鬼滅の刃〜最強の眼を持つ剣士〜   作:死徒

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対黒死牟です。

最近私生活が忙し過ぎて更新が遅くなって申し訳ありません…


黒死牟

 

任務帰りにも関わらず、カナエは全速力でとある場所へと向かっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

全集中・常中を長時間維持し続け、更に限界以上の速度を走り始めてから今までずっと出し続けている為、額に汗を浮かべ、息を切らせるカナエ。

 

しかし、切羽詰まった表情で足を止めずにある場所を目指し走り続ける。

 

「(お願い! 間に合って! 大貴君なら大丈夫だって信じてる!…信じてるけど…胸騒ぎが止まらない…私が間に合わないと…大貴君が…死んでしまう…そんな気がしてならないの…だから…)お願い!」

 

そう、カナエも殺丸からの増援依頼を聞き、大貴の元へと向かっていたのだ。

 

カナエは嫌な予感が拭えず、祈りながら現地を目指した。

 

 

 

「剣の呼吸、玖ノ型・烈波!」

 

「炎の呼吸、伍ノ型・炎虎(えんこ)!」

 

「恋の呼吸、参ノ型 恋猫しぐれ(こいねこしぐれ)!」

 

大貴、杏寿郎、蜜璃の技が黒死牟を襲う。

 

「…月の呼吸、参ノ型・厭忌月・銷り(えんきづき・つがり)…」

 

三者の攻撃に対し黒死牟は全く動じず、冷静に自身も刀を連続で振り、近距離へ三日月状の斬撃を放ち攻撃を防ぎきる。

 

「…鬼殺隊…この程度ではあるまい…特に悲鳴嶼大貴…お前は先程まで童磨と単身で互角以上の勝負をしていたのだ…その力を初めから全て出せ…私相手に出し惜しみをしていれば…直ぐに死ぬことになるぞ?…」

 

「…上弦の壱、君の方こそ本気を出さずに様子見とは随分と悠長なことだ。 それでは直ぐに夜が明けてしまうぞ?」

 

黒死牟と大貴は互いに油断なく睨み合う。

 

しかし、大貴は内心焦りを覚えていた。

 

「(不味いな…この眼を使用してからだいぶ時間が経っている…今は問題ないが、急に副作用が出る恐れがある…夜明けまで持てば良いのだが…)」

 

大貴が童磨との戦いで最強の眼を解放してから既に1時間以上が経過しており、いくら3年前よりも最強の眼解放の保持時間が延びているとはいえ、いつあの時のように副作用で倒れるかと彼は不安が募っていた。

 

「大貴! 貴方は上弦の弐と長時間戦闘をしていたのだろう? まだ戦えるのか!?」

 

「厳しいようでしたら煉獄師範と私で戦いますよ!?」

 

大貴の普段とは違う雰囲気を感じ取ったのか、杏寿郎と蜜璃は彼を気にかける。

 

「私なら心配せずとも大丈夫だ。 折角3対1の数的有利な状況をしているのにそれを崩すわけにはいかんよ。 それに相手は上弦の壱…その有利が一気に崩される可能性は否めん…君達もあの鬼の実力を肌で感じ取っているだろう?…鬼の身で剣士が使う呼吸を使用していることもそうだが、その”闘気がまるで感じ取れん”ということも」

 

「「……」」

 

大貴の言葉に2人は静かに頷く。

 

3人は黒死牟が強いということを感覚で感じ取ってはいるものの、不思議なことに強者が放つ特有の闘気を感じることが全く出来ずにいたのだ。

 

それは…まるで植物を相手にしているようであった…

 

「不気味だ…明らかに奴は強い筈なのに闘気が全く感じ取れないとは…」

 

黒死牟の異質さを前に大貴は珍しく額に冷や汗を浮かべる。

 

「確かに闘気をまるで感じないのは甚だ不可解だ! 上弦の壱、これが君の血鬼術か!?」

 

杏寿郎は声高らかに黒死牟に問う。

 

「…否…これは”透き通る世界”と呼ばれるもの…呼吸を極限まで極めればお前達人間でも到達可能な至高の領域だ…自分自身の身体の形を血管1つ1つまで認識し、無駄な動きや感覚全てを削ぎ落としていく…そうする内次第に自身の筋肉や血管までも自在に操れるようになる…最小限の動作で最大限の力を引き出すことが可能となる…頭の中も不要な思考が削がれ、だんだん透明となり、更には相手の身体すらも透けて見えるようになる…私の闘気をお前達が感じられないのはこの透き通る世界を発動しているからだ…」

 

「よもや鬼に呼吸について教わる日が来ようとは! 成る程! 有意義な話を聞かせてもらった! 感謝する!」

 

「ご、ご丁寧にありがとうございます」

 

敵でありながら饒舌に闘気を感じられない原因である…透き通る世界の説明をする黒死牟に炎柱の師弟は思わず礼を言ってしまう。

 

「…それをわざわざ話したということは私達を生かして帰すつもりはないのだろう?」

 

「…無論…冥土の土産だ…」

 

だが話したからには生かして帰すつもりは無いらしく、大貴の問いに黒死牟は肯定すると刀を構え…

 

「…月の呼吸、漆ノ型・厄鏡・月映え(やっきょう・つきばえ)…」

 

「「「!?」」」

 

振り下ろすと、5方向への直接的な斬撃が発生して3人に襲い掛かる。

 

地を這いながら迫る飛ぶ斬撃に対し、迎撃は難しいと判断した3人は瞬時に飛び退き、回避を選択する。

 

「…まずは1人…」

 

「むっ!?」

 

3人が迎撃せずに回避を選ぶのを予期していた黒死牟は1番近くに居た杏寿郎に超速で接近し、斬りかかる。

 

それに対して受け止めようとした杏寿郎だったが…

 

「…っ!?」

 

嫌な予感を感じたのか目を見開くと、直ぐさま恐ろしい程の反射神経で咄嗟に身を引く。

 

すると

 

「…咄嗟の判断で受けるのを止め、回避に徹したか…賢明な判断だ…」

 

「なっ!?」

 

完全にかわしたと思っていた杏寿郎は驚愕する。

 

「…そうでなければ…お前は私に胸元から真っ二つに両断されていたぞ?…」

 

何故ならば、その胸には刀による切り傷が浅くだが確かに刻まれていたからだ。

 

それは即ち…杏寿郎の動きをもってしても黒死牟の攻撃は防ぎきることが出来ないということを意味していた…

 

「煉獄君!」

 

「れ、煉獄師範!」

 

大貴と蜜璃は体勢を立て直すと、劣勢の杏寿郎の元に援護に向かう。

 

「(は、早い! それに攻撃範囲が俺の予想以上に広い!…これが上弦の壱…) 炎の呼吸、弐ノ型・昇り炎天(のぼりえんてん)!」

 

気配を感じさせずに一瞬にして自身に迫り、予想を超える範囲の斬撃を繰り出した黒死牟に内心動揺しながらも、杏寿郎はそれを全く見せずに刀を下から上に向けて円を描くように振るう。

 

「!…ほう…」

 

傷を負うも動じずに刀を振るう杏寿郎に対し、黒死牟は関心したように声を漏らすと猛炎の刃を紙一重でかわし、後方に退がる。

 

「剣の呼吸、捌ノ型・千剣連呀!」

 

「恋の呼吸、弐ノ型 懊悩巡る恋(おうのうめぐるこい)!」

 

後方に退がった黒死牟に向け、大貴は2刀による猛烈な刺突の連撃を、蜜璃はその特徴的な鞭のような刀の刃を流れるようにしならせ、高速の連撃を放つ。

 

「…中々の連携だが…お前達の動きは手を取るように分かる…」

 

しかし、黒死牟は大貴と蜜璃の連撃を先読みしているのか、これ程熾烈な技の応酬にも一切表情を変えることなく僅かな合間をすり抜け、その全てをかわす。

 

「…月の呼吸、弐ノ型・珠華ノ弄月(しゅかのろうげつ)…」

 

かわしている間に大貴と蜜璃の攻撃中の僅かな隙を見抜いた黒死牟はその一瞬の隙をつき、刀を下から切り上げるようにして三連続で三日月の斬撃を放つ。

 

「「!?」」

 

その斬撃は攻撃後に硬直する2人を取り囲むように襲い掛かる。

 

2人は硬直を無理矢理解くと反射的に刀を振り、直ぐ様迎撃するが至近距離からの連撃だったこともあり、全てを捌ききることが出来ずに複数の手傷を負ってしまう…

 

「うっ!? (傷を負っても動揺しちゃ駄目! 隙を見せたら直ぐにやられちゃう!)」

 

「ぐっ!? (やはりこの眼を長時間使った反動か…身体の動きが鈍くなってきている…)」

 

傷を負ったことで蜜璃は動揺したら不味いと自身を鼓舞し、大貴は最強の眼の長時間使用による身体の不具合を悟る。

 

「…!…」

 

大貴と蜜璃に追撃を仕掛けようとする黒死牟だったが、不意に立ち止まると今まで動きを見せずにいた杏寿郎の方へと視線を向ける。

 

「炎の呼吸、玖ノ型・奥義・煉獄(れんごく)!」

 

その直後、杏寿郎は炎の呼吸最強の技を発動させ、凄まじい勢いで黒死牟に斬りかかる。

 

対して黒死牟はゆっくりと刀を鞘へと納めると…

 

「… 月の呼吸、壱ノ型・闇月・宵の宮(やみづき・よいのみや)…」

 

超速で抜刀し、横薙ぎにする。

 

すると大量の三日月状の斬撃が迸り、杏寿郎の振り下ろした奥義・煉獄と轟音を轟かせながらぶつかり合う。

 

互いの技は対象を抉り、切り裂こうと拮抗する。

 

「うおぉー!!」

 

「…成る程…奥義というだけのことはある…それにその気迫…猗窩座であればお前を鬼にしようと声を掛けていただろう…だが生憎と私は奴ではない…死んでもらう…」

 

雄叫びを上げ、勢いそのままに自身を斬ろうと力を更に込める杏寿郎に黒死牟は感心したように声を掛けると、自分の持つ刀の形状を三本の枝分かれした刃を持つ大太刀へと変形させる。

 

「…余興はこれにて終い…逝け…」

 

「!?」

 

その大太刀の異質さを感じ取ったのか杏寿郎は目を見開く。

 

しかし、逃げようにも未だ三日月の斬撃と打ち合っている為に退避することすら出来ない…

 

「煉獄師範! 今行きまs うっ!?…」

 

師である杏寿郎の危機に蜜璃は刀を振りかぶり、直ぐ様駆けつけようとするが、先程受けた傷が響いているのか声を上げると片膝をつき、蹲ってしまう。

 

「甘露寺君!」

 

「け、剣柱様、わ、私は大丈夫ですから煉獄師範に加勢をお願いします!」

 

「ああ、分かった!」

 

そんな蜜璃を大貴は介抱しようとするが、当の本人の切羽詰まった表情を前に一つ頷くと、杏寿郎の元へと走り出す。

 

「剣の呼吸、玖ノ型・其の弐・双連烈波!」

 

大貴は走ったまま刀を振るい、飛ぶ斬撃を2連続で黒死牟へと放つ。

 

「…微温い…」

 

黒死牟は落胆したように声を漏らすと、飛ぶ斬撃を大太刀を振るうことで最も簡単に消し去ってしまった。

 

「!?」

 

これには流石の大貴も驚愕し、最強の眼の副作用も相まって動きを止めてしまう。

 

「…悲鳴嶼大貴…先程から動きが緩慢だ…童磨との戦いで力を使い果たしたか?…殺す順序が変わるが…まあ良い…お前から逝け…」

 

黒死牟がその致命的ともいえる隙を見逃す筈は無く、大貴を両断しようと大太刀を振りかぶる。

 

それに気付き避けようとするものの、身体が全く言うことを聞かず、棒立ち状態となってしまう。

 

「大貴!!」

 

「剣柱様!!」

 

杏寿郎と蜜璃が悲痛の声を上げる。

 

「!?(カナエ君…どうやら私はこれまでのようだ…先に死ぬ私を許してくれ…死んでもあの世から君を見守っている…愛しているよ)」

 

自分が死ぬと理解した大貴は走馬灯を見る。

 

カナエとの出会い、共に過ごした兄弟弟子時代、鬼殺隊の隊士となってからの共同任務、柱への就任、童磨との戦いを乗り越えてから晴れて恋人同士になったこと、そして同居と婚約…

 

様々なことを思い出し、大貴は気付けば自然と涙を流していた…

 

「(涙…そうか…私はこの期に及んで死にたくないと思っているのか…カナエ君と共に生きていきたいと…未練がましいな…だが、そうだな…神という者が本当に存在するのならば…私は神に祈ろう…カナエ君とまだまだ共に生きていきたいと!)」

 

走馬灯を見て、諦めの表情を浮かべていた大貴だったが、カナエと生きていくという決意を新たにすると目に力がこもる。

 

すると…

 

【ふむ……悲鳴嶼大貴君…君はまだまだ生きたいというのかね?】

 

大貴は不意に頭に直接声が掛けられている感覚に陥る。

 

「!?(私に語り掛ける貴方が誰かは知らないが、私はカナエ君の為にもまだまだ死ねん!)」

 

【生きる糧が惚れた女の為か…成る程、面白い。 ならば君に力を渡そう……と思ったが、今回はその時ではないようだな】

 

「!?」

 

脳裏に響く声が意味深に言葉を発した直後、黒死牟から大貴に向けて大太刀が振り下ろされるが、その絶望の一撃は桜の花弁を思わせる大量の細かく細分化された桃色の闘気の斬撃によって防がれる。

 

「!?…」

 

これには黒死牟も驚きに表情を崩す。

 

【何故ならば…君の惚れた女性が君を守る為にやってきたからだよ】

 

突如大貴の目の前に見覚えのある蝶の羽織が揺らめく。

 

「か、カナエ君!?」

 

「大貴君…良かった…間に合って…」

 

大貴が無事だったことに安堵し、涙を流すカナエ。

 

しかし、涙を拭うと戦闘時に見せる強い目へと瞬時に変える。

 

「今度は私が貴方を守って見せる!」

 

「…増援…女(おなご)の身で私の一撃を防ぐとは…察するに柱か…しかし、柱が1人増えたところで意味はn !?…」

 

柱が1人増えても大差ないと口にしようとした黒死牟だったが、突如棘の付いた鉄球が彼を襲う。

 

「…南無…上弦の壱よ…義弟が世話になったようだな…礼はお前の頸を落とすことで返させてもらおう」

 

「あ、義兄上!?」

 

暗闇の中からゆっくりと姿を現したのは筋骨隆々とした盲目の男…大貴の義兄、悲鳴嶼行冥であった。

 

よく見ると行冥は額に青筋を浮かべ、激昂しているのが見てとれた。

 

どうやら義弟である大貴が害されたことに怒りを露わにしているようである。

 

行冥は大貴の声に首を向けることなく、ただ一度頷くことで答える。

 

この2人、長年義兄弟であることから、これだけでお互い会話は充分なのである。

 

「…またしても増援か…(この男の闘気…只者ではない…それに先程の鉄球から感じ取れた膂力…夜明け前に相手にするのは少々骨が折れる…)」

 

黒死牟は先程の一撃で行冥の只ならぬ闘気と膂力を感じ取り、大太刀を静かに構える。

 

「…大貴、煉獄、甘露寺…交代だ、お前達は暫く休んでいろ…カナエ、いけるか?」

 

「ええ! 勿論です!」

 

それを見ると行冥は傷を負った3人を庇うように前に立ち、カナエに問いかける。

 

すると、カナエも同じように3人の前に立ち、行冥に並び立ち、力強く刀を構える。

 

行冥もそれを見ると僅かに笑みを浮かべ、自身の得物である手斧と鎖付きの棘鉄球を構えた。

 

黒死牟との戦いはまだ続く……




久しぶりの更新となり改めて申し訳ありません…

次回はもう少し早くできるように頑張ります。

とりあえず黒死牟相手には童磨戦を経たこともあり、大貴でも勝てませんでした…

最強の眼の長時間使用による副作用の影響で身体能力が低下していたせいでもありますが…

万全の状態ならこうも簡単に追い詰められなかったと思います。

大貴の危機に何とかカナエさんは間に合い、行冥さんも参戦しました。

というわけで大貴、煉獄さん、甘露寺さんと選手交代で次回はこの2人が黒死牟と激突します。

夜明けが近いので短期決戦になると思いますが、どうなることやら…

そして、終盤に大貴の脳内に語り掛けてきたのは一体誰なのか…

次回も気長によろしくお願いします。
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