
「それは流石に悪いかなーって思って……」
「律儀というか優しすぎるよ凜ちゃんは」
私の好きな人は今日も世界一可愛い。
可愛すぎてもはやどう語れば良いか分からなくなるくらいに可愛い。異論は認めない。
ただ、その可愛さ故に余計なものも寄せてしまうから注意が必要だ。
今日だって、私が少し目を離した隙に鬱陶しい害虫が寄ってきていた。
――あの害虫。私がヤマト*1たちをけしかけなかったら凜ちゃんに何をするつもりだったんだろうか。後で徹底的に潰しておかなくちゃ。
「そもそもなんで私に告白するんだろ。普段も男子とはほとんど会話なんてしてないのに惚れられる要素がよく分からないな……この学校には私よりも可愛い子が他にいっぱいいるのにね」
そう言って彼女は困ったように笑う。
たしかに普段から彼女は男子とほとんど会話をしていない。だけど挨拶されたらちゃんと返しているし、男子に対する偏見とかを持っていないどころか同じ女の子として心配になるレベルで無防備すぎる面があるので男子たちからの人気は恐ろしく高いのだ。……本人はまるで気づいてないけど。
(男子たちにとっては何もかもが刺さるんだろうねぇ)
風にたなびく幻想的な銀の髪と澄んだ瑠璃色の瞳は、この学校での彼女の二つ名である【銀天使】にふさわしい魅力を今日も周囲に振りまいていた。
「私に言わせれば純粋に可愛さで言ったら凜ちゃんが(世界で)一番だと思うけど」
「えっ……い、いや、そんなことはないって。3組の聖奈さんとか読モやっててすごく可愛いじゃん」
動揺を誤魔化すように髪の毛先を右手でいじりつつ、彼女は言った。
「聖奈さん……ね」
同学年3組の聖奈さん……読者モデルとして活動している売れっ子さんで、彼女もまた男子からの人気は高い。
だけど私からしてみれば……
「私は聖奈さんより凜ちゃんの方がよっぽど可愛いと思うけど(だってあれは計算された可愛さってやつだし)」
「んえっ!?」
的確に媚を売るために作られた可愛さと何一つ意識していないありのままの可愛さ。聖奈さんと凜ちゃんはそれぞれそんな感じだ。
馬鹿な男子の多くはその違いに気付くことはできないだろうけど、女子は当然それに気付いている者が多い。
「凜ちゃんは可愛いよ」
「ひ、ひより……?」
彼女のほんのり赤く染まった頬に目が吸い寄せられる。ちょっと触ってみてもいいかな――ってもう触ってたなもちもちプニプニで気持ちいい最高だねずっと揉んでたい好き。
「んぅ……」
両手を彼女の頬に添え、正面から覗き込むようにして目を合わせる。
私の行動に彼女は最初きょとんとして、こちらが顔を近づけると赤面してわたわたと慌てだした。なんだこの可愛い生き物は結婚したい。
――ああもう、本当に可愛いなぁ。
「ど、どうしたの?」
「いや、凜ちゃんの可愛い顔をじっくり眺めたい気分になって」
「へあっ!?」
困惑する彼女の頬を挟み込み、手のひらから伝わってくるもちもちな肌の感触を楽しむ。
「あ、あの、これいつまで続けるの? ここ通学路だし普通に人目が……」
「この時間ならそんなに人もいないし大丈夫。というか人目がなかったら別にいいの?」
「え、そ、それは……」
「えいっ」
「わぷっ!?」
おろおろと視線を彷徨わせる姿が可愛すぎたのでとりあえず抱き締める。鼻が優しくて甘い――私の大好きな香りでいっぱいになり、自然と全身がリラックス状態になった。
「うへへ、やっぱり凜ちゃんにくっついてると落ち着くねぇ。私これ好き」
「……もう。ちょっとだけだよ?」
見えないけど多分ジト目をした彼女がそう言って脱力し体を預けてくる。
胸に感じる幸せな重み。そこにある無防備な身体。
彼女から身体を委ねられたという事実に、ほんの一瞬だけ、ぞくっとした快感を感じてしまった。
「……」
ふと顔を上げると視界の端に同じ学校の制服を着た男子生徒たちの姿が映った。
彼らはある程度近づいたところで私たちにハッと気付き、数秒固まった後に赤い顔でこちらに声をかけることもなくそそくさと遠ざかっていった。
気のせいだろうか、なんとなくその目は「どうぞごゆっくり」と言っているような気がした。
――うんうん、それが正解だよキミたち。凜ちゃんは私たちのものだからね。空気が読めてえらいね。
そうして5分くらいの時間が経ち、痺れを切らした彼女が私の背をタップしてきたので仕方なく抱き締めを解除した。
「満足した?」
「ちょっとだけ」
「はぁ……続きは帰ってからにしてね。早く帰りたいし」
「うん」
そう言って歩き出した彼女に続いて私もその隣へ移動した。
他愛もない学校での出来事を二人で話しながら私たちは帰り道を歩く。
その最中にも感じる周囲からの無数の視線。それは私に向けられるものも多いけど、ほとんどが最終的に彼女へと吸い込まれていくことを私は知っている。
それはきっと理屈ではなく本能的な何か。多くの人にとっては無意識に感じ取っているものなんだと私は思う。
お人形さんのように整った容姿もさることながら、時折どこか神聖で幻想的な雰囲気を見る者に感じさせる彼女はまるで――純粋な人間ではないみたいで。
――だから時々不安になるんだ。あなたが、ふとした瞬間に消えてしまわないかって。
私の今見ているあなたはただの幻なんじゃないのかって――そんなおかしなことを考えてしまうんだ。
あなたが消えてしまわないか不安で。今見ている世界が本物であることの確証が欲しくて。ふとした瞬間に襲ってくる、言い表しようのない漠然とした大きな不安から解放されたくて。
私が何かと彼女に触れようとするのは、そこに
単純に好きだからという理由もあるけど、半分以上はそんな漠然とした不安から逃れるためにやっているのが真実。
彼女と一日以上離れただけでまともに眠ることすらできなくなる私はきっと、どうしようもないほど彼女に依存してしまっている。
「あはは……我ながらめんどくさい子だなぁ私」
「ん、何か言った?」
「んーん。なんでもないよ銀天使様♡」
「っ! ちょっと! その呼び名はやめてってば!」
「えー? 私は似合ってると思うんだけどなー」
「ひよりのそれは面白がってるだけでしょ! 恥ずかしいからやめて!」
「ごめんごめん。もう呼ばないから許してぇ」
「次言ったら私の部屋に一日入室禁止にするからね」
「本当にごめんなさい」
その罰はシャレにならないので全力で謝った。
これから天使様呼びは心の中でだけにしておこう。
「まったくひよりはいつも――!!」
「わっ!?」
一瞬の出来事だった。ちょっとだけ怒った顔をしていた凜ちゃんが急に真顔になって私の手をグッと素早く引っ張る。
――ブオオオン!!
ふわりと優しく抱き寄せられた次の瞬間、私のすぐ後ろを暴走気味な一台の車が勢いよく通り過ぎていった。
「――」
真剣な表情の彼女と至近距離で目が合い、一瞬息が止まる。
美しく凛々しい天使が私を心配そうに見つめていた。
「――ったく、危ない車だなあ。ひより平気? 怪我してない?」
「あ……う、うん」
遅れてブワッと急激な体温の上昇がやってくる。
バクバクと激しく鼓動する心臓の音に気づかれないよう、私はできるだけ平静を装って返事をした。
どうしよう、不意打ちすぎて顔の熱が全然引かない。こんなのずるいよ。
「ん? 少し顔が――」
再び顔が近付きそうになり、私は慌てて彼女から離れた。
「だ、だだだだ大丈夫!! この通り怪我一つないから!」
「そう? ならいいけど何かあったらすぐに言ってね」
「……うん」
怪訝そうな顔をしながらも彼女はそれ以上何も聞かず、静かに私の左手をとって歩き出した。
こういう時、彼女は距離の取り方が絶妙だ。踏み込みすぎず、かといって放り出すこともせず、相手の心の機微を的確に読み取って、それに合わせた対応をしてくれる。
……あっち方面には未だに疎いけど、それもまたある意味彼女らしくて魅力的だというかなんというか……。
「うぁー……」
色々な感情が渋滞を起こして唸る私を見てクスクス笑う彼女。それが余計に恥ずかしくて、顔がさらに暑くなる。
「ふふっ。珍しいね、ひよりがそんな変な顔をするなんて」
「えっ、わ、私今どんな顔してるの?」
「さあ?」
「いじわる……」
私だけが余裕を無くしている状況になんだか悔しくなって彼女を睨むけど楽しげにからかうような笑みが返ってくるだけだった。これじゃあいつもと立場が逆だ。
たまにいじわるなそういうところも好きなんだけど……好きなんだけども!
「むうううーー!」
「どうどう、落ち着いて。ね」
小さな子をあやすような慈しみのこもった声。彼女に笑いながらぽんぽんと頭を数回撫でられる。
「むう……」
たったそれだけで私はふにゃりと全身の力が抜けてしまう。あれ? 私ってばちょろすぎでは? でも実際耐えられないから負けるしかないのだ。やっぱり凜ちゃんはずるい。
結局この日は本部に着くまで彼女から小さな子供扱いをされたまま手を引かれて歩いたのだった。
――きっとこの先、こんなにも私の心を振り回す人はあなた以外に現れない。
あなたには常に私を見つめて、私の髪や頬を撫でて、抱き締めながら、私の名前を呼んでほしい。
あなたに対してはいつだって求めたくなってしまう。身も心も委ねてしまいたくなる。
絶対に嫌われたくないから好きになってもらえるように頑張り続けるし、そのために醜い願望には蓋をして我慢だってする。
……本当は、誰も知らない場所で頑丈な檻の中にあなたを閉じ込めて一生守り続けたいと思うけれど、あなたはきっとそれを許さないだろうから。
ねえ
だから――死がふたりを分かつまで、私たちはずっとずっとずうーっと一緒だよ。
ただ家に帰るだけなのに、こいつらまたいちゃついてるよ……
設定がごちゃごちゃしてきたので、まとめ用のページを作りました。
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愛の重い子大好き。