大貴対童磨です。
「さあ、君の知らない血鬼術を見せてあげよう」
「勿体ぶらずにさっさと出し給え…貴様の最後の技になるやもしれんのだからな」
「言ってくれるね、なら遠慮なく…血鬼術・蓮葉氷(はすはごおり)」
挑発する大貴に対し、童磨は不敵にそう言うと扇子を振るう。
すると、蓮の花の形をした氷が扇子から発生した。
その氷の冷気は白く激しい煙を上げており、非常に強力なものであると即座に感じ取れるものであった。
「どうだいこの蓮葉氷は? 見て分かると思うが、それはかなり低温の氷だ。 少し触れるだけで君は瞬時に凍りつく…当たれば一貫の終わりだよ」
「わざわざ自らの血鬼術の説明をしてくれるとはな…ならば当たらなければ良いだけの話ではないか?」
大貴は迫る蓮葉氷を初見で見切り、余裕を持ってかわす。
「そして… 剣の呼吸・玖ノ型、烈波(れっぱ)」
大貴は刀に闘気を纏わせ横に一閃する。
直後、纏わせた闘気が刀を通して放たれ、それは飛ぶ斬撃と化して童磨に襲い掛かった。
「!?」
童磨は驚愕の表情を見せながらも身を屈め、斬撃を回避する。
「貴様が先程から例の肺を凍らせる血鬼術を密かに散布しているのは気付いているぞ?」
「…気付かないフリをして俺を油断させ、今の飛ぶ斬撃で粉凍りを瞬時に吹き飛ばし、そのまま斬撃で俺を討ち取ろうとしたってわけかい?…君、性格悪いね?」
「性格が悪いなどと貴様にだけは言われたくは無いな…さて、今のはかわされたが2連撃ならばどうだ? 剣の呼吸・玖ノ型・其の弐…双連烈波(そうれんれっぱ)!」
大貴は童磨の発言に反論すると2本の刀に闘気を纏わせ、先程の飛ぶ斬撃を連続で放つ。
「さっきのを2連続で放てるのか? ならば…血鬼術・氷河壁(ひょうがへき)」
それに対し童磨は自身の前に分厚い氷の壁を出現させることで凌ぐ。
「生憎と俺の血鬼術は攻撃するものだけでは無いぜ?」
「だろうな…それ程の氷の壁を遠距離からの闘気のみで破壊するのは厳しい…あわよくば遠距離攻撃で仕留める心算だったがやはり…」
大貴は目を細めると、遂に左眼の眼帯を外す。
「接近して貴様の頸を落とすのが最善だな」
そう言うと大貴は閉じていた左眼を開き、最強の眼を解放する。
「その左眼…相変わらず綺麗な赤い眼だ。 俺は男はどうでも良いけど、君のその眼には興味がある…君を殺してからその眼を抉りとって、俺の部屋に飾るのも悪くないな」
「私を殺すか…やれるものならやってみ給え…」
童磨の異常者とも言える発言に大貴は不快感を露わにし、刀を鞘に納め、足に力を込めて更なる技を使用する。
「剣の呼吸・漆ノ型…」
大貴は雄叫びをあげながら凄まじい速度で童磨に接近する。
「(早い!?) 血鬼術・蔓蓮華(つるれんげ)」
自身に超速で接近する大貴に向け童磨は蔓の形をした氷を複数作り出し、彼へと伸ばすが、その速度を前に悉くかわされてしまう。
「瞬抜(しゅんばつ)」
大貴は勢いそのままに童磨に最接近すると、刀を抜刀し、居合い斬りを童磨の頸へと繰り出す。
しかし、頸に放たれた一撃は3年前同様童磨の頸を瞬時に覆った分厚い氷によって防がれてしまう。
「残念だったね? 俺が氷で頸を覆っている限り、君は俺の頸を落とすことは出来ないぜ?」
「…舐めるなよ?…むぅん!!」
大貴は童磨を一睨みすると刀に闘気を纏わせ、力を込める。
すると、徐々に刀が頸を覆う氷に食い込み始める。
「!? 血鬼術・枯園垂り(かれそのしづり)」
このままでは頸を落とされると悟った童磨は血鬼術を発動、大貴に対抗するように両手の扇子に冷気を纏わせ、それで彼を至近距離から直接攻撃する。
「ちっ!」
流石に片腕でそれを捌き切るのは厳しいと判断した大貴は、舌打ちすると半ば程まで食い込ませていた氷から刀を抜き、2刀を用いて童磨の直接攻撃を防ぐと後方に下がり距離を取った。
「危ない危ない。 あのまま氷を斬られ続けていたら本当に頸を落とされていた…以前は俺の頸を覆った氷を斬りつけただけで刀が折れていたというのに…君、本当に人間か? 3年の月日が流れているとはいえ、いくら何でも強くなりすぎだろ?」
「それだけ私が貴様を殺したいということだ…貴様を殺そうと考えると不思議と普段よりも力が出るのだよ」
「そんなことで普段よりも力が出るなんて、やっぱり人間辞めてるよ君は…これは本気にならないと不味いな…血鬼術・結晶ノ御子(けっしょうのみこ)」
明らかに3年前よりも強くなっている大貴に対し、流石に焦ったのか童磨は更なる血鬼術を発現。
童磨自身よりも一回り小さい瓜二つな見た目の氷人形を2体作り出す。
「…(あの人形…只ならぬ気配を感じる)」
それを油断無く見据える大貴。
「これを使わされることになるとは正直思わなかったよ…血鬼術・冬ざれ氷柱」
童磨が氷柱を発生させると、彼が先程出現させた氷の人形達も同様に氷柱を発生させる。
「!?」
「見ての通りこの子達も俺と同じ血鬼術を使うことが出来る。 ようは俺の分身のようなものさ…さて、これで3対1だ、君に勝ち目があると思うかい?」
童磨が言い終わるが否や大量の氷柱が大貴に向け放たれる。
「…何度も言わせるなよ…舐めるな!」
一時的に目を閉じ、感情を消していた大貴だったが、不意に目を開けると額に青筋を浮かべ怒りのままに激昂する。
「剣の呼吸、玖ノ型・其の弐・双連烈波!」
そして2刀に再度闘気を纏わせると連続で振り、飛ぶ斬撃を2連続で繰り出し、襲い掛かる大量の氷柱を迎撃する。
その斬撃の威力により氷柱は悉く打ち砕かれ、破壊出来ずに撃ち漏らしたものも2刀で斬られるか、最小限の動きでかわされてしまう。
「成る程、冬ざれ氷柱ではダメか…ならば…」
冬ざれ氷柱では仕留められないと判断すると、童磨は氷の人形に自律行動を命じ、大貴を三角形状に包囲する。
「血鬼術・蓮葉氷」
その状態で蓮の花を模した強力な冷気の塊を3方向から放つ。
「……」
迫る氷の蓮の花に対し大貴は動揺することなく静かに刀に闘気を纏わせると、不意に刀を持つ両手を水平にして身体を回転させる。
「剣の呼吸・肆ノ型・円陣真空斬」
その直後、刀を通じて辺りに円形の剣圧が円状に撒き散らされ、氷の蓮の花はその衝撃波によって打ち砕かれる。
「!?」
それだけでは終わらず、刀に纏わせた闘気の影響によって円状の剣圧による衝撃波は勢いが衰えることなく童磨へと襲い掛かる。
童磨本体は咄嗟に飛び退き回避したものの、氷の人形2体は逃げるのが遅れ、衝撃波に呑み込まれてしまい消滅した。
「参ったなー あの子達があっさりと消されてしまうとは…」
「しぶといな…貴様もあれで細切れになれば再生している隙に仕留められたものを…だが、もうあの人形は消えた…貴様がまたあれを作ろうと隙を見せた瞬間その頸を落とせるぞ?」
「… 結晶ノ御子が他の血鬼術よりも出すのに少し時間が掛かるのを見抜いたのか…本当に君は人間辞めてるよね?」
「…ふむ、遺言はそれで終わりかね? ならば死n !?」
童磨に斬りかかる為に接近しようとした大貴だったが、突如飛来した三日月状の無数の斬撃によって後退を余儀なくされてしまう。
「…童磨よ…柱1人に追い詰められるとは情けなし…上弦の弐の名が泣く…」
先程大貴に攻撃を仕掛けた下手人…いや、下手鬼が静かに姿を現し、童磨の横に並ぶ。
その姿は紫と黒を基調とした着物を纏い、右手に刀を持った黒髪で長髪の人型の鬼だったが、その顔面は6つの眼があるという面妖な姿だった…
しかもその中段にある両眼には…
「……(上弦の壱!?…)」
左眼に上弦、右眼に壱という、十二鬼月最強である証が刻まれていた…
その事実に大貴は内心で驚愕する。
「おやおや、誰かと思えば黒死牟殿か。 別に追い詰められていたわけではないさ。 まだまだこれからが本番だったのだけれど?…黒死牟殿は何故此処に?」
「…私がこの地に足を踏み入れ、そこにお前が居たのは偶然だ…先程、私に対して無様にも命乞いをしてきた男を鬼にしてきたところ…戦いの気配を感じ、この場にやって来た次第…」
「成る程成る程…では、これからの戦いは黒死牟殿と共闘するということか?」
「…否…夜明けが近い…此処は私が代わる…お前は私が鬼にした男をあの方の元へ連れてゆけ…」
「ええー、女の子なら大歓迎だけど、男を連れて行くのか? 気が乗らないよ…まあ、仕方ないか…それで、その男は何処にいるんだい?」
「…私が今しがたやって来た場所を辿ればそこに倒れているだろう…」
「分かった……あっ! 柱の君、名前なんて言ったっけ?」
その場を黒死牟に任せると、童磨は去り際に大貴に問いかける。
「…貴様に名乗る気は無い…剣柱とだけ覚えておき給え」
「名前くらい教えてくれたって良いだろうに…まあ良いや。 それじゃ剣柱君、生きていたらまた会おうぜ?」
ニヤニヤ笑いながら童磨はその場を後にした。
「…剣柱と言ったな?…人の身でありながら単身で童磨と打ち合えるとは見事なり…出来ればお前との戦いに興じたいが、生憎と夜明けが近い…惜しいが直ぐに終わらせてもらおう… 月の呼吸…陸ノ型・常世孤月・無間(とこよこげつ・むけん)」
新たに現れた上弦の壱、黒死牟は刀を振るう。
すると、一瞬で前方を中心に無数の三日月を模した斬撃が発生し、大貴を襲う。
広範囲に三日月状の斬撃を飛ばしながら、正面にも3つ並んだ縦の斬撃を繰り出していることから、この技は攻防一体のものであることが伺えた。
「!?(攻撃範囲が広い…)剣の呼吸、拾壱ノ型・千呀衝撃(せんがしょうげき)」
飛来する多数の三日月状の斬撃に大貴は2刀に闘気を纏わせると、前方に連続で突きを繰り出す。
すると、刃先を模した千を超える程の細かな斬撃が黒死牟の放った三日月状の斬撃に向かっていき、斬撃同士が衝突する。
「!!…人の身で飛ぶ斬撃を放つとは…」
鬼でも無い人間が飛ぶ斬撃を放つ光景に流石の黒死牟も目を見開く。
互いの技は拮抗し、暫くの間ぶつかり合うが最終的にはどちらも霧散した。
「… 常世孤月・無間を消し去る程の闘気による斬撃…誠に見事なり…正直感服した…剣柱よ…私は上弦の壱…名を黒死牟という…お前の名を教えてはくれまいか?…」
「…鬼でありながら武人…それも剣士の気質がある、か…名乗られたのなら応えねばな…私は鬼殺隊剣柱の悲鳴嶼大貴だ」
「…悲鳴嶼大貴か…覚えておこう…さて…続きといこうk !?」
名乗りを終え、再び技を放とうと黒死牟が構えた時、炎を模した斬撃と鞭のような形状をした刀が彼に奇襲を仕掛ける。
「月の呼吸…伍ノ型・月魄災禍(げっぱくさいか)」
それらに気付くと黒死牟は予備動作も無く、前後左右に三日月状の斬撃を振り撒き、広範囲を瞬時に攻撃することで防ぐ。
「…煉獄君に甘露寺君…君達が増援に来てくれたか」
童磨との戦いに向かう際、もしもに備えて鴉の殺丸に増援を頼んでいたらしく、大貴は現れた2人…炎柱の煉獄杏寿郎とその継子、甘露寺蜜璃を見ると安心したように笑みを浮かべる。
「大貴! 貴方が増援を呼び掛ける程の鬼! 成る程! 上弦…それも壱ならば納得だ!」
「でも剣柱様、この子(殺丸)の話だと戦っている鬼は上弦の弐だった筈じゃなかったんですか?」
「上弦の弐とは先程まで戦っていたのだがね? 入れ替わるように上弦の壱が現れたのだ…済まない、上弦の弐には逃げられてしまった…」
「気にすることはない! とにかく今は上弦の壱に集中しよう! 気配から察するに相当に手強いようだからな! 甘露寺、行けるか?」
「はい! 勿論です煉獄師範!」
炎柱の師弟が構えるのを一瞥すると大貴も同様に構え、黒死牟の出方を伺う。
「…増援か…羽織を見るに1人は柱…もう1人は柱では無いが、先程の斬撃を見るに中々の実力…相手にとって不足なし…」
炎柱師弟の実力を一目で理解すると、黒死牟も油断無く構え、辺りは嵐の前の静けさとも言える静寂に包まれる。
夜明け前の激戦が静かに幕を開けた。
童磨戦と言っておきながら黒死牟乱入の回でした。
しかも童磨さんにはまんまと逃げられてしまいましたし…
そして、童磨戦前に抜かりなくしっかりと増援を呼んでいた大貴。
現れたのは煉獄さんと甘露寺さんの師弟コンビでした。
近くで下弦の鬼が現れ、それを煉獄さんが見守る中、甘露寺さんが討ち取った後、増援の連絡が来たという感じです。
ちなみに甘露寺さんの実力はほぼ原作の恋柱時と同等になっております。
この3人で黒死牟と渡り合えるのか?
次回もよろしくお願いします。