ARIA The PETRICHOR 作:neo venetiatti
あのアリシア・フローレンスの引退のあと、ARIAカンパニーを引き継いだウンディーネとして、世間から注目を浴びていた水無灯里。
しかし、時間が経過するごとに、なぜか評判が芳しくない。
見た目?
顔?
仕草?
しゃべり方?
「はひっ」ってナニ?
もみこ?
どうしたって、あのアリシアさんのあとですから。
美人で、おしとやかで、優しくて、いつも笑顔。
オールさばきは抜群で、観光案内も完璧で。
後輩を叱ったことすらない。
そしてついたあだ名が、ミス・パーフェクト。
ズルイです。
「灯里先輩は、それなりにがんばっていると思います」
心配したアリスは、急遽〈アリス調査隊〉を結成。
隊長はアリス。
「でっかい当然です」
副隊長は杏。
「アリスちゃんのためなら頑張りますよ!」
書記担当はアトラ。
「書記ってどういうこと?」
バナナ担当はまあ社長。
「まぁ~」
そして、広報部長はアテナ。
「何をすればいいのぉ~?」
「とにかくアテナ先輩は、今の立場を駆使して、情報を集めて下さい!」
「でもね、近々ライブのリハーサルがあるの」
「アテナ先輩なら、本番一発勝負で大丈夫ですよ!きっと」
「アリスちゃんがそう言うなら。でもね、その〈きっと〉っていうところは気になるのだけど」
「気のせいです」
「アリスちゃ~~ん!ほんとなの~?」
アリスは早速行動を開始した。
誰かと出会うたび、話のあとに必ず付け加える。
「あのー、ところで、ARIAカンパニーってご存知ですか?」
ウンディーネとして活躍しているアリスがたずねるのだから、相手も一応知っている人も多い。
だが、その先が厳しかった。
「それでですね、そのARIAカンパニーのウンディーネといったら、誰かご存知ですか?」
「アリシアさん、でしょ?」
あれだけ派手に引退セレモニーをやったはずなのに。
結局世間とはこんなもんだと、心の中で舌打ちするアリス。
あくまでも心の中で、です。
水先案内業界も、ゴンドラ協会も、一体なにをしていたのか。
次世代を担う、若きウンディーネが大事じゃないのか?
アリスは、左手のグローブに続いて、アテナから右手のグローブもはずされた時のことを思い出していた。
「あの時は、でっかい感動的でした!」
「それでアリスちゃん、次は何をすればいいの?」
杏は、何か上空を見つめているアリスに、ちょっと気を使いながら話しかけた。
「えっ、ああーはいはい、そうですねぇ~」
「どうするの?杏、なんとか言ってよ!」
「どうかしました?アトラさん!」
「あっ、あのー、実はプリマの昇格試験が近づいてるのだけど・・・」
「ちょっと、アトラちゃん!」
「正直言うとね、なんかもうひとつ、よくわからないというか・・・」
「わかりました!次なる指令を発表します!」
「ええー!」
アリスの次なる指令はこうだった。
「ARIA カンパニーといえば?」
「水無灯里!」
連想ゲームです。
もちろん、そこで〈アリシアさん!〉と答えようもんなら、いきなり100点減点です。
10点満点のゲームで。
だが、時には〈水無灯里!〉と解答する人も。
「おめでとうございます!あなたには、オレンジぷらねっとのゴンドラ利用券、50回分無料券を差し上げます!」
誰が負担するのかは、決まってません。
さすがにここへ来て、噂が広まったのか、アメリア統括部長から呼び出しが。
「アリスさん?ちょっと最近変な噂を聞くのですが」
「気のせいです」
「き、気のせい?」
「はい。部長、最近お忙しいとお聞きます。少し休まれた方がいいのではないでしょうか?」
「アリスさん、あなたのような方が・・・」
「大丈夫ですか?」
「ちょっと、めまいが・・・」
もう誰もアリスの暴走を止められなかった。
しかし、ついにあの人が動いた。
アリスは、頭がクラクラすると、決まって行きつけのカフェに行く。
そして注文するのは、決まってあれ。
「脳のでっかい糖分補給です」
パクリとパフェのクリームを口にする。
目を閉じて味に舌鼓を打つアリス。
だが、目を開けた次の瞬間、同じテーブルの、しかも真正面にあの人が頬杖をついて座っていた。
「な、な、な、な、ナリシアさん!」
「ナリシアさんて誰かしら?」
「す、すみません。言い間違いです」
「そう?アリスちゃんがそれでいいならいいわ。でも本当はダメだからね」
「は、はい!」
見抜かれてる!
適当にごまかそうとしてること、見抜かれてる~~!
「ところでアリスちゃん?」
「はい!」
「連想ゲーム、楽しい?」
「はっ?」
見抜かれてる~~
すべてを見抜かれてるぞ~~!
「ええ、まあ、そうですね。適当に」
「適当、なのね」
怖いです~~
どうしたって怖いに決まってますぅ~~!
「アクア、と言えば?」
「えっ、なんですか、アリシアさん?」
「だから、アクアと言えば?」
「アクアと言えば・・・」
「ブブゥー!」
「えっ、ブ、ブブ、ブブ」
「はい、100点減点ね」
「アリシアさ~ん!」
「はい、次ね。ヴェネチアングラスと言えば?」
「え、えっと、あれです」
「何かしら?」
「ネオ・ムラーノ島!」
「あら、正解。つまんないわね」
「ブ、ブラック・アリシア!」
「それ、いい表現ねぇ」
「ミス・ブラック!」
「ちょっと、もうひとつね」
「す、すみません!」
「あらあら、どうしたのかしら?」
「何でも言うこと聞きます!だから・・・」
「だから?」
「だから、叱ってください!」
「そんなの、はずかしいじゃない?」
「あれ?なにこれ」
「アリスちゃーん!大丈夫ぅー?」
「先輩!灯里せんぱーーい!お願いです!助けてくださーい!」
「じゃあ次ね。ARIAカンパニーと言えば?」
「それは当然、アリシア・・・」
「ブブブゥーー!!」
「み、水無、灯里、でーーす!ああー!」
「1000点減点でーす!」
「アリスちゃん、私の名前、言ってくれないんだぁー。悲しい」
「今言いました!」
「じゃあ次ね。わたし、アリシア・フローレンスの実年齢は?」
「もう、勘弁してくださーーい!」
「アリスちゃん!アリスちゃん!大丈夫?」
「もう、ご勘弁を~」
「ナニ?どうしたの?」
アリスはARIAカンパニーのテーブルのところで、つっぷして眠り込んでいた。
倒れたグラスから氷が数個こぼれて、アリスの顔のところで溶け始めていた。
「しばらくパフェはいりませんから~」
「この子、熱にでもやられたんじゃない?」
藍華は腕を組んで、呆れてその寝顔を眺めていた。
「私は灯里先輩の味方なんですから~~ムニャムニャ」
「一体ぜんたい、なんの夢みてんの?」
「アリスちゃん、とにかく、ありがとうって言っとくね」
「ムニャムニャ・・・次は・・・」
Episodio 01 幻想カーニバル おわり