世界一最低なGⅠ制覇までのお話   作:クロカワ02

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相談なので初投稿です


世界一最低な相談

前回までのあらすじ。

 

「シロが寮を出ると言った…」

 

『そんなことでわざわざ国際電話を…?』

 

「そんなこととはなんだ!じゃあお前サーマリオンが海外で一人暮らしするって言い出したらどうするつもりだ!」

 

『いや普段から海外で一人暮らしなんだけど…私と彼女は同居してるわけじゃないし、参考にならないんじゃないかな』

 

「じゃあ日本へ引っ越すって言い出したら?」

 

『今まさに言ってるから全力で止めてる』

 

驚くほど冷たい声だった。

 

『本気で困ってるんだ…彼女の脚、完治してるかどうかが一生わからないだろう?マリオンはそれを利用してわがままを通すんだよ…』

 

流れるように差し込まれた溜息混じりの愚痴はあまりに重々しく、鬱陶しさを感じる前に光景が鮮明に想像できてしまう。ヴェイリフロンセが頭を抱えているのも含めて。

 

『うー、なんだか最近脚に違和感がある気がしなくもないなー。日本にいる時はそんなことなかったのになー。日本の空気が合ってるのかもなー。あっ日本には脚を治してくれた先生がいるんだよねー元気にしてるかなー。シロと会いたいなー』

 

なんて鬱陶しい。

 

サーマリオン、想像の中でもかなり鬱陶しい女。大して知っている仲ではないのに何故かありありと想像できてしまう。

 

『同じ穴のムジナだからじゃないかな…』

 

「何か言ったか?」

 

『なんでもないよ。…しかし、まさか君が同等に見るウマ娘が現れるなんてね』

 

「私もこれは予想外だった。シロは…特別だ」

 

『だろうね。ウマ娘の歴史においてもここまで現実離れした存在がいなかったと断言はできないが一つ言えることは、』

 

「いや、違う」

 

『?』

 

「私にとって特別なんだ、シロは。歴史だの原因究明だの、そんなものはどうでもいい。何故なら私は一人だからだ。唯一の一人だからだ。私は一人の世界に生まれ落ちて一人の世界で育ち一人の世界で走り出した。この世界の理など、他人事でしかない」

 

それが私の天賦の才。一つや二つではない、両手いっぱいに与えられたギフトが私をどこまでも高みに導いた。おかげで人生20年に至らぬ内から多くを愉しみ多くを貪っている。

 

幸福、なのだろう。金も、時間も、知識も、肉体も、何一つとして諦めなくていい。全部私は持っている。これからも好きに生きられるし好きなように生きていくつもりだ。

 

そうだ、何もかも持っていなかった現状を無理矢理飲み込んでいたあの非才、シロツメクサとは違う。

 

だが。

 

「一人の私に、私の完全な世界へ踏み込んできてくれたのはあいつが初めてだった。あいつは今でも私に追いつき、私を追い抜こうとしているだろう。そうだ、私と…一緒に走ってくれるんだ、あいつは」

 

『…』

 

「でも。あいつにとって世界は一人じゃない。あいつにとって私は多くいるうちの一人に過ぎない。私にはそれが、…我慢ならない」

 

『強い言葉を使わなくていい。伝わってるよ』

 

「……すまん」

 

『寂しいんだね』

 

「わかるのか?」

 

『わからないさ。似たような経験はあっても私は君自身じゃない。君自身じゃない誰かが君に対して言う「わかる」とはそこで理解を止めるという残酷な宣言だ。…彼女なら違うのかもしれないけどね』

 

「どういうことだ?」

 

『さて。今日は少し気取ったことを言い過ぎた、クサいと言われる前にやめておくよ』

 

「なっ…その引きが既にクサいぞ!」

 

『あははは!初めて会った時は不気味なくらい超越的だった君とまさか、ここまで人間味のある会話をすることになるとはね!』

 

「いいから教えろ!金髪年上低身長ウマ娘ヒロインモノの仏訳でもなんでも受けてやる!だから…!」

 

 

 

『好きってことさ』

 

 

 

「…な」

 

『いい加減自覚したまえよ。全く君というやつは、私たちを当てウマに使うような悪辣さに加えてそんな純粋無垢な感性まで』

 

「お前正気か…?」

 

『は?????』

 

「私は今好悪の話などしていなかったのに、いきなりそんな感情を出してくるのはどういう文脈なんだ?フランスじゃいきなり愛を語るのは普通なのか?そんなの漫画でしか見たことないぞ」

 

『…えっ。君、マジで言ってる?わかってないの?』

 

「わかってないのはお前では…?」

 

「『えぇ…?』」

 

『…ヨルノアラシ、メートルの概念がわからない子供と距離について議論する趣味はあるかい?』

 

「はあ?ないに決まっている」

 

『だよね…じゃ、そろそろ寝るから…』

 

「はあ?こちらは十六時だぞ?さっき起きたばかりだとお前…」

 

『ヴェイー?あ、電話中?ごめんね』

 

「さっき同居してないって言っただろお前!!!!」

 

『偶然イギリスまで泊まりに来てるだけ!!!!ほらイギリスだから時差がね!!!!』

 

「イギリスとフランスじゃ一時間も変わらんだろうがこの変態!!年上低身長でしか興奮できないド変態!!!」

 

『それは君もだこの天然ド変態の童貞野郎!!!◯◯◯◯て悔し泣きしながら寝てろ!!!!』

 

「『ふん!!!!』」

 

通話終了。

 

全く話にならん。完全に的外れだった。

 

たまには歳上らしくまともなことを言うのかと思ったらこれだ。あの変態今度会ったら30バ身差で殺す。

 

乱暴に布団を被る。このまま夕飯まで寝ることにする。

 

つまらん。大体なんで私がこんなことで悩まなければならないのか。シロもわがままを言わず慎ましく寮生活を続けて貯蓄でもなんでもすればいいのに。

 

ぶつぶつ、ぶつぶつと愚痴を並べていくうち眠気がやってくる。

 

今日も出掛けているのだ、あの女は。またどこかで「あれ?また私何かやっちゃいました?」みたいな顔をしてウマ娘を侍らせあれやこれやしているに違いない。なんて不埒!私はあの手のジャンルがどうしても受け付けないのだ。だのにシロと来たら「いやヨルノはリアルチートじゃん…」などと配慮に欠ける発言を!この間はついに「この女優さんヨルノに似てるね。黒毛だし髪長いし…へー、元々レースも走ってたんだ。勝負服も黒いよ。あ、でもヨルノはこの人と違ってコーヒーだめだもんね。子供舌ー」だと!!私が伊達や酔狂で黒を纏っていると思っているのか!!

 

ぶつぶつ。全くシロと来たら…ぶつぶつ…ぐぅ。

 

 

 

 

「ただいまー。…あれ、久しぶりにお昼寝中だ。ヨルノ最近元気ないな…ちょうどいいけど。静かに静かに…よし。ここに隠しておけば当日までバレないでしょ。あとは…ちょっと走ってこよっかな。みんな静かに燃えてるもんなぁ…レースが楽しみだなんて思ってるの、いつぶりだろ。なんか笑っちゃうな…ねぇヨルノ。ヨルノはどう?私と走るの、楽しみ?私はね、楽しみだよ。ヨルノを…負かすの」

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