ARIA The PETRICHOR 作:neo venetiatti
久し振りに姫屋本店に訪れた藍華は、そのエントランスの造りの豪華さに、この水先案内店が、このアクアでいかに歴史を刻んできたかを感じずにはいられない思いだった。
だがそんな誇らしげな気持ちは、ほんの一時間前までの話だった。
今は暗い気持ちで、天井にある豪華なシャンデリアを見上げていた。
「なんでまた・・・」
藍華の気持ちを落ち込ませていた理由は、この本店で一時間前に行われていた会議に理由があった。
「しばらく新しいウンディーネの採用をストップする」
あくまでも一時的な措置ということだったが、藍華は思わずポカンと口を開けていた。
チラッと見た晃は、目を閉じ、眉間にシワを寄せて、厳しい表情になっていた。
オーナー一族で経営を続けていた姫屋は、外部からうるさく言われることはなかったが、今回は内部からの意見を集約したもので、それはある意味、苦渋の決断だった。
大きな所帯となると抱える人員も増えてくるものだが、現状における課題はシングルだった。
プリマに昇格出来ず、足踏みしているシングルが近年増え始めていた。
ゴンドラ協会も対策に乗り出そうとしていたが、そこに積極的に取り組もうとしていたアリシアも、いい解決策を見出だせないままでいた。
姫屋のウンディーネたちを統括する晃にも、その課題は振り向けられていた。
だが、藍華の頭を悩ませていたのは、その会議のあと、二人っきりになったところで言った晃のセリフだった。
「カンナレージョ支店も例外ではない」
まだ始まって日が浅い支店に振り向けられてもと、藍華はブツクサ不満を漏らしていたが、その時、藍華の脳裏にひとりのウンディーネの顔が浮かんだ。
「それって、やはりプリマを目指すことが前提で、ということですか?」
「当たり前だ。シングルで足踏みしていることがそもそもの理由なんだ。当然だろ?」
「ですよねぇ~」
藍華は晃と別れたあと、ひとりになったところで大きなため息をついた。
「なんでまた、こんなことに・・・」
カンナレージョ支店に戻った藍華は、ロビーを通りかかった従業員を呼び止めた。
「あゆみの今日のスケジュールは、どうなってんの?」
その従業員は、少しあきれたように小さくため息ををついた。
「支店長?あゆみさんのスケジュールといったら、決まってるじゃないですか?」
「まあ確かにわかってはいたんだけど、一応確認しておこうと思って。だって支店長じゃない?私って」
藍華は、こめかみの辺りをポリポリかきながら苦笑していた。
「それはそうですけど。それで、どうされたんですか?」
「いやね、ちょっと支店に顔出すように伝えようと思ったんだけど」
「わかりました。わたし、このあとおつかいで出ますので、寄ってみます」
「そう?忙しいのに悪いわね。明日の朝、とりあえず支店に寄るように伝えておいてくれる?」
その従業員は、藍華に一礼すると、忙しそうにその場を立ち去った。
藍華は不安な気持ちで、その後ろ姿を見送った。
何か根拠があってのことではなかったのだが・・・
だが、藍華の不安は的中した。
朝礼の時、藍華は不思議そうな表情で、目の前に並ぶ従業員たちを見渡していた。
すると、その従業員たちの間に顔を突っ込むようにして、何かを探すようにキョロキョロと顔を左右に向け始めた。
「あの、藍華さん?いったいどうされた・・・」
「ちょっと!どういうことなの?!」
藍華の表情がいっぺんに険しくなった。
「あゆみは?!あゆみはどこ?!」
「そういえばあゆみさん、見かけないですねぇ」
そこにいた全員が回りを見回していた。
「いったいどういうこと?」
すると、きのうロビーで藍華の伝言を言付かった従業員が言った。
「わたし、ちゃんとお伝えしました。トラゲットの船着き場で、直接会って言いました!」
「じゃあ、なんでいないの?」
その時、別の従業員が口を開いた。
「そういえば、わたし、今朝すれ違いましたよ、あゆみさんと」
「すれ違ったの?」
「はい。なんだか、すごく急いでました。よっぽど急ぎの用でもあるんだろうと思ってたんですけど」
「急ぎの用?なんなのそれ?」
藍華は難しい顔をしていたが、一方で困惑もしていた。
「あの子には、釘を刺しておこうと思ったのに。タイミングが悪いわね。何か起こらなければいいんだけど・・・」
藍華は、胸騒ぎが収まらず、適当に理由をつけて、支店を飛び出していた。
トラゲットの船着き場で見かけた、姫屋のウンディーネをつかまえて、今日あゆみが担当している場所を聞き出した藍華は、急いでその船着き場へ向かった。
多くの人で賑わう露店を抜けると、その開けた先に緑色の看板が見えてきた。
白地にオレンジ色が印象的なユニフォームを着たウンディーネがひとり、そこで次に乗るため並んでいる乗客たちに声をかけていた。
「間もなく到着しまーす!左側に寄って、一列にお並びくださーい!」
藍華はその手前で立ち止まると、そこへは近づかず、少し離れたところからその様子を見ることにした。
すると、そのウンディーネの言葉のとおり、客を沢山乗せたゴンドラが近づいて来るのが見えてきた。
「アトラぁー!準備はいいかぁー?!」
ゴンドラの舳先に立っていたあゆみが、岸にいるウンディーネに向かって大きな声で呼び掛けた。
「いいわよぉー!」
眼鏡をかけたそのウンディーネが、大きな声で答えた。
船着き場に近づくと、ゴンドラは速度を緩め、慎重に停泊した。
「はい!みなさん、ご苦労さんでした!到着ですよー!」
あゆみは、水面から長く突き出た杭に手をかけ、脚でゴンドラを支えながら、降りる客たち一人一人に声をかけた。
ゴンドラの後ろ側に乗っていた、もうひとりのウンディーネも降りる客たちに手を貸していた。
「アトラちゃーん!最後のお客様、行ったわよぉー!」
「わかったぁー!あんずぅー!」
乗っていた客の、最後のひとりが重い荷物と一緒に岸に上がってきたときだった。
「君たち、ちょっと待ちたまえ!」
ゲートの前で並んで待っていた先頭の客にアトラが声をかけようとしたその時、それを制するように、男が声をかけてきた。
「すみません。今から乗船なんですけど、何か?」
怪訝な表情でアトラが応えた。
「今からビップな方々が来られる。その方々をお乗せするのが先だ」
「ビップ?」
「V・I・Pだぁー!」
高圧的な態度で言いはなった男に、アトラは一気に眉間にシワを寄せた。
「なんなんですか?ゴンドラに乗りたいのなら、後ろにお並びください!みなさん、先程からこうして待ってるんですよ!」
アトラの言葉に反応するように、そこにいた客たちは、みんな怪訝な表情でその男に顔を向けていた。
「君は何を言ってるんだ?今私が言った言葉が聞こえなかったのかね?」
男はそれには一切気に止めず、アトラに向かって言い返した。
「ですから、私の方もいいましたよね?お乗りになりたいのなら、どうぞ最後尾にお並びください!」
アトラは一歩も引かないと言いたげな態度だった。
「何を言ってるんだ?これからお越しになられる方々は、ゴンドラ協会の名誉会員の方々なんだぞ?君ごときが出る幕ではない!」
「ゴンドラ協会の・・・名誉会員・・・」
その言葉に、アトラの先ほどまでの威勢のよさは、どこかに消えていた。
「さあ、わかったらそこをどきたまえ!」
男がそう言ってアトラを押し退けてゲートを進もうとしたときだった。
「おっちゃんさあ、そんな無理を言わないでくれます?」
男の前に立ちはだかるように、あゆみが立っていた。
一歩たりとも通さないと言っているような顔だった。
「よっ!あゆみちゃん!」
待っていた客の中から声が飛んだ。
「な、なんなんだ、君は!」
「だからぁ、無理を言われちゃあ困るんですよ。みんなも暇じゃないんです。生活があるんですから」
あゆみはあくまでも冷静に余裕の表情で答えた。
「君は先ほどの私の話を聞いてなかったのか?ゴンドラ協会の名誉会員の皆様が・・・」
「ちゃんと聞こえてましたよ」
あゆみは小指を耳に突っ込んでクリクリと回して見せた。
「じゃあそこをどきたまえ!」
「それはできません」
「なんだと?!」
客たちから一斉に拍手が沸き起こった。
男はあゆみの姿を上から下まで眺めた。
「そのユニフォームは姫屋だな?老舗の姫屋のウンディーネがなんて態度だ!姫屋も地に落ちたもんだ!」
男は嘲笑うかのような目をあゆみに向けた。
「さあ、いい加減どきたまえ!君もわかっただろう?こんな馬鹿げたことをやっていると、君だけの問題ではすまなくなるぞ!姫屋の看板にキズでもついたらどうするつもりなんだ?」
あゆみはそれを聞いて顔を強ばらせた。
「あゆみ?これ以上無理は・・・」
アトラが心配そうに声をかけた。
「ダメだ。これだけは聞けない」
あゆみは声を落として真剣に言った。
陰に隠れて見ていた藍華は、額に汗を浮かばせてその光景を見ていた。
「あゆみ?もうそれ以上は限界だわ。何かあってからでは・・・」
藍華はその場から出ていこうとした。
だが、誰かが後ろから藍華の肘を掴んで引き留めた。
驚いて振り返った藍華の背後には晃が立っていた。
「晃さん!」
「もう少し待て、藍華」
「どうしてここに?」
「いいから」
晃はそう言って、あゆみたちの方に視線を向けた。
「でもこのままだとあゆみ、何をしでかすか・・・相手はゴンドラ協会だと言ってますし」
「だからだ」
「だから?」
「そうだ」
晃は藍華の肩に手を回してすぐそばに顔を近づけた。
藍華は思わず照れ臭そうにうつむいた。
船着き場では、緊張が走っていた。
「いったい先ほどから何をそんなに意地になってるんだ?いくら姫屋のウンディーネとはいえ、君ごときシングルのウンディーネが何を言ってもいいとはならんのだぞ!」
「約束なんだ」
あゆみは、うつ向きながらポツリとつぶやいた。
「あゆみ?どうしたの?なんかあるの?」
アトラが心配になって聞き返した。
「だから、約束したんだ」
あゆみが、また小声でつぶやいた。
「何を言ってるのか聞こえんぞ!」
男がわざと大声で聞き返してきた。
「その約束というお話、私に聞かせてもらえないですか?」
トラゲットを待っている客の列の後ろから、そう話す声が聞こえてきた。
その声に反応するように、あゆみは顔を上げた。
あゆみの目線の先には、優しく微笑む初老の女性が立っていた。
そして、そのそばには他に数人の、同じような年代の女性や男性がいた。
姿を見た男は急激に顔色が変わり、表情は緊張でこわばっていた。
「アガリタ様!それに名誉会員の皆様も!」
思わずこめかみに汗を流しだした男は、その場に立ち尽くしていた。
「さ、さあ、どうぞ、こちらからご乗船ください!」
「いいえ、まだお話を伺ってないわ」
「そ、それは・・・」
「聞かせていただけるかしら?ウンディーネさん?」
その女性の応対に驚きをにじませた表情で、あゆみはその光景を眺めていた。
「あゆみ?大丈夫?こちらの方があゆみの話を聞きたいって」
アトラが立ち尽くしているあゆみに声をかけた。
「あ、あの、いったいどういうことなんでしょうか?」
「どうもこうもないわ。あなたがした約束のはなし、それを私にも聞かせてもらえないかしら?」
「ああ、それは、いつもトラゲットを利用する男の子がいて・・・」
「その男の子がどうしたの?」
「その男の子が、しばらく出稼ぎに行っていたお父さんが帰ってくるっていうから、それじゃあ絶対に迎えに行かないとって言って・・・」
「言って?」
「でも時間がわからないって言うもんだから、じゃあいつでもおいでって言って・・・」
それを聞いていたアトラが、驚いた表情で思わず話に割って入った。
「それであんな早くから来てたの?まだ地区割りもされてないのに」
「あの子、いつもここの船着き場に来るから、きっとここだろうと思ってね」
あゆみは照れ臭そうに頭をかいていた。
「あゆみったら、もう~」
「アトラ?」
「それならそうと言ったくれればいいじゃない?」
「でも勝手には、ゴンドラ動かせないわけだし・・・」
「あゆみちゃん?そこですよ?ちゃんと言ってくれないと!」
杏も口をとんがらせて言った。
「杏?お前までいったい何を・・・」
アガリタと呼ばれたその女性は、一歩あゆみに近づくとあゆみの顔をまじまじと見つめた。
「あゆみさん?」
「は、はい?」
「あなたの優しい心遣いは、きっとその男の子に伝わってるはずね。そしてそれは、他の方々にも・・・」
アガリタが振り返ると、トラゲットを待つ客たちはみんな、あゆみに向けて優しく微笑んでいた。
そして、その列の最後尾には、いつの間にか小さな男の子が立っていた。
「あの~お姉ちゃんさぁ、まだ乗れないの?」
前に並ぶ大人の影からちょこんと顔を出している男の子が、文句を言いたげにのぞいていた。
「えー?来てたの?いつ?」
あゆみは驚いて声をかけた。
「ついさっきだけど」
「じゃあ、お父さんは?」
「連絡がきたんだ!帰ってくるって」
「そうなんだ!よかったなぁー!」
するとアガリタは、トラゲットのゲートの下に茫然と立っている案内役の男の顔の前で、手をヒラヒラと左右に振って見せた。
「さあ、どいてちょうだい!あなた、邪魔なの!」
男はのけ反るように後退りすると、柵のところで身体をぶつけて、運河に落ちそうになっていた。
「ああー!」
それを尻目に、アガリタは、待っていた客たちをゴンドラに乗るよう手招きした。
「いいんですか?」
あゆみはその様子に戸惑いながら尋ねた。
「いいのいいの。トラゲットの本来の目的は、この大運河を渡るためのもの。みんなの大事な生活の脚だもの」
最後に乗り込もうとした男の子とあゆみはハイタッチした。
「じゃあ待ってるから」
「えっ?お姉ちゃんじゃないの?」
「まあ、そうだね。でも順番が・・・」
するとアトラがこう言った。
「そのために朝早く来たんでしょ?」
「えっ?」
「あゆみちゃん?わたし、今日は体力あり余ってますから!」
杏は腕を曲げて力強くポーズをきめてみせた。
その様子を見たあゆみは、パッと表情をはじけさせた。
「よっしゃぁー!そんじゃあ行くとしますかぁー!」
乗船していた客たちからは、あゆみの声と同時に拍手が沸き起こっていた。
その男の子も嬉しそうに笑っていた。
あゆみは桟橋の階段を降りる直前、アガリタの方に振り返った。
「ありがとうございます」
アガリタは嬉しそうに微笑んで返した。
「あゆみちゃん?遅れた分、ちょっと急いでよ?後でイチゴあげるからさぁー!」
買い物かごを小脇に抱えたおばさんが声をかけた。
「わかりましたぁー!しっかりつかまっていて下さいよぉー!」
「あゆみちゃん!」
「杏?・・・冗談だよ!」
「もう!あゆみちゃんたらぁー!」
船着き場からゆっくりと動き出したゴンドラは、あゆみの人柄そのままに笑いに包まれていた。
その光景を見ていた藍華は、ふぅ~とため息をついた。
「一時はどうなるかと思ったぁー!」
横にいた晃は、静かに微笑んで、ゴンドラを見送っていた。
船着き場では、アトラが恐縮して、笑顔のアガリタや名誉会員たちの前でペコペコ頭を下げていた。
「晃さん?」
「なんだ?」
「もしかして今日のこと、知ってたんですか?」
「まあな」
「まあなって、それならそうと言ってくれててもいいじゃないですかぁー?」
「言ったからって、どうなる訳でもないだろ?」
「そんなことないですよ!あらかじめあゆみには、気をつけるように釘をさしておきました!」
「でも結果的に上手くいったんだ。文句あるまい」
「だって、もし変なことになってたら・・・」
「変なことってなんなんだ?」
「だってウチは今、シングルのことで大変な時じゃないですか?」
晃は少し間をおくと、その大運河を進んでゆくゴンドラを眩しそうに見つめた。
「藍華?」
「なんですか?」
「私は信じてるんだ、姫屋のウンディーネたちを」
「晃さん・・・」
「ウンディーネに必要のないウンディーネなんていない。私はそう思っている」
藍華は運河に視線を向ける晃の横顔を見つめた。
「私たちが信じてやらくて、誰が信じてやるんだ?」
藍華もそう言う晃と同じように煌めく運河に目をむけた。
「そうですね。晃さんの言う通りです」
藍華は、少し胸の熱くなる思いでいた。
「それにだ。あの名誉会員のおじいちゃんやおばあちゃんたちは、そもそも水先案内業界を知り尽くしている人たちだ。私たちが心配するようなことにはならないと、初めっから私にはわかっていた」
晃は両手を腰に構えて、ぐっと胸を張った。
「あ、あのですね?そんなどや顔で言われても。しかも、名誉会員の方々をおじいちゃんとかおばあちゃんとか言って。それってどうかと思いますけど・・・」
「いいんだ。皆さんは心の広い方々だからな!アハハハ!」
「それはどうかしら?」
背後からの、その聞きなれた声に、晃はギクッと固まった。
「指導員という立場よね、晃ちゃんて」
恐る恐る振り返った晃の目線の先には、にっこりと微笑むアリシアが立っていた。
「お前、いつからそこに・・・」
「なんだか、先輩と後輩のふたりで、まったりと運河なんか眺めちゃったりして。うらやましい光景ね」
「別にまったりしてたわけじゃない!」
「いいのよ。今さら照れなくても」
「そういうことじゃなくてだなぁ」
「藍華ちゃんもごくろうさま。後輩を見守るのも大変ね♡」
「いえ!そんなこと、いくらだって見守ります!」
「あらあら、頼もしいわね♡」
「はい!見守り隊の隊長にでもなんでもナリマスデス!はい!」
「だって♡」
アリシアは意味ありげに晃を見返した。
「わかった。悪かった!失言を撤回する!」
「いい後輩を持ったわね、晃ちゃん♡」
「そんなことより、お前こそこんなところで何をやってるんだ?」
「何って、そんなの、決まってるじゃない?」
そう言ってアリシアは二人の横を風のようにすり抜けていった。
「ああ、アリシアさ~ん!なんていい香りぃ~」
藍華は目を閉じ、うっとりとした表情で、鼻の穴を大きく広げていた。
アリシアはゴンドラ協会の名誉会員たちのところへ行くと、皆の前で優雅に会釈してみせた。
すると、その場にいた名誉会員たちはみんなにっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「なんか損してる」
「何がですか?」
「もういい!」
晃は納得がいかないとばかりに、ふんっと鼻から息を出した。
「それにしてもアリシアさんも大変ですね」
「あれの何が大変なんだ?」
アリシアを囲むようにして、笑顔の輪ができていた。
「だって、名誉会員の方たちに接待してるわけですもんね?」
「あれの何が接待なんだ?おじいちゃんやおばあちゃんの相手をしてるだけじゃないか!」
「またそんな憎まれ口を叩く」
「誰が憎まれ口だって・・・」
言いかけたところで、藍華が何か言いたげに、にんまりと微笑んでいた。
「なんだ?」
「アリシアさんが言ってたじゃないですか?いい後輩を持ってうらやましいって」
晃はスッと冷静な顔に戻った。
「さあ、これからシングルの指導方法の見直しだ!」
「今からですか?」
「そうだ!私は指導員だからな!」
「今日ぐらいはいいじゃないですかぁ?」
「さあ、帰るぞぉー!仕事だ、仕事!」
「なんでそっちになるのかなぁ~」
「頼むぞ!隊長殿!」
「わかりましたぁ~~」
Episodio 18 ユーフォリア おわり