本物を求めた魔王、此岸と彼岸を繋ぐもの   作:カミツレ苦難の中の力

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888番目の魔王

意識が覚醒していく。

足元には不気味に光る怪しげな魔法陣。

ここはどこだ?

俺は□□と□□と一緒にいたはずなのに。

あれ?なんだこれ、記憶が…

 

「気持ち悪い」

 

俺は体を起こして状況把握に努める。

酸素濃度問題なし、気温正常。

意味不明な状況下でも俺の脳はだいぶクレバーらしい。

待てよ、そもそも

 

「俺はいったい誰だ?」

 

さっきの思考も霧散してしまった。

俺がどこの誰で、どんな存在だったのか。

どれだけ試行しても記憶が呼び起こされることはない。

そこへ、誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。

 

目を見張る、女だ。

美女、なのは間違い無いだろう。

黒髪ロングで何故か白衣を着ている。

初めて見るのに懐かしさを覚えずにはいられない不思議な感覚。

それでいて逆立ちしても勝てそうにない圧倒的強者の雰囲気。

俺は動けずにいた。

 

「全く、待ちくたびれたよ。ようやく生まれたのかね」

 

その声に含まれる感情を読み取る。

喜びや期待、諦めと落胆あらゆる感情複雑に絡み合っている。

そして俺は、彼女に問う。

 

「教えろ、俺は誰だ?ここはどこであんたは何者だ?」

 

女は、少し驚くように目を見開いて不敵に笑った。

 

「そうか、君はそういう男なのか。実に面白い。そうだね、私は【拳】の魔王、ヒラツカシズカ。君には特別に先生と呼ぶ権利をあげよう。」

「んな権利誰もいら「ゴンッ・・・2度目はないよ。」わかったよ先生。んで、あんたは俺のこと知ってんのか?」

 

怖えええ、なにこの人、突然自己紹介したと思ったら壁ドンしてきたんだけど。

危うく死ぬとこだったんだけど、□□ピンチ!

 

「ああ、知っているとも。君は新しく生まれたばかりの魔王。私と同じ魔王だ」

 

ヒラツカ、もとい先生の手のひらから2回りほど小さい緑色の何かが出てきた。

俺はこいつを知っている。この醜い化物はそう、ゴブリンだ。

出てきた勢いのままそいつは俺に襲いかかる。

 

「さあ、最初のテストだ。Dランクの魔物であるホブゴブリン。凡百な人間では到底太刀打ちできない相手。君はどうする?」

 

え、なんかこの人笑ってんだけど。つーか普通に危なくね?

あのホブゴブリン殺意マシマシだわ。これ下手したら死ぬやつやん。

 

とはいえ、流石にこのまま死ぬわけにはいかない。

“俺はまだ□□を見つけていない”

状況を打破する為に考えろ。あいつを倒す為にはどうすればいい?

その時、体の奥底にある本能に似たナニカに気づいた。

その存在を俺は知らない。

けれど大丈夫だと確信できる。

流れるように言葉を紡いだ。

 

【接続】(コネクト)

 

その言葉を呟いた瞬間、俺の拳に光が宿る。

頭では全く知らない現象なのに体が覚えている。

ああ、俺はこの現象を知っている。

繋がりから得たその力の名前を。

 

気持ち悪い笑みを浮かびながらこちらへ襲いかかってくる。

俺はその動きに合わせるように今初めて使う力をあたかも始めから備わっていた力のように振るう。

 

「”衝撃のファーストブリット”!!!!!」

 

拳がうねりをあげる。

吐き出されたエネルギーは薄気味悪い笑顔を浮かべたホブゴブリンをその存在ごと抹消させた。

残されたのは、青い粒子の光のみ。

 

女、いや先生は驚いたように目を見開いている。

驚きたいのはこっちも同じだ。

当たり前のように行使した力の存在を俺は知らない。

なんだこれは、一体何が起きた。

その答えは頭に突如響いたアナウンスによってもたらされた。

 

『ユニークスキル:【接続】が発揮されました。あなたと繋がりあるものの力を擬似的に行使できます。ただし、その再現度は対象との繋がりの強さに依存し、その消費MPは倍になります。ただし、【誓約の魔物】の持つ力については常に完全な状態で行使することができます。----エラー----対象に□□□□の残滓を確認。□□□□と関わりある対象との繋がりを強制的に引き上げます。---あの日、確かにあなたは□□を求めた---』

 

「些か驚いたよ。まさか私の力を君が使うなど、実に君は興味深いね。とはいえ、まずは合格だ。君は魔王としての器を示した。私は新たな魔王の誕生を歓迎しようじゃないか」

 

「俺が、魔王?」

 

「そう、魔王だ。ありとあらゆる魔を生み出し統べるもの、卑劣で巧妙な迷宮を生み出し他者を圧倒するユニークスキルに目覚めし存在、この世界で888番目に生まれた最も新しい魔王だ」

 

俺が、魔王か。

実感がわかない、そもそも魔王というものを深く知らないのに俺にとってはひどく滑稽なことに感じる。

そう、それはまるでどこぞのどいつが結界を張ったように。

魔を生み出し統べるもの、俺がこの世界で生きる為には、□□を手に入れるにはどうするべきか、思考が廻る。

 

「君の顔は見ていて飽きないね、そう案ずるな。少なくとも1年。君が独り立ちをするまでは私が君の”親”であり”先生”として、魔王について教えてあげよう。さあ、授業の時間だ。」

 

白衣を纏った美女は不敵に微笑み、記憶を失い辛うじて残る繋がりに縋りながら俺の□□□□の新しい生活が始まった。

 

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