【悲報】精神はまだ男の俺氏、先ほど勇者に告白されるwww 作:レモン果汁
勇者視点です。
「はぁ、言ってしまった……」
部屋のベッドから窓の外を眺めながら、ため息をつく。
ついに、ついに言ってしまったか。
「アルメイア……」
この世に生を受けて幾星霜。
生まれ故郷を魔王に滅ぼされ、復讐のために剣をとり、勇者に選ばれ。
仲間と出会い、もうすぐ魔王との最終決戦という時に。
勇者である僕ライ・デルタは今日、ついに想い人であるアルメイアに心の内を告げた。
「……これが最期になるかもしれない。心残りはなくしておかないと」
魔王軍の最高幹部を倒し、残る強敵は魔王本人のみ。
そんな最終決戦前に告白なんてやるべきではないのかもしれない。
だが、この戦いでどちらかが帰らぬ人となる可能性だって十全にあるのだ。想いを伝えることができないまま一生のお別れなんて嫌だ。
だからこそ、こうやって想いを伝えた。たとえそれが彼女を困らすことになる選択だとしても。
「アルメイア、僕は、たまらなく君のことが好きだ。もう、君以外を考えることなんてできない」
身体を包む包帯を優しくなぞる。これも、彼女が巻いてくれたものだ。
最初はいけ好かない貴族の娘だと思った。どうせ、勇者の恩恵をたかりにきた蠅だと。
だけど、彼女に背中を任せて戦い、彼女に献身的に奉仕されているウチに、いつのまにか僕は彼女に夢中になっていた。
「この告白の返事がOKじゃなくたっていい。ただ、気持ちを伝えることができれば」
本当なら仲間に色情を抱くなどあってはならない。それは、復讐を達成するために不必要で、なおかつ目的を阻害するかもしれないものだからだ。
「ははっ、これが旅の最期だから、僕も少しナイーブになっているのかも」
だけど、抱かずにはいられない。
ずっと、旅が終わっても彼女と一緒にいたい。
この旅が終わったらお別れなんて嫌だ。
「……告白の返事がたとえ何であっても、切り替えなくちゃな」
ああ、OKじゃなくたっていいと言っておきながら、心では彼女をここまで求めている僕はどこまでも強欲だ。
だけど、いいじゃないか。ずっと復讐に生きて全てを捨ててきたんだ。少しぐらい何かを欲したってバチはあたらないだろう。
「……アルメイア」
「……あ、えーと」
「ッ!?」
彼女の名前をポツリと呟いた瞬間、僕以外誰もいないはずの部屋の中から声が聞こえた。
「誰だ……ぐっ」
「…………」
反射的にベッドの近くに置いてあった剣を取ろうとする。
だが、次の瞬間、僕は自分の体の異変に気が付いた。
「ぐっ……ふっ……」
おかしい、身体をピクリとも動かすことができない。
頭から足の指先に至るまで、1ミリも動かすことができない。
まるで、蛇に睨まれたカエルのようだ。
「……無理、するな」
「ぐ……」
ベッドに倒れ伏した僕の顔を、謎の声の主であろう人物が覗き込む。
「お前……はっ……ぐっ」
覗き込んできた女の顔は、僕が今まで一度も見たことがないタイプの女だった。
「……その……落ち、着いて」
黒いローブに身を包み、漆黒の長髪を携え、目は奈落の谷よりも黒い黒。
その顔はぞっとするほど美しい。まるで高名な芸術家が生涯をかけて造ったかのような黄金比。
一目でただものではないと分かる。
「すぐ……終わる」
「…………」
だが、見た目よりももっと恐ろしいもの。
それは、彼女が放つ威圧感。
質量を持っていると錯覚するほどの、明確に『勝てない』と思わせるもはや暴力的なまでのそれ。
彼女に比べれば前に対峙した魔王の威圧など子供の威嚇だと思わせてしまうほどの、圧倒的なまでの生物としての格の違い。
「……やりたいことやったら……すぐ帰るから」
「…………」
間違いない、彼女は魔王よりももっと上、それこそ邪神や神の類だ。
そしてこの視覚できそうなまでのどす黒い威圧感……神のそれではない。
ということは……彼女は、邪神か、それに類似するもの。
つまり、世界を混沌に導く最悪の敵だ。
「何が……目的だ……」
「えっ……と、目的、目的……うん」
今にも落ちてしまいそうな精神をなんとか保ちながら、彼女を睨む。
だが僕の睨みなど全く気にも留めず、彼女は微笑んだ。
「私は……私が望む光景を見たいだけ。そ、それ、だけ」
「望む……光景?」
「そう……」
そう言って、ゆっくりこちらに手を伸ばす謎の邪神らしき女。
「…………」
なんとか抵抗しようとするが、身体が動かない。
駄目だ。心でどう抵抗しても、身体はすでに目の前の女に屈してしまっている。
身体が、目の前の女の前で勝手な行動をすることをよしとしていない。
なんという存在感。なんという生物としての格。
これが、邪神。これが、世界を混沌へと導く邪悪の神。
駄目だ。これは、勝てない。
「う……ぐ……っぐ……!」
「…………」
だが、それでも。
僕は、勇者なんだ。
ここで相手に屈することなど、あってはならない。
「無理、しないほうが……」
「ぐ……ぐっ……!」
動こうとしない両腕を、気合いで動かす。
最初は確かに魔王への復讐心から始まった。
だがそれでも、旅を続けていく内に、勇者として世界を救わなければと思うようになった。
目の前の女が言った望む光景。
邪神が望む光景。そんなもの、容易に想像がつく。
その光景とは恐らく、混沌と恐怖に満ちた世界のようなものの事に違いない。
ここで僕がこいつに屈してしまったら、その世界が実現してしまうかもしれない。
そんなこと、勇者として許すわけにはいかない。
「僕は……勇者だッ……!」
「あ、うん、それは……し、知ってる」
僕が、勇者が今ここでこいつを倒さねば。
そうしなければ、魔王を倒しても意味がない。
守りたい家族はもういない。帰るべき故郷もない。
でも。
それでも、愛した人がいるこの世界を、守る。
それが、僕の使命だ。
「いくぞ……邪神……ッ!」
「ん……邪神……?」
ベッドのそばに置いてあった愛剣を手に取る。
身体は痛い。動かすたびに悲鳴を上げる。
だけど、ここで引くわけにはいかない。
なんで邪神が急に僕の前に現れたかは分からない。
だけど、こいつは今ここで仕留めなければ。絶対に。
「あの……その、私、別に」
「うおおおお!」
剣を持って、邪神に突撃する。
最初の一撃に、僕の全てを込める……!
「くらえ────」
邪神に剣を振るおうとしたその瞬間。
「待て!」
部屋の扉が勢いよく開いた。
「大丈夫かライ!」
「あ、アルメイア!」
「…………」
扉の先にいたのは、僕が惚れた女性。
パーティメンバーの女剣士、アルメイアだった。
「ほっ、まだ無事かライ」
「き、来ちゃ駄目だ! 早く逃げろ!」
思わず声を荒げる。駄目だ、今はここへ来ちゃいけない。
目の前には魔王より恐ろしい邪神がいるんだ。その牙がもし君に向いたりでもしたら僕はこの先生きていけない。
早く逃げてくれ。僕は君を失いたくない。
「こいつは僕が食い止めるから、その間に逃げろ!」
「あ……その……」
「……大丈夫。その人は、私には危害を加えない……はず」
だが、僕の想いとは裏腹に、アルメイアはゆっくりと部屋の中へ入ってきた。
「ライ、悪い。この人がここに来たのは私の責任だ」
「え……?」
「今すぐ自分の世界へ帰ってくれないか。頼む」
部屋に入ってくるやいなや、アルメイアは邪神に向かって頭を下げた。
「…………」
邪神らしき謎の女もその行動に戸惑った様子はない。
なんだ、二人は知り合いなのか?
いや、アルメイアの交友関係にこんな化け物はいなかったはずだ。
じゃあ、なんなんだ。この二人は、一体。
「腹を立たせたのなら謝る。あなたが腹を立てた原因を作ったのは私だ。それでも収まらないというのなら彼ではなく私を殺せ」
「ッアルメイア!?」
「…………」
混乱していると、唐突にアルメイアがとんでもないことを口走った。
彼女はなにを言っているんだ。なんで急に僕の代わりに彼女が殺されるなんて話が出てくる。
「だから、ライは助けてやってくれ。彼は、必要な存在なんだ」
「…………」
「だ、駄目だ! おい邪神、彼女には手を出すな!」
気が付くと僕は、彼女と邪神の間に身体を滑り込ませていた。
僕はどうなってもいい。どうせ僕を大切に思ってくれている人なんてもういないから、死んでも誰も悲しまない。
だけどアルメイアは駄目だ。彼女が死んだら、悲しむ人がいっぱいいる。
「待てライ、君はまだ生きなくちゃいけない。君はこんなところで──」
「いいんだ、どうせ僕が死んでも悲しむ人なんて一人もいやしない。親も故郷も友人もすでにいないからね」
「ッ」
「あの……その……」
「だけど」
アルメイアの方へと振り返り、無理やり笑顔を作る。
これが最期になるかもしれないから、最期くらいはかっこつけないと。
彼女を、生かすために。
「アルメイアは死んだら悲しむ人がいっぱいいるだろう? だから君は死んじゃいけない。まだ、生きなくちゃいけない」
「…………」
「どうせ僕が死んだら、次の勇者がすぐ生まれる。魔王はその人が倒してくれるさ。だから僕がしなくちゃいけないことは──」
「ライ」
その時だった。
彼女にお別れの言葉を伝えようとした瞬間の出来事だった。
「……んっ」
「……!?!?」
「……わーお」
彼女の唇と、僕の唇が触れ合った。
「……ふぅ、ファーストキスをこんなところで散らすとは。けど、案外……」
「ア、ア、ア、アル、アル、アルメ、アルメイア?」
「何?」
「な、なんで、急に、こ、こ、こ、こんな」
突然の出来事に、思考が混濁する。
え、い、いま、僕は、一体、な、何を。
い、今、キ、キ、キ、キスを、ア、アルメイアと。
「……さっきまで、考えてた。ライの告白の返事を」
「う、うん」
「最初は、断ろうと思った。ライには言えないちょっとした事情があったから」
「え、あ、うん」
顔が火照る。
思考がまとまらない。
目の前には恐ろしい邪神がいるのに、今の僕の脳はさっきの出来事を処理するのに手いっぱいになっている。
「でも、その時ちょっとしたハプニングがあって。ライが死ぬかもしれないってことになった」
「う、うん?」
「その時、胸が張り裂けそうなくらいきゅーってなって。自分でも信じられないくらいの焦燥に駆られて」
「う、うん」
なんだ、彼女は一体なんの話をしているんだ。
分からない。でも、口を挟んじゃいけない気がする。
「……ごくっ」
邪神もその空気を感じとったのか、両の手で握りこぶしを作りながら静観している。
アルメイアの作り出す空気は邪神さえも支配下に置くらしい。
「それで気が付いたんだ。私は、ライの事が好きだったんだって」
「……え?」
「こんな時に言うことじゃないかもしれないけど、言う。私は、ライのことが、多分ずっと前から好きだった」
「え、ちょっと待って、ええっと」
待って、今アルメイアは何て言った?
スキ? 何が? 誰が? アルメイアが? 誰を? 僕を?
……ええ?
「…………」
「…………」
互いの間に沈黙が生まれる。
見つめあう彼女の顔は真っ赤に染まっている。
恐らく向き合っている僕の顔も真っ赤に染まっているだろう。
「ッ告白の返事!」
「は、はい!」
沈黙に耐えきれなくなったのか、声を荒げるアルメイア。
その顔は相変わらず真っ赤なままだ。
「は……これじゃ……駄目……?」
「は、はい、大丈夫です」
うつむきながらぼそぼそと喋るアルメイア。とても可愛い。
……そうじゃない。よし、整理しよう。
つまり、アルメイアと僕は、両想いだったってことだ。
え、ええ、本当に?
夢じゃなくて?
「だ、だから、その、ライが死んだら私は悲しい。ライには死んでほしくない。悲しむ人が一人もいないなんて言うな。私も、他のパーティの二人も、ライの事がとても大事なんだ」
「は、はい」
真っ赤な顔のままじっとこっちを見つめるアルメイア。
どうしていいか、こっちも真っ赤な顔のままじっとアルメイアの顔を見つめ返した。
「…………」
「…………」
沈黙が僕らを包む。
しまった、こういう時になんて言えばいいのか分からない。
「…………」
「…………」
「……あっはっはっはははは!」
「「!」」
そんな僕らの沈黙は、突然聞こえた笑い声によって破られた。
「うーん、うん、うん」
その笑い声の主は、僕達の前に現れた邪神。
奴に視線を向けると、奴はなぜか満足げな表情で何度も何度もうなずいていた。
「え、えーっと、勇者さん」
「……なんだ」
しまった、こいつの存在を忘れていた。
アルメイアとのやりとりに気を取られていたが、そういえば事態は何も好転していない。
こいつを、どうにかしなくちゃいけないことに変わりはないんだ。
ほら、今すぐにでもこっちに攻撃してこようと……。
「……よくやった」
「……?」
邪神が次に僕らに向かって取った行動。
それはなぜか、こちらに親指を立てる動作だった。
「……え?」
「見たいもの見れたし、帰る。アルメイアさん、もし魔王討伐が難しいってなったら書き込んで。いけたら助けに行くから」
「あ、はい」
「じゃ」
そのまま邪神はこちらに手を振る。どす黒い威圧感はそのままだが、どうやら敵意はないようだ。
なんだ、じゃあ何しにきたんだこいつ。結局何者だったんだこいつ?
「────」
「「あっ」」
僕が頭を悩ませていると、邪神らしき女は何かを言うと、宿の窓を開け外へと飛び降りていった。
「おい、待て!」
慌てて窓に駆け寄る。
だが窓から外を覗いても、すでにあの女の姿は影も形もなかった。
「……何者だったんだ奴は」
「あー……まあ言えることは、今後危害を加えてくることはないと思う」
まるで嵐が去った後のよう。
部屋に残ったのは、顔を赤くした僕と、同じくらい顔を赤くしたアルメイアだけだった。
*
謎の女の襲撃事件から時間が経ち、僕はあの女についてじっくり考えることがあった。
そこで出た結論。
それは、奴はもしかしたら神の使いか何かかもしれないということだ。
身体から放つ威圧感はまさしく邪神のそれだった。だから、僕は奴を邪神だと決めつけて食って掛かった。
だけどよく考えてみたら、奴にされたことといえばせいぜい威圧で身体を動けなくされたくらい。
他には、何もされていなかった。
だから、僕は考えた。
奴は、復讐に駆られ独りよがりになっていた僕を正すため、神が遣わした天使のようなもの、あるいは神そのものなんじゃないかと。
自己犠牲は勇気ではないこと。そして、僕を想ってくれる大切な仲間がいること。
それを僕に気づかせるために、わざわざ現れた神の化身。それが奴なんじゃないか。
そう考えたら結構辻褄が合うのだ。
魔王への決戦前に突然現れたこと。何もせず消えていったこと。
それらに説明がつくのだ。
「……ライ。やっとここまで来たな」
「そうだねアルメイア。やっとここまで来た」
奴のおかげで、僕は仲間の大切さを、一人じゃいけないことを知れた。
────奴が消える前最後に言った言葉。
小声すぎてよく聞き取れなかったけど、今なら分かる気がする。
あれはきっと、僕達へのエールの言葉だったのだろう。
勇者として一歩成長した、いや、勇者パーティとして成長した僕らへのエール。
きっと、そうに違いない。
「後は、魔王を倒すだけだ。いくぞルル、バレンタ、アルメイア」
「はいっ」
「…………」
「了解」
見ていますか。
あなたのおかげで気づかされました。
仲間の大切さを。
皆で戦うことを。
そして……愛する人を守るんじゃなくて、信頼して背中を預けるということを。
「世界を救うぞ!」
「「「おお!」」
見ていてください。
あなたが気づかせてくれた大切なことを胸に誓い、僕達は魔王を倒します。
「……アルメイア」
「な、なに」
「これが終わったら」
「……その話は、後でな」
「ああ」
愛する人と、頼れる仲間と共に。
*
720:TS娘メス堕ちすこすこ侍
互いが互いを庇いあっている時とかもう「ありがとうございますごちそうさまです」としか思えなかったで
721:名無しのTS
>>720
よく考えろ、両方中身は男だぞ
722:名無しのTS
>>721
何か問題でも?
尊けりゃ中身の性別なんて些細なことよ
723:TS娘メス堕ちすこすこ侍
結局、最後あまりの尊さに思わず「尊い……」って呟いちゃったんだよな
724:名無しのTS
>>723
勇者からしたら意味不明で草
725:名無しのTS
>>723
やばいやつが現れたと思ったら「尊い……」って呟いて消える
うーん、怪奇現象
726:TS娘メス堕ちすこすこ侍
そういえば、>>1が強引に勇者の唇を奪ったシーンをワイのメモリに保管してあるけど見る?
有料やけど
727:名無しのTS
>>726
有料とか死ね
でも見せて♡
728:名無しのTS
>>727
相変わらずお前の情緒がわからん
729:名無しのTS
結局俺のパンツは返さないのかよクソが
物語の山場だけ執筆するストロングスタイル。多分あんまりよろしくない。
ちなみにこの後無事魔王を倒し二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
他の勇者に惚れてたパーティの二人は……ナオキです……。
ついでに補足ですがTS娘メス堕ちすこすこ侍が黙っている時は基本テンパってました。