機動戦士ガンダム 雀は紺碧の涙を流す   作:ソロ・アジュール

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多くのクランが存在するP.M.U.
その中には不正に利益を得ることや、利敵行為や友軍妨害などの行為を働く者がいる。
クランぐるみでそのような行為が確認された場合、そのクランは闇クランと呼ばれ、ペナルティや厳罰の対象となる。



第二話:不穏な敵

夜の山岳地帯

 

切り立った山々に囲まれ、天然の砦とも呼ばれるエリアだ。

隠密作戦や防衛戦における重要エリアとなることも多く、頻繁に戦闘が起こるため建造された監視塔や固定砲台の残骸が放置されたままになっている。

戦闘の痕跡が癒えないとはいえ自然も残っており、崖下を流れる川の先は密林地帯になっている。

この日は雲の隙間から少し欠けた月が顔を出す、そんな天気だった。

 

「では、作戦を確認する。」

 

高高度を飛行するミデアの中で作戦の最終確認が行われていた。

 

「目標は現在、連邦軍の脱走兵を追撃する任務に就いている。我々は目標のポイントC通過を確認後、戦闘エリア東側より接近。上空からMSを投下し目標に奇襲を掛ける。ただし最初はザク・ハーフキャノンの奪還に集中し、目的を悟られないよう行動するように。」

 

遠くから戦闘音が聞こえてくる。

目標地点が接近していることを肌で感じさせる音だ。

 

「事前の情報で、不正に戦力を潜伏させていることが判明している。こいつらが現れたら、殲滅だ。」

「連邦の脱走兵はどうするんです?」

「それはまぁ、お前の狙撃でぱっと片付けておけばいいさ。」

 

バランが肩をすくめながら言う。

オールスは苦笑いして頷いた。

 

「よし、もうすぐ作戦区域だ。各員MSの最終チェックを済ませて出撃準備!」

 

 

 

 

 

 

 

山岳地帯ポイントC付近では、もう既にワンサイド的な戦闘が繰り広げられていた。

崖際まで追い込まれる陸戦型ジムとジム改。

既に損傷の大きい2機をジリジリと追いつめるブルファングのMS部隊。

どれも250や300コストのザクやジムばかりだった。

完全に包囲された連邦の脱走兵に、ひときわ目立つ120㎜バルカン砲を向ける機体がいた。

今回の目標、ザク・ハーフキャノンだ。

 

「目標を確認した。よし、ファントムプレデター、作戦開始!」

 

ミデアから身を投げ出すガルスJ。

ピクシー、ディジェSE-Rもそれに続く。

 

「大丈夫、訓練通りにやれば心配ない。ケイトは俺の護衛についてくれればいいから、無理に前に出る必要もないしな。」

 

初の実戦に緊張するケイトに声をかけるオールス。

 

「は、はい…頑張ります。」

「よし、いくぞ。」

 

オールスがMSの脚を一歩踏み出し、出撃の構えを取る。

 

「オールス・スパロウ、ジム・スナイパーカスタム、出撃する。」

 

紺碧のワンポイントが夜闇に薄れていくのを見送るケイト。

次は自分の番だと、一歩踏み出す天色のペイルライダー。

降下準備が整ったのを確認し、大きく深呼吸する。

 

「ふぅ…大丈夫。いけるよね、ペイルライダー…!」

 

ケイトは視線を地上へ向ける。

彼女の声に応えるように、ペイルライダーのカメラアイが点灯した。

 

「ケイト・コロン、ペイルライダー、いきます!」

 

ロケット・ランチャーを携え、夜の山岳地帯へ降り立つペイルライダー。

ガルスJ、ピクシー、ディジェSE-Rは既にポイントCの手前まで前進し、ジム・スナイパーカスタムは少し逸れて見晴らしのいい狙撃ポイントへ移動していた。

 

「こちらオールス。ターゲットを捉えました。観測情報を連結します。」

 

ジム・スナイパーが観測した各MSの位置情報、機種、損害状況が味方に共有された。

敵機の正確な位置情報を得た3機がポイントCへ突入する。

異変に気付いた敵MSと睨みあう。

オールスのもとへ合流したケイトは、3機の背中に見入っていた。

 

「先に脱走兵を片付ける。ケイトは周囲を警戒してくれ。特にこの真下は熱探知しづらい洞窟になっているからな、油断せず。」

「はい!」

 

R-4タイプ・ビームライフルを構え、素早く一発。

陸戦型ジムの脚部を的確に射抜いた。

上位コスト用にチューンナップされた高威力のビームは、負荷の蓄積した脚部を破壊するには十分すぎる火力だった。

突然の狙撃に驚く脱走兵と敵部隊。

その隙をついてディジェSE-Rが飛び掛かり、ターゲットを護衛するMSの武装を破壊していく。

圧倒的な性能差にされるがままの敵部隊。

オールスは混乱に乗じて逃げようと背中を向けたジム改を見逃さず、引き金を引いた。

頭部を破壊。

突然視界を奪われ、スラスターを噴かせた勢いのまま岩肌に衝突するジム改。

 

「す、すごい…」

 

無駄のない連携に舌を巻くケイト。

驚いている間にも次々と無力化されていく敵MS。

 

「チェックメイトだな。」

 

オールスはそう呟くと、狙撃用バイザーを仕舞った。

バランのガルスJがザク・ハーフキャノンに踏み寄っていく。

 

「さてブルファングの下っ端。何か後ろめたい事はあるか?返答によっては命の保証はしかねない。」

 

バランがオープン回線で言い放った。

じりじりと後ずさりするザク・ハーフキャノンだったが、背後に回っていたピクシーに動きを封じられる。

コックピットにビーム・ダガ―を突き付けられ、ようやくマシンガンから手を放し、両手を挙げた。

犠牲は最小限、目標も無傷で捕獲した。

ケイトは自分のつけ入る隙の無いまま任務が完遂されて胸を撫でおろす。

しかし安心したのも束の間、アラートが鳴り響いた。

 

「西方より熱源多数接近!」

 

ジム・スナイパーカスタムのレーダーに多数の熱源を感知した。

観測情報によると、ザクⅡ改やジム・ストライカー、ザメルなどの重火力MSの姿もあった。

そして、敵増援の接近と共に、ザク・ハーフキャノンの様子が変わった。

 

「!?」

 

ルネーロは咄嗟の判断でザク・ハーフキャノンを崖下へ放り投げる。

直後、地面に到達する前にMSは爆散した。

 

「セルフデストラクション…口封じってわけか。」

「隊長、奴らの動き、僕たちの想定を超えた規模みたいですね。」

 

ツェクトが上空へ目をやると、MSが次々に投下されているのが目に入った。

ジーラインシリーズやゲルググ等も混ざっており、ただの雑魚ではない事がうかがえる。

 

「ポイントAまで後退。山を盾にしつつ火力を集中させる。」

 

バランの指示で交代する各MS。

切り立った崖と岩場で射線を切り、限られた進行ルートに火力を集中させる作戦だ。

ポイントC付近には敵MSが6機終結した。

 

「きっちりフルパーティですね。」

「だがMSの性能はこちらが上、マンパワーでもそうそう負けることはない。堅実に行くぞ!」

 

とはいえ物量は相手が上。

また編成も弾幕が厚く、射撃での牽制合戦が続いた。

ガトリングスマッシャーを掃射するジーライン・スタンダードアーマーを止めようとすると、陸戦型ゲルググがジャイアント・バズでそれを阻む。

迂闊に身を出せばザメルの680㎜キャノンの餌食になってしまう。

裏を取って陣形を崩そうにも、熱感知されづらい洞窟はジム・ストライカーとザクⅡ改に抑えられてしまっている。

 

「隊長、これじゃ埒が明きませんよぉ!」

 

ケイトの指摘は間違っていない。

現にこのままではジリ貧だ。

ただ、バランは待っていたのだ。

 

「ツェクト、行けるか?」

 

おとなしくなっていたディジェSE-Rが立ち上がった。

 

「行けます。」

 

ディジェSE-Rのダクトが開放され、強制排熱が行われる。

全身のスラスターのリミッターが解除され、青白い焔を上げた。

推進系の能力を最大限に発動する、オーバーブーストを起動させた。

 

「切り拓きます。」

 

そう言うと、爆発的な加速力で敵陣へ突っ込むディジェSE-R。

陸戦型ゲルググのバズーカをもろともせずビームナギナタを振るう。

ガトリングの掃射に一度は脚を止めるもすぐさま方向転換、前線へ突貫してきたジム・ストライカーのツインビームサイズが振り下ろされる前に身体を当て、フロントキックでねじ伏せる。

ジーライン・スタンダードアーマーがビームライフルで攻撃してくるも、今度はバランのガルスJが肩部からミサイルを発射しそれを阻止。

弾幕が止んだのを見計らってオールスは狙撃用バイザーを起動させ、ザクⅡ改を狙撃した。

 

「危ない!」

 

狙撃姿勢になったジム・スナイパーカスタムを見て砲身を向けるザメル。

それに気づいたケイトが、ペイルライダーで庇うように前に見を投げ出した。

しかし、砲弾は飛んでこない。

 

「大丈夫、もう片付いてるよ。」

 

ツェクトの陽動に合わせて洞窟から裏取りをしていたピクシーがザメルを切り刻んでいた。

陽動、援護、追撃、そして裏取り。

訓練された部隊の美しい連携だった。

ジリ貧が一転、あっという間に状況をひっくり返し、部隊が壊滅したように思われた。

しかし、オールスは違和感に気付く。

 

「あと1機はどこだ…?」

 

陸戦型ゲルググ、ジーライン・スタンダードアーマー、ジム・ストライカー、ザクⅡ改、ザメル。

撃破したのは5機。

しかし熱源反応は6つだった。

レーダーに目を向けて位置情報を確認する。

()()は自分の座標と重なっていたことに気付いた。

 

「!? 上です!」

 

敵が空にいることに気付いたケイトが振り返る。

しかし既に上空から急降下したそれは、ジム・スナイパーカスタムの肩にヒートソードを突き刺していた。

血に塗られたような赤黒いMS、グフ・フライトタイプだ。

力無く倒れるジム・スナイパーカスタムからヒートソードを引き抜き、再び空へと舞い上がる。

 

「抜かったか!」

 

ガルスJが急いでエネルギーガンを構えミサイルを放つが当たる気配がない。

 

「私が油断したばっかりに…」

「ケイト!反省は後だ!」

 

ショックで動けないケイトを一喝するがその間にも敵の動きは止まらなかった。

全員が上空の敵を撃ち落とそうとするも、一向に攻撃が当たらない。

 

「見切られとるな…」

「こいつまさか、ニュータイプか!?」

「いずれフライトシステムもオーバーヒートします。そこを狙いましょう。」

 

そろそろ限界だろうと狙いを定めるが、うまく岩陰に入られてしまった。

戦場における"目"を失った彼らは自らの感覚を頼りに探さなければならなかった。

しかし敵も只者では無いらしく、歴戦のバランも、優れたパイロットであるツェクトやルネーロも、中々敵を捉えられない。

敵は優れた空間把握能力だけでなく、経験からくる勘も冴えているようだった。

 

「クソッ、時間稼ぎでもしてるのか? ケイト、オールスを回収してベースキャンプへ帰還しろ。ここは3人でなんとかする。」

 

空中を泳ぐグフに翻弄されながらも、負傷したオールスとジム・スナイパーカスタムの回収をケイトに命じるバラン。

護衛の任を果たせなかったショックに震えながら、ケイトは操縦桿を握った。

 

 

 

 

 

 

一方、対するグフ・フライトタイプ。

そのパイロットである青年は攻撃を回避しつつも時間を気にしていた。

 

「残弾にはまだ余裕がある。でも、そろそろかな。」

 

そう呟いた直後、秘匿回線が開いた。

彼の隊長からだ。

 

「よくやったドミニク・フェイヤー中尉。目を失った奴らに()()の輸送を勘づかれることはないだろう。作戦は成功だ、帰投しろ。」

「了解。」

 

グフ・フライトタイプがシュツルム・ファウストを地面に撃ち込んで目眩ましをすると、そのまま戦場から飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラン宿舎へ帰ったケイトは、ユニフォームも脱がず、真っ白なシーツの掛かったベッドで丸まっていた。

初めての戦場で、自分が護衛を任されたにも関わらず味方が大きな損傷を受けてしまったのだから無理もない。

華奢な彼女の肩は小刻みに震えている。

微かに聴こえる鼻をすする音に、部屋の前まで訪れていたバランは何も言わず去っていった。

彼女の部屋は暗く、何もない壁に小さな音も反響する。

机には飲み残された水と、空の錠剤包装だけが置かれていた。

 

 

 

 

 




第二話、最後まで読んでいただきありがとうございます!
場面の描写、特に戦闘描写なんかは考えるのは楽しいんですけど言葉にして表現するのって難しいですよね
この作品では原作ゲームのモーションを随所に取り入れてみたりしているんですが、どこに該当するかわかりましたか?
わからなかったら僕の表現力不足です!!(笑)

6/7時点で章を追加したのですが、章のタイトルはまだ伏せておきます
ある程度物語が進んだ後もしくは一章が終わった頃に、章の名前を追加しようかなと考えています

まだ勢いで書いてる部分もあるので設定が分かりにくかったり読みにくかったりするかと思いますが、今後ともよろしくお願いします!
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