世界一最低なGⅠ制覇までのお話   作:クロカワ02

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とりあえず一区切りなので初投稿です


最終回 世界一最低でも(だから) (仮)

『…ゴォール!!!ついに、ついに、ついに!!』

 

『ヨルノアラシ!陥!落!です!!!!1着はシロツメクサ!2着はヨルノアラシ、3着にダイヤブレイド』

 

『ついに、無敵の簒奪者が!多くの勝利と冠を奪い去った無縫のウマ娘を!正面から打ち破ったのは晩成の大輪!!』

 

『終始前につけて最終コーナーで先頭へ躍り出たヨルノアラシを見事差し切りましたシロツメクサ!絶望的な勝ちパターンをなんと大外から追い上げてねじ伏せた!』

 

『二人で分け合った春秋の盾。まるであつらえたかのようにファン投票同票一位で用意された決戦の場。そして…決着!!』

 

『この勝利で秋シニア三冠も達成しましたシロツメクサ!まだ拍手が鳴り止みません!』

 

 

 

 

 

「いえーいやったやったー!勝ったよーっ!」

 

「あ、あの、シロさん?」

 

「え?どうしたのモミジちゃん?ハグする?」

 

「えっ、あっはいします!」

 

「いえーい!」

 

「い、いえーい!」

 

「シロさぁぁぁぁん!!!」

 

「リッチー!!!!んぐっふ!?勢い強っ」

 

「おっおめっおめっ…おめでとうございばず!!!」

 

「うん!!勝ったよリッチ!!あのヨルノに!!あはははは!!」

 

「えへへ…はっ。あの、シロさん。よかったんですか、こんな終わり方で…だって、彼女は本気じゃ…!」

 

「うん。いいけど?」

 

「…!ですが!」

 

「だって、ヨルノの不調が今日の勝敗に関わるならそれはヨルノの調整ミスだよね」

 

「へ?た、確かに…?」

 

「仮にヨルノにそういうバグを引き起こした原因が私だとしても、レースにまで持ち込むのは論外だよね?」

 

「正論ではありますが…えっ?」

 

「なんなら普通にヤバかったよね?ヨルノ、手は抜いてなかったもん。いつも通り勝ちに来てたじゃん」

 

「うっ。それはそうでしたが…シロさん!?」

 

シロツメクサがおもむろに距離を詰めた。たじろぐモミジガリの両手を包むように握るとその顔を見上げる形で目を合わせ、

 

「一戦一戦を大事に走るモミジちゃんなら…自己管理の重要性と責任の所在…わかってくれるよね?」

 

「はい!!自己責任です!!」

 

たとえメルトールリッチにちょっとアレな目で見られても構わない。モミジガリは一時の幸福のために正常な判断を一つ擲った。

 

(と言うか、メルちゃんも相当外聞投げ飛ばして甘えてますしね!)

 

(シロさんとの時間は何物にも代え難いんでぇす!)

 

(この子、直接脳内に…!)

 

「会長!!!」

 

「ダイヤちゃん!みんな!」

 

「負けたぜ、会長。ははっ、後に残る僕らがしっかりしなきゃいけないってのに…」

 

「ううん、みんな頑張ったよ。確かに今回がヨルノを仕留める最後のチャンスだったかもしれない。でも、みんな手は抜かなかったでしょ?」

 

「うん。僕とメイとメロー、三人がかりでブラフを張って…会長にも知らせてないヨルノアラシ被害者の会の隠し球で四天王四人目の…」

 

「桜花ダービーの変則二冠含むGⅠ4勝シニア級一年目!モルドレッドレッドでーす!実はあの人とレースでやりあったのはこれが初めてなんだけどー、ヨルノアラシ先輩のせいでカフェテリアのアタシのお気に入りの席毎日カレーの匂いがするようになっちゃって!あんないい匂い食べずにいらんないじゃんあれマジ許せねー!ってことで参戦しゃした!負けたけど!ほんとごめんセンパイたち!!」

 

「いいんだ、レッド。お前あいつと競り合ったろ?あの異質なプレッシャー相手によくついてったよ」

 

「…そんな優しいこと言われたらさぁ。あーやっぱガマンできない!ごめんねパイセンズー!!うわーん!」

 

「はは、僕らを差し置いて泣くな泣くな。…というわけで、会長」

 

「うん。会員、傾聴。…私とヨルノはこのレースでトゥインクルを卒業。ドリームトロフィー・リーグに上がります」

 

「「……」」

 

「だから、ヨルノアラシ被害者の会は…ここで解散です。短い間だったけど、ついてきてくれてありがとう」

 

「「……!」」

 

「でも…でもね!私たちはずっと、友達だよ!!」

 

「「会長!!!」」

 

「ヨルノアラシ被害者の会は、永遠に不滅です!!!!」

 

「「かいちょぉー!!!!」」

 

 

 

 

なんて茶番だ。

 

「ひどいものだ。よくもまあ平気な顔であそこまで人心を弄べる」

 

「いやいや、本心だよ?私もみんなのこと大好きだもん」

 

「それも本心で言っているから余計ひどい。呪いだろうあれは。…救われんな、奴らも」

 

「おっ珍しい。ヨルノが他人に同情してる」

 

「クリスマスパーティの時もした。…シロ」

 

「何?」

 

「帰省の予定は?」

 

「ないよ。だってヨルノ、寂しいでしょ?」

 

「…本当に、ひどい女だ」

 

 

 

 

 

 

 

ゆく年あればくる年あり。大きく盛り上がった年末も過ぎれば静かに始まる新年がある。

 

「…ヨルノ、いつまで起きてるの?早く寝なよ」

 

「…シロこそ。肌が荒れるぞ」

 

「「……」」

 

「やめよっか…」

 

「ああ…どうやら互いに新年一発目の寝起きドッキリを狙っていたようだが…バカらしいしな…」

 

「「おやすみ…」」

 

「「……」」

 

「「……」」

 

「「まだ起きてるじゃん…」」

 

 

 

 

「シロさん、あけましておめでとうございます。えっ、寝不足…!?新年から寝不足になるほどはマズいのではないでしょうかシロさん…!?」

 

「がっちゃんはスケベですねぇ」

 

「!?」

 

 

 

 

 

「ヨルノ、体育館で新春相撲大会ポロリありでやるって。行く?」

 

「興味がない。行か…いや、行く」

 

「いいね、積極的なのはいいことだよ」

 

 

 

 

 

「あけましておめでとうございます、ヨルノアラシ先輩」

 

「…エリオットリルビー。何の用だ?私はもう負け犬だぞ。お前が求める最強ではないはずだが」

 

「え?最強?」

 

「え?」

 

「最強じゃないというのはまだわかりませんよ。だって、先輩は本気じゃなかったですから」

 

「……たかが不調で負ける私がまだ最強である、と?」

 

「はい。本気なら勝ってました」

 

「…ふん。ついに私が言われる側か」

 

「?そうだ、今日はこれを持ってきたんです」

 

「ずっと見えてはいたがその鍋…カレーか?」

 

「はい。クリスマスに言われた通りカレーを煮込み己を見つめ直し、おかげ様で新年走り初めではベストタイムを更新しました。こちらは新年初煮込みのカレーです。受け取っていただけますか」

 

「…いい匂いだ。粘度もほどほどのさらさら…バカにするな」

 

「…えっ」

 

「たかだかカレーを煮込んだ程度で脚が速くなるバカがどこにいる。妙なことを吹聴されても困るから…普段の走りを見てやる」

 

「それって…!」

 

「あと、いちいちフルネームに先輩をつけるな。長ったらしい」

 

「わぁ…!で、ではその…えっと」

 

「返事は?」

 

「…はい!ヨルノ先輩!!」

 

「ここでアラシと呼んだら即破門だった」

 

「ヨルノ先輩はそう呼ばれるのは嫌いなんですよね。デビューしてすぐの時の記事で読みました」

 

「お前もしかして結構キモいな…?そう言えばお前、トレーナーは」

 

「います。あ、先輩に指導をいただく許可は大丈夫です。私もトレーナーもヨルノ先輩のファンクラブ会員なので!」

 

「おかしい、今まで全く気にならなかったのに今は何故か自分のファンと聞くだけで面倒な予感がする…」

 

これが…これがお前の言っていた成長なのか?シロ。

 

他者を知り、他者と関わり、他者の世界に踏み込む。

 

それがお前を成長させたのなら。

 

私も。成長するのだろうか。

 

 

 

………。

 

 

 

「シロ。約束を破る」

 

「ん?何?」

 

「私は…トゥインクルに残る」

 

「ふーん。いいんじゃない?」

 

「二年待て。私は成長してお前の前に立つ」

 

「いいよ。待ってる」

 

「シロ、私たちはまだこれからなんだな」

 

「そうだよ。やっと気付いた?」

 

「わかってたはずなんだがな…」

 

「じゃ、後輩のお世話。頑張ってね」

 

「ああ…気は重いが」

 

今はまだ何もわからない。シロ、お前が出て行く理由にもいまいち納得がいっていない。

 

私を成長させようとする意味がわからない。私は元々強くて、このままでも充分戦っていけたはずだ。

 

どんな手を使っても勝ちが欲しいお前としても私が強くなったところで何の得もない。

 

だが、困ったことに私はわからないことに興味が湧くんだ。

 

春の天皇賞で私が本気を出せる側の人間だったと判明した時のように、自分につけていた見切りを上回る成長の余地が私にあるとするならば。

 

実践派の私としては検証せずにはいられないに決まっている!

 

一つずつやっていこう。シロ、お前がやってきたことを。

 

成長して、お前に追いつくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆえに記者とそして学園所属のウマ娘諸君。私はトゥインクル・シリーズを継続する。二年も待っていれば、私を楽しませる誰かが他にも現れるかもしれないしな」

 

「「うぉぉぉぉ!!?」」

 

「「えぇぇぇぇ!!?」」

 

こうして静かな新年に暴風が吹き荒れ、やがて季節は巡る。

 

懊悩と復活の冬が明ける。雪が解け緑が芽吹き、新たな生活が桜と共にやってきた!

 

「ひろーい!!新居やばーい!!」

 

寮が狭すぎとも言う。でもこの開放感はやばいね!

 

リビング!寝室!キッチン!和室!別々の風呂とトイレ!押し入れあり!

 

すごい広くないここ!?実家にいた頃は子供部屋が共同だった私には一人じゃ広すぎるかと思ったけどそんな心配も吹き飛ばされたし!

 

新しい部屋で荷物を受け終わった頃にはもう昼過ぎ。でも私シロツメクサは全然お腹が空かないくらいにもうテンションマックス!!

 

でも。

 

「でも…」

 

でも!

 

「なんでここにヨルノがいるのー!!!?」

 

「…?すまん、ちょっと言っている意味がわからない」

 

「なんでわからねぇんだよ。いやいやいやいやいやいや!ヨルノは寮暮らしじゃん!何荷物運び込んでんのさ!」

 

「私もここに住むが?」

 

「はぁ!?」

 

「学園の認可は得たし家賃生活費は折半で出す。何、新しいスタートに際して気分を変えるのも悪くないと思ってな」

 

「そんなぁ!私の一人暮らしが!」

 

「お前の実質的なトレーナーは誰だと思っている?私といる時間が長い方がより高い成果を挙げられるのは今までのことからも明らか。何より私がついてきてやったんだ。嬉しいだろう?」

 

「出てけよーう!!」

 

「まあそう気にするな。来客時には茶の一つも出してやる。何せ私は成長しているからな。もてなしは任せろ」

 

「何その根拠のない自信!もー!!結局こういうオチなんだもんなー!!」

 

全然成長が見受けらんねーんだけど!!

 

でも、仕方ないかなぁ。

 

ヨルノがいて、リッチがいて、モミジちゃんがいて、私がいて。

 

そんな生活を望んだの、私だもんなぁ。

 

なので!

 

世界一最低なGⅠ制覇の後のお話は、まだまだ続いていくのでした!

 

「…じゃあヨルノ、原付受け取りに行くからついて来てよ」

 

「持ってきた漫画を並べるのが忙しいからパス」

 

「もー!!」

 

「その乳でウシ娘か?説得力に欠けるからやめておいた方がいいぞ」

 

「やっぱり出てけーっ!!」

 

…不定期で!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記

 

「ヨルノ先輩、ドラムって楽しいですね」

 

「お前に当たってたのか…」

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