今日のウイニングライブは大盛況だった。
だけど、眠りについても、今日の有マ記念の光景が目に焼きついて離れない。
私が二着となってしまった有マ記念。
ファンや友達の期待を裏切ってしまった有マ記念。
半バ身先に見える、スカジャンに金色の刺繍の「夢」の一文字。
たったの半バ身。……遠い半バ身。
忌々しい。……自分の弱さが忌々しい。夢の一文字が美しく格好良いと思ってしまった自分が忌々しい。
吠えたドリームジャーニー先輩の気迫に押されて、最後の最後に脚が伸びなかった。
自分の弱さを徹底的に削ぎ落とさなければ。
今度こそ、今度こそ勝たなければ。
二着では駄目なんだ。
一着でなければ。……私の名である、
何より。……ファンや応援してくれる友達に、素晴らしい景色を届けれない。
だからこそ、これからもハードトレーニングも熟さなければ。
そういえば、友人であり、同期であり、同室であり、ライバルでもある、有マ記念で故障したスリーロールスの容態はどうなのだろうか。……明日にでも、お見舞いに行こう。
スリーロールスの怪我が治ったら、リーチザクラウンとアンライバルト、そして私の四人で一緒に宝塚記念か有マ記念に出たいな。
どうか三女神様。……私達を守ってください。
翌日。
検査なども終わっているだろう午後から、リーチザクラウンとアンライバルトの二人と一緒にスリーロールスのお見舞いに行った。
スリーロールスは私達の顔を見た。
その顔は憔悴していたが。……私達の顔を見たら幾分か明るくなった。
リーチザクラウンが「怪我を治して、また一緒に走ろう。今度こそ爆逃げしてスリーロールスに差されないようにするから」と明るく言い放つと。
彼女は嗚咽を漏らしながら、「ごめんね、ごめんね、一緒にはもう走れない」……と言った。
スリーロールスの容態は左浅屈腱不全断裂。
エビとも言われる、いわゆる屈腱炎だ。
私達、ウマ娘にとって不治の病。
数々の名ウマ娘を引退に追い込んだ病。
だけど、昔と違って今では幹細胞移植が出来る。
一年か二年後には、また走れるようになるはず。
そう説得したが、彼女のレースからの引退の意思は固いようだ。……退院したら、トレセン学園は辞めないけど、サポートウマ娘として勉強したいとの事だ。
自らの脚で長く、速く、何処までも走りたい性分の権化、ともいえたスリーロールス。その心境の変化をもたらしたのは何なのだろう。
さらに翌日。
今日は二人の予定が合わないとの事なので、一人でお見舞いに向かう。
すると、スリーロールスの病室に入っていく小さなウマ娘を見かけた。……その姿を見た瞬間に私の心臓が跳ねる。
有マ記念で私の半バ身前にいたウマ娘である、ドリームジャーニー先輩。
彼女達の話し声は大きく、病室の外まで聞こえていた。
盗み聞きのような真似は駄目だ。と、思っていても彼女達の会話を聞いてしまう。
「そっかー。ロールスはサポートウマ娘の旅路を選んだか」
「ええ。ジャーニー先輩に有マ記念で優勝するっていう、夢は背負って貰って、夢の旅路を見せてもらいましたから。……今度は私が夢の旅路を行く、ウマ娘達の為に何が出来るかを考えたら。……サポートウマ娘になって、途中で転けないように石ころを取り除いてあげるのが良いんじゃないかって」
ああ、貴女だったんですね。
私達の仲を引き裂いた元凶は。
下らない、些事の様な事をスリーロールスに吹き込んで、引退に追い込んだのは。
私の心にドス黒い感情が産まれるのを感じて。……気づかれない様に、その場をゆっくりと離れた。
「あん? 誰か外に居なかったか?」
ドリームジャーニーは耳をピクピクと動かし、外の気配を探る。
「さあ? 誰も居なかったと思いますけど。……気のせいじゃないですか?」
「そうか〜? まあいいか。でだ、ロールスは本当のところは真っ先にブエナビスタのサポートがしたいんだろう?」
本心を正確に当てられた為か、スリーロールスの顔は紅潮する。
「うう。……何で分かるんですかジャーニー先輩。あの娘、ブエナは強くて速くて、何でも出来るんですけど、頑張り過ぎるところがあるから、ちょっとでもブエナの夢の旅路を転けないように支えれたらな〜と思って。それとですね〜」
惚気話の様なスリーロールスの話を、お腹いっぱいになるまで聞かされるドリームジャーニーであった。
史実通り、九月にドリームジャーニーは引退
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しない