理事長や教諭、参列していた各界の著名人に勝手をした事への謝罪を終え、ディープインパクトと生徒会メンバーは生徒会室へと戻っていた。
「理事長は、もっとやれと言わんがばかりの興奮のしようであったが。……はたして、あの発破をかけるようなスピーチで良かっただろうか?」
溜息を吐きながら、ディープインパクトは豪華な革張りの椅子に座り、クルクルと回る。
「優等生のイメージが強い会長ですが。……熱い一面も見せれた事で、新たな支持者が生まれたのではないでしょうか?」
生徒会メンバー分の人参ジュースを盆に乗せ、スリーピーススーツのウマ娘がやって来る。
「シーザリオ、いつもありがとう」
彼女がスリーピーススーツを身に纏っているのには訳がある。
アメリカンオークスに出走した際に、メルホーアインダやシンハリーズに
「シーザリオ? あーハイハイ。シェイクスピアの男装の麗人ね!
私達に勝ったら貴女に似合うスーツを好きなだけ買ってあげるわ!
アメリカンジョークじゃないわよ?」と言われ。
気合が乗った彼女は二着のメルホーアインダから四バ身差で圧勝し、アメリカの樫の女王の座と約束の大量のスーツを手に、日本へと凱旋を果たした。
それ以来、彼女はスーツを制服代りに着用している。
その裏ではディープインパクトとラインクラフトが、先代の生徒会や理事長に頼み込んで、トレセン学園の生徒はフォーマルな服装であればヨシという稟議を通し、改正した。
現状、ほぼ全ての生徒が今まで通りの制服を着用している為、その恩恵を受けているのは生徒会副会長のシーザリオだけなのだが。……この先、多種多様な感性を持ったウマ娘が入学する事を考えれば、良い選択だったのでは、とディープインパクトは考えている。
「吾輩が今戻ったぞ!」
生徒会室のドアがカネヒキリの圧倒的パワーによって、軋みながら開かれる。
「カネヒキリ〜。……ドアを壊したら、また折檻しますよ〜?」
顔は笑顔で、口調は静かだが。……見た目だけは薄幸そうな令嬢である、ラインクラフトが明らかに怒っている。
「うむ。……ラインクラフトよ、すまない。吾輩、途中で知り合いに出会った為、つい嬉しくなり力加減を間違えたのだ」
しょんぼりとする恵体の後ろから、ウマ娘が二人ひょっこりと顔を出す。
「スペシャルウィーク先輩とアグネスデジタル先輩!
ご無沙汰しております」
ディープインパクトは椅子から立ち上がり、直立不動の姿勢から綺麗な、お辞儀をする。
「ディープちゃん久しぶり〜。シーザリオちゃんとラインちゃんも久しぶり〜」
両手をパタパタと振りながら室内に入ってくる、元気印で明るい前生徒会会長であり、日本総大将の異名を持つスペシャルウィーク。
「ひょえー! ディープ様の御尊顔さいこー!
シーザリオ様も男装の麗人仕上がってます〜!
ライン様の薄幸令嬢サイキョー!
尊み〜! 目線ください〜!」
天皇賞秋で、テイエムオペラオーとメイショウドトウの二強を打ち破り、ダートでも芝でも、そして海外でも成績を残した、異能のオールラウンダーである、アグネスデジタル。
なお。……香港カップで強い走りを見せ、勝利したにも関わらず、国内ではステイゴールドの香港ヴァーズ優勝の方が扱いが大きかった為に、専属トレーナーが激怒した。
前生徒会広報カメラウマ娘としても活躍し、現在URAの広報カメラウマ娘としても、絶賛売り出し中である彼女はカメラを連写していた。
「えへへ。ディープちゃん、ごめんね〜。いつものを受け取りに来たよ」
「ええ、構いませんよ。……これもトゥインクルシリーズが先細りしていかない為。全てのウマ娘の為ですから。カネヒキリ、いつもの段ボールを」
そう指示すると、しょんぼりとしていたカネヒキリが元気になり。
さして苦の表情も見せずに、書類がてんこ盛りに入った段ボールを五つを一度に担ぎ持ってくる。
「これで、全部だ。吾輩、元気が有り余っている故、
のところに持ってい……『ぴぎゃー! カネヒキリん様のマッシブ皇帝ー! 広背筋に雷の精を飼ってる〜!』」
空気を読まずにカメラを連写するアグネスデジタル。
スペシャルウィークは困った表情をする。
「あはは〜。……カネヒキリちゃん、デジちゃんが、何かごめんね〜。でも、お願いしちゃおうかな」
「うむ。……了解した、では行こうか」
カネヒキリは段ボール五つを担ぎ、生徒会室を出て行く。
アグネスデジタルも奇声を上げながら、カネヒキリの後ろ姿を連写しながら、ついて行く。
「じゃ〜私も行くね〜。皆んな生徒会頑張ってね〜!」
アグネスデジタルとスペシャルウィークのコンビが、嵐のように唐突にやって来て、唐突に去っていった。
生徒会メンバーは人参ジュースを飲み干し、各々が書類仕事を片付ける為にペンを握る手を動かす。
スペシャルウィークとアグネスデジタルの専属トレーナーであった、白昭トレーナーはトレーナー業引退間近と噂されていた。
トレセン学園で名物トレーナーとして、時代の最前線をウマ娘と一緒に駆けていたのは、今では少し昔の話。
最近は、次代を担うウマ娘を発掘しては、次に来るスターウマ娘。……としてTVなどで宣伝するなどの活動をしていた。
トゥインクルシリーズが先細りしないようにする為に。
「んんっ? ……おい、デジたんデジたん」
大量にある新入生の書類を精査しながら、白昭は一人のウマ娘に目が止まる。
「デジたんのこと呼びましたか〜? 何でしょう」
アグネスデジタルはソファに座り、本日の戦利品。もとい取材での写真を眺めながら、涎を垂らしていた。
「面白いウマ娘がいるぞ。……去年のグランプリウマ娘の妹だ」
そう言いながら写真がクリップで止められた書類をアグネスデジタルに渡す。
「ちょわ! マスクっ娘! 新しき風の尊みが吹く!
デジたん感激です! 白昭トレーナーサイキョー!」
「そうだろそうだろう〜?
新バ戦になったら追いかけてみろ。確実に面白いぞ」
白昭トレーナーは相マ眼に優れている。
スペシャルウィークの実力を見抜き、トレセン学園への編入を捩じ込んだのも彼である。
海外でアグネスデジタルを見つけ、ジャパンのウマ娘と走りたくないかと唆し、日本に連れて来たのも彼である。
またウィニングチケットの姉や、ダンスインザダークの姉、ネオユニヴァースの姉など。……数々の名ウマ娘の姉を育ててきたトレーナーでもある。
時代を先取りし過ぎている事は、彼は重々承知していた。
そんな彼が密かに目をつけていたのが、ドリームジャーニーである。
遅咲きではあるが大輪を咲かしたドリームジャーニー。
「グランプリウマ娘、その妹となれば。……未来のダービーウマ娘だな!」
ガッハハと笑う白昭トレーナーの横で、アグネスデジタルはデュフフといやらしい笑いをする。
一方、スペシャルウィークはカネヒキリとカフェテリアでパフェを頬張っていた。
補足回。
アプリで育成できる方のアグネスも好きなのですが、サポカにしか実装されていない方のアグネスも好きです。
本作に置いての姉妹の設定ですが、父母が同じ、母が同じを姉妹としています。
同父。つまり母が違うパターンですが。こちらは直接の血の繋がりは無いが、仲の良い友達や、尊敬、憧れ、気になるなどの感情としてウマ娘に現れるようにしたいと思っております。
実際は父母が同じで全きょうだい(性別に合わせて兄弟の字を当てる)。
母が同じで半きょうだいとなります。
全兄弟の例がドリームジャーニーとオルフェーヴル。
半兄弟の例がビワハヤヒデとナリタブライアン。
同父。父が同じだけのほぼ他人と変わらない。
史実通り、九月にドリームジャーニーは引退
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