鬼滅の刃〜最強の眼を持つ剣士〜   作:死徒

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浅草での対談2

 

硬欲が屋敷の奥へと姿を消してから数分後…

 

「ち、ちょっと! 痛いっての! もう少し優しくしなさいよバカ!」

 

珠世の協力者の最後の一人である少女鬼…零余子が硬欲から頸根っこを掴まれながら姿を現した。

 

硬欲程の力を持った鬼の右腕で直に頸を掴まれるのは痛いのか零余子は涙目で怒りながら彼へ非難の声を上げる。

 

「うるせえよ馬鹿子。 てめえにだけはバカとか言われる筋合いはねえ。 この俺がわざわざ直々にこの場に連れてきてやったってのに感謝の一つも無しか?」

 

「何よ恩着せがましいわね、そんなの頼んでないわよ! というかいつもいつも馬鹿子馬鹿子って! 私の名は零余子よ! いい加減に覚えなさいよこのバカ硬欲!」

 

「…ガハハハ!! へいへいすいません、大変申し訳ありませんね馬、鹿、子、さぁん!」

 

青筋を浮かべながら高らかに笑い声をあげると、全く誠意の無い謝罪と共に零余子を煽りながら彼女の頸根っこに込める力を強くする硬欲。

 

「うぎぃっ!?…ぐっ…くうぅ…こ、このぉ…ク、クソ…野郎ぉ…」

 

「ガハハハ!! 聞こえねぇなー!」

 

硬化していない状態とはいえ、純粋な膂力による壮絶な痛みに零余子は硬欲を睨み付け、罵声を浴びせることしか出来ない。

 

「…硬欲さんに零余子さん。 仲が良いのは大変良いのですが…話が進まなくなってしまうのでそろそろよろしいでしょうか?」

 

「おい珠世、誰がこんな奴と仲が良いってんだ?」

 

「そ、そうよ珠世! こんな喧嘩っ早くて女性の扱いもなってないような駄目男と私が仲が良い訳ないじゃn 「あァ?」 ぐ、ぐえぇ〜〜!!?」

 

「はぁ……」

 

「た、珠世様が溜め息を吐いて呆れの表情を見せている! そ、それもまた美しい!」

 

硬欲と零余子のコントのようなやりとりに珠世は苦笑しながら仲裁に入り、話を進めようと声をかける。

 

だが、零余子の余計な一言によりまたも話が脱線してしまう。

 

珠世のとりなしを受け、硬欲は零余子の頸根っこへの圧力を一時的に緩めていたものの、その余計な一言の影響で更に頸根っこへ力を込められた。

 

あまりの痛みに悶絶する零余子は涙を流し、この世の終わりのような叫び声を屋敷内に響かせる。

 

その光景を前に珠世は溜め息を吐いて額を抑える。

 

そして愈史郎はその珠世を見てうっとりと目を輝かせて彼女を見つめていた。

 

「馬鹿子さんよー、今の自分の立場分かって物言ってんのか? あんま舐めたこと言ってると…流石に馬鹿のてめえでも分かってるよな?」

 

「わ、わがった…わがったから…ゆ、許して…くだ…さい!……」

 

「わかりゃ良いんだよ」

 

硬欲は気が済んだのか零余子の首から手を離す。

 

すると零余子はクルクルと目を回し、力無く地面に横たわった。

 

どうやら元下弦の肆とはいえ、その再生力を遥かに上回るダメージの多さに軽く気絶したようだ。

 

「全く馬鹿子が。 こう見えて俺はあんまガキ痛ぶんの好きじゃねえんだから手間かけさせんじゃねえよ」

 

「…硬欲さん」

 

「……何だよ?…」

 

「零余子さんを静かにしようとしたのでしょうがこれはやり過ぎです。 連れて来ていただいたのは大変有り難く感謝しますが…気絶させてしまっては意味がありません。 これでは零余子さんを連れて来ようとそうでなかろうと大差ありませんよ?」

 

「…チッ…悪かったよ…」

 

珠世から今の行いを咎められ、硬欲は舌打ちしながらもぶっきらぼうに謝罪を口にする。

 

どうやらこの男鬼、珠世相手には何処か弱い部分があるらしい。

 

「流石は珠世様! あの硬欲を飼い慣らすとは…やはり珠世様は素晴らしい!」

 

そのやりとりを見ていた愈史郎は目をキラキラ…否ギラギラさせながら先程よりもうっとりさを数段増した表情で珠世へ眺望の眼差しを強く向けていた。

 

「…師匠」

 

「…どうしたのかね玄弥?」

 

「俺やっぱりこの鬼達が鬼だって到底思えません…おかしいでしょうか?」

 

「安心して良い私も同意見だ(先程も感じたが数年前あの鬼男…硬欲が放っていた鬼特有の醜悪な気配が今はだいぶ消え去っている…限りなく人間のソレに近くなっているな…私に対する敵意はあるとはいえ、奴も珠世さん達の影響で徐々に変わってきているということか…)」

 

玄弥からの問いに大貴は同意するものの、その内心は弟子同様揺れ動いていた。

 

「そう、ですよね…珠世さんからの手紙の内容もでしたけど、今のやり取りを見てたらやっぱりカナエさんの言う通り人間と鬼も協力し合うことが出来るような気がしてきました」

 

「フフッ♪ 玄弥君にも改めて分かってもらえたみたいで安心したわ」

 

「…良かったねカナエ姉さん」

 

「ええ♪」

 

ニッコリと笑うカナエとそれに釣られるように微笑むカナヲ。

 

「零余子さん、大丈夫ですか?」

 

珠世は零余子に寄り添うと、彼女の左腕に何やら注射を打ち込む。

 

「…う、う〜ん…た、珠世?…」

 

すると零余子はすぐさま目覚め、言葉少なげに珠世の呼びかけに応じた。

 

どうやら先程の注射は即効性のある痛み止めのようなものであったようだ。

 

「はい私です。 お目覚めの気分はいかがですか?」

 

「首がジンジンするわ…全くもって最悪よ」

 

「痛みを感じるのなら大丈夫です。 貴女が生きているという何よりの証ですから」

 

「ま、まあ、そうなんだけどさ…とりあえず介抱してくれてありがと」

 

「どういたしまして。 さて、零余子さんの意識も戻ったことですし、私達のこれからの方針…鬼舞辻無惨を滅する手段を話し合いましょう」

 

そう言うと珠世は着物の懐から試験管に入った赤い何かを取り出した。

 

「珠世さんそれは?」

 

「上弦の壱、黒死牟の血です」

 

「「「「!?」」」」

 

カナエの問いに答えた珠世の驚愕の一言に鬼殺隊組四人は目を見開く。

 

「一年前、鬼殺隊の皆さんのおかげであの男に最も近いこの鬼の血を入手することが出来ました」

 

「あの戦いの時…成る程…ですがあの災害のような戦場で良くこれを入手出来ましたな…正直近づくことも危険だった筈」

 

「それはこちらの零余子さんのおかげです」

 

「彼女の?」

 

「はい、零余子さんの血鬼術…零等(れいら)。 その能力は対象とした相手の技や能力を一時的に零(ぜろ)とするものです」

 

「上弦の壱が夜明けになって徹底する前にあんた達に向かって技を放とうとした時にあいつの技が消えたでしょ? アレのことよ」

 

「あっ! あの時の!」

 

合点がいったカナエが両手をパンッと合わせ、納得の声を漏らす。

 

「「「?」」」

 

だが大貴、玄弥、カナヲの三人は話についていけずに固まっていた。

 

というのもあの時大貴はブラッドレイと人格が入れ替わっており意識が無く、玄弥とカナヲに至っては当時剣屋敷で大貴とカナエの留守を預かっていた為、鬼殺隊組四人の中では彼女しか当時の状況が分からなかった為である。

 

「分かったら感謝しなさいよね」

 

「何を威張って言ってんだ馬鹿子が。 あんなもん一瞬しか消せねえ癖に使ったらてめえ自身が一気に消耗しちまう諸刃の剣…ガラクタみたいなもんじゃねえか」

 

「う、うっさいわね! こいつ等が私のおかげで助かったのは事実じゃない!」

 

「……」

 

硬欲は無言で右腕を手首付近まで瞬時に黒く染め上げ、硬化を発現させる。

 

そしてそのまま零余子に殴りかかる。

 

「ち、ちょっとあんた! な、何考えてんのよ! け、血鬼術・零等!!」

 

突然の硬欲の暴挙に零余子は焦り、涙目になりながら両手を前に向けると自身の血鬼術を発動する。

 

すると硬欲の右腕が元の肌色へ戻り、硬化が強制解除されてしまった。

 

だが

 

「ぶへっ!!?」

 

鈍い音と共に硬欲の右ストレートが零余子の腹部にそのまま突き刺さり、彼女はカエルが潰れたような声をあげながら吹き飛ばされ、屋敷内を転がっていった。

 

「っとまあこんな感じで俺の血鬼術は身体を黒く変色させて硬化するもんだ。 硬度は金持ち共が付けてる高級宝石のダイヤモンドとやらと大体同等ってとこだな。 今は部分的に硬化させたが、多少時間を掛けりゃ全身を硬化することも可能だ。 珠世達とそこの眼帯野郎は知ってるだろうがな」

 

「……」

 

チラリと大貴を横目で睨むように見る硬欲。

 

しかし睨まれた当の本人は硬欲から醜悪な気配が薄れていることもあり、目を閉じ、どこ吹く風のようにそれを流していた。

 

「チッ……んで、そこで転がってる馬鹿子の血鬼術は…見て分かったと思うが相手の能力は一時的に消せても身体能力は何も変わらねえ…今みてぇに能力関係無くブチのめされちまえば終わり。 まっ、この馬鹿単独では全く使い物にならねえってこったな」

 

「ち、ちょっと…こ、硬欲…あ、あんた…まさかそれを説明する為だけに私に攻撃してきた訳!?」

 

先程珠世から打たれた薬の効果が残っていたのか零余子は直ぐに立ち上がると硬欲を非難する。

 

「そうだがどうした? さっき珠世から薬打たれて回復と再生力が一時的に上がってんだ…それを利用しない手はねえだろ? どの道俺とてめえの血鬼術をこいつ等に説明しねえといけなかったんだからよ」

 

「だとしても他にやり方があんでしょ! やるならせめて私の同意の上でやりなさいよ!」

 

「あーもううるせえな…分かった分かった」

 

「何よその投げやりな言い方! 全然分かってないでしょあんた!」

 

「分かった分かった」

 

「流そうとしてんじゃないわよ!」

 

「分かった分かった」

 

「本当癪にさわるわねあんた! というか何処見て言ってんのよ! こっち向きなさいよ!」

 

「分かった分かった」

 

「きぃ〜!!」

 

再び始まった硬欲と零余子の争い(最も今回は同じことを言って適当に流す硬欲に対しヒステリック気味にキレる零余子の構図ではあるが)…

 

それをまた始まったか…と苦笑し呆れた表情で見る珠世と愈史郎、鬼と仲良くしたいという自分の一時は諦めかけていた光景を前にニコニコと幸せそうに見守るカナエ、その義姉の姿に微笑むカナヲ、禰豆子を除く今までの鬼の価値観を崩され鬼との共存の可能性を再確認させられた玄弥、そして嘗て戦った悪鬼がその醜悪さを失いつつあることに内心動揺しながらも今回の会談を通して愛する妻であるカナエの夢が確実に実現するかもしれないと改めて認識する大貴。

 

浅草での会談はまだ終わらない…





硬欲と零余子ちゃんのコントのような回になってしまいました。

何故こうなった?

しかも話全然進まないし…

次回で会談を終わりに出来るよう頑張りますのでどうかよろしくお願いします。
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