白銀圭の敬愛   作:おろしぽん酢

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手料理と修羅

「はしたないです!!!」

 

「どうした?持病のヒステリックか?若い内に治した方が良いぞ。」

 

 

女性に対して最高に失礼なことを言いながらソファに座る。

だがしかしこの男にとって先程の発言の3割は親切心である。

日頃動画サイトを漁っているため、ヒステリックを起こした人間の恐ろしさを知っているのだ。

なお残りの7割はだったら良いなという願望である。

 

 

「違います!先程中庭であーんをしていた人がいたんです。あんな物乞いみたいな事するなんて伝統ある秀知院の学生としての自覚が足りません!」

 

「お前それ...言質は取ったからな。後で忘れてくださいって頼みに来んなよ。」

 

 

今後白銀・四宮間でのあーんは八雲に了承を取る必要がある。

一回200円、鹿に餌をやるのと同じぐらいの値段設定にするつもりだ。

 

 

「しかし俺も腹が減ってきたな。昼食にするか。」

 

「あら会長、今日は手弁当ですか?」

 

「ああ、田舎の爺様達が大量に野菜を送ってきてな。それを使った料理をと。」

 

「自分で弁当を作るとは偉いな。それに比べて四宮はお前の弁当を鳶のように狙っているが。」

 

 

白銀の弁当を見て物欲しそうにしている四宮の頭はタコさんウインナー一色になっていた。

1+1はタコさんウインナー、1−1もタコさんウインナー。

それでも地球はタコさんウインナー。

 

 

「八雲は何を食べるんだ?」

 

「購買で買ってきたサンドイッチだ。普通に美味しいぞ。」

 

「へー、今度食べてみるか。」

 

 

八雲にとってサンドイッチはハムサンド、カツサンド等野菜も肉も取れる万能料理だ。

もし本当にサンドイッチ伯爵が開発したのならば彼に国民栄誉賞が受賞されることは間違いない。

なんて事を話しながら、穏やかな雰囲気で昼食は進んでいく。

そこへ勢いよくドアが開かれ、対象Fが飛び込んでくる。

 

 

「あー会長!今日はお弁当ですか!一口分けてくださいよ〜。」

 

「構わんぞ。このハンバーグをやろう。」

 

「やったー!」

 

「すごいなお前。今度から勇者藤原って呼んでやるよ。」

 

 

誰が見ても不機嫌な顔をした四宮のことが目に入っていないかのような振る舞い。

いや、目に入ってないのだろう。

彼女の視野角は20°しかない。

八雲は後ろで睨んでいる四宮の顔を見てニヤニヤとしている。

白銀は八雲と四宮の雰囲気の違いに戦々恐々とチワワのごとく震えている。

 

 

「会長、これはなんですか?」

 

「ん?ああそれは味噌汁だ。冷や飯と一緒に食べると美味いんだぞ。」

 

「ヘ〜。やってみて良いですか?」

 

「やってみろ。」

 

「もうお前が魔王だよ。」

 

 

四宮の望んでいた白銀のご飯、それに加えて白銀との間接キス。

煽っているとしか思えないような行為の数々を笑顔でこなす藤原に恐怖を覚えた。

 

 

「そう言えば八雲。」

 

 

突如、プルプル震えていたチワワの目が八雲を捉える。

このタイミングでの発言は厄介ごとの匂いがする、八雲は第六感でそれを感じた。

だが聞かずにはいられないのだ、今チワワを救うことができるのは自分しかいない。

般若、魔王、人間、チワワ。

この中で動物愛護法を守る必要があるのは自分だけなのだ。

 

 

「...嫌な予感しかしないが聞いてやる。なんだ?」

 

「今度圭ちゃんがお弁当を持って行くって言ってたぞ。」

 

「今かぁ、それ今じゃないとダメだったか?帰る時でよかっただろ...」

 

 

魔王への報復を考えていた般若は、憐れ男にも牙を剥き、今にも食い殺さんとしているのだ。

高みの見物を決め込んでいた男は突然の危機に晒される。

そしていかに自分に被害がなく、物見櫓に火をつけた男に火を移すか考えた。

 

 

「いやまぁ返事はありがとうなんだけどさぁ...」

 

 

人外魔境のこの地において、白銀圭もまた天使という名の人外にカウントして良いだろう。

天使の兄が放火魔というのは恐ろしいものだが、放火魔が般若とくっつけば般若は天使の義姉だ。

放火魔程度可愛いものになる。

 

 

「八雲さん、後ほどお話があります。」

 

「すみません、今予定が入りましたので。では。」

 

 

八雲は逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前これは...一人で食べる気か?」

 

 

八雲が圭の手弁当を貰った日の昼、生徒会室にて四人の弁当が広げられていた。

だが一人、異様な大きさの弁当箱、否、もはや弁当箱とは呼べない物を広げている。

御節や花見に使われる重箱。

重箱一杯に詰められた料理を一人で食べようと思えば丸一日はかかるだろう。

当然のような顔をしている持ち主以外は顔が引き攣っている。

 

 

「もちろんです。ですがどうしても食べたいと言うのであれば交換してあげますよ。」

 

「いやいや、俺は要らんな。大体交換なんて物乞いみたいではしたないって四宮昨日言ってたし。」

 

 

先日睨まれたお返しだと言わんばかりに四宮を妨害する。

またもや睨まれるも今回は覚悟が出来ていた、意に介さず自分からも睨み返す。

 

 

「えぇ!?じゃあ私かぐやさんに物乞いって思われてたんですか!?」

 

 

物乞い以下である。

 

 

「くっ......分かりました。八雲さん、少しこちらへ。」

 

「なんだね?」

 

「早坂の秘蔵写真でどうですか?」

 

「...なんのことだか分からんが受け取ろうじゃないか。」

 

 

基本的に八雲と四宮の交渉は物々交換で行われる。

ある時はマザコン早坂の録音、またある時は早坂の弱点のファイル。

八雲の持つ対早坂用兵器は段々と巨大になっていた。

 

 

「まぁとは言え四宮の弁当が美味しそうなのも事実。ここはその卵焼きを分けていただこうか。」

 

「えぇ!?さっきは要らないって...」

 

「良いですよ。どうぞ食べてください。」

 

「良いんだ!!」

 

「流石は四宮家のシェフ、卵焼きも美味しいな。どうだ、二人とも。食べてみないか?」

 

「じゃあ私はエビを頂きますー!」

 

 

藤原もどうみてもメインの海老を食べ、その美味しさに身を捩る。

メインを食べる図太さは何をすれば培われるのか。

 

 

「俺は...その牡蠣を...」

 

「おいおいおい白銀君、タダで貰おうとは図々しいじゃないか。何か差し出すべきじゃないかね。」

 

「でも二人はタダで...」

 

「会長ともあろう者がということだよ。ほら、早く。」

 

 

八雲はこの二人の面倒くささに辟易しだした。

四宮から送られるハンドサインに従い白銀の思考を手早く誘導する。

 

 

「じゃあこのタコさんウインナーを。」

 

「良いチョイスだ!早くあげたまえ!」

 

 

四宮はここ数年で最高の笑顔をしていた。

早坂が焼肉なのに対してウインナー一つで機嫌を取れるのは安上がり過ぎだろう。

四宮家長女の威厳はどうしたのか。

 

 

「じゃあ藤原、俺はちょっと出るから。お前はポケG◯でもしてこい。」

 

「えー、なんでですか?」

 

「体育館の方でミュ◯ツーのレイドあってたぞ。」

 

「行って来ますね!」

 

 

なんとも扱い易い人間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、こんな所まで来てもらって。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

 

まるで二人を気遣ったかのように生徒会室を出て、邪魔な藤原も遠ざける。

自分の手腕に惚れ惚れした八雲はその勢いのままに圭に会っていた。

落ち合う場所は高等部の片隅。

誰にも見られない秘密のスポットだ。

 

 

「とても美味しかったよ。圭ちゃんはいいお嫁さんになるね。」

 

「いえそんな!...あの、宜しければこれからも作って来ましょうか?」

 

「えっ!いいの!?でも圭ちゃんに負担がかかるしなぁ。」

 

 

圭の弁当は食べたい。

けど圭に負担がかかるのもやだ。

八雲の頭では圭のクローン化計画と共にこの難題の解決法を考えていた。

 

 

「じゃあ、圭ちゃんにご飯作ってもらう分のお金を払うよ。その分バイトの時間を減らせるし。」

 

 

八雲にとってお金はいかにして税務署から守り通すかを考えるだけのものである。

圭が必要とするなら島根県の予算分の金額を動かす用意があった。

 

 

「お金、ですか。」

 

 

お金を貰えると聞いて渋い顔をする圭に好感度が上がっていく。

既に大気圏は突破しているがどこまで行くのだろうか。

 

 

「お金はちょっとあれなら他のものでもいいよ?」

 

「じゃあ一緒に遊びに行きませんか?」

 

「グハッ...」

 

 

天上天下唯圭独尊、この世で最も尊き圭の笑顔に八雲でさえ吐血する。

並の者であれば耐えきれず昇天していただろう。

なんとか膝をつかずに、口から溢れた血を手の甲で拭う。

 

 

「もちろんいいよ。どこに行きたいかは後でラインで送ってくれればいいから。」

 

「はい!」

 

 

圭のラインを持っている事がバレれば秀知院中から妬み嫉みを買うことは間違いない。

誰もが圭はラインをしていないと思っているからだ。

現在圭のラインを持っているのは藤原萌葉と彼の二人だけである。

白銀は未だガラケーの人間だった。

 

 

「でもそれはそうとしてお金は渡すからね。これは圭ちゃんのお小遣いと材料費分だから。」

 

「わかりま...お小遣い?」

 

「あっ、そろそろ行かなきゃだから!またね!」

 

 

高校生のお小遣い平均は五千円である。

だが秀知院においては五千円など端金。

八雲は圭にお小遣いとして二万円を渡すつもりであった。

もし八雲が親戚の叔父さんポジにいればお年玉で十万は固かっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「毎日弁当を持って来てもらうとか通い妻ですか?」

 

「盗み聞きとは行儀がよろしくないな。あと録画は消しておけ。」

 

 

いくら秘密の場所といえど知る者がいないわけではない。

早坂はたまたま八雲が一人で行動しているところを見かけ後をついて来たのだ。

その途中で隠れ場所に向かっている事に感づき先回りしていた。

そこに主人から要監視命令の出ている圭が現れる。

これはスクープだとカメラを回し、八雲への脅しに使おうとした。

 

 

「いつの間にあんなに仲良く?」

 

「さぁ、いつだろうな。何回もあってるからじゃないか。」

 

 

圭とこれだけ仲良くなっている事が知られれば四宮に呪われることは間違いない。

彼女の家にはお手製の藁人形が常備されている。

以前石上が四宮の地雷を踏んだ時には石上が謎の腹痛に見舞われた。

 

 

「もし圭が通い妻になればお前は用済み、カンボジアに出張決定だな。」

 

「正気ですか?」

 

「正気だ。安心しろ、日本にはこんな諺がある。住めば都だ。」

 

 

現代日本に生きる者がカンボジアに住んでも都にはなるのだろうか。

 

 

「一言で言うと、カンボジアは嫌です。」

 

「じゃあナイジェリアか、それともネパールか。」

 

「海外は嫌です。東京でお願いします。」

 

 

早坂の目は頷かなければ殺すと語っている。

 

 

「まぁ冗談だ。お前は四宮付きとしてやって貰うだろう。つまり今と同じだな。」

 

「ですよね。」

 

 

早坂は八雲を通して四宮に仕えているのだ。

だが黄光のように情報を流しているわけではない。

いやむしろ、八雲は最近情報を流されていると感じている。

 

 

「そういえば、昇給ってあるんですか?」

 

 

社会人が見ても仰天な年収の早坂は昇給を希望した。

だが早坂はただお金が欲しいわけではない。

暇な時間に考えている老後の計画の予算が十億を超えたのだ。

計画の第一弾として焼肉チェーンの買収が企画されている。

 

 

「あるぞ。お前が役に立つ度に昇給してやろう。ちなみに今までに昇給したことは一度もないぞ。」

 

「なんでですか。」

 

「お前がなんの役に立ってるか言ってみろ。」

 

「...」

 

 

思い当たる節が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋愛相談?」

 

「はい...恋愛において百戦錬磨との呼び声の高い会長にアドバイスを頂きたくて...!」

 

 

生徒会長として日々生徒の模範となる行動を心掛けている白銀。

その評価はとても高く、もはや白銀本人より高スペックな人物像が出来つつあった。

その一つ、恋愛百戦錬磨。

本当であれば何度も心理戦など仕掛けているはずもないが、生徒の期待を裏切りにくいのも事実。

苦渋の決断で相談に乗る事にした。

 

 

「判った、どうにかしてやる。」

 

「よかったな君、会長がどうにかしてくれるそうだ。これで解決するに違いない。」

 

 

八雲は煽った。

 

 

「(お前っ!なにしてくれてんだ!)」

 

「(お前が見栄を張るからだろ?適度に失敗もしないといつか本当に手に負えないものが来ても知らんぞ。)」

 

「(怖いこと言うなよ...)」

 

 

さも善意からの発言を装うが、そんなはずがないのだ。

白銀が一度引き受けた以上わざと失敗することはない。

相談を受け続け、やがて途轍もない爆弾を抱え込むのも間違いないだろう。

そこで爆弾を八雲が解決し、恩を着せてやろうという算段だ。

 

 

「あの、お二人とも...?」

 

「「なんでもない。」」

 

 

八雲がお茶を入れ、白銀の隣に座ると相談者が口を開き出す。

 

 

「僕は2年B組の田沼翼です。それで、相談なんですけど...」

 

「田沼、翼...」

 

「どうした八雲。」

 

「いや、ちょっと引っかかってな。まぁ続けてくれ。」

 

 

八雲の頭に何かが引っかかった。

だがすぐに思い出せないなら取り敢えず話を聞こうと続きを促す。

 

 

「はい。あの、僕、...クラスメイトの柏木さんに告白しようと思うんです!!」

 

「ほう。ちなみに接点はあるのか?」

 

「バレンタインにチョコを貰いました!」

 

 

これは簡単な相談だったなと拍子抜けする。

だが白銀に持ちかけられる相談が簡単なはずがない。

 

 

「ちなみにどんなのだ?」

 

「チョコボール...3つです...」

 

 

八雲は恐怖の表情を浮かべた。

なぜいけると思うのか、根拠のない自信ほど愚かなものも無いのだ。

期待させ無いことも優しさだと慈悲の心で言い放つ。

 

 

「無理だな。お前それでよく心折れなかったよ。そのメンタルを別のことにいかせ。」

 

「(八雲!!お前は黙ってろ!)」

 

「(これは俺が正しいだろ。ここから成功に持っていけると思うのか?)」

 

「(いける!寧ろこれはチャンスだ。)」

 

 

恐怖の表情が深まった。

なぜどいつもこいつも蛮勇ばかり持ち合わせているのか。

 

 

「お二人とも?」

 

「「なんでも無い。」」

 

 

瞬間、白銀の頭に名案が浮かぶ。

 

 

「チョコボール3つはもう間違いなく惚れている!」

 

「「!?!?」」

 

 

田沼の驚きを八雲の驚きが上回った。

完全に馬鹿を見る目を向けている。

 

 

「いいか、女ってのは素直じゃ無い生き物なんだ。常に真逆の行動をとると思え!」

 

「と言うことはあのチョコボールも...逆に本命!?」

 

 

逆に本命とは何なのか。

言っている事が勘違い人間のそれなのは分かっているのだろうか。

間違いしか無いこの恋愛相談はどこに行き着くのか。

八雲は川を流れる笹舟を眺めている気分になった。

 

 

「でも相手にはそんな気はないと思います...この前も揶揄われましたし。」

 

「なにを言ってるんだ。言葉の裏を読め。お前、モテ期来てるぞ。」

 

 

来ていない。

 

 

「そんな...あの中から一人を選ばないとなんて...」

 

「あの中?誰に揶揄われたんだ?」

 

「柏木さんと、━━さんと、四条さんと」

 

「四条!そうだ!すまん白銀、ちょっと出てくるがくれぐれも余計な事はするなよ。ババ抜きでもして遊んでろ!」

 

「八雲?おーい!」

 

 

白銀が呼ぶ声を置き去りにして走り出す。

引っかかった正体を思い出したのだ。

四宮の家庭教師として敵対派閥の情報を調べた時に載っていた。

四条眞妃は、田沼翼が好きであると。

四宮に敵対する派閥とはいえ、自身が四宮の派閥に属しているとは思っていない。

白銀による犠牲者が生まれる前に救う必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「四条眞妃、ちょっといいか。」

 

「あんた、おば様のとこの家庭教師ね...何の用。」

 

 

数分探し、親友の柏木以下数名といた四条を見つけた。

デリケートな問題なのでひとまず人の少ないとこまで着いてこさせる。

怪訝そうにしている四条に、顔面パンチ級の質問を打ち込んだ。

 

 

「田沼翼は好きか?」

 

「!?そ、そそ、そんなわけないでしょ!何を言ってるの!!」

 

「馬鹿野郎!YESかNOかで答えろと言っただろ!どっちだ!!」

 

「そんなこと言ってなかったじゃない...ひとまず、なんで答える必要があるのかだけ教えて頂戴。」

 

 

あまりにも理不尽すぎる八雲の言葉にも寛大な心で対応している。

何故これで田沼から好かれないのか不思議だがひとまず理由を説明し出す。

 

 

「実はな、白銀と俺の所に田沼が相談に来てな。...取り乱すなよ?」

 

「そんな事しないわよ。」

 

 

何処かの令嬢と違って聞き分けが大変よろしい。

親族かどうかDNA検査を行う必要があるだろう。

 

 

「田沼は柏木が好きらしいんだ。それで、お前の事を思い出してな。大至急教えに来た。」

 

「そう。でも私はあいつの事なんて好きじゃないわ。まぁ...向こうから告ってきたら付き合ってあげなくもないけど。」

 

 

やはり何処かの令嬢と血縁関係で間違いない。

 

 

「じゃあ、田沼が付き合ってもいいんだな?」

 

「...」

 

「...とりあえず柏木の所に行こう。それで、田沼が来たら妨害する方針にしよう。」

 

「そうね...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?白銀お前なんでここに...田沼...は...」

 

「ああ、俺の教えた壁ダァンで告白しに行ってるんだ!だから言ったろ?俺に解決できない相談はないって!」

 

 

なぜこの男は誇らしそうにしているんだ。

目の前にいる修羅の覇気を感じないのだろうか。

もう駄目かもしれないが圭ちゃんを悲しませる訳にはいかない。

 

 

「...そうだな。じゃあお前はしばらくパラグアイに行っとけ。死にたくなければな。」

 

「え?」

 

「白銀御行、ね。」

 

「家族に手を出さないなら差し出すぞ。」

 

 

圭を守るためには致し方ないのだ。

そう、圭のためには多少の犠牲はないに等しい。

決して圭との友好を妨害する人間を消そうなどとは考えていない。

 

 

「な、なんだ?何か嫌な予感がするな。」

 

「...まぁ壁ダァン?なんかじゃ渚が落ちるはずないし、ギリセーフにしといてあげる。」

 

「良かったな。四条様の心が寛大で。」

 

 

壁ダァンなんかで落ちるわけがない。

柏木は秀知院で4位の成績を誇る。

そんな人間が壁ダァンなんかに屈するはずが...

 

 

「会長!僕、付き合えました!!!」

 

「白銀、圭ちゃんのことは任せろ。お前は達者でな。」

 

「えっ何?誰この人達!?ちょっと!?俺をどこに連れて行くんだぁぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!」


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