ついにしのぶさんが薬という名の毒を生み出します。
悲鳴嶼大貴屋敷
前回の柱合会議から早数ヶ月が経ったある日…自身の屋敷で眠る大貴はある夢を見ていた…
それはとある国の大総統…その国のトップに君臨する齢60歳程の男の話だった
以前からも何度かおぼろげながらもその夢を見ていた大貴だったが、今回は夢で見るその男が人間ではなく……人造人間(ホムンクルス)だという大貴も初めて知る内容だった。
その男…キング・ブラッドレイ…人造人間名”憤怒のラース”は大貴と同様に左眼に黒い眼帯をしていた。
【私は君のように最強の盾を持っているわけでも、ましてや最強の矛を持っているわけでもない。そんな私が弾丸跳び交う戦場を何故今日まで生きのびてこられたと思う?】
【ク、クソがっ!!】
ブラッドレイと戦う相手…”強欲のグリード”の苦し紛れの攻撃によって外されたその眼帯。
露になった傷跡が付いた肌…その下にある眼がゆっくりと開かれる。
その開かれた左眼には赤いウロボロスの紋章が刻まれており、これまで以上の威圧感がブラッドレイから放たれる。
【君達に最強の盾や矛があるように…私には、最強の眼があるのだよ…さて、グリード君…君は後何回殺せば死ぬのかね?】
ブラッドレイはそう言い放つと両手に持った剣、そして体術を使い、同じ人造人間のグリードをまるで機械人形のように殺し続けた…
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「またあの男の夢…か…」
大貴は目覚めると布団から身体を起こし、近くの手鏡を手に取り自身を見る。
するとそこにはブラッドレイのようにウロボロスの紋章の眼ではないものの、赤く発光する異様な左眼が写し出されていた。
「あの男の眼とは違うものの私のこの眼も同じ左眼…私とあの男に何の関係があるというのだ?…」
大貴は何度も夢を見ることと左眼に特異な眼を持つという共通点から自身とブラッドレイに何か繋がりがあると確信し、物思いにふけるのだった。
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蝶屋敷
「これをこうすれば……良し! 出来たわ!」
蝶屋敷の薬を調合する部屋にて彼女…胡蝶しのぶは額の汗を拭うとやり切った表情を見せる。
「鬼の頸を斬れない私でもこれならそれに関係なく鬼を殺すことが出来る筈! 今までは精々が鬼の動きを止めるってだけだったけど…」
しのぶは自身の周りにある数々の薬に目をやる。
「とはいえ、あくまでもまだ出来たってだけ…鬼相手の実戦で使えなければ意味がない…それに効いたとしても殺しきれない可能性だってある…」
鬼を殺す為の薬…藤の花を加工し、その他の薬品と混ぜて作った毒だが、まだ実験段階…もし効かなかったらという不安がしのぶに襲いかかる。
そこへ
「しのぶー! ちょっと患者さん用に鎮痛剤が欲しいのだけれど…ってどうかしたの? しのぶ?」
患者用の鎮痛剤を取りにカナエがやって来た。
「え、えっ!? な、何でもないわよ!? ち、鎮痛剤なら此処にあるわ!」
しのぶは咄嗟に懐へと調合した薬を仕舞い込み、引き出しを開けて鎮痛剤を取りカナエに押しつけるようにして手渡す。
「?? あ、ありがとう! それじゃもらっていくわね」
カナエは不審に思いながらも鎮痛剤を手に部屋を後にする。
「ふぅー…危なかったわ…まだコレを作っていることは姉さんにも秘密にしていたから…作っているのがバレたら絶対に反対されるし」
しのぶは再び懐から薬を取り出してそれを見つめる。
「…やっぱり実戦で使ってみないとわからないわね…実験だけでは限度があるし…」
そう言うとしのぶは決心する。
「…よし決めた! 今夜鬼に使ってみて試してみましょう! それで鬼を殺せれば問題ないし、最悪殺せなかったとしても動きを止めるくらいは出来る筈!」
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夜
大貴は殺丸から指令を受け今宵も鬼を狩っていた。
「剣の呼吸・壱ノ型、撫斬」
スッ
大貴は右手に持つ日輪刀で対峙する名も無き鬼を超速で斬る。
「ん? イマなにかしたカ?」
鬼は頸を軽く撫でられたように感じ、頸を触るが特に何も起こらない。
疑問に思いながらも鬼は大貴に襲いかかる。
しかし…
ズシャ! ブシャーー…
時間差で頸から大量の血飛沫が上がり、同時に頸が地面に転がり落ちる。
「!!? グ、グギャーーー!!………」
名も無き鬼は恐怖に歪んだ表情を見せると断末魔をあげ消滅した。
「壱ノ型、撫斬。 この技で斬られた相手は斬られた場所を撫でられたように感じる…故に撫斬。 自らの行いを悔いて地獄へ行くが良い」
そう言うと大貴は刀…剣ともいう…の血を払い、鞘へと納める。
「今日はまだ時間があるな。 殺丸、今夜はカナエ君達の担当場所にも行ってみるとするか? 彼女達は蝶屋敷での医療の仕事もある、負担を軽減しておいて損は無いだろうからな」
『カー! リョウカイシタ! ソレナラ、スコシキョリガアルガ、ケハイヲカンジル…ツイテコイ!』
大貴は胡蝶姉妹の担当場所もカバーしようと殺丸を追いかけ、その場から走って姿を消した。
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同時刻
「それじゃあしのぶ、行ってくるわね」
「ええ、柱の姉さんなら大丈夫だと思うけど気をつけて」
「了解♪ 私の居ない間、留守をお願いね」
「わかったわ。 行ってらっしゃい」
カナエにも鬼出現の伝令が鴉の色(しき)から伝わり、彼女はしのぶに留守を任せると出立していった。
「…さて、と…アオイ、任せたわよ」
「…しのぶ様…やはり流石に1人で行かれるのは不味いですよ! カナエ様にも事情を説明してまた後日お二人で行かれた方が…」
「…アオイ、私はもう姉さんだけに負担を掛けさせるわけにはいかないのよ! 鬼の頸を日輪刀で斬れないこの非力な私が…やっと…やっと…それ以外の方法で鬼を殺す術を見つけたの! 今までは必ず誰かと行動しながら鬼と戦っていたわ…でも! 今日からは私1人だけでも鬼を殺してみせる!」
「し、しのぶ様ー!!」
しのぶはアオイの制止を無視し、1人カナエとは別の方向へと走り出す。
「艶(えん)、この先に鬼の気配はある?」
走り出してから数分後、しのぶは傍らを飛行する自分の鴉…艶に声を掛ける。
『イチオウ、コノサキニヒトツケハイガアルワ。 デモシノブ、ホントウニダイジョウブ?』
「心配しなくても大丈夫よ! さあ、そこまで案内して頂戴!」
『ワカッタワ、コッチヨ』
艶の案内のもと、しのぶは鬼の元へと急ぐ。
暫く走ると暗闇の中、一つの人型が見えてきた。
『カー! シノブ、アレガケハイノシタオニヨ!』
艶の言葉にしのぶは頷くと奇襲を仕掛ける。
「蟲の呼吸・蝶ノ舞、戯れ(ちょうのまい たわむれ)」
「ん!?」
ドスッ!
「グフッ!」
鬼の腹に奇襲攻撃である超速の刺突が突き刺さり、鬼は苦悶の表情を浮かべる。
そして
「な、なんだ…か、身体が…う、動かな…い…そ、それに…く、く、苦し…い……」
初手から鬼を殺す薬…鬼殺薬(毒)を先程の刺突と同時に鬼に注入していたらしく、鬼は動かなくなっていく自身に恐怖を見せる。
「(良し! 実際の鬼にも効果がある!) これで終わりよ!」
しのぶは動けない鬼に対し、至近距離からの止めの刺突を放つ。
それにも勿論毒が仕込まれてあり、鬼はそれを食らうと内部から溶け出し、灰となって消えていった。
「やった…これで…これで私も1人で鬼を殺せるわ!!」
初めて1人で鬼を殺せたことに歓喜するしのぶ。
だが……
「…今のは驚いたぜ? 分身を身代わりにしていなかったら今頃は完全に死んでいた…」
先程殺した筈の鬼の声が聞こえ、その直後、鬼が再びしのぶの前に現れた。
「さっきのは分身!? まさか…血鬼術!?」
鬼を殺せなかった原因をしのぶは思い至る。
「ご名答! この分身術はオレの血鬼術によるものだよ。 いつ入れ替わったのかわからなかったろ? そういえば自己紹介がまだだったな…十二鬼月下弦の陸、怨魔(おんま)だ」
「じ、十二鬼月!?……」
まさかの相手にしのぶは戦慄する。
「まあ、十二鬼月になったばかりの新入りだけどな。 てか、お前大分ヤバいもんを撃ち込んでくれるよな…危うくせっかく十二鬼月になったってのにあっさり死んじまうとこだったぜ……おい女! 名はなんだ? この俺を殺せるもんを使える女…殺す前に名は聞いておきたい」
「…鬼殺隊…階級丙(ひのえ)…胡蝶しのぶよ」
「胡蝶か! 覚えておこう…お前が死ぬまでの少しの間だけだがな」
しのぶの名を聞くと鬼…怨魔は腕を振り上げながら彼女へと襲いかかるのだった……
はい、まさかのオリジナル下弦の陸の登場です。
血鬼術は分身ですが、正直上弦の肆”半天狗”の分身の下位互換であることは否めないです。
まあ、それ並みなら上弦になってるという話ですので…
十二鬼月相手にしのぶさんは生き残ることが出来るのか?
結末は次回をお楽しみに!
後のちハガレンのホムンクルスの能力を血鬼術として使う鬼を出そうと思うのですが、誰が良いでしょうか? 勿論、出さないという意見もオッケーなのでよろしくお願いします。
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ラスト
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グラトニー
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エンヴィー
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グリード
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スロウス
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プライド
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出さない