TSして魔法少女になったけど質問ある? 作:TS百合好きの名無し
多分ほとんどの人が本作の存在なんて忘れていると思うけどこっそり投稿しておく。
1:名無しの魔法少女
ここは魔法少女専用の雑談スレです
ここでの書き込み内容は魔法少女以外の人間には閲覧不可となっているので、安心して自由に書き込んで下さい
ただし悪質な誹謗中傷等の書き込みはNGでお願いします
荒らし・煽りはスルーしましょう
次スレは>>970さんお願いします
2:名無しの魔法少女
スレ立てありがとー
3:名無しの魔法少女
立て乙
4:名無しの魔法少女
さっそくだけど今日とっても良い事あったから自慢していい?
5:名無しの魔法少女
いいよ
6:名無しの魔法少女
どうぞどうぞ
7:名無しの魔法少女
暇だしとりあえず聞いてやろうじゃないか
8:名無しの魔法少女
今日のお仕事の担当現場が他の人と被ってて、その人と共同で魔獣の対処をしたんだけど……相方がまさかのアリス先輩だったのよ
もうそれだけで最高だったのに、仕事終わりにお願いしたら快くサインまでもらえちゃって今私めっちゃ幸せなの……
9:名無しの魔法少女
は? 羨ましいにも程があるんですけど
10:名無しの魔法少女
額縁に入れてしっかり保管しとけ
11:名無しの魔法少女
ねえ君、そのサインをメ○カリに出品する予定はないかい?
今なら私が即日入金で引き取ってあげるから
12:名無しの魔法少女
いいなー
私も生のアリス先輩と会話してみたいです
あとサイン欲しいですね
13:名無しの魔法少女
私も私も! サイン欲しい〜!
14:名無しの魔法少女
>>10
サインはもちろん厳重に保管することにした
>>11
売る予定なんてないよ、こんなの一生モノのお宝だもん
はぁ……アリス先輩カッコ良かったなぁ……
15:名無しの魔法少女
気持ちは分かる
あの人はマジでカッコ良すぎるからな
16:名無しの魔法少女
前に映像で彼女の戦闘を見たことがあるけど、動きがとにかく的確で安定感がすごかった
17:名無しの魔法少女
戦闘中のあのキリッとした真剣な表情が素敵すぎて、クラスの男子相手に全くときめくことができなくなっちゃった私です……
18:名無しの魔法少女
>>17
わかるー! あの顔すっごくいいよね!
19:名無しの魔法少女
>>17
アリス様と比べたら同級生の男子共なんて月とすっぽんよ
20:名無しの魔法少女
>>19
男子がちょっとかわいそうになるけど実際その通りなんだよね……
21:名無しの魔法少女
>>19
付き合いたい有名人ランキング(男女両部門)一位ですから
22:名無しの魔法少女
アリスちゃん相手なら同性でも全然恋人とかアリ
むしろ抱かれたい
23:名無しの魔法少女
アリス先輩が恋人に……?
あの素敵なスマイルが毎日目の前で炸裂するの?
何それ幸せすぎて死にそう
24:せんぱいLOVE
なんだか興味深いお話をされているようですね
25:名無しの魔法少女
うわでた
26:名無しの魔法少女
サファイアちゃんチーッス!
27:名無しの魔法少女
でたわね、アリスちゃんガチ勢筆頭
28:名無しの魔法少女
サファイア先輩こんにちは
29:せんぱいLOVE
まったく……せんぱいが誰よりもカッコイイことは当然の事実ですが、せんぱいは決してカッコイイだけの人じゃないですよ
せんぱいを語るならせんぱいの可愛さについてもきちんと触れるべきです
カッコ良さと可愛さが両方合わさって最強のせんぱいなんですから
あとせんぱいは私のものなので誰にも渡しません
30:名無しの魔法少女
ヒエッ!? ユルシテ……
31:名無しの魔法少女
いつものことだけどアリスちゃん関連のレス早すぎて笑っちゃう
32:名無しの魔法少女
安心してちょうだいサファイアちゃん、あなたの大好きな先輩をとるつもりはないわ
33:名無しの魔法少女
独占欲全開やなあ
可愛い
34:名無しの魔法少女
アリスちゃんの可愛さかー
絵本に出てくるお姫様みたいに可愛い容姿(うさ耳みたいなカチューシャ可愛い)はもちろん、ふとした瞬間に見せてくれる柔らかい笑顔がこう……キュンときます!
35:せんぱいLOVE
>>34
ありきたりですが、まあギリギリ及第点とします
36:名無しの魔法少女
許された……!
37:名無しの魔法少女
というか、私たちはプライベートでのアリスちゃんとの交流がほとんどないから、格好良い所は知ってても可愛い所を知る機会がなかなかないんだよね
というわけでアリスちゃんのプライベートでの可愛さを是非教えて下さいサファイア先生!
38:名無しの魔法少女
先生、お願いしまーす!
39:名無しの魔法少女
サファイア先生〜!
40:せんぱいLOVE
仕方ありませんね……
あ、ここでの話を他者に拡散するのはNGです
今日のことは私とここにいる皆さんだけの秘密ですよ?
41:名無しの魔法少女
分かったよ先生!
42:名無しの魔法少女
了解です!
43:名無しの魔法少女
分かりました〜!
44:せんぱいLOVE
ではさっそくせんぱいの可愛い秘密を一つ教えてあげます
実はせんぱいは……大の仮面ライダー好きです
というか男の子が好きそうなアレコレが大抵好きだったりします
以前自室で一人隠れて「変身っ!」って声出しながらヒーローポーズをとってドヤ顔しているせんぱいを見た時は可愛さのあまり気絶しかけました
45:名無しの魔法少女
かわいい
46:名無しの魔法少女
かわいい
47:名無しの魔法少女
かわいい
48:名無しの魔法少女
かわいい
49:名無しの魔法少女
かわいい
50:名無しの魔法少女
かわいい
51:名無しの魔法少女
かわいい
52:名無しの魔法少女
かわいい
53:名無しの魔法少女
かわいい
54:名無しの魔法少女
かわいい
55:名無しの魔法少女
かわいい
56:名無しの魔法少女
かわいい
―――――――――――
―――――――――
――――――
―――
162:名無しの魔法少女
お、ようやく収まってきたかな
163:名無しの魔法少女
いつものことながら、どこからともなく一斉に湧いてきて笑っちゃうんよ
まあ私もかわいいコールしたけども
164:名無しの魔法少女
あんなの聞かされて反応するなって方が無理ですわ!
165:名無しの魔法少女
やはりアリスちゃんこそが最かわ
異論は認めない
166:名無しの魔法少女
あんなに格好良いのにリアルでもクッソ可愛いのずるい
一生推していきます
167:名無しの魔法少女
流石は私たち魔法少女のアイドル様だ
168:名無しの魔法少女
アリスちゃん様万歳!
169:名無しの魔法少女
アリスちゃん様万歳!
170:名無しの魔法少女
アリスちゃん様万歳!
171:名無しの魔法少女
ばんざ~い!
172:名無しの魔法少女
あ、そう言えば最近アリスさんが新人研修の指導教官を務めているという噂話を小耳に挟んだのですが、あれは本当なんでしょうか?
173:名無しの魔法少女
え? アリスちゃんの指導を受けてるスーパーラッキーガールがおるの?
174:せんぱいLOVE
>>172
はい、本当ですよ
現在せんぱいはその新人のいる学校(全寮制)に転入しています
そのせいで最近はせんぱいと一緒に過ごせる時間がかなり減ってしまって……
うぅ……せんぱい早く帰って来て下さいよぅ……
175:名無しの魔法少女
泣かないで
176:名無しの魔法少女
泣かないで
177:名無しの魔法少女
あらら……
178:名無しの魔法少女
全寮制の学校だと……?
もしかしなくてもアリスちゃんの転入先って結構良いところなのでは?
179:せんぱいLOVE
せんぱいの転入先は有名な某お嬢様学校なので、多分皆さんも名前くらいは聞いたことがあると思います
180:名無しの魔法少女
本物のお嬢様学校か……なんだアリスちゃんにぴったりじゃん
181:名無しの魔法少女
お嬢様アリスちゃんだと!? ……うん、違和感がないね
182:名無しの魔法少女
運動とか得意そう
そして授業や部活動で活躍してモテてそう
183:名無しの魔法少女
絶対モテる(確信)
184:名無しの魔法少女
同意
あんな良い子が普段からモテていないわけがない
185:せんぱいLOVE
皆さんの予想通りせんぱいはあちらで少し……いえ、かなりの人気者になっているみたいです
転入してから二日で他の生徒たちから「お姉様」呼びや様付け呼びが学年問わず定着しちゃったらしくて、本人がとても困惑していましたから
まあせんぱいなら当然ですけどね!
186:名無しの魔法少女
草
187:名無しの魔法少女
草
188:名無しの魔法少女
さすがアリスちゃん様、期待を裏切らない
189:名無しの魔法少女
私もアリスさんのクラスメイトになりたいです~
190:破壊神(姉)
なんじゃ、最近あやつの姿を見ないとは思っていたがそんなことをしとったのか
191:名無しの魔法少女
メアリー(姉)さん!?
192:名無しの魔法少女
おー、メアリー(姉)ちゃんこんにちは〜
193:破壊神(姉)
うむ、皆も日々のお勤めご苦労じゃの
それでサファイアよ、あやつの仕事はいつ頃終わりそうかの?
194:せんぱいLOVE
……研修期間自体は明日までですがそれが何か?
195:破壊神(姉)
そうか! ならばあやつに「近い内に我のところへ顔を出しにこいバカ者」と伝えておけ
2ヶ月以上もロクな連絡を寄こさずこの我を放置したのじゃから、罰としてその分しっかりと暇潰しに付き合ってもらわねばな
196:破壊神(妹)
端的に言えば「最近ずっと放置されてて寂しいからアリスさんと会って存分に構ってもらいたい」という意味ですね
それはそうとお久しぶりですサファイアさん
197:せんぱいLOVE
なるほど
あ、お久しぶりですホワイト先輩
198:破壊神(姉)
おい妹よデtラメを言うdない!
そnなこと我h一言も言っtらんわ!
199:せんぱいLOVE
動揺しすぎて文字打ててませんよぺt……ブラック先輩
200:破壊神(姉)
サファイア貴様ァ!
というかぺたんこなのは貴様も同じじゃろうが!
201:せんぱいLOVE
えっ、3つ年下の私と先輩を同じように比べられても……
202:破壊神(姉)
ええい! そうやって余裕ぶっていられるのも今の内じゃぞ!
貴様もいずれ我と同じ絶望を味わうはずじゃ!
203:せんぱいLOVE
まあどちらにしろ、ブラック先輩よりは将来性ありますから大丈夫です
ああそれとせんぱいの今後の予定は私とサニー先輩でほぼ埋まっているのでせんぱいと遊ぶのは諦めてくださいね
204:破壊神(姉)
えっ……
205:破壊神(妹)
サファイアさん、少しだけで良いのでお願いできないでしょうか?
実を言うと私も寂しさを感じておりまして、アリスさんと久々に遊びたい気分なのです
その……ダメ、でしょうか?
206:せんぱいLOVE
仕方ありません……ホワイト先輩のたってのお願いとあれば一日譲るくらいはいいですよ
207:破壊神(妹)
ありがとうございますサファイアさん
208:破壊神(姉)
ちょっと待て、我と妹で態度が違い過ぎるんじゃが!?
209:せんぱいLOVE
だってぺたんこ先輩はぺたんこ先輩ですし……
210:破壊神(姉)
お? やる気かの?
今すぐ本部の模擬戦場へ来いサファイア!
ぼっこぼっこのぎたんぎたんにしてやるぞ!
211:破壊神(妹)
姉さんは黙っててください
せっかく話が上手くまとまりそうなんですから
サファイアさん、今度の土日にアリスさんをお誘いしようと思います
212:せんぱいLOVE
了解しました
その日はホワイト先輩にお譲りしますね
213:破壊神(姉)
……
214:破壊神(妹)
ふふ、週末が楽しみです
ではさっそく今日の昼休みに直接アリスさんへお誘いをかけてきますね
215:破壊神(姉)
ん? なんじゃ、誘うためだけにわざわざ学校を抜け出すのか?
216:破壊神(妹)
え? 何を言ってるんですか姉さん
そんなことをせずともアリスさんには会えますよ
217:せんぱいLOVE
えっと、ホワイト先輩はせんぱいの通っている学校をご存知なのでしょうか?
218:破壊神(妹)
ご存知も何もアリスさんが転入したお嬢様学校とはウチの学校のことですし
219:破壊神(姉)
は?
220:名無しの魔法少女
えっ
221:名無しの魔法少女
えっ
222:名無しの魔法少女
えっ
223:せんぱいLOVE
えっ
224:破壊神(姉)
お、おい、ちょっと待て
妹よ、近頃昼になるとすぐにお主が教室の外へ出ていくのはもしかして……
225:破壊神(妹)
アリスさんと教え子の新人さんと私の三人で昼食を食べるためですがそれが何か?
というか校内であんなに話題になってるのに気づかない方がおかしいかと
ちなみに、アリスさんの教え子さんはとっても良い子ですよ
彼女にとても懐いていますし、努力家でなかなか好感が持てますね
226:破壊神(姉)
227:名無しの魔法少女
ブラックさん……
228:名無しの魔法少女
姉が寂しさを募らせている横で妹はちゃっかり交流してて草
229:名無しの魔法少女
妹殿が見事?に姉を出し抜いておられる
230:名無しの魔法少女
ブラックちゃんがショックでフリーズしちゃった……
231:せんぱいLOVE
ちょちょ、ちょっと待ってください!
それが本当ならホワイト先輩はほぼ毎日せんぱいと会っているってことじゃないですか!?
羨まsじゃなくて! 寂しいって話はどこにいったんですか!?
232:破壊神(妹)
(休日に)会えなくて寂しいのは本当ですよ?
ふふ……それではサファイアさん、約束通り今週末はアリスさんをお借りしますね
233:名無しの魔法少女
肝心な情報を目的達成まで伏せておく
これは策士ですわ
234:名無しの魔法少女
サファイアちゃんドンマイ
235:せんぱいLOVE
うぐぐ……! 今週末! 今週末だけですからね!
私たちだって最近は全然せんぱいと一緒に過ごせていないんですから!
「お姉様、どうぞ」
「ありがとう花蓮」
良家や資産家の女子が多く通う聖百合園女学院。
国内でも最大規模の敷地面積を保有する本校には学業に関するあらゆる施設はもちろんのこと、飲食や娯楽に関する施設までもが完備されており、昼食の際に令嬢たちのほとんどが利用するカフェテリアもその一つである。
普段であればとても賑わっているカフェテリアであるが、この日のカフェテリアは利用者の数が普段と全く変わらないにもかかわらず完全に静まり返っていた。
令嬢たちが何故か皆で示し合わせたように口を閉じ、ある場所へと静かに視線を送っていたからだ。
彼女たちの視線の先――カフェテリアの一角には、研修生である花蓮と共にのんびりと昼食後の紅茶を口にする凛の姿があった。
「明日でちょうど一ヶ月だね」
「……はい」
凛が発した言葉を受けて花蓮が明らかに落ち込んだ様子で頷く。
彼女は膝の上に置いた両手で制服のスカートをきゅっと握りしめ、寂しげな表情を浮かべて凛を見つめていた。
「研修の延長はできないのですよね……?」
「……うん。ここでの生活はとても新鮮で楽しいものだったけれど、そろそろ帰らないとあの子たちが寂しがっちゃうから」
「……そうですか。寂しくなってしまいますね……」
「そんなに落ち込まないで。研修が終わった後でも会える機会はきっとあるから。ね?」
「大丈夫です。数日前よりこの日が来ることは覚悟していましたから」
そう言って花蓮は微笑む。
ただ、覚悟はできていてもやはり寂しい気持ちが勝ってしまうのだろう。花蓮の目尻には小さな涙が浮かんでいる。
この一ヶ月ですっかり二人と打ち解けた本校の令嬢たちもまた、それぞれが心配そうに二人の様子を周りからそっと見守っていた。
「ねえ花蓮、あなたはこの一ヶ月本当によく頑張ったよ。私が叩き込んだ基礎技術を見事にものにした今のあなたなら、努力次第でBランク、そしてAランクを目指すことも決して不可能じゃない」
「ありがとう、ございます……」
「うん。それで、その……私としてはそんな頑張った花蓮に対して何かご褒美をあげたいな〜と考えているんだけど」
「ご褒美……ですか? お姉様が私に?」
驚いたように凛を見る花蓮に彼女は笑顔で頷いてみせた。
「うん、ご褒美。何か希望はある? 私にできることなら何でもいいよ。そのくらい本気で花蓮の頑張りを私は認めているから」
「え、えっと、それでしたら……」
「いいよ、何でも言ってごらん?」
「お姉様のき、き……」
「き……?」
遠慮がちに話す花蓮の緊張を和らげようと優しい声で続きを促す凛。この時は普通に平静を保っていた彼女であったが、それは次の花蓮の言葉を聞くまでであった。
「キス……が欲しいです」
「そっかキスかぁ……えっ、キス……?」
「はい。それがあれば一人になった後も頑張れるような気がして……」
『きゃああああーーっ!!』
「キス」……いつの間にか静まり返っていたカフェテリア内にその声は驚くほどよく響き、それを聞いた令嬢たちは我を忘れて歓声を上げる。が、そんな周囲の様子が目に入らないほど慌てていた凛は内心の動揺を抑えつつ――それでも誤魔化しようのないほど赤くなった顔で花蓮に向けて尋ねる。
「ど、どこに? まさか口? 流石にそれは――」
「ひ、額にです! く、くくく口なんて恐れ多くてとてもできませんわ!?」
「そ、そうだよね!? ……額か、それならまあいいかな」
「ほ、本当ですか!? で、では……」
頬を上気させ、潤んだ瞳で凛を見上げる花蓮はそっと前髪を指でかき上げ、シミ一つない綺麗な額を彼女へと向けると静かに目を瞑った。
「えっ、ここでするの!?」
ガタッ! ガタガタッ! ガタン!
『キマ――むぐっ』
『ちょっと! まだ早いわよステイ!』
『ああ、お二人とも尊いですわ……』
『ふつくしい。これが聖域か……』
『貴方、鼻血が出ていましてよ』
『……鏡をお貸ししましょうか?』
「よ……よし、これは頑張った花蓮へのご褒美だもん。恥ずかしがってる場合じゃないよね」
やがて覚悟を決めたのであろう、俄に色めき立つ周囲を余所に席を立った凛はほんのりと顔を赤らめたまま、ゆっくりとその口を近付け――花蓮の額に優しくキスを落とした。
「ん……」
「……っ!」
「……どう? これで私がいなくなった後も頑張れそう?」
「……はい」
聖母のような微笑みを向ける凛と幸せそうに笑う花蓮。
まるで完成された絵画のような美しさと尊さが溢れるその光景に、一連の流れを見守っていた令嬢たちは一斉に胸や鼻を押さえて悶絶した。
『キッ、キマシタワー!』
『ふつくしい』
『この紅茶クッソ甘いですわ』
『ここがエデンか……』
『嗚呼……この世にはこんなにも美しい光景があったのね』
『私、この学院に来て本当に良かったわ』
『後光が眩し過ぎてもう耐えられないよぅ……しゅきぃ……』
『ふおおお! 新刊のネタはこれで決まりですわぁ!』
『くっ、尊みの過剰摂取で体が持ちませんわ!(鼻血)』
『てぇてぇですわぁ……』
『我が生涯に一片の悔い無し……!』
拳を掲げる者、感嘆のため息を漏らす者、胸を押さえて蹲る者、浄化されて灰になる者、メモをとる者、鮮血で衣服を染める者、悟りを開く者などetc。少しばかりカオスではあるが、これは今のこの学院における日常的な光景であるため何ら問題はない。尊いものを見て尊いと感じるのは人間として当然の反応である(学校長談)。
◆ ◆ ◆
「……どう? これで私がいなくなった後も頑張れそう?」
「……はい」
どうしよう……教え子が可愛すぎてつらい。
ご褒美にキスを要求されたのは流石に戸惑ったし恥ずかしかったが、なんだかんだでこの手のスキンシップの経験はあるのでそつなくこなすことができたと思う。
こんなことで本当にご褒美になっているのか疑問ではあるが、嬉しそうにしている花蓮の表情に嘘はないのだろう。
彼女との新人研修が始まって早いもので約一ヶ月が経ち、明日で研修は終わりとなる。
もう少し残って鍛えてあげたいという気持ちはもちろんあるんだけど――正直そろそろ戻ってあげないとあの子たちが限界のようなので。
寂しい&会いたい&早く帰ってきて云々のメッセージがね、毎日のように送られてくるんだ、それはもう大量に。
今思えばこんな風に長期に渡って別行動をとることなんてほとんどなかったから、なかなか新鮮な毎日だった。ここ数ヶ月はだいぶマシになったとはいえ、ちょっと前まではずっと3人で起きて、戦って、食べて、戦って、寝て、戦って、起きて、たまに休むといった平穏からかけ離れた毎日の繰り返しだったからなぁ。
あの子たちは今頃何をしているのかな。
規則正しい生活ができているのだろうか。ちゃんとご飯と睡眠はとっているのだろうか。勉強をサボってはいないだろうか。気づけばそんなことを何度も考えてしまうほど、私もまたあの子たちのいない日々に寂しさを感じてしまっていて――
「お姉様? どうかされましたか?」
「あぁごめん、ちょっと考え事をね。個人的なことだから花蓮は気にしなくていいよ」
「ふぁ!?」
っとと、いけないいけない。今はまだ仕事中なのだから私事は後にしなくちゃ。
改めて労いの意を込めて花蓮の髪を優しく撫でる。花蓮はそんな私の行動に最初はあわあわと慌てていたが、やがて照れた顔で遠慮がちに頭を押し付けてきた。
うむ、やはり私の教え子は今日も可愛いな……なんて。親バカならぬ先生バカ?のようなことを考えていた時だった。
「――まったく。真っ昼間から何をやっとるんじゃお主らは」
声の方へ顔を向けるとそこには呆れ顔の小柄な少女が一人。
グレーの髪を左側へサイドテールでまとめた赤眼の少女は私たちへとジト目を送りつつ、テーブルまでゆっくりとやって来る。
それに対して私はちょっぴり驚きつつ少女へと声をかけた。
「
「久しぶりじゃな凛。お主に言いたいことは色々あるが……まずは後輩に挨拶といこうか。我はこやつの先輩の
「は、初めまして、一条花蓮です」
「ふむ……」
突然現れた黒羽先輩にどこか緊張した様子で話す花蓮。対する黒羽先輩は何かを見定めるような目でじっと花蓮を見つめ――突然目にも留まらぬ速さで彼女の顔面へ貫手を繰り出した。
「きゃっ!?」
「……ほう、今のに反応するとは大したものじゃな」
とっさに首を傾けて貫手をかわした花蓮を見て黒羽先輩は小さく「合格」と呟く。ちなみに彼女の貫手は繰り出すのも引っ込めるのも一瞬であったため、この場にいる魔法少女たち以外でその行動に気付いた者はいなかった。
「黒羽先輩、花蓮をいじめるのはやめて下さい」
「分かっとる。軽く試しただけじゃ許せ」
「お、お姉様……こちらの方は一体……?」
「ん? 我のことを妹から聞いておらんのか?」
「花蓮、黒羽先輩は
「白羽先輩の……」
早乙女白羽……聖百合園女学院中等部の三年生で、グレーの髪を右側へサイドテールでまとめた赤眼の少女である。
この学院の生徒会副会長として人気のある彼女であるが、実のところ魔法少女としてもすごく有名な人間だったりする。
私としてはこの学院に来るまで魔法少女としての彼女しか知らなかったものだから、この前突然学院内で彼女から声をかけられた時は驚いたものだ。
「確かに似ていらっしゃいますが、なんというか、その」
「あぁ、うん。気持ちは分かるけど彼女の方が姉だよ。間違いなく」
黒羽先輩と白羽先輩は双子の姉妹、これは紛れもない事実だ。とはいえ先輩を見た花蓮が困惑してしまうのも理解できるので苦笑しつつもう一度伝える。
確かに見れば見るほど一部を除いてその容姿は目の前の黒羽先輩と非常に似通っているのだけれど……
「ええと……(妹さんの間違いでは……?)」
「おい後輩、何故今首を傾げた。返答次第では今ここで貴様を締めるぞ」
「ふぇ!?」
「先輩諦めましょう。その胸と身長では誤解されても仕方のないことです」
「誰がぺったんこのちんちくりんのつんつるてんじゃ!? 馬鹿にしとるのか貴様ァ!」
「ひぃっ!?」
「どーどー。先輩落ち着いて」
お年頃な黒羽先輩にとって身長と体型の話はタブーなのである。
予想通り黒羽先輩がキレたので私は慌てることなく彼女の頭を撫でて宥める。もう絵面が完全に先輩と後輩ではなく小さい子供とお姉さんだけど、撫でられている本人はそれでひとまず満足したのかすぐに落ち着きを取り戻した。チョロい。
「……」
そのやりとりを見て、やはり妹さんの間違いでは?と目で語るけれど口にはしない花蓮。彼女は空気の読める子であった。
そうして一旦落ち着いた黒羽先輩は、私の手を頭に乗せたまま口を開く。
「……凛、お主に聞きたいことがあるのじゃが」
「はい、何ですか?」
「お主……何故この学院に来てから一度も我に会いに来なかったのじゃ?」
「黒羽先輩……?」
ふと感じた違和感。自分の知る普段の彼女からはかけ離れた暗い声色に驚いて私は彼女の顔をよく見る。そこにあったのは普段の勝ち気で自信に満ち溢れた彼女の姿ではなく、まるで何かを恐れるかのように不安そうな表情を浮かべる彼女の姿だった。
「妹から聞いたぞ。お主はここにいる後輩の指導教官として学院に特別編入してきたのだと。短い期間ではあるが、お主と交流できる機会が増えたおかげで最近の学院生活がとても楽しいと大層喜んでおった」
「そ、そうですか」
「……何も知らない我が一人で時間を潰している間、お主らは仲良く三人で交流していたのだな」
「あー……ええと、一応弁解させてください。私は黒羽先輩の存在を白羽先輩から聞いてすぐに会いに行こうと思っていたんですよ。私も黒羽先輩には会いたかったので」
「それは本当か?」
「はい」
「嘘は……言ってないようじゃな」
黒羽先輩はそう言って大きなため息をつく。
なんとなくだが、どこかほっとしたような雰囲気を彼女から感じた。
「ふむ、続きを聞こう」
「……でも白羽先輩に『姉さんは忙しい方ですし、手が空いている時に私が説明して一緒に連れてくるので気にしないでください』と言われまして。黒羽先輩のことは完全に白羽先輩に任せていたんです」
「は? 我も妹も学院内で会って話をする時間なんていくらでもあったんじゃが? むしろ暇じゃったのに一切声なんぞかけられてないんじゃが?」
あれ? なんだか話が食い違っているような?
一体どういうことだ!と額に青筋を立てて怒る黒羽先輩に私と花蓮は思わず顔を見合わせる。
黒羽先輩の都合を妹である白羽先輩が把握していないはずがない。しかし何故か白羽先輩が姉に私たちのことを一切伝えていないのだという。
おかしい……私の知る彼女はこのようなことで嘘をつくような人ではないはず。
「ん?」
不思議に思っていると私のスマホに突然着信が入る。かけてきたのは今まさに話題に上がっている白羽先輩からだった。
黒羽先輩に断りを入れ、少し離れた場所で電話に出る。
『すみません凛さん。姉さんがそちらに向かったと思うのですが』
「あ、はい、黒羽先輩ならこちらにいますよ? ついでに言うと白羽先輩に対して何故か私たちのことを内緒にされていたと絶賛お怒り中です」
『……ああ。姉妹ともどもご迷惑をおかけして申し訳ありません。たった今お電話させていただいたのはまさにその件です。凛さん、姉さんにこうお伝え下さい、『これでプリンの件はチャラにしてあげます』と。それで大人しくなるはずなので』
「え? プリン?」
『こちらの用件は以上です。何かご質問はありますか?』
「結局のところ、黒羽先輩に私たちのことを伝えなかった理由は……」
『それは姉さんに聞いてください』
「あっ、はい」
『他にありますか?』
「いえ。ないです」
『ああ、ところで凛さんは今週末の予定は空いていますか?』
「今週末ですか? それなら空いてますけど……」
『でしたら姉さんと私と花蓮さんの四人で一緒にどこかへ出かけませんか?』
「――戻ってきたな。仕事の電話か?」
「いえ、白羽先輩からですよ」
「なんだと? あやつから謝罪の電話でもあったのか? 遅いな。言っとくがこの件に関して我はかなり怒って――」
「『これでプリンの件はチャラにしてあげます』だそうです」
「――むぐぅ」
場に戻って白羽先輩の言葉を伝えると、黒羽先輩はなんともいえない表情で閉口した。ああ、やっぱり何か心当たりがあるんですね。
「心当たりがあるみたいですね。今回は一体何をやったんですか? 白羽先輩は姉さんに聞いてくださいとしか言ってくれなかったので」
「……少し前に妹が冷蔵庫に入れておいたプリンを勝手に食べて喧嘩になったのじゃ。心当たりと言えばそれしかない。あの時はたかがプリンごときで何故あそこまで怒ったのかが分からず困惑したが……今理解した。あの妙に美味いプリンを作ったのはお主なんじゃろ?」
「あー……確かに再会の日に白羽先輩に頼まれてとっておきの自家製プリンをプレゼントしました。でもあれって喧嘩にならないようにちゃんと二人分頼まれて渡したはずなんですが」
「美味くて気づいたら2つ食っとったんじゃ……」
「「えぇ……」」
それはない……それはないよ黒羽先輩。
白羽先輩は大の甘党でありプリンはその好物トップ3にランクイン(私調べ)するスイーツだ。
白羽先輩はきっと姉と二人で仲良くプリンを食べながら私たちの話を切り出す予定だったんだろう。
きちんと気を利かせて姉の分も用意したのに勝手に両方食べられたらそりゃキレるよ。
「いや完全に自業自得じゃないですか」
「ぐふぅ」
「というか前も同じようなことで喧嘩していたのに懲りませんね」
「うぅ〜」
流石に悪いことをしたという自意識が強くなったのだろう。黒羽先輩はしょんぼりと項垂れていた。
――さてと、彼女を弄るのはこのくらいでいいかな。白羽先輩も既に許したからこそ姉に私たちの存在を伝えたのだろうしね。
「まあ白羽先輩もその件についてはもう怒ってないみたいですが、後でもう一度謝っておくのが良いと思います。ちゃんと仲直りしてくださいね? 先輩たちがギスギスしてると私も悲しくなりますから」
「うん……」
黒羽先輩がきちんと頷いたのを確認した私は、彼女の体を身体強化魔法を使って抱え上げ、座席に着く私の膝の上に乗せる。
何やらずいぶんと寂しい想いをしていたみたいだし、ここからは可愛い先輩を存分に構ってあげねば(使命感)。
「よしよし」
「あ、あの……」
「花蓮もおいでー?」
「はいっ!」
可愛い先輩と後輩に囲まれのんびりと過ごす今のこの時間はとても心地良い。ああ……平和って本当に素晴らしいなぁ。
『やりましたわ』
『やっぱり紅茶がクッソ甘いですわ』
『我が生涯に(ry)』
『ああ〜たまりませんわ〜浄化されちゃいますわぁ〜』
『先輩後輩逆転おねロリ……使える……!』
『キマシタワー』
『くっ、かろうじて致命傷で済みましたわね……』
――それはそうとしてこの学院、妙に癖のあるお嬢様多くない?
★早乙女黒羽(魔法少女ブラックメアリー)
勝手にプリンを食べて反撃の罰を受けた人。中学3年生。
理沙にすら数ミリ単位でバストも身長も負けているちんちくりんな容姿が大きな悩み。
おじいちゃん子で、大好きな祖父の影響を受けて今の口調となった(本人は真面目にかっこいいと思っている)。
双子の妹との仲は良好だが結構雑に扱われることが多い。
名実共に日本を代表する魔法少女の一人で東京都の魔法少女たちのリーダーポジション。めちゃくちゃ強い。彼女によって救われた命は数知れず、他の魔法少女たちからもすごく慕われている。
教え子である凛のことをとても可愛がっている(実際は大抵逆に可愛がられている)。
★早乙女白羽(魔法少女ホワイトメアリー)
プリンの恨みを晴らした妹。中学3年生。
双子の姉とは異なりそこそこ発育の良い体の持ち主。
姉のことを慕っているが弄って反応を見る方が楽しいので大抵雑に扱っている。
東京都の魔法少女たちの副リーダーポジションとして姉を補佐している。強い。
姉と同じく教え子である凛のことを可愛がっている。
この後、姉たちと共に休日デートを存分に楽しんだ。
★姫宮凛(魔法少女アリス)
自分の知らないところで勝手に恥ずかしい話が共有されているTS娘。中学1年生。
★一条花蓮(魔法少女スカーレット)
研修を無事に終えたアリスの教え子。中学1年生。
アリスが張り切って鍛えたため以前の数倍は強くなった。
★学院のお嬢様たち
立派な淑女たちですわ。
今後の方針
-
日常生活(イチャイチャ)メインで!
-
本編(シリアス)カモン!