後編です。
お館…産屋敷耀哉が妻のあまねと2人の幼い子供を引き連れ、台上に現れると大貴達現柱5名は直ぐ様カナエ、大貴、行冥、天元、義勇の順で横1列に並び、両足を地面に付け跪く。
その中実弥だけは立ち上がったまま先程までの怒りの表情を消し去り、不敵な表情で耀哉を見ていた。
「おいおい! お館サマが来たら直ぐ尻尾を振るように跪くのかァ? これじゃァどっちが犬なのかわからねェなァ!」
実弥は大貴を嘲笑うような視線で一瞥し、そう言うと再び耀哉を見て
「部下達に敬われてさぞ良い気分だよなァ? 全く良い御身分だなァ おいてめェ! 産屋敷サマよォ!」
「「「「「!!?」」」」」
とても鬼殺隊の長に掛けるものとは思えない言葉を投げかけた。
それに対し柱5名は目を見開く。
「…先程までは多めに見ていたが、まさかお館様にまで噛み付くとは…不死川、やはりお前は口の聞き方のわからない獣のようだな……」
今まで黙認していた行冥だったが、耀哉への罵声は最早許容できる範囲を超えており、彼は青筋を立て、合わせている両手に挟んでいる数珠がひび割れる程に怒り、今にも実力行使で実弥を黙らせようと動こうとする。
「良いんだよ行冥。 私は構わないからそのまま実弥に言わせてあげておくれ」
「ですが…お館様…」
「流石にこの狂犬の言葉は目に余ります」
「大丈夫だから、カナエも大貴も何も言わず見ていてくれ」
「はッ! 白々しいんだよォ! 鼻につく演技しやがって! 隊員のことなんざァ使い捨ての駒にしか思ってねェくせに! その気に掛けてんのもどうせ演技なんだろうがァ!」
「チッ! てめえいい加減にs「天元」!? ……」
耀哉に対する数々の罵声に天元は思わず立ち上がるが、耀哉から名前を呼ばれると共に目で諭され再び跪く。
「けッ! それにアンタ、武術も何も齧ってすらねェんだろォ? 一目でわかるぜェ? そんなヤツが鬼殺隊の頭だとォ! 虫唾が走るぜェ! ふざけんじゃねェよ!!」
実弥からの数々の罵声…
普通の者なら反論し、怒りの声を上げるだろう…
しかし、耀哉から出た言葉は
「ごめんね」
という謝罪だった。
「!?……」
それには流石の実弥も咄嗟に押し黙るしかなかった。
「叶うことなら私も、君達のように体ひとつで人の命を守れる強い剣士になりたかった。…けれど、どうしても無理だった…刀は振ってみたけれど、直ぐに脈が狂ってしまって10回も出来なかったよ…つらいことばかりを君達に押しつけてしまって本当にごめんね」
「………」
耀哉の謝罪に実弥は勢いを失い声が出せない。
それに、慈愛が籠った耀哉の眼差しは…母親を彷彿させるものだった。
「私は君達を捨て駒などと思ったことは1度としてないよ。 それに、君達を捨て駒とするのなら私も同じだ。 お館様などという存在は鬼殺隊という組織を動かす為だけの捨て駒…捨て駒の私が死んでも何も変わらないよ…それに、私の代わりは既にいるから」
耀哉はそう言うと左に座る幼い黒髪の女の子…に見える男の子…自身の息子である産屋敷輝利哉(うぶやしききりや)に目を向ける。
「私が死んでもこの子が新たにお館様となるだけ…」
「実弥は柱合会議に来たのが初めてだから勘違いしてしまったのだと思うけど、私は別に偉くも何ともないんだよ。 皆がそれその如く扱っていてくれているだけなんだ。 嫌なら実弥は同じようにしなくて構わない…ただ、実弥は柱として人の命を守ってくれればそれで良いんだ…それだけが私の願いなのだから」
「下弦の壱… 姑獲鳥(うぶめ)との戦いで兄弟子の匡近(まさちか)を失ったばかりなのに急に呼び出してしまってすまなかったね…彼とは兄弟のように仲良くしていたから尚更辛かっただろう…」
「な、何で匡近の名前を…」
「不死川君、信じられないかもしれないけど、お館様は当主になられてから亡くなった隊士の名前と生い立ちを全て記憶されていらっしゃるのよ」
「う、嘘…だろ…」
自分でさえ今までに死んでいった仲間の名前を全ては覚えていないのに、耀哉は全て覚えているというカナエの発言に実弥は目を見開く。
「本当だよ。 お館様は呪いにより戦えない自身を責め、”戦うことが出来ないのならせめてそれだけは”と…全て記憶することにしているんだ。…お館様は私達の誰よりも鬼殺隊の皆を理解して下さっている」
「そ、そんな……」
「実弥、鬼殺隊の隊士(こどもたち)は皆、遺書を書いているよね? その遺書内容が不思議なことに殆どが似通っているんだ… 匡近も同じだったよ」
耀哉は懐から四つ折りの紙を取り出し、実弥に手渡す。
「この匡近が書いた遺書は今日実弥に渡そうと思っていたんだ。… 匡近は失った弟と実弥を重ねていたんだね。 その遺書に書かれた願いは鬼が居なくなった後の光り輝く未来を夢見ている…私の願いも匡近と同じだよ。 大切な人が笑顔で、天寿を全うするその日まで幸せに暮らせるよう、決してその命が理不尽に脅かされることがないよう願う…例え、その時自分が生きてその人の傍らに居られなくとも、生きていて欲しい、生き抜いて欲しい…とね」
匡近の遺書と耀哉の言葉を受け、実弥の脳裏に実の弟…玄弥(げんや)の姿がよぎる。
すると、実弥の目からは自然と涙が溢れていた。
「実弥、十二鬼月が一角下弦の壱姑獲鳥討伐の功績により君を風柱に任命する…受けてくれるかな?」
実弥は遺書を懐にしまうと、両足を地面に付けて耀哉に頭を下げて跪く。
「貴方様への数々の無礼誠に申し訳ありませんでした! まだまだ未熟ではありますが、お館様の為ならば風柱の件喜んでお受けいたします!」
実弥は耀哉への態度を一変させ、誠意を持って彼に忠義を誓う。
こうして6人目の柱…風柱、不死川実弥が就任するのだった。
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柱合会議後、耀哉達が去った後実弥は現柱の5人に取り囲まれていた…
「す、すまなかったァ…冷静さを失ってお館様は勿論、先達である筈のお前らにも喧嘩をふっかけちまって…面目のしようがねェ…」
実弥は反省し、皆に頭を下げる。
「全くだぜ! 正直あれは無いわー あれがお前じゃなくて俺だったら暫く地味に引きこもっている」
「…お館様が取りなしてくれていなければ、私がお前を物理的に黙らせているところだった…しかし、冷静さを失うとああなるとは…何かに取り憑かれているのかもしれん…今度神社にお祓いにでも行ってみると良い」
行冥は実弥に神社でのお祓いを勧める。
「まあまあ、不死川君にも辛いことがあったのだからそんなに責めるのは止めましょう? でも、今度はお館様にあんなこと言ったらダメよ? 悲しくなるもの…」
「!?……あ、あァ…本当にすまなかったァ…」
今の実弥にとってカナエから言われるのは母親に叱られている感覚になるのか顔を赤くして改めて謝罪する。
「……(一時はどうなるかと思ったが、無事に終わって良かった…)」
義勇は内心胸を撫で下ろす。
「…私も少々熱くなり過ぎていた。 君を狂犬と呼んだことを謝罪させてもらう。 悪かった」
「!! 頭を上げてくれェ! あれはそもそも俺が胡蝶を馬鹿にしたからだァ! 悲鳴嶼…いや、大貴って呼ばせてもらうがァ、アンタは何も間違ったことはしてねェ! 悪いのは俺なんだァ!」
実弥は大貴にそう言い、カナエの前に立つと地に足を付けて土下座をする。
「胡蝶! 女って理由だけでお前を馬鹿にしてすまなかったァ! この通りだァ! 許してくれェ!」
「不死川君! 私は気にしてないし、許すわ! 許すから頭をそんなに地面に押しつけちゃダメ! ケガしちゃうから!」
頭を地面に擦りつける程の土下座をする実弥をカナエは必死に止める。
このやりとりから分かる通り実弥は強面な外見をしているが、根は意外と優しい。
自らに非があることがわかると元来の性格によるものなのか罪悪感でいっぱいとなり、このように謝ることを止めなくなってしまう。
暫く実弥の土下座が続いた後、漸く彼は冷静になり、6人は会話に興じる。
その後、多少親睦を深め終わると6人は産屋敷邸を後にするのだった。
ほぼ原作沿いの流れですが、実弥が風柱になりました。
しかし、原作より一年早く柱になったことがどう影響するのか…私にもわかりません…
人物の年齢
悲鳴嶼大貴・16歳
胡蝶カナエ・16歳
冨岡義勇・16歳
宇髄天元・18歳
悲鳴嶼行冥・22歳
不死川実弥・16歳
産屋敷耀哉・18歳
後のちハガレンのホムンクルスの能力を血鬼術として使う鬼を出そうと思うのですが、誰が良いでしょうか? 勿論、出さないという意見もオッケーなのでよろしくお願いします。
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ラスト
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グラトニー
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エンヴィー
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グリード
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スロウス
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プライド
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出さない