新・単冠湾泊地活動記   作:扶桑畝傍

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嫁と泊地と現実

旅館

治療専用ルーム

「新造、おま、この設備は。」

「黙ってろ、

 風呂場組はリハビリと食生活改善で何とかなる、

 『春恵』も医者だ、

 まぁ、来月予定なんだけど、四の五の言ってられん。」

「おいおい、医者として駄目だろ。」

「安心しろ、そろそろ。」

「遅くなりましたっ!!『呉の明石』現着です、

 新造さん、直ぐ始めましょう・・・って、

 エージさんっ!?」

「あ、明石、じゃぁ。」

「私も居るわよ、エージ君。」

「み、三笠。」

「・・・山雲ちゃん、貴女は私とこっちに着て頂戴。」

「で、でも。」

「いいから来なさい、エージは

 リベッチオと一緒にマックスの付き添い、

 いいわね?」

 

▽

 

「ねぇ、三笠、どうして?」

「・・・貴女、いずれは引退するのよね?」

「えぇ。」

「・・・ちゃんとアレは毎月来ているのかしら?」

「・・・ま、まだ半月よ?こ、これからじゃないかしら?」

「『あの声』で反応が無かった、

 つまりは『その可能性』があるのよ。」

「か、可能性って、ちゃんとアレが来れば大丈夫なのよねっ!!」

「・・・幾人かそう言う『艦娘』も居るのよ、

 だから、精密検査が必要なの。」

「・・・いや、嫌よ!!」

「手遅れになったらそれこそ!!」

「なんで?私は、エージの為に・・・

 エージの為にこの世界にきてエージの為・・・に。」

「酷な事を言っているのは解るわ、

 でも、貴女の為に、先ずは検査して頂戴、エージの為にも。」

「私だって・・・ほしいのに。」

「新造君が今してる治療はね?

 『艦娘と人間』の狭間に居る子を『戻して』あげるの。」

「え?」

「新造君は、

 『提督の適正』は無いの、でも、

 『孤高の外科医』と言う、スキルを持っているの。」

「外科医。」

「あの子、『春風』は、『そう言う扱い』をされてきた。」

「あの怪我も。」

「えぇ、

 でも、ちゃんと子供がお腹に居るわ、

 コレは、『孤高の外科医』のお陰で『人間』になれたからなの。」

「『人間』に・・・まって?春風はまさかっ!?」

「元、横須賀鎮守府所属、私の指揮下の子よ、

 遠征中に攫われて、ね、

 見つけてくれたのが新造君なの。」

「・・・艦娘として、生きてたの?」

「・・・彼だけだった、

 今でも顔の傷を無くすために努力を続けてるのよ。」

「効かなかった、のね?」

「えぇ、入渠ドックも、バケツも、

 『人間の医者』もさじを投げたの、

 彼だけ、諦めなかった、だから『今』があるの。」

「・・・わかったわ、でも。」

「えぇ、エージ君には黙っておくわ。」

「ねぇ、私、ちゃんと出来るよね?三笠?」

「・・・貴女ならきっと。」

▽

ぼ~っとする

あれ?わたし、またねちゃってた?

だれだろ?抱えてくれてる

「ん・・・へ?エージ?」

「お、起きたか、リベッチオ。」

「え?ちょっ?!」

「動くな動くな、ま、甘んじて抱えられてろ。」

(ちょっと!?どういう状況っ!?)

「すまん・・・はは、謝ってばっかだな、俺。」

「エージ?」

「・・・俺でいいのか?」

「え?」

「・・・俺の『娘』になってくれるのか?」

 

「あれこれ足りて無いし、

 察する事も得意じゃない、

 ついつい、言い出して貰う方が良いって、考えちまう。」

 

「こんな情けない俺でいいなら。」

 

「『娘』になってくれるか?」

「・・・やだ。」

「どうして?」

「だって、みんなの提督なんだよ?」

「それを抜きにしたら?」

 

「リベッチオ?」

「やだ。」

「なんで?」

「やだ。」

「教えて?」

「や~だ。」

「じゃぁ、俺に何をして貰いたい?」

「なにもしなくていい。」

「それじゃ困る。」

「いいの。」

「良くないから聞いてるんだ。」

「いいの。」

「リベッチオ。」

「やぁ~だぁ。」

 

「りべ?」

 

「り~べ?」

 

「なぁ?『お父さん困っちゃうよ?』」

 

「り~べ?」

「・・・パードレ。」

「パードレ?」

「イタリア語。」

「イタリア語か。」

「パパ、って意味。」

「そか。」

「パパ。」

「はいよ、パパはここに居るよ?」

 

まぁ、良かった、のかな、俺で。

泣き止むまで撫でてあげた

 

▽

 

「有無を言わさず『艦娘』の腹を掻っ捌くなんて、酷い人。」

「いや、もう喋れるお前さんがすげぇよ。」

「新造、でしたね?」

「おう、マックスの嬢ちゃん。」

「『ダメなの?』」

「・・・つえぇな、お前さん。」

「違うわ、執拗にお腹を蹴られたから、何となく、ね。」

「・・・『残してはある』ただ、機能するかは、わからない。」

「・・・そぅ。」

「エージとは?」

「本命の山雲がまだなのよ?出来ないわ。」

「・・・あっちが深刻だからな、

 言っちまえば、『春恵』も、4回目なんだ。」

「・・・そう。」

「今度こそ、今度こそ、って、

 助けられなかった『子供達』の為に、

 今度こそってな、そんな中、お前さん達が、

 『担ぎ込まれたようなもんだ』」

「『春恵』さん、なんて?」

「・・・やっと会えますねって、言ってくれたよ。」

「・・・一人にして下さい、春恵さんに、ついていて下さい。」

「いや、抗生物質の点滴もあるし、

 まだ、閉腹してから10分と経って無いんだぞ?」

「大丈夫です、です、から。」

「・・・すまん、明石に代わるな。」

▽

「ふぅ。」

「大丈夫なの?」

「ちょっと、重くて。」

「・・・さわってみても?」

「少しだけね。」

ぺた

「・・・凄い。」

「そうね、グレカーレちゃんも、

 何時か大事な人とケッコンしたら、

 経験するの「どうしたのっ!?」あらら。」

「どうしたっ!!」

「あ、旦那さん!!春恵さんがっ!!」

「春恵!!・・・破水っ!?

 なんでっ!?来月なんだぞ!?」

「い、イタタタ・・・。」

「っ!?冗談じゃない!!諦めるか!!」

 

〔大丈夫〕

「え?高校生の嬢ちゃん?」

〔治せる、この子は大丈夫〕

「え?え?パースさん?」

〔大丈夫、ほら、コッチ、大丈夫、

 みんな待ってるよ?〕

▽

 

「え?俺がうたた寝してる間に何がどうなってるの?」

「パパ、それは同感。」

春恵さんに抱えられている赤ん坊に、

抗生物質の点滴に追加された血液パックのスタンドを抱えたマックスに

痛めていた筈の左腕を振り回すジャーヴィス、

その周りで赤ん坊を見つめている子達

「説明ぷりーず。」

▽

「そうだ、山雲は?」

「どこかしら?」

「・・・昨日は、三笠の部屋に泊まってる。」

▽

「ここか、

 りべ、頼めるか?」

「はい!パパ!」

 

 

「いいよ、入って?」

重い

 

「おい、三笠。」

「・・・。」

「なにがあった?」

うずくまる山雲

「答えろっ!!何があった!!」

「ぱ、パパ。」

「・・・限りなく低いのよ。」

「な、何がだ!!」

「・・・山雲ちゃん、出来ないかもしれないわ。」

 

「・・・新造に。」

「万能じゃねえんだよ。」

「てめぇっ!!」

「パパ!!マミーを止めてっ!!」

「なっ!?」

ココは旅館

裏手は川だ

しかもかなり落差がある

 

「やめろっ!!山雲っ!!」

ギリギリ捕まえる

「・・・ナサイ。」

「謝るな。」

「・・・ンナサイ。」

「謝るんじゃない。」

「ゴメンナサイ。」

「山雲、謝る必要は無い、いいな?」

「・・・ゴメンナサイ。」

「マミーっ!!」

「・・・。」

「ねぇ!!マミーは誰の為に生きてるのっ!?

 パパの為でしょ!!」

 

「マミー!!私、エージにパパになって貰ったの!!

 でも、マミーは!?マミーになれるの、

 私、山雲しか思いつかないのっ!!

 お願い!!私と、エージパパの、

 マミーになってよっ!!

 『居なくならないでよ!!マミーっ!!』」

 

▽

 

「無理だけはしないでね?」

3日間の休養は終わった

「あぁ。」

「クソエージ、俺が諦めねぇんだ、てめも諦めんな。」

「・・・ぉう。」

「山雲ちゃん。」

「春恵さん。」

「諦めないで?」

「・・・はぃ。」

 

「パーパ、マミー、

 帰ろう?私達のお家に。」

「あぁ、そうだな。」

「そぅ、ね、帰りましょう、

 単冠湾泊地へ。」

 

 

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