ARIA The PETRICHOR   作:neo venetiatti

1 / 22
Episodio 01 幻想カーニバル

あのアリシア・フローレンスの引退のあと、ARIAカンパニーを引き継いだウンディーネとして、世間から注目を浴びていた水無灯里。

 

しかし、時間が経過するごとに、なぜか評判が芳しくない。

 

見た目?

顔?

仕草?

しゃべり方?

「はひっ」ってナニ?

もみこ?

 

どうしたって、あのアリシアさんのあとですから。

 

美人で、おしとやかで、優しくて、いつも笑顔。

オールさばきは抜群で、観光案内も完璧で。

後輩を叱ったことすらない。

そしてついたあだ名が、ミス・パーフェクト。

 

 

ズルイです。

 

 

「灯里先輩は、それなりにがんばっていると思います」

 

 

心配したアリスは、急遽〈アリス調査隊〉を結成。

 

隊長はアリス。

「でっかい当然です」

 

副隊長は杏。

「アリスちゃんのためなら頑張りますよ!」

 

書記担当はアトラ。

「書記ってどういうこと?」

 

バナナ担当はまあ社長。

「まぁ~」

 

そして、広報部長はアテナ。

「何をすればいいのぉ~?」

 

「とにかくアテナ先輩は、今の立場を駆使して、情報を集めて下さい!」

「でもね、近々ライブのリハーサルがあるの」

「アテナ先輩なら、本番一発勝負で大丈夫ですよ!きっと」

「アリスちゃんがそう言うなら。でもね、その〈きっと〉っていうところは気になるのだけど」

「気のせいです」

「アリスちゃ~~ん!ほんとなの~?」

 

 

アリスは早速行動を開始した。

 

誰かと出会うたび、話のあとに必ず付け加える。

「あのー、ところで、ARIAカンパニーってご存知ですか?」

 

ウンディーネとして活躍しているアリスがたずねるのだから、相手も一応知っている人も多い。

 

だが、その先が厳しかった。

 

「それでですね、そのARIAカンパニーのウンディーネといったら、誰かご存知ですか?」

「アリシアさん、でしょ?」

 

あれだけ派手に引退セレモニーをやったはずなのに。

結局世間とはこんなもんだと、心の中で舌打ちするアリス。

 

あくまでも心の中で、です。

 

水先案内業界も、ゴンドラ協会も、一体なにをしていたのか。

次世代を担う、若きウンディーネが大事じゃないのか?

 

アリスは、左手のグローブに続いて、アテナから右手のグローブもはずされた時のことを思い出していた。

 

 

「あの時は、でっかい感動的でした!」

 

 

「それでアリスちゃん、次は何をすればいいの?」

杏は、何か上空を見つめているアリスに、ちょっと気を使いながら話しかけた。

 

「えっ、ああーはいはい、そうですねぇ~」

「どうするの?杏、なんとか言ってよ!」

「どうかしました?アトラさん!」

「あっ、あのー、実はプリマの昇格試験が近づいてるのだけど・・・」

「ちょっと、アトラちゃん!」

「正直言うとね、なんかもうひとつ、よくわからないというか・・・」

「わかりました!次なる指令を発表します!」

「ええー!」

 

アリスの次なる指令はこうだった。

 

「ARIA カンパニーといえば?」

「水無灯里!」

 

連想ゲームです。

 

もちろん、そこで〈アリシアさん!〉と答えようもんなら、いきなり100点減点です。

10点満点のゲームで。

 

だが、時には〈水無灯里!〉と解答する人も。

 

「おめでとうございます!あなたには、オレンジぷらねっとのゴンドラ利用券、50回分無料券を差し上げます!」

 

誰が負担するのかは、決まってません。

 

さすがにここへ来て、噂が広まったのか、アメリア統括部長から呼び出しが。

 

「アリスさん?ちょっと最近変な噂を聞くのですが」

「気のせいです」

「き、気のせい?」

「はい。部長、最近お忙しいとお聞きます。少し休まれた方がいいのではないでしょうか?」

「アリスさん、あなたのような方が・・・」

「大丈夫ですか?」

「ちょっと、めまいが・・・」

 

もう誰もアリスの暴走を止められなかった。

 

 

しかし、ついにあの人が動いた。

 

 

アリスは、頭がクラクラすると、決まって行きつけのカフェに行く。

そして注文するのは、決まってあれ。

 

「脳のでっかい糖分補給です」

 

パクリとパフェのクリームを口にする。

目を閉じて味に舌鼓を打つアリス。

だが、目を開けた次の瞬間、同じテーブルの、しかも真正面にあの人が頬杖をついて座っていた。

 

「な、な、な、な、ナリシアさん!」

「ナリシアさんて誰かしら?」

「す、すみません。言い間違いです」

「そう?アリスちゃんがそれでいいならいいわ。でも本当はダメだからね」

「は、はい!」

 

 

見抜かれてる!

適当にごまかそうとしてること、見抜かれてる~~!

 

 

「ところでアリスちゃん?」

「はい!」

「連想ゲーム、楽しい?」

「はっ?」

 

 

見抜かれてる~~

すべてを見抜かれてるぞ~~!

 

 

「ええ、まあ、そうですね。適当に」

「適当、なのね」

 

 

怖いです~~

どうしたって怖いに決まってますぅ~~!

 

 

「アクア、と言えば?」

「えっ、なんですか、アリシアさん?」

「だから、アクアと言えば?」

「アクアと言えば・・・」

「ブブゥー!」

「えっ、ブ、ブブ、ブブ」

「はい、100点減点ね」

「アリシアさ~ん!」

「はい、次ね。ヴェネチアングラスと言えば?」

「え、えっと、あれです」

「何かしら?」

「ネオ・ムラーノ島!」

「あら、正解。つまんないわね」

「ブ、ブラック・アリシア!」

「それ、いい表現ねぇ」

「ミス・ブラック!」

「ちょっと、もうひとつね」

「す、すみません!」

「あらあら、どうしたのかしら?」

「何でも言うこと聞きます!だから・・・」

「だから?」

「だから、叱ってください!」

「そんなの、はずかしいじゃない?」

「あれ?なにこれ」

「アリスちゃーん!大丈夫ぅー?」

「先輩!灯里せんぱーーい!お願いです!助けてくださーい!」

「じゃあ次ね。ARIAカンパニーと言えば?」

「それは当然、アリシア・・・」

「ブブブゥーー!!」

「み、水無、灯里、でーーす!ああー!」

「1000点減点でーす!」

「アリスちゃん、私の名前、言ってくれないんだぁー。悲しい」

「今言いました!」

「じゃあ次ね。わたし、アリシア・フローレンスの実年齢は?」

「もう、勘弁してくださーーい!」

 

 

「アリスちゃん!アリスちゃん!大丈夫?」

「もう、ご勘弁を~」

「ナニ?どうしたの?」

 

アリスはARIAカンパニーのテーブルのところで、つっぷして眠り込んでいた。

倒れたグラスから氷が数個こぼれて、アリスの顔のところで溶け始めていた。

 

「しばらくパフェはいりませんから~」

 

「この子、熱にでもやられたんじゃない?」

藍華は腕を組んで、呆れてその寝顔を眺めていた。

 

「私は灯里先輩の味方なんですから~~ムニャムニャ」

「一体ぜんたい、なんの夢みてんの?」

「アリスちゃん、とにかく、ありがとうって言っとくね」

「ムニャムニャ・・・次は・・・」

 

 

Episodio 01 幻想カーニバル  おわり

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。