聖夜が明ければやってくる。年末の祭典がやってくる。
参加資格は強さと支持と、そしてそれらを背負い、誇り、示す不退転の覚悟。
I am a number one.
Eclipse first, the rest nowhere.
秋シニア三冠、締めの1番。
年末最後…から一つ手前、これが芝の締めくくり。
私の夢、あなたの夢は叶うのか。
ようこそ、有マ記念へ。
「よお、ヨルノアラシ」
「…」
「来てやったぞ、リベンジによ」
「…」
「春の天皇賞、僕らはまとめてお前に振り切られた。だがな、今度は負けねぇ。僕らとお前の因縁にケリをつけてやるよ」
「…」
「僕の名を、ダイヤブレイドの名を忘れられないように刻みつける!」
「私、メイセイメレーの恋を心に銘じていただきます」
「ヨルノアラシ…will be extinct」
「僕ら『ヨルノアラシ被害者の会四天王』が!!お前を倒す!!」
「…」
「…シロツメクサ会長のためにもな」
「…ああ、思い出した。あの陰気な集まりの連中か」
「お前覚悟しとけよマジで!!!!!」
「わかったわかった、早く客席に帰れ」
「なめやがって!!いいか!?四天王は三人じゃねぇ、『四人』いるんだ!!覚悟しとけよ!!」
「やかましいな…」
「…」
「がっちゃん、なんだか不機嫌ですねぇ?」
「…ええ、まあ」
「まだ言ってるんですかぁ?まあ、わからなくはないですけどぉ…」
「私は元々、過熱を煽る行為はあまり好きではありません。いくら当事者のヨルノアラシの発言が元とは言え、最近の報道はやり過ぎです。シロさんとヨルノアラシについてばかりで他のウマ娘は添え物扱い、ついには二人の個人情報や過激で無責任な憶測まで垂れ流す…事ここに至って、ファン投票同率一位はいくらなんでもやり過ぎでしょう。私はそうやって何もかも蔑ろにするのが…」
「がっちゃんはめんどくさいオタクですねぇ」
「んなっ…!?」
「正直面白くなかったです?よっちゃん重病説とか。ネットじゃずーっと言われてますけど」
「…まあ、正直ヨルノアラシ闇説やヨルノアラシ男の子説は不覚にも笑ってしまいましたが…そういうことではなく!」
「シロさんも笑ってましたよ」
「え!?」
「がっちゃんが見てる動画サイトのお下劣なやつじゃなくてゴシップ誌の記事ですけどね」
「…!!あの、あの…誰にも言わないで…」
「えー?ほんとはシロさんとくだらない下ネタで盛り上がりたいんじゃないですかぁ?」
「だめ…シロさんは…きれいなままでいてほしいんです…マジで…」
「切実ですねぇ…大丈夫ですよ、がっちゃんが好きなのはあくまで妖精さんの方ですもんね?」
「そうなんですけどそうじゃないんですよ!!!」
「カテゴリー自然でこれは哲学だからセーフって言ってたじゃないですかぁ」
「やめてぇぇぇ!!!」
『シロー!!こっち向いてー!!向かなくてもかわいいけどねー!!』
『来てしまった…ついに来てしまった…二度と日本には行かせないと決心したのに…!ああマリオン、コートを脱いだら風邪を引くよ…!』
『シロー!!愛してる気がしてきたよー!!』
『マリオン!!!』
…やかましい。
どいつもこいつもやかましい。
私にどうしろと言うんだ。私にわからないものを押し付けるな。
私はシロと走れればいい。それだけだったはずだ。私を本気にさせ、私の背に手を伸ばすあいつだけいればいい。そのはずだ、シロとの勝負は私の人生に据えるだけの価値がある。
このレースだってそうだ、決戦と銘打ったがそんなものはどうでもいいんだ。全てはお前から全力を引き出すため。
ずっと一緒に走っていたいから、私は。
なのにシロ。お前は今何故私を見ていない。
お前だって私を求めたはずだ。私の首を取りたくて仕方ないはずだ。お前の中には前と変わらず勝利への渇望が渦巻いている。
シロ。お前は私を否定するのか。
いや、それとも私が。
私が、お前を否定した?
バカな。だとすれば、それは…
それは違う。だってそれじゃ、まるで。
「私が…私が!解釈違いを起こしているというのか!!シロ!!!」
『…ゴォール!!!ついに、ついに、ついに!!』
『ヨルノアラシ!陥!落!です!!!!』