神様に気に入られた男は今日も学園で土をいじる   作:飽き性なSS作家

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第2話

「理事長、入ります」

 

「承諾っ!入りたまえ。驚愕っ!どうしたその顔は!?」

 

「ああ、少々色々ありまして・・・」

 

たづなさんに殴られたところが赤く腫れていたが特に気にしてはいなかった。死ぬほど痛いけど

 

「そうか。疑問、たづなはどうした?一緒に来るよう言ったのだが」

 

「たづなさんはアクシデントに遭遇したため、寮に行っております。そのままランドリーにも行くと思いますので時間がかかるかと。それより話があるとうかがっているのですが」

 

「うむ。単刀直入に言う・・・。桐生院 翔、君はいつになったら彼女達の担当になるのだ!?」

 

げ、出た。いつもの催促の呼び出しかよ。耳にタコが出きるほど聞いているんだが諦めてないのかよ。・・・ってかいつもの二字熟語抜けてるぞ

 

「優秀な成績を収めたと聞き、即来れるように配慮もした。だが・・・結果っ!農園復興に力を注ぎ、トレーナーの仕事を放棄している事態・・・故に!」

 

故に学園から去れか。別にそれでもいい。通帳は潤ったし、野菜の品種改良の腕を見込まれて野菜業界からスカウトされたりもしてるから別に

 

「決定っ!農園を含めた一帯を更地にし、新たな練習場を作ることにした!」

 

ナニイッテンダ!フザケルナ!

 

やっとあの土地にあった肥料の配合や農作物にとって良い土を作ったのに更地にするだと!?冗談じゃない、俺から農業を取ったら一体何が残るってんだ!?

 

「驚愕っ!何をそんなに怒っているのだ!?」

 

「俺は今、無性に腹がたっている!あんたに裏切られた気分だ!今まで何も言わなかったのに・・・グスッ。イ゛マ゛サ゛ラ゛ァ!

 

「逆上っ!?桐生院 翔、落ち着くのだ!」

 

「ごれが・・・落ち着いて・・・い゛ら゛れ゛ます、ア゛ァー」

 

「・・・提案、農園を更地にするのをやめても良い」

 

「え゛っ」

 

「ただし!今から一週間後に開かれる選抜レース、そこでまだデビューしていない彼女達の誰かと契約し、契約した彼女に一定の人気を得させることができれば、宣言を撤回する事を約束する!」

 

「ほ、本当ですか・・・。わかりました、やらせて頂きます。失礼します」

 

その場から逃げるように即座に出ていき、ドアを背にして深呼吸してから小さく舌打ちした

何が更地にするだ。むしろ更地にする前に学園が阿鼻叫喚の地獄に変貌するってのに、そう思いながら髪ををくしゃくしゃにして静かに去った

 

 

 

アリガトウゴサイマシター

 

夜、スーパーで買ったいろんな種類の日本酒を一升瓶サイズで10本、調理された唐揚げや天ぷら、そして徳用サイズの菓子の詰め合わせを持って農園にいく

 

あの後、近場の練習場を回ったがこれといったウマも関連する知識の収穫もなかった。正直、ウマの実力はセミナーの時に担当した彼女より実力不足だ

 

あの中の誰かを指名したとしても実力も人気を得られず、桜のように一瞬で散るだろう。だとすると農園が・・・

 

頭を抱え、唸っていると農園の方から太鼓の音が聞こえてきた。少し足を早め、農園の奥にある森に入るとそこには本来なら四つ足で駆ける動物が二足で立ち、太鼓や横笛で演奏していた

 

「おまたせ。日本酒持ってきたぞ」

 

声をあげると和服を来た貉や兎、熊に豚?に河童がぞろぞろ集まり、日本酒が入った袋を見ると懐から赤く小さな盃を目の前に出していく

 

「んー・・・猿、均等に注いで」

 

そう言うと集団の中を分けてきたのは顔にイやロ、漢字の一等の文字が書かれた紙を張り付けた黒子のような猿達が出てくると一本ずつ袋から取り出していく

 

そして獣達はそれぞれの猿を追いかけ、散っていく。

そう、これが学園を阿鼻叫喚の地獄に変貌させる存在である。

 

彼らはこの林に封印された妖怪であり分類としては鬼に値するようだ。その昔、平安時代に彼らの世界と現の世界が繋がってしまいその入り口を封印したと地方の古文書に書かれていた

 

歴代の理事長はこの存在を知っていたようで、この森を避けるように練習場を作っていた。そして前理事長の代でその周りに農園やカモフラージュとして廃校舎を作り、練習場を作れないようにしたのだが、その意図を知らない今の理事長が練習場を作ろうとすれば・・・

 

「?」

 

いつの間にか子供の獣達がジーっとお菓子の袋を見ている。そのうちの一匹を見るとその子は不思議そうに首を横にかしげた

 

あぁ・・・もう可愛いなぁ!!

 

お菓子の袋を開けた瞬間、お菓子目当ての子供はお菓子に集まり、遊んでほしい子はすぐに抱きついたり、引っ張ったりしてくる。そうなってしまえば体力が尽きるまで遊んだり、笛と太鼓に合わせて獣達と踊るのだ

 

 

もう更地になろうが知ったことか。無知な理事長が支配する学園なんて滅んでしまえー

 

 

 

 

 

「翔さん、翔さん。起きてください」

 

「ん・・・?あー、ミークか?」

 

「はい。もう朝ですけど外で寝ていたら風邪引きますよ」

 

「大丈夫、昔から体は強い方だし・・・。朝練?」

 

ハッピーミーク。妹が担当しているウマ娘、言っちゃ失礼だが真面目な性格をしている妹とは違っておっとりゆっくりなウマ娘。そんな彼女がジャージを着ている。だとすれば、もう朝になっているとしか考えるしかなかった

 

そして、どうやら彼らは宴に疲れて寝てしまった俺をビニールハウス内の昼寝用ベンチの上まで運び、おまけに布団までかけてくれたらしい。本当に彼らは人と比べて律儀だ。

 

「はい・・・。トレーナーさんに言われたことはこなしてますが・・・」

 

「ちょっと物足りないと・・・。まぁ、良いんじゃないか。物足りないなら少し追加しても問題はないだろうし。ただ・・・無茶だけはするなよ。無茶して体壊したりしたら、お前も葵も悲しむんだからな」

 

「・・・トレーナーもですか?」

 

「そりゃそうだろ。気づいてないかもしれないが、あいつはお前の事を家族同様に接してる。だから、痛みも悲しみも共感することもできる。並大抵の奴なら他人に感情移入なんてできない。だからお前は無理するな、体に違和感あったらすぐ葵に相談しろ。OK?」

 

「はい・・・。わかりました」

 

「いい子だ。いい子には生でもおいしく糖度高めの人参をあげよう」

 

「わぁ・・・ありがとうございます。んっ・・・んー」

 

おー、ミークが驚きとおいしさに震えている。この品種改良した人参が好評になってくれれば少しは農場のありがたみをわかってくれたらいいんだが・・・だったらその人参の種だけ農家に渡せって言うだろうなーあの二人

 

「はぁ・・・。一寸先は闇の人生送ってるよな俺って」

 

「ところで翔さん・・・トレーナーさんから聞きました、今度の選抜レースで担当が決まらないと農園がなくなると聞いたのですが・・・本当ですか?」

 

「え?あーそうなんだよ。あの鬼、悪魔、緑、搾取の名人のたづなさんとチビ、二字熟語、無理難題出してくる理事長にね。ほったらかしにしてたくせして今更何言ってんだって言ってやったよ」

 

そう言うときょとんとした顔で俺を見つめるミーク。あれ?何か間違ったこと言ったかな?

 

「あの・・・。もしかして知りませんか?」

 

「なにが?」

 

「その提案をしたのは・・・」

 

ミークが言った真実に俺は

 

 

 

「OK、ミーク。そいつ今から血祭りにして農園のカカシにするから。恨まないでくれよ」

 

 

 

ニッコリと笑顔で言ったのだった

 

 

 

 

 

「・・・朝ですね」

 

トレーナーの朝は早い、制服を着て、昨日の残り物を温めると同時にトースターにパンをセットする。次にテレビの気象情報をチェックし、担当の子のトレーニングに修正が必要かどうかを判断する。その事を考え終わっているころには、パンの表面は狐色になっている。そこに少し常温に戻したマーガリンを

 

ハヤマ・・・トリ・・・モウダメダァ

 

ん?

 

オラァ!!葵ぃ!!起きてんだろう!?起きてるよなぁ!?テメェ、よくもやってくれたなぁああああああ!!

 

「ひっ・・・!」

 

ドアの向こう側で叫びながら金属でできたドアを何度も蹴るのは私の兄、桐生院翔だ。不味いこのまま蹴られると他のトレーナーさんに迷惑が・・・!そう思った瞬間に体は動いていた。すぐにドアチェーンを外し、鍵を開け、ドアを開いた先には

 

「よー。今日は雨が降るらしいぜ、葵。・・・血の雨がな

 

左手をバキバキ鳴らしながら蛇の様に睨みつける兄の姿があった

 

あはは、もう少し長生きしたかったなー

 

「葵ィいいいいい!!!」

 

「ご、ごめんなさーい!!!」

 

 

この後、他の職員が目にしたのは泡を吹きながら振り回される葵と清々しい笑顔で振り回す翔の姿だった

 

 




ナリタブライアン登場まであと一話
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