1人の少年がやって来ます。
あれから更にひと月が経過し、大貴とカナエは正式に婚約した。
そのこともありカナエはそのまま大貴の屋敷で暮らすこととなり、カナヲも最終選別を終えるまでは暮らすことに決まった。
そんな中1人の訪問者が現れ、大貴の前で土下座をしていた…
1913年・1月
悲鳴嶼大貴屋敷(剣屋敷)・客間
「お願いします! 剣柱様! 俺を弟子にして下さい!」
「とりあえず頭を上げ給え玄弥君。 どうした、君は義兄上に教えを受けていたのではなかったのか?」
そう、大貴に土下座し、弟子入りを志願していたのは行冥の元で教えを受けていた少年…不死川玄弥だった。
「はい! 行冥さんからは今まで過酷でしたが有意義な修行を受けさせてもらっていました。 その行冥さんから言われたんです…「お前は私の元で修行を受けるよりは義弟…悲鳴嶼大貴の元で修行を受けるべきだ」と」
「義兄上…そういうことなら連絡してくれれば良かったものを…大方事前に連絡をすると私が断ると思ってのことだろうが…」
行冥の意図を理解し、苦笑する大貴。
「お願いします! 俺は強くならなければいけないんです! 強くなって…もう一度ある男に会わなければならないんです!」
「ある男?」
少年…玄弥の一言に大貴は疑問を持つ。
そこへ
「失礼するわね」
カナエとカナヲが茶と茶菓子を持ってやって来た。
「済まないカナエ君にカナヲ君」
大貴は2人に対し礼を言う。
玄弥も少し遅れ、2人に頭を下げる。
「良いのよ、気にしないで♪」
それに対しカナエはニッコリと微笑み、カナヲもぎこちないながらも小さく笑みを浮かべると互いに茶と茶菓子を置く。
「それで玄弥君、ある男とは誰なのかね?」
茶を一口啜ると大貴は玄弥に問いかけた。
「はい。 ある男というのは俺の兄貴…不死川実弥のことです」
「不死川君が君の兄だと? おかしいな、彼は以前自分に兄弟は居ないと言っていた筈だが…」
以前実弥自身から聞いていた話と玄弥の言葉が食い違っていることに大貴は不思議に思う。
「大貴君、何か色々事情があるのかもしれないわ」
「ふむ、そうだな…家族の問題に口を出すのも野暮だ、あまり深くは聞かんよ…それで弟子の件だが、義兄上の口添えもあることだし君を弟子に取るのは構わない」
「! ありがとうございます!「ただし、君は一つ問題があるだろう?」 !?」
弟子入りの了承を貰い、礼を言う玄弥だったが大貴の次の一言で目を見開いた。
「呼吸が使えない…これは鬼殺隊の隊士にとって致命的だ…我々人間が膂力で勝る鬼と渡り合う為には呼吸で自身を強化しなければ勝ち目が無いからな…まあ、凡百な有象無象の鬼ならば話は別だがね…兎に角、君は呼吸を使えない身で鬼と渡り合うという圧倒的不利な立場で戦わねばならない…その意味が分かるかね?」
「はい…それは以前行冥さんからも言われました…で、ですが俺は!」
大貴に最大の欠点を指摘されるも玄弥は強い目で彼を見る。
「ふむ、自身が他と比べて不利な立場だということを伝えても大した動揺は見せず、強くなろうとする意思は変わらんか…意思の弱い者は今のようなことを言われた時には言葉を口にすることが出来なくなるからな…玄弥君、一つ聞くが君は強くなる為ならば手段は選ばんかね?」
「…それはどういうことですか?」
手段を選ばないという言葉に玄弥は不審な表情をする。
「! ああ、言い方が悪かったな。 別に非道な真似をしろと言っているわけではない。 ようは様々な武器を使いこなし、体術を極限まで極めるなどということだよ」
「そういうことでしたか! はい、俺は強くなる為には何でもやりますよ!」
「分かった、ならば君を今日より私の弟子に迎えよう玄弥君…いや、弟子に君を付けるのはおかしいな…玄弥、私の修行は義兄上の物と同様に過酷だがついて来られるか?」
「勿論です!」
「よろしい、ではこれからよろしく頼むよ」
「こちらこそよろしくお願いします!」
大貴は玄弥を弟子…継子として認めると手を差し出し、玄弥はそれを握り返して答えた。
「フフッ、これで大貴君も継子が出来たわね♪ ということは玄弥君も今日から此処に住むのよね?」
「そうなるな」
「申し訳ありません花柱様」
「そんなに畏まらないで気軽にカナエって呼んでくれて良いわよ? 謝らなくて大丈夫よ玄弥君、住む人数が増えて賑やかになるのは楽しいし、好きだもの♪ それに」
「それに?」
「貴方はカナヲと歳が近そうだし、この子と友達になってくれると嬉しいわ♪」
「「!?」」
ニコニコと嬉しそうに笑うカナエとは対照的に玄弥とカナヲは驚きの表情を見せる。
「確かにカナヲ君は同年代の友達が居なかったな…いや、炭治郎君や禰豆子君が居たか…だが彼らは近くに居ない。 玄弥よ、交友を増やすことはお前にも良い影響を与えるだろう」
「別にこいつと友達になるのは構いませんけど…女の子か…」
玄弥は同年代の女性とあまり関わったことが無いのか若干顔を赤くする。
「…カナエ姉さん、大貴さん、私はこの人と友達になれば良いの?…」
「う〜ん…カナヲ、なれば良いって言い方はあまり良くないわ」
「…どうして?…」
「友達というのはなれば良いという訳ではないからだよ。 それに、その言い方では命令されたから友達になるという感じでお互いがあまり良い気はしないだろう?」
「…そう…ですね…言われてみるとあまり気分が良くないです」
カナエと大貴の言葉にカナヲはそう答える。
以前は一々銅貨を投げてから話していたカナヲだったが、そうせずに自身で考えながら思ったことを口にするようになった辺り彼女も徐々に成長しているようだった。
そして、カナヲはおずおずと玄弥の元に近づくと手を差し出す。
「…私…あまり友達が居ないから…何と言って良いか分からないの…でも、こんな私で良かったら友達になってくれる?」
「! あ…ああ、勿論だ! 正直俺もあまり友達が居なくてな…お前がそう言ってくれるのなら喜んで友達にならせてくれ」
玄弥は差し出された手を握り返して了承の意を示す。
今、この時2人は友人となった。
「フフッ! カナヲの友達がまた1人増えて姉さん嬉しいわ〜♪」
カナヲが玄弥と無事友人となったことにカナエは更に機嫌が良くなる。
「さてカナヲ君と友達になったことだ。 玄弥よ、修行は明日から始めよう、今日はカナヲ君と遊ぶと良い。 修行には息抜きも必要だ」
「玄弥君、カナヲはあまり話すのが得意じゃないから迷惑を掛けてしまうと思うけど、この子をよろしくお願いするわね」
「はい、分かりました! カナヲ、行こう!」
「…うん…行ってきます」
玄弥とカナヲはそのまま遊びに出掛けていった。
「騒がしくなるな」
「良いじゃない? 賑やかな方が楽しいわよ?」
「それもそうだな。 さて、今日も手合わせをしようか?」
「ええ。 今日は負けないわよ♪」
「それはこちらの台詞だよ」
大貴とカナエは少しの間互いに睨み合うと直後、小さく笑みを浮かべ道場へと向かい歩いていくのだった。
ー
ー
ー
とある森の中
「はっ、はっ、はっ…」
暗い森の中、1人の少女が血相を変えて何かから逃れるように走り続けていた。
「な、何よアイツ…何で私を襲ってくるの!? キャ!?」
必死に逃げる少女だったが、足元の木の根に躓き転んでしまう。
「ぐっ…くっ…は、早く逃げないと…」
直ぐさま立ち上がる少女…否…十二鬼月下弦の肆、零余子は再度逃げようと動き出そうとするが…
「やっと追いついたぜ…逃げ足が早ぇーなお前」
零余子を追っていた男は不敵な表情を見せその場に現れた。
「くっ!…痴れ者の硬欲! 何でアンタが私を襲う!?」
「さぁな? 俺としちゃお前何かどうでも良いんだがよ、俺の協力者がどうしても十二鬼月の血が欲しいみたいでな…大人しく着いて来てもらうぜ?」
「だ、誰がお前なんかに着いていくものか!」
零余子は目付きを鋭くすると臨戦態勢に入る。
「仕方ねえな…女相手にあまり手荒な真似はしたくねえんだが…」
硬欲はやれやれと言った感じに頭を掻くと次の瞬間両腕の手首までを漆黒に染め上げる。
「あくまで来る気がねえってんなら仕方ねえ…無理矢理にでも着いて来てもらうぜ?」
「!!?」
凄まじい速度で迫る硬欲の凶手を前に零余子は大した抵抗も出来ずに打ちのめされ、連れ去られるのだった…
ー
ー
ー
「!? 下弦の肆と視覚共有が出来なくなった…あの痴れ者め…十二鬼月を襲い出すとは何を考えている…」
その一部始終を零余子を通して見ていたとある男は忌々しげに拳を握りしめる。
その手からは男の鋭い爪によって血が流れ落ち、床を赤く染め上げていた…
というかわけで無理矢理ですが、玄弥が大貴の継子となりました。
呼吸が使えないので剣の呼吸を使うことが出来ない彼ですが、何も呼吸が使えないからといって継子になれないわけではないので玄弥は大貴の継子になった次第です。
こうして皆と接点を持たせておかないと強くなることに執着し、焦る玄弥は最終選別の時に原作同様やらかして炭治郎に腕を折られてしまいますから…
最後に久しぶりに登場した硬欲に拉致された零余子ちゃんはどうなってしまったのか…
そして、ほんとの最後に現れた男はどんだけ頭が無惨な人なのか?
無茶苦茶になっているような気がしますが、どうかよろしくお願いします。