街
蝶屋敷を出た大貴とカナエは近くの街へと辿り着いていた。
「あっ悲鳴嶼君! あの甘味処がとても美味しいの♪ あそこで良い?」
「構わんよ。 カナエ君のおすすめの店なら間違いないだろうしな」
カナエ一推しの甘味処に2人は入っていく。
「いらっしゃいまし! あら!? カナエちゃんじゃないの!」
中に入ると元気のある妙齢の女性…この甘味処の女将さんがやって来る。
「女将さん、お久しぶりです!」
カナエは女将さんに挨拶をする。
「どうしたんだい今日は可愛らしくおめかししちゃって…」
甘味処の女将さんはふと大貴を見ると合点が合ったように微笑む。
「成る程ねー、カナエちゃんにも春が来たって訳かい?」
「!!? お、女将さん!////」
「あらあら顔を赤くしちゃって! 初々しくて可愛いわね!」
「うぅ〜////」
女将さんを恨めしく見るカナエだが、顔を赤くして涙目になっている為全く怖くない。
「? むっ? カナエ君、また顔が赤くなっているが本当に大丈夫かね?」
大貴は相変わらずの朴念仁さを発揮し、カナエを心配する。
「へ、平気だから気にしないで!」
「カナエちゃん、ちょっとおいで!」
「えっ? は、はい! 悲鳴嶼君は先に奥の座敷に行って待っててくれる?」
「? うむ、わかった」
唐突に女将さんから手招きされ、カナエは大貴を先に座敷に向かわせる。
「……カナエちゃん、貴女苦労してるわね。 甘味処に2人で来て、それに加えてこんなおめかししてるのに今の発言ってことは、もしかして彼はこれが逢引って気付いてないの?」
女将さんは呆れた表情を見せるとカナエに問いかける。
「い、いや、あ、逢引じゃないです!////」
「って違うのかい!? こんなにお洒落してるのに!?」
「は、はい…私が悲鳴嶼君のことを好きなのは認めますけど…今回はそういうのではなく、先日、妹が彼に助けてもらったのでそのお礼で甘味をご馳走することになったってだけなので」
「成る程そういうわけかい。 でもカナエちゃんとしては逢引感覚なんでしょ? しのぶちゃんも気を利かせて貴女達2人で来させたみたいだし」
「////」
女将さんの指摘に再び顔を赤くして俯くカナエ。
「本当に初々しくて良いね! あっ! 今日はお代はいらないから好きな物頼んでおくれ!」
そんなカナエの反応が面白いのか女将さんはケラケラ笑うと思い付いたようにそう言う。
「!? そ、そんな! お代はちゃんと払わせて下さい! ご迷惑をお掛けするわけには……」
流石に払わないのは迷惑が掛かるとカナエは断ろうとする。
「迷惑なんて思わないさ! カナエちゃんが初めて異性の殿方連れてきたんだ! こんなに嬉しいことはないからね!」
「で、でも……」
「本当に優しい娘だねカナエちゃんは!……なら、前に貴女達に命を救ってもらったお礼ってことでどうだい?」
「…はぁー…女将さんには敵わないですね…それでは今回は申し訳ないですけど、お言葉に甘えさせてもらいます」
しかし、有無を言わさぬように迫る女将さんに遂にカナエは折れた。
ちなみに女将さんの言う命を救ったという言葉から分かるようにカナエは以前しのぶと共に鬼の魔の手から彼女を救っている。
その時に助けたのが縁となり、カナエはこの女将さんの営む甘味処を良く利用するようになったという訳である。
「そうそう、最初からそう言ってくれれば良いんだよ! さあ、後で注文聞きに行くから愛しの彼の所へ行っといで!」
「い、愛しのって!//// 」
「違うのかい?」
「ち、違い…ません////」
「それなら早く行った行った!」
「うぅ〜////…」
女将さんから急かされ、カナエは大貴の居る座敷へと向かう。
「……まさかアタシの命の恩人のカナエちゃんが好きな殿方連れて来るとはね…長生きはするもんだ…そう思わないかいアンタ?」
感慨深く女将さんは呟くと店の調理場の片隅にある小さな写真に目を遣る。
そこには40歳程の男性が写っていた。
「せっかくあの時助けてもらったのに急にポックリ逝っちまって…あんな可愛くおめかししたカナエちゃん見られなくて残念だったねアンタ…」
そう言う女将さんの目からは一筋の涙が溢れていた。
女将さんは目を拭うと次の瞬間にはいつもの元気の良い表情に戻り、調理を始めた。
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「悲鳴嶼君、お待たせ♪」
「いや、大して待っていないから気にしないでくれ。 何の話だったのかね?」
「えっ!? え、えっと…女性同士の秘密の話…かな?」
大貴からの問いかけにカナエは吃りながらも無難な返答をする。
「ふむ、女性だけの話ならば詮索はせんよ。 とりあえず注文の品を決めようか?」
「うん、そうね。 やっぱり寒い時期だから暖かいものの方が良いよね?」
「そうだな、ならばぜんざいはどうかね?」
「ぜんざいかー、うん、良いと思うわ」
「後はみたらし団子でも頼むとしよう」
「とりあえずは決まり…かな?」
注文が決まった頃、タイミング良く女将さんがやって来た。
「失礼します! 注文は決まったかい?」
「はい。 暖かいぜんざい2つとみたらし団子を4本戴けますか?」
「ぜんざい2つにみたらし団子が4本だね! わかったよ、少し待ってってね!」
注文を受けると女将さんは座敷から去っていく。
「……(悲鳴嶼君と2人で甘味処に来るなんて思っても見なかった…2人っきりだって思うと今更だけど何だか緊張してきた…どうしよう…)」
座敷に2人っきりという現状にカナエは急に緊張を覚え、言葉が出ない。
「カナエ君、成り行きではあるが、思えば2人でこうして私用で出かけるのは義兄上の元に居た時以来だな」
「ふ、ふぇ!? そ、そうだね!」
急に話を振られ、カナエは動揺しながらも相槌を打つ。
「あの頃は共に暮らしていたから出かける機会もあったが、今は屋敷も違い、お互いに柱というのもあって中々時間が取れんようになってしまった…またあの頃のように出かけたいものだな」
純粋に穏やかな表情を浮かべてそう言う大貴。
「フフッ、本当にそうね(やっぱり悲鳴嶼君は昔から変わらない…初めて出会った時に一目惚れしてから遠回しに色々してるけど全く私の好意に気付いてないもの…でも今はそれで良いの…だって、私は何があっても貴方のことが好きだから)」
そんないつも通りの大貴に対して緊張が和らいだカナエはそう返事をすると、内心では更に彼への想いを募らせるのだった。
それから他愛のない会話をして数十分後、頼んだ甘味が運ばれ2人は和やかに談笑をしながらそれらを食す。
「うむ、やはりカナエ君のおすすめというだけはあるな。 美味だったよ」
食べ終わり、食後の茶を啜ると大貴はカナエに満足げにそう伝える。
「それは良かったわ♪ しのぶを救ってくれた悲鳴嶼君へのお礼だったから喜んでもらえて何より♪」
大貴の言葉にカナエも満足気だ。
「日が暮れるといけないし、そろそろ出るとしようか?」
「ええ。 行きましょ」
食べ終わると2人は座敷を出て、女将さんの元へと向かう。
そこでお代がいらないと言われると2人は頭を下げ、今度また来ることを約束して店を出た。
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蝶屋敷前
「カナエ君、今日はありがとう。 甘味は美味だったし、久しぶりに君とゆっくり話せて有意義な1日だったよ」
「私こそ悲鳴嶼君と色々話せて楽しかったわ! 今度また行きましょう♪」
「そうだな。 今度は2人だけではなく、皆も連れていこう。 人数が多い方が食事は楽しいだろう?」
「むぅ〜……」
大貴の発言に頬を膨らませるカナエ。
「むっ? どうしたのかねカナエ君?」
「…ううん、何でもない!(悲鳴嶼君は本当に女心がわかってない…でも…それでも私は彼のことが好き…惚れた弱みってこういうことを言うのかしら?)」
一時的に機嫌が悪くなったカナエだが、直ぐに普段通りに戻る。
「そうかね? だったら良いのだが…ああ、そういえばコレをしのぶ君に返しておいてくれるかね?」
女将さんにご馳走してもらったので、しのぶから受け取ったお金を使うことがなかった為、大貴は懐からそれを取り出しカナエに渡す。
「わかったわ」
「恐らくしのぶ君のことだ、お礼が出来ていないと言うだろうから、また次の機会に頼むと伝えてもらえると助かるよ」
「うん、伝えておくわね」
「それではまたな」
大貴はそう言うと蝶屋敷を後にする。
余談だが、蝶屋敷の面々曰くこの日のカナエは超が付く程に機嫌が良くいつも以上に笑顔であったらしい。
こうして大貴とカナエの甘味処での逢引…ランデブーのようなひとときは終わりを告げ、それから数ヶ月の時が流れ、再び舞台は鬼との戦場へと場所を移す……
グダグダになってしまって申し訳ないです。
なかなか恋愛系は書きにくくて流れ的にオリジナルで甘味処の女将さんを登場させましたが、名前すら決まらなかったという体たらく…
正直今後出るかわかりません…汗
こんな感じですが、温かい目で見てもらえると幸いです。
さて、物語はこれから数ヶ月先に進みます。
16歳組が17歳になります。
とある鬼との戦いが起こります。
ヒントは17歳という部分ですね。
上手く書けるかわかりませんが頑張ります。
それでは次回お楽しみに
後のちハガレンのホムンクルスの能力を血鬼術として使う鬼を出そうと思うのですが、誰が良いでしょうか? 勿論、出さないという意見もオッケーなのでよろしくお願いします。
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ラスト
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グラトニー
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エンヴィー
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グリード
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スロウス
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プライド
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出さない