前後編にする予定が意外と長くなりそうだったので、3部構成にしました。
「ガキ共…嬲り殺して食い尽くしてやるよ!…血鬼術・”霧消(むしょう)”」
喰吞はいきなり血鬼術を発動。
すると突如、喰吞を起点として濃い霧が発生し、その身を徐々に覆い隠していく。
「どうだこの霧消は? 俺の姿が見えんだろう?」
「ちっ! 厄介な血鬼術を持ってやがる!?」
喰吞の姿が見えず焦る玄弥。
「…確かに見えない…だが、俺はお前の位置が分かるぞ!」
「…私も朧げだけど…あなたの場所わかるわ」
しかし炭治郎とカナヲは喰吞が何処に居るのか分かると言い切る。
「ほう、生意気にも出任せとはな…ならばお前ら2人から始末してやろう!」
それを虚勢ととった喰吞は炭治郎とカナヲに鬼特有のその鋭い爪で霧の中から襲い掛かる。
だが
「何…だと!?」
その凶撃は互いの日輪刀によって難なく防がれた。
これには喰吞は目を見開き驚愕する。
そう、炭治郎にはその優れた嗅覚、カナヲには超人的な視覚があり、
これにより2人はこの霧の中でも喰吞の居場所が事前に察知出来ていたのである。
更に
「見つけたぜ!」
「!!」
喰吞が姿を現した影響からか霧が一気に晴れ、玄弥にも喰吞が視認出来るようになった為、彼は攻勢に転じ、日輪刀を振り上げて喰吞を背後から襲い掛かる。
しかし喰吞は炭治郎とカナヲの斬撃を弾くと直ぐさま身を屈め、玄弥の斬撃を回避、そのまま飛び退いて3人から一定の距離をとる。
「…まさか霧消が通じないとはな…ガキ共、お前ら中々に面倒だな…」
喰吞は血鬼術の1つが通じないと知り目を細める。
その様子と雰囲気から3人に対しての慢心を消したようだ…
「…炭治郎、玄弥、行くよ?」
「うん!」
「分かった!」
動きを見せずこちらを見据える喰吞にカナヲは炭治郎と玄弥に合図を出すと、3人は喰吞に向かって走り出す。
「…花の呼吸・伍ノ型、徒の芍薬(あだのしゃくやく)」
「水の呼吸・肆ノ型、打ち潮(うちしお)!」
「オラァ!」
各々が攻撃を繰り出し喰吞との距離を詰める。
だが…
「血鬼術を破ったからといって調子に乗るなよ?…血鬼術・”闇のうねり”」
「「「!?」」」
迫る3人に喰吞は怒りから額に青筋を浮かべると更なる血鬼術を発動。
喰吞の身体が黒い靄のようなものに包まれたかと思うと、その身体から漆黒の禍々しい触手が複数出現する。
そしてそれらは次々と出現すると喰吞を守るように蠢き、3人の攻撃を全て防ぎきる。
「破られたのなら別の血鬼術を使えば良いだけの話なんだからな!」
「くっ!? なんて硬い触手なんだ!」
「コイツ…ほんと厄介だな!」
「…(血鬼術を持つ鬼を食べることでその血鬼術を手に入れることが出来るとこの鬼は言っていた…この血鬼術も多分それで手に入れたもの…炭治郎と玄弥の言う通り本当に硬くて厄介な触手…でも何故さっきの血鬼術と同時に使わなかったの?)」
強力な触手を前に炭治郎と玄弥は焦るが、カナヲは内心焦りながらもふと疑問を感じる。
先程の血鬼術と同時に使われれば今の自分達に勝ち目は無いのに、と……
「…全集中・常中」
だが、この触手での攻撃のみならば対処出来ると感じたカナヲは3人の中で現時点で彼女のみが使用可能な”全集中・常中”を使い、全ての能力の底上げを図る。
「さあ! 死ね死ね!」
「…花の呼吸・肆ノ型、紅花衣(べにはなごろも)」
余裕の表情で夥しい量の触手を繰り出す喰吞にカナヲは前方に向けて流れる様な足運びで大きな円状の軌跡を描きながら日輪刀を振るい、触手を斬りつける。
すると触手は紙を切るかのように容易く斬り刻まれ、ボトボトと血と共にその肉片を地に落とした。
「!? バカな…闇のうねりを斬るだと!?」
「…その血鬼術だけじゃ私は倒せないよ?」
「小娘が! 一度のまぐれで…良い気になるな!!」
カナヲの無意識の挑発に激怒した喰吞は炭治郎と玄弥への攻撃を緩め、その分の触手をカナヲへと放つ。
数倍の物量となった触手に対し、カナヲは冷静に
「…花の呼吸・参ノ型、煌蘭閃(こうらんせん)」
日輪刀を横に一閃する。
するとそこから蘭の花を彷彿させる6つの斬撃が同時に発生し、それらは不規則に様々な方向へと迸る。
そして、大量に迫る触手を次々と斬り落としていく。
「…花の呼吸・参ノ型、煌蘭閃・連撃」
更に連続で日輪刀を横に振るうと不規則な多方向への6連撃が複数発生し、圧倒的な物量だった触手を瞬く間に斬り刻み、触手は最早数える程しか無くなってしまった。
「小娘…貴様!!…」
怒り、歯をギリギリと食いしばる喰吞。
「…あなた、もしかして同時に血鬼術を使えないの?」
「!?」
「…最初に使った血鬼術で霧に隠れた状態で今の触手の血鬼術を使われていたら…触手を斬ることは出来ても触手の物量によってあなたの位置を玄弥も私も見えなくなっていた…炭治郎だけは嗅覚で分かったかもしれないけど……だけどあなたはそうせずに血鬼術を1つ1つ使用していた…それを見て思ったの…血鬼術を同時に使うことが出来ないんじゃないかって」
「…そうだ、俺は血鬼術を同時には使用出来ねえ…だがそれが分かったから何だ? 勝ったつもりか? 甘めえんだよ!!」
カナヲの指摘…自身の弱点を認めた上で喰吞は叫び、今まで以上に殺気と威圧感をその身から放出させる。
「こいつは使う気は無かったんだがな…こんなガキ共に舐められんのは我慢ならねえ! 血鬼術・”金剛武身(こんごうぶしん)”」
喰吞が奥の手の血鬼術を発動するとその身が灰色に染まり始め、筋肉が異常に発達、どんどん盛り上がっていく…
「この血鬼術・金剛武身はまだ俺も使いこなせねえ…あまりの力に暴走しちまうからな…俺にこの血鬼術を使わせたことを後悔して死ね!」
そして遂に全身の変質が終わると、喰吞の見た目は灰色の身体に背は3メートルに迫る程巨大となり、全身は筋肉が異常に発達、肩は山のように隆起するという面妖で筋骨隆々とした姿へと変貌を遂げた…
「!? 2人共! 退がって!!」
「「!?」」
不気味な姿となった喰吞に驚愕しながらも油断なく彼を見据えていたカナヲだったが、唐突に普段の彼女では考えられない程に焦燥した様子で炭治郎と玄弥に叫ぶように呼び掛ける。
「……」
刹那、無言でその丸太のような右腕を振るう喰吞。
すると辺り一帯を嵐が通り過ぎたのではないかと錯覚する程に衝撃波が襲う。
「なんて出鱈目な破壊力してんだ!?」
「凄まじい膂力だ…」
「っ……」
事前のカナヲの呼び掛けのお陰で何とか難を逃れたものの、喰吞のその剛力に炭治郎と玄弥は唖然とし、カナヲは苦虫を潰したような顔をする。
「ウオォーーオ!!!」
「「「!?」」」
直後、喰吞は凄まじい雄叫びを辺りに轟かせる。
どうやらあまりの力に理性を失い暴走しているらしい。
「…炭治郎、カナヲ…少しの間コイツの相手頼めるか?」
暴走する喰吞の様子に玄弥は冷や汗を流しながらも2人に問う。
「!…大丈夫だけど」
「玄弥、何をするつもりだ?」
「ちょっと奥の手を、な!」
玄弥の問いに了承しながらも不思議そうに彼を見る炭治郎とカナヲ。
不敵な笑みを浮かべる玄弥の視線の先には、先程カナヲが斬り落とした喰吞の血鬼術…闇のうねりの触手があった。
「少しの間ヤバい相手任せちまうけど…死ぬなよ?」
「分かった、絶対に死なないから安心してくれ!」
「…玄弥も無理しないでね?」
「…善処する」
「…玄弥、今の間は何?」
「ウオォーーオ!!!」
「「「!?」」」
会話をする3人を遮るように喰吞は再び雄叫びを上げると、右腕を繰り出す。
するとまた強力な衝撃波が放たれ、3人を強制的に分断する。
「…あの野郎、のんびりと話をさせちゃくれねえな…2人共、悪いが頼んだぞ!」
衝撃波を回避しながら玄弥は2人に声を掛けると、触手に向けて駆けていく。
「良し! カナヲ、頑張ろう!」
「…うん」
玄弥の言葉に2人は頷くと喰吞を油断なく見据え、いつでも動ける体制をとる。
それを物陰から見ていた人物がいた。
「な、なに、あの化け物…最終選別であんな恐ろしいのがいるなんて聞いてないよ…というかあんなのと戦えるなんてあの3人おかしくない!? 明らかに最終選別に参加するような連中じゃないでしょ!?」
茂みの中で身を屈めながら頭を抱え、半泣きになりながら状況的に大声が出せず、小声でブツブツと呟く某蒲公英頭…”我妻善逸”の姿がそこにあった。
そこへ剛腕からの凄まじい衝撃波が喰吞から再度放たれ、それは茂みに潜む善逸の直ぐ近くに着弾し、辺り一面を吹き飛ばす。
「〜〜!!?」
その余波に巻き込まれた善逸は声にならない叫びを上げて吹き飛ばされ、そのまま意識を失った…
すいません、喰吞を強力にし過ぎました…
明らかに最終選別で出てくるような相手じゃないですね…
まあ喰吞の奥の手である金剛武身は強力過ぎる故に理性が無くなり、暴走するというリスクがあるので、制御出来ないという面で十二鬼月に劣る筈なのでご了承を。
さて、次回は今度こそ最終選別編を終わらせますのでよろしくお願いします!
終わす終わす詐欺にならないよう気をつけますね笑