世界一最低なGⅠ制覇までのお話   作:クロカワ02

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うまです。よろしくおねがいします。


番外編 世界一最低な登場キャラの実馬のお話 1

シロツメクサ 牝

 

30戦6勝。6歳で引退。最高成績はGⅢ2勝。

 

父は大牧場良血の家系に生まれた「ドラ息子」ことオリベリーヨ。母は元馬主がめちゃくちゃ色々考えて何代も積み重ねてきた愛馬サクマクレオ。母父は英国のトマスマードック。

ゲート難でお気に入りの騎手以外を嫌うが頑丈だった父と多くの子を産みながら長生きした母の生命力を継いだからか、多く勝てはしなかったがめったに怪我もなく円満な引退であった。

 

現馬主は内向的で自信のない男。幼い頃からものを言わずとも通じ合える馬が好きで、その辺りは辣腕ながら人間嫌いで馬好きだった祖父と気が合い、父が出しゃばらない婿養子だったこともあって馬を含む祖父の莫大な遺産を継いだ。が、やっぱり自信がないので弟妹親類に会社や金などほとんどを任せてしまい代わりに受け取る配当で馬たちを養うことに。自分はまあ…なんとでもなるし…

 

シロツメクサはと言えば競走馬人生に大きな波乱もなく大した活躍はなかったものの、馬主の願い通り無事に走り終え繁殖牝馬となる。血統はいいのだ、祖父のしていたように積み重ねていけばいつか結果が出るかもしれない。でもまずは長生きしてほしい。

 

昔からよく人のいうことを聞き愛嬌もあったシロツメクサ。冴えない見た目の割に意外と乗馬の上手い現馬主なら鞍なしでも乗せる優しいシロツメクサ。にんじんはそんなに好きじゃなくていちごが好きという味覚がクソ贅沢なシロツメクサ。

 

その馬生における最大の事件は引退後生まれ故郷の牧場に帰ってから起こる。

 

 

ヨルノアラシ 牡

 

15戦13勝。4歳で引退。最高成績はクラシック三冠をはじめとするGⅠ9勝。着外なし。

 

父は馬主の所有するでっかい牧場で自家生産されたヨルノカゼ。長距離戦線で活躍し歳上相手に一歩も引かず勝ち星をもぎ取り『新時代の風』と呼ばれた。母も自家生産のヨルノニジ。見事な黒毛で国内外問わず評判の日本美人として名を馳せた。牧場長の娘が描いた擬人化イラストがクソバズったことでも有名だがその頃にはもう子持ちだったので多くのオタクが勝手に失恋した。母父は一族のヨルノゲン。

 

ヨルノアラシ自身は絵に描いたようなスーパーホース。両親から溢れるほどの才能と優美な容姿を受け継いだ血統の到達点。騎手が誰であろうが指示はしれっと無視し三歳終わりまで全勝した。「勝手に自分のタイミングで仕掛けて勝つ」などスーパーホースにありがちなエピソードから「鼻が良かったので自分以外の頭絡をつけようとすると嫌がった」「耳が良かったのでメシの時間だと呼べば追わなくても勝手に帰ってきた」「それ以外の用事では何度呼んでも全然帰ってこなかった」などのエピソードにも事欠かない。まさに後世に残る名馬。

 

…だったが、四歳になると突然やる気を無くし調教はおろかレースにも勝たなくなる。馬主はこれを「多分走るのに飽きたんだろう」と分析し「あいつはマイペースだからなぁ。よし引退!」と4歳3ヶ月目であっさり引退。種牡馬となった。

 

さてここからが問題でヨルノアラシはいつまで待っても発情しなかった。どの牝馬にもなーんも反応しない。薬を使ってもダメ。そうこうしている内に種付けシーズンは終わってしまい理由は結局不明だったがこれでは種付けができない。「あいつはマイペースだからなぁ」とでっかい牧場とでっかい懐を持つ馬主は言った。

 

そうこうしているうちに一年が経ち時期は再び春。前々から予定していた牧場大規模修繕のため馬たちは近隣の牧場へ預かってもらうことに。ヨルノアラシも同じようにお引越しとなった。

 

仮住まいは馬を大事にし長生きさせると評判の小さな牧場。以前に比べれば貧相なものだが…彼はそこで、運命の出会いを果たす。

 

 

エリオットリルビー 牡

 

24戦18勝。5歳で引退。最高成績はクラシック三冠を含むGⅠ10勝。内海外GⅠ2戦2勝。着外なし。

 

父は黒毛の名馬ヨルノアラシ。母は栗毛の普通馬シロツメクサ。両親共に初の子供にして奇跡の最高傑作。

 

シロツメクサは珍しく体調を崩し初年度の種付けは牧場主と馬主の相談で休養。さあ今年こそはいい男を探してこようという矢先のことだ。

 

シロツメクサがいつも通り厩舎の近場を他の仔馬と並んで走っていると見知らぬ牡馬が馬運車に乗ってやってきた。

 

そいつは最初こそ慣れぬ厩舎に不満げだったが外へ出るとまるで我が物のように場内を歩き始める。少し進むたび脚を止めてはふんふん、ふんふん、としきりに地面を匂った。

 

万が一に備え牧場長が仔馬を追い、シロツメクサがその後をついていく中探検を進める牡馬がふと顔を上げた。

 

牧場長としては「性格こそひねくれているがレース外では大人しく発情もしない」と聞いているそいつが何か問題を起こすとは思えなかったので大人のシロツメクサは放っていたのだ。

 

いつの間にか牡馬は牝馬に歩み寄っていた。

 

すると、見よ!おおなんと立派なうまだっち!!

 

牧場長は驚いて腰を抜かしながら相手の牧場長へ連絡を取り、相手の牧場長もまた腰を抜かしつつ馬主に連絡。

 

「お前それはもしかして…恋じゃないか?」

 

「恋!?」

 

「その牝馬の持ち主に連絡を取ってくれ。是非俺の息子の恋を叶えてやってほしいとな」

 

それを聞いたシロツメクサの馬主もまた腰を抜かした。

 

種付けを申し込むならともかく、種付けの申し込み?しかも相手はなんと天下の名馬ヨルノアラシ。さらに言えばこれは「恋」だそうなので種付け料も不要。

 

…マジで?

 

「マジで。どうかね」

 

「…よ、よろしくお願いします」

 

Best match!!

 

こうして奇跡の種付けは成立した。

 

いや。今までになくアピールしたり追い回したりする積極的なヨルノアラシに対してシロツメクサは全然取り合わず発情もしなかったので最終的に薬で発情を誘発しての種付けだったが。

 

とにかく受胎し翌年無事に出産。

 

それで生まれた子供…エリオットがまあ強い。父親の力と母親の性格の良さを継いだ結果超強くて言うことを聞くめちゃくちゃいい子。馬主は当然腰を抜かした。

 

そこからだ。多くの馬主から種付けをしてみないかと誘われるようになったのは。

 

時に世紀の逃げ馬、メルトールリッチを。

 

時にガラスの太刀、モミジガリを。

 

歴史に残る名馬にこそシロツメクサは好かれ、エリオット以降も多くの優駿を送り出した良き母は。

 

馬主に願われた通りのんびりと長生きしている。

 

 

 

ちなみにヨルノアラシはと言うと、シロツメクサ以外とも渋々ながら種付けを行うようになったが最終的に三頭できたシロツメクサとの子以上に強い子は生まれなかった。




これでしばらく世界一最低シリーズはお休みです。次の世界一最低チームの構想も練っているのでいつか書きます。
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