TSして魔法少女になったけど質問ある?   作:TS百合好きの名無し

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お久しぶりです。リアルの忙しさが一段落したので帰ってきました。
最近のハーメルンは魔法少女モノが地味に増えてて私的には最高の環境ですね。もっと増えないかなー(期待の目)

さて、今回はアンケートで一番だった悪の魔法少女回になります。
時系列が混乱しないように先に伝えておくと、掲示板シーン終了後からずっと過去の話(つまり過去編)になるのでご了承下さい。

今回も頭を空っぽにしてリラックスしながら読んでね。


拾った女の子の正体が悪い魔法少女だった件 前編 ―メア―

 

 

 

224:TS魔法少女

というわけで、研修3週目も新人ちゃんの育成は順調だよー

あの子のガッツは本当にすごいからね

確かに魔力量は少ないけど、工夫次第でそれは補える場面が多いと私は思ってる

極端な話、最後にとどめを刺す分の魔力が残っていれば勝率はゼロじゃないもの

 

 

225:魔法少女を愛する名無し

はえー、新人ちゃんも成長してるんですねえ

 

226:魔法少女を愛する名無し

イッチみたいにちゃんと自分を認めてくれる先輩に出会えて彼女は幸せもんやなあ

 

227:魔法少女を愛する名無し

ガッツのある努力家お嬢様すこすこ

これからも応援する

 

228:TS魔法少女

さて、新人研修についての報告は以上かな

私にはまだ時間あるけど他に何か質問ある?

 

229:魔法少女を愛する名無し

うーん、色々ありすぎて絞れん

 

230:魔法少女を愛する名無し

>>228

じゃあ適当にイッチの過去話を何か聞きたいな

印象に残っている出来事とか

 

231:魔法少女を愛する名無し

>>230

ええな

俺も聞きたい

 

232:TS魔法少女

>>230

印象に残っている過去の出来事かぁ……

割と色々あるんだけど、まずパッと思いつくのはこれかな

 

・とある冬の日の夜、買い物帰りに道端でずぶ濡れの女の子を拾った話

 

 

233:魔法少女を愛する名無し

えぇ……いきなりすごいのが来た

 

234:魔法少女を愛する名無し

もうこの時点で興味深い

 

235:魔法少女を愛する名無し

すっげえ内容が気になるタイトル

 

236:魔法少女を愛する名無し

パンツ脱いだ

 

237:魔法少女を愛する名無し

>>236

履きなさい

 

238:TS魔法少女

みんな聞きたい?

 

239:魔法少女を愛する名無し

聞きたい!

 

240:魔法少女を愛する名無し

聞くに決まってらあ!

 

241:魔法少女を愛する名無し

オナシャス!

 

242:TS魔法少女

おけおけ

 

これは今から約一年半前の話ね

タイトルにもある通り、私は冬の夜に食材の買い出しに出かけんだけど、その日は午後からひどい雨が降ってたんだ

ちなみにこの年はクリスマスも土砂降りでひどかった

 

243:魔法少女を愛する名無し

……あー、確かに土砂降りだった覚えがある

 

244:魔法少女を愛する名無し

俺も思い出した

あの年のクリスマスは天気ひどかったよなあ

 

245:TS魔法少女

そんなわけで冬の大雨の中、近所のスーパーでの買い出しを終えていつものように家(この頃は自宅暮らしだった)に帰っていたら、ふと異様な光景を見つけて私は思わず足を止めちゃったんだよね

 

そこには幼い女の子が一人いたんだ

それが普通の女の子だったなら私はそのままスルーしただろうけど、その子は明らかに普通じゃなかった

見た目は私よりも年下の小学3〜4生ぐらい

そんな幼い子がひどい雨の中で雨具の一つも持たずに道端で膝を抱えて座り込んでいたの

 

流石に無視できなくて

「ねえ……傘も差さずにこんなところにいたら風邪を引いちゃうよ?」

って声をかけたら、彼女はゆっくりと顔を上げてこちらに視線を向けて――あの時のことは今でもよく覚えてる

 

ぞっとしたよ

まるで生きることそのものに絶望したかのように生気を失った暗い瞳

とてつもなく深い闇を覗いている気分だった

 

女の子「……なに?」

 

私「……こんなとこで何しているの? 用がないなら早く家に帰った方がいいと思うんだけど」

 

少女が声を出したことで我に返って再び声をかけてみたけどあまり反応はよろしくなかった。

 

女の子「……帰りたくない」

 

長い間を置いてそう返されたから、『家庭の方に何か問題がある感じなのかな?』なんて思いながら、次の自分の行動を考えた。

明らかにただ事でない様子だし嫌な予感がしたからとりあえず彼女を元の家に送り届けるのは却下

でも誰か他に頼れる人は残念ながらいない状況

そして私の中に見捨てるという選択肢は最初からなし

それで結局……

 

「じゃあさ、ひとまず私の家に来ない?」

 

なんて、気づけばそんなことを口走ってた

 

 

246:魔法少女を愛する名無し

小学生がそんな目をするって一体何があったんや……

 

247:魔法少女を愛する名無し

冬の夜にびしょ濡れ状態ってヤバそう

 

248:TS魔法少女

少女を家に連れ帰った後、私はもちろん速攻で彼女を風呂場へと押し込んだよ

当時のような寒い季節に雨に打たれ続けるなんて自殺行為もいいところだからね

体調を崩すことはおそらく避けられないだろうけど、少しでも早く体を温めることで症状を軽くしないとって必死だった

 

びしょ濡れの私たちの服はそのまま洗濯機へ突っ込んで、少女には私の持っている服の中でも比較的サイズの小さい物を着せることにした。

 

私「お、なかなか似合ってるじゃん。……ところでお腹は空いてる?」

 

女の子「……いらな――」

 

私「あはは、お腹の虫は正直だねぇ。待ってて。すぐに用意するから」

 

女の子が断ろうとしたタイミングで彼女のお腹が『ぐぅうう〜〜』って鳴ったのはちょっと面白かったかな

そんなわけで買ってきた食材は素早く調理して二人で食べた

食事中の少女はずっと無表情&無口だったけど、出した料理は残さずしっかりと食べてくれたので結構嬉しかった

その後はどこで今日の睡眠をとるか考えた末、私のベッドに少女を寝かせ、私は同じ部屋の床に布団を敷いて寝ることにしたんだ

 

――異変が起こったのは真夜中のことだった

 

真夜中に何やら声が聞こえてきて目が覚めてね

声の方を見たらそこで眠ったままひどくうなされている彼女の姿があったんだ

 

「いや……痛い、痛いよ……やめて……パパ……!」

 

「やめてよ……なんでみんな○○を無視するの……」

 

「もういやだ……いやだよぉ……」

 

彼女はそんなことを呟きながら、うわ言のように何度も「ごめんなさい」と繰り返して、苦痛に満ちた表情を浮かべてたんだ

 

額には脂汗が浮かんで、閉じられた瞳の端から涙があふれて頬を伝っていた

衝撃だったよ

一体何があったらこの年頃の女の子がこんな風になるのだろうかって

こんなの……どう考えてもまともじゃないって

 

彼女と私は所詮その日に出会ったばかりの他人で

きっと私じゃ彼女の苦しみを理解してあげることなんてできっこないって分かってた

だけどそれで納得できるわけなくて……

 

「大丈夫、大丈夫だよ。ここにはあなたを傷つけるものは何もないから」

 

乱れそうになる自分の心を落ち着かせながらそんな風に声をかけて

女の子の様子が落ち着くまで、私はずっとその手を握り続けてた

 

 

249:魔法少女を愛する名無し

……どうしよう、軽い気持ちで聞き始めたらなんかすごく重い話が始まっちゃった

 

250:魔法少女を愛する名無し

いや重い……重くない?

 

251:魔法少女を愛する名無し

虐待……だけじゃないな多分

なんにせよふざけた話だ

 

252:魔法少女を愛する名無し

うーん、この隠しきれない闇の気配

それはそうとイッチはやっぱりイッチやなって

 

253:魔法少女を愛する名無し

幼女をこんな目に合わせるとか加害者全員ぶん殴りたくなるで

 

254:TS魔法少女

 

翌日は、予想通りに女の子が熱を出したのでひたすら看病の時間

その時に少しだけ会話をしてちょっぴり打ち解けることができた

 

次の日に女の子は体調が回復して帰宅することになって

心配から言い出した家への付き添いはやっぱり断られたけど、代わりにいつでも私のところへ遊びに来ていいよって伝えて彼女とは別れたんだ

 

そしてこの日をきっかけに彼女は私の家に入り浸るようになった

 

ちょうど冬休みだったし近場での魔人・魔獣の出現も少なかったから時間はたっぷりあって、私は毎日彼女と遊んだ

最初の頃はぎこちない態度を見せていた彼女だったけど、日を重ねるうちに段々と素の姿を見せてくれるようになった

これまで一人っ子で兄弟もいなかった私からすれば、彼女は初めてできた妹みたいな存在だったからとにかく可愛くてねえ……楽しい日々だったよ

 

 

255:魔法少女を愛する名無し

イイハナシダナー

 

256:魔法少女を愛する名無し

よかった……彼女は安息の地を見つけられたんやな

 

257:魔法少女を愛する名無し

イッチって一人っ子だったのか

妹系ロリとたわむれるイッチ尊い……

 

258:魔法少女を愛する名無し

ちなみに保護した女の子の素ってどんな感じやったん?

やっぱり彼女とのやりとりを具体的に知りたくてな

 

259:TS魔法少女

そうだなぁ……仲良くなった後の素の彼女とのやりとりを覚えている範囲で軽く紹介するとこんな感じ

 

・食事にて

女の子「おねーさん料理上手なんだね」

 

私「料理は趣味の一つだからね。あ、こらニンジンよけちゃダメだってば!」

 

女の子「やだ。おねーさんの料理はおいしいけどニンジンは嫌い」

※この後ちゃんと全部食べさせました。お残しは許しませんので

 

 

・テレビゲームにて

女の子「ふふん! また私の勝ちだねおねーさん」

 

私「ば、ばかな……!?」

 

女の子「あれあれ〜? さっきあれだけ『私、このゲームには結構自信あるんだよ』って言い張ってたのにおかしいね? もうこれで○○の10連勝だよ? おねーさんざこざこだぁ。やぁい、ざぁこ♡ざあこ♡」

 

私「こいつ……! もう一回だ!」

 

女の子「いいよー。それじゃあ、またコテンパンにしてあげるね♡」

 

私「いいや、次こそは私が勝つ」

※この後はめちゃくちゃ負けまくった

 

 

・公園にて

 

女の子「おねーさんってさ……」

 

私「……?」

 

女の子「私服ダサくない?」

 

私「えっ」

 

女の子「なんかこう、『着れれば何でもいーや』って感じがすごいの。せっかく可愛いのにもったいないよ」

 

私「うっ(図星)」

 

女の子「今からお店行こうよ。○○がダメダメなおねーさんのためにお洋服選んであげる♡」

洋服店に移動

 

女の子「わぁ可愛い! すっごく似合ってるよおねーさん!」

 

私「あ、ありがとう……でもこれちょっとスカート丈が「タイツとかレギンス、くつ下で十分暖かくできるからね? あんなクソダサい格好は二度としちゃダメだよ♡」……はい」

 

女の子「……ところでおねーさん。○○、今ちょっと食べてみたいスイーツがあるんだけど」

 

私「あーうん、もちろんご馳走しますともお嬢様」

 

女の子「わーい」

※この後スイーツ店巡りした

 

 

……大体こんな感じだったかな

懐かしいなぁ

 

 

260:魔法少女を愛する名無し

まごうことなきメスガキで草

 

261:魔法少女を愛する名無し

なんと! 素晴らしいメスガキじゃあないか!

 

262:魔法少女を愛する名無し

ああ^~いいっすね^~

 

263:魔法少女を愛する名無し

はー、てぇてぇ……

 

264:魔法少女を愛する名無し

JS百合の上に片方はメスガキやと? 俺を殺す気かな?

尊みの過剰摂取で死んじゃうだろうが! もっとやれ!

 

265:魔法少女を愛する名無し

は? 最高かよ

 

266:魔法少女を愛する名無し

二人とも可愛いなぁ

 

267:魔法少女を愛する名無し

ちなみにその子とは今でも交流あるん?

 

268:TS魔法少女

>>267

あるよー

というか同じ魔法少女として機関で一緒に働いてる

 

269:魔法少女を愛する名無し

マジ? 

メスガキ魔法少女……最高やな

 

270:TS魔法少女

まあそんなわけで彼女とは今でも仲良しなんだ

当時のことはこれ以上詳しく語ると長くなる――というか彼女の場合事情があってプライバシーがマズいことになる可能性が高いからこれ以上は明かせません、ごめんね

ただ、彼女が今幸せそうであることは確かだよ

 

ま、一応これが私にとって印象に残っている過去の出来事の一つかな

 

 

271:魔法少女を愛する名無し

心に傷を負っていたはずのメスガキちゃんが今を幸せに生きている

それだけでおじさんはとても嬉しいです

 

272:魔法少女を愛する名無し

家庭の闇っぽいのとかどーしたのって聞きたかったけど事情があるなら迂闊に聞けんわな

ま、ぶっちゃけメスガキちゃんの無事が確認できただけで十分やし満足してるが

 

273:魔法少女を愛する名無し

メスガキちゃんとは今でも昔のようなやりとりをしてるの?

 

274:魔法少女を愛する名無し

あ、それちょっと気になるかも

 

275:魔法少女を愛する名無し

言うて一年半前やしあんまり変わってないんとちゃう?

 

276:TS魔法少女

ええと、昔のようなやりとりは今はそこまでしていないかな

同僚になってから言葉遣いが変わって私のことも『おねーさん』って呼ばなくなったし……

ああでも、根っこの部分はあの頃と変わってないし、二人きりでいる時はたまにあの頃のような姿を見せたりするね

そういうところもまた可愛いんだ

 

277:魔法少女を愛する名無し

デレデレやんけ!

 

278:魔法少女を愛する名無し

イッチデレデレで草

 

279:魔法少女を愛する名無し

二人きりの時だけ昔の姿を見せてくれるのってなんかこう……いいよね

 

280:魔法少女を愛する名無し

>>279

わかる

信頼関係が見えて尊い

 

281:魔法少女を愛する名無し

可愛い後輩じゃないか……

 

282:TS魔法少女

あ、そろそろ寝る時間なので抜けるね

今日も雑談に付き合ってくれてありがとー!

ばいばい!

 

283:魔法少女を愛する名無し

おつー

おやすみー

 

284:魔法少女を愛する名無し

おつ、今日も楽しかった

 

285:魔法少女を愛する名無し

おやすみ、良い夢を

 

286:魔法少女を愛する名無し

てぇてぇ話をありがとう、おかげで今日もぐっすり寝れそうだ

 

287:魔法少女を愛する名無し

百合……いいよね……

 

288:魔法少女を愛する名無し

……さて、俺も寝るか

 

289:魔法少女を愛する名無し

おう、おやすみやで

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 一年半前――東京都

 

 街中を多くの人々が行き交う週末のお昼時。

 大通りに談笑する子連れ夫婦たちや楽しげにはしゃぐ私服の学生たちの姿が多く見られる中、大通りから外れた人気のない路地裏を歩く一人の少女の姿があった。

 

 年の頃は10歳前後だろうか。

 多くのフリルのついた可愛らしい服装に身を包み、柔らかいセミロングの髪をツインテールにまとめたその少女は、時折周囲をきょろきょろと不安そうに見回しながら歩いている。

 彼女が歩みを進めていくにつれて周囲の喧騒は遠ざかり、まるで別世界のように静かで薄暗い場所へと変化していった。

 

「おやお嬢ちゃん、迷子かなぁ?」

「それはいけない。君みたいな可愛い子が一人でこんなところに来ると大変なことになっちゃうよ~?」

「そうそう、俺らみたいなヤツのせいでね。デュフフ……!」

 

 突然背後から声がかけられ、少女はびっくりした様子で振り返った。

 いつの間にか少女の歩いてきた道を塞ぐようにして、ニヤニヤといやらしく笑う男が三人立っていた。

 

「お、おじさんたちだれ……?」

「うっは! ロリツインテでこの顔とかアイドル負けてんじゃね!?」

「やべえ興奮してきた。今日はマジでついてるぜ」

「おじさんたちかい? おじさんたちは君のような子どもがだ~い好きな……悪い大人さ」

「ひっ!?」

 

 怯える少女の姿を見て興奮をあらわにする男たち。明らかにまともな人間ではない。

 じりじりと詰め寄ってくる男たちに身の危険を感じた少女は小さな悲鳴を上げて彼らと反対方向へ逃げ出した。

 

「へへ、おいかけっこかい? おじさんたちは負けないぞぉ」

「負けるも何も、そもそもこの先はなぁ……?」

「デュフフ。あの怯えた顔もそそりますなあ!」

 

 路地裏にて始まった逃走劇。しかしそれはすぐに終わりを迎えた。

 

「はあっ、はあっ! ……え?」

 

 逃げ出した少女の前に立ちはだかる壁。路地裏の先は完全な行き止まりであった。

 まさしく絶体絶命。

 男たちはすぐに追いつき、少女を逃げられないように囲いこんでしまった。

 

「ざ~んねん。行き止まりで~す。お嬢ちゃんの負けだね」

「それじゃ、お楽しみといこうか……」

「ひっ、な、なにするの?」

「ハアハア、お、大人しくしてればすぐに気持ちよくなるからね!」

 

 歪んだ笑みを浮かべた男たちの手がとうとう少女へ伸び――

 

「いやああああっ!! …………なーんちゃって」

 

 直後、眩しい光が彼女から放たれる。

 光が消えた時、男たちは地面から伸びた黒い光の縄のようなもので全身を拘束されていた。

 

「へ?」

「うおおおっ!?」

「な、なんじゃこりゃ!?」

「あはははははっ! 期待通りの間抜け面をありがとー」

 

 予想外の出来事に驚き慌てる男たち。

 続いて横から聞こえてきた声の主へと視線を向けた彼らは目を見開く。

 

「「「なっ……!?」」」

 

 そこにあったのは桃色の髪をツーサイドアップにまとめ、黒を基調とした可愛らしいへそ出しのフリフリ衣装に身を包んだ一人の幼い少女の姿。

 彼女は拘束された彼らを馬鹿にしたような目で眺め、その口元には嘲りの笑みを浮かべていた。

 先程までとはまるで異なる彼女の様子に困惑しつつ、男たちの一人が口を開く。

 

「……お嬢ちゃん、魔法少女だったのかい?」

「そーだよ? 結構可愛いでしょ?」

 

 くるりと一回転する少女の動きに合わせて短いスカートがひらりとはためき、男たちは思わずその動きに釘付けになる。

 

「(くっ、見えそうで見えない!)それには全面的に同意するけども……これ、ほどいてくれない?」

「だーめ♡ せっかくおじさんたちみたいなクソザコ童貞を捕まえたのに逃がすわけないじゃん」

「は……?」

「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわっ!」

「デュ、デュフっ!?」

「えー、ほんとにぃ?」

 

 少女がニヤリと笑い衣装の胸元を軽く引っ張ると、彼らは非常に分かりやすく動揺する。確認するまでもなく図星だった。

 

「あは♡ ねえおじさんたち、私とここで……イイコトしたい?」

「「「……!!」」」

「うわあ、期待してるのバレバレ♡ でもごめんね。おじさんたち前髪スカスカだし、臭いし、服もダサいし、全然タイプじゃないの♡」

「「「こ、このガキ……っ!」」」

 

 大人が子供にここまで言われて黙っていられるわけがない。

 彼女の自分たちを心底馬鹿にした態度に彼らは激しい怒りを覚え、拘束を解くべく暴れ出した。

 

「ガキ! さっさとこいつを解け!」

「可愛いからって何でも許されると思うなよ!」

「フンヌヌヌ……!」

 

 しかし拘束は解けず、その間に彼女はどこからともなく謎の黒い球体を取り出すと、それを彼らに向かって放り投げた。

 

「さあて、それじゃあ……がんばってねぇ」

「お、おい、何だそ――」

 

 バクン!と巨大化した球体が彼らの姿を飲み込む。

 ドクンドクンと怪しく蠢く球体はまるで何かのサナギのようだった。

 やがてそれにヒビが入り砕け散ると、そこには三体の異形が立っていた。

 

「期待してるからねぇ、魔人さん♪」

 

 自身が生み出した魔人を見つめ、少女は楽しげに笑った。

 

 

 

 

 普段は多くの子供たちが元気いっぱいに遊び回る姿が見られる街中の大きな公園。

 だが今、そこで聞こえてくるのは子供たちのはしゃぎ声ではなく悲鳴であった。

 

「「「ヨウジョ……! ヨウジョ……!」」」

「うわあああんっ!」

「きゃあああっ!」

「ママァーー!」

 

 平和な公園に突然襲来した三体の魔人。

 滑りのある体液で全身をテカらせた二足歩行のカエルのような姿をしたそれらは、公園で遊んでいた幼い少女たちを標的と定めて追いかけ回していた。

 

「きゃあっ!」

「おねえちゃん!?」

 

 そんな中、魔人から逃げていた一組の姉妹。その姉が逃げる途中で転んでしまう。

 

「私はいいから早く逃げて!」

「で、でも……」

「ゲッゲッゲ! 安心しろ。二人まとめて仲良く味わってやるからよぉ!」

「「ひっ!」」

 

 姉妹を追いかけていた魔人は瞬く間にその距離を詰め、その魔の手を彼女たちへと伸ばす。

 彼らに捕まってしまうとどうなるのか。その答えを彼女たちは知らなかったが、濁りきった欲望まみれの視線を見ると全身の震えが止まらなくなる。女としての本能がしきりに警鐘を鳴らしていた。

 

(いやっ、誰か助けて……!)

 

 この距離ではもう逃げられない。迫る恐怖に彼女たちは身を縮めてきゅっと目を瞑る。

 

「……?」

 

 しかし、いつまで経っても魔人の手が触れる気配がないことに気付き、彼女たちはおそるおそる目を開いた。

 

「ひっ……え?」

 

 魔人は変わらず目の前にいた。だが動かない。

 当然だ。彼は全身を氷漬けにされていたのだから。

 

「……大丈夫?」

 

 ふわりと彼女の隣へ誰かが降り立つ。

 肩にかかるぐらいの水色の髪に、同色を基調とした可愛らしい衣装。小学生である自分とあまり年の変わらぬ少女が青色のステッキを持ってこちらの顔を覗き込んでいた。

 

「もしかして、魔法少女……!?」

「うん、アイスビューティーっていうの。よろしくね」

 

 魔法少女が来てくれた。その事実は彼女たちに大きな安心感を与える。

 

「は、はい。あっ、でもまだ他にもアレが!」

「知ってる。そっちにも同じ魔法を撃ったんだけど……避けられちゃったみたい」

 

 アイスビューティーと名乗った魔法少女の視線の先には、彼女を警戒するように睨みつけている二体の魔人の姿があった。

 

「今の内に逃げて。後は私がやる」

 

 ビューティーは短くそう告げると魔人たちに向かっていった。

 

 

 

 

「ビューティー・バレット!」

 

 戦闘の開始はビューティーの魔法からだった。

 構えたステッキから拳の二倍サイズの無数の氷弾が撃ち出され、魔人たちを攻撃する。

 

「「ゲッゲッー!」」

「嘘!? カエルの癖に意外と硬い……!」

 

 次々と直撃する氷弾。だが魔人たちは両腕で頭部と体を守るようにしながら、怯むことなく突っ込んでくる。

 

「(これじゃ大技を撃ちづらい……)なら格闘で!」

 

 距離を詰められたことでビューティーも格闘戦へと思考を切り替え、ステッキを槍へと変化させる。主武器である槍を用いて近・中距離の間合いで戦う……これが彼女にとっての基本的な戦闘スタイルであった。

 

(間合いに入った瞬間にまずは一撃入れる!)

 

 そう考え、待ち構えていた彼女だったが――

 

 ググンッ!

 

「――ぇ」

 

 いざ攻撃を。そう思った時には既に彼女は魔人の腕の中にいた。

 何故? 予想だにしない速さで何かに体を引き寄せられたのだ。その正体は魔人の持つ長い舌だった。

 彼女が知るよしもないが、カエルは獲物の補食に関して非常に優れた能力を持っている生き物である。

 ハエやトンボなどの羽を持って俊敏に動き回る生き物ですら簡単に捕らえることができる彼らの舌は強力な筋肉群の塊であり、その発射速度は驚異の秒間4000m。人間のまばたきの五倍の速さで獲物を捕まえることができるのである。

 

 つまり、ビューティーは無策で彼らの舌が届く間合いに決して入るべきではなかったのだ。

 

「ゲッゲッゲ!」

「がっ!? あああああああっ!?」

 

 魔人が胸に抱いた彼女の体をへし折る勢いで両腕に力を込める。ボキリと嫌な音が響き、彼女は凄まじい激痛に悲鳴を上げた。

 

「ざまあないねビューティー」

「……だ、れ?」

 

 ふと、そんな彼女へとかけられる声が一つ。

 激痛により額に汗を滲ませながら彼女が視線を空に向けると、そこに桃色髪の少女の姿が見えた。

 

「あなたは……っ!」

 

 その姿を認識した瞬間、ビューティーは桃色髪の少女を鋭く睨みつけていた。

 

「またあなたの仕業なのっ!? メア!」

「それを聞いてどうするのー? あっさり捕まったクソザコビューティーちゃん♪」

 

 メアと呼ばれた少女が笑う。

 正義の魔法少女と悪の魔法少女。彼女たちが出会うのはこれが初めてではなく、これまで何度も衝突を繰り返してきた関係にあった。

 

「っ! 同じ魔法少女なのにどうしてこんなことをするの!」

「……んー、何でだろうね?」

「ふざけないで! みんなを不幸にして何も思わないの? あなただって大切な友達や家族がいるはずでしょう!?」

「はぁー……あなたってさ、人間はみんな仲良しこよしってのを本気で信じてるタイプ?」

 

 必死に訴えかけるビューティーとは対照的にメアの目はひどく冷めきったものであった。

 

「私、あなたみたいな恵まれた良い子ちゃんが大嫌いなんだよね」

「ぐっ、ううう!」

 

 必死で痛みに耐えるビューティー。彼女の体が限界に達しかけたその時、どこかから一筋の光が魔人たちの急所を貫き、戦闘不能に追い込む。

 

「あーあ、時間切れか。じゃあノルマは達成したし帰るね。バイバイ」

「ぐっ、待ちなさ……」

 

 転移魔法で逃げようとするメアを止めようとするビューティーだったが体は動かせず、消えるメアを見送ることしかできない。

 メアを見送った彼女は先程の光が飛んできた方向を見る。そこにはこちらへ駆け寄ってくる別の魔法少女の姿があった。

 

「――大丈夫? 今治療するから」

「ありがとうございますアリスさん。本当に情けない限りです。また逃してしまいました」

「いいよ、気にしないで」

 

 やってきた魔法少女アリスから治療を受けながら俯くビューティーはポツリと言葉を漏らす。

 

「彼女はどうしてこんなことを……」

 

 アリスはその言葉に何も答えず、ただじっとメアが消えた場所を静かに見つめていた。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「おっ、今日は鍋の素が結構安い! 赤から鍋とちゃんこ鍋の二択かぁ……今日の気分的にどっちがいい?」

 

 スーパーの売り場の一角にて、姫宮凛は二つの商品(鍋の素)を手にそんな質問を傍らのツインテール少女に投げかける。

 それに対して凛よりも若干背の低い一つ歳下の少女は首を横に振って答えた。

 

「どっちも食べたことがないから分かんない」

「ちなみに私は赤から鍋の方が若干好きかな」

「じゃあそっちを食べてみたい」

「よし決定。今日は鍋パーティーだ。……家に材料あったかなー?」

「ねえおねーさん、今日もお菓子買っていい?」

「いいよ。ただし合計500円以内にすること!」

「はーい!」

 

 元気よく返事をした少女はさっとお菓子売り場へ消えていき、あっという間に選んだお菓子を抱えて戻ってくる。

 

「早かったね」

「食べたいやつは前から決めてたもん」

 

 凛はカート内の少女の持ってきたお菓子を見る。

 いつも少女には一応自分が欲しいものだけを持ってくればよいのだと伝えてあるのだが……

 中身が全て誰かと分け合えるタイプのお菓子ばかりなのは、つまりそういうことだろう。

 

「さて、もう食材は揃ったしレジへ行くよ○○……○○?」

 

 少女のちょっとした気遣いに嬉しさを感じつつ、凛はレジに行こうと彼女に声をかけるが返事がない。疑問に思って振り返ると彼女はあるものを見つめて立ち尽くしているようだった。

 

「どうしたの……?」

 

 凛は少女の視線の先を見る。そこにいたのはごく一般的な親子連れだ。談笑する夫婦の間に手を繋いだ子供が挟まり今晩の夕食について仲良く話している。

 そんな何てことのないごく普通の家族を少女は無言でぼうっと見つめていた。

 

「……てい」

 

 凛は自分の手を近くの冷凍食品売り場の冷気に近づけ数秒当ててから、それをピタリと少女の首に押し当てる。

 

「うひゃあっ!? ……ちょ、ちょっと何するのおねーさん!」

 

 驚いて飛び上がり、ほんの少し怒った目を向けてくる少女を見て凛はくすくすと笑い、冷えてない方の手をそっと差し出した。

 

「なんかボーッとしてたからつい。ほら、レジ行くよー」

「もー!」

 

 わいわいとそんなやりとりをしながら二人は手を繋いで歩く。

 それぞれ容姿に似通った点もなく、一目で血の繋がりがないと分かる二人の少女。しかし、それでも彼女たちの姿を見た者たちはきっと揃ってこう答えるだろう、『仲の良い姉妹のようであった』と。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 報告レポートNo.○○○ 

 

 20☓☓ ○/○ ○︰○○に魔法少女機関神奈川支部に魔人による襲撃が発生。

 神奈川支部はこれに対抗するも、当時はエース級が他所への出張によって不在であったため戦力不足に陥り対処しきれず、支部とその部隊が半壊。

 襲撃の際に現れた複数の魔人らしき存在たちは魔法を使用してこない代わりに耐久と身体能力が高い個体が多く確認され、現場に現れたリーダーと思われる一体の魔人に【実験体】と呼ばれていた模様。詳細なデータは後ほどまとめて提出する。

 この襲撃でB・Cランク魔法少女計7名が行方不明となっており、死体が見つかっていないことから魔人に捕らえられた可能性が高いと思われる。

 以降機関はこの魔人【リディキュール】を上位魔人と認定し、捕らえられた魔法少女たちの救出に全力で取り組むものとする。

 

 追記

 現場に残った魔力パターンの解析結果が最近東京都で話題になっている【魔法少女メア】が現場に残すものとやや類似しており、両者には何かしらの関係があるのではないかと思われる。

 

 

 

 

 

 




※以下本編の補足等

★変態三名

一応生きてる。変化が解けて病院に入院、その後余罪が発覚して全員がお縄になった。

★魔法少女メア

都内で存在が確認されている。よく魔獣や魔人と共に現れ、街や魔法少女に様々な被害をもたらしている悪のメスガキ魔法少女。
どうでもいいけど女の子が屈んで服の胸元をひらひらさせるのってえっちだよね。挑発的な笑みがセットだとなお良し。

★魔法少女アイスビューティー

都内で活動しており、魔法少女としての実力は中堅。いわゆる委員長キャラだがちょっぴりドジなところもあるらしい。

タイトルを短くしたいんだけどどれがいい?

  • TS魔法少女アリスちゃんの日常
  • TS魔法少女な英雄ちゃんは今日も語る
  • 英雄ちゃんはTS魔法少女
  • TS魔法少女「暇だからスレ立てよう」
  • そのまま派
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