神様に気に入られた男は今日も学園で土をいじる   作:飽き性なSS作家

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教えてくれ、五飛。俺はあと何回、ナリタブライアンのグッドエンドを見ればいいんだ・・・(現在スピード、スタミナSSクラス作り中


第3話

「葵の奴、余計な事言いやがって・・・。迷惑なんだよ、まったく・・・ん?」

 

葵の奴も農園クリーン計画(勝手に命名)に一枚噛んでいたとは思わなかった。余計だ、本当に余計な事しやがって

 

ぶつぶつ言いながら歩いていると練習場にトレーナー達と生徒のウマ娘達が集まっていた。今日はイベントはないはずだがこれほどの集まりはあまり見かけない。気になって近くのウマ娘を止めて話を聞くことにした

 

「ちょっと(きみ)。この練習場でなにかイベントでもやるの?」

 

「知らないんですか?G1で重賞に勝った先輩に野良レースを挑むウマ娘がいるって話題になってるんですよ」

 

「へぇ」

 

「へぇ、って、もしかして本当に知らないんですか?」

 

「知ってたら聞かないし、というか勝負は目に見えてるよ」

 

G1、確か一番速く、知名度があるウマ娘が挑むことができるんだったような。俺から見ればそれに出れるだけ充分だと思うんだが

 

「とにかく急がないと見れませんよ。じゃあ、私はこれで」

 

そう言って走って行く彼女を見送るとふと、話題のウマ娘に興味が湧いてしまった。まるで道場破りをするような奴はどれほどの実力者なのだろうか、それともただの馬鹿なのかそれを確認したくなってしまった

 

「百聞は一見に如かず・・・だよな」

 

俺も後を追う様に練習場に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ。結構野次馬が集まってるな」

 

「・・・。ん?ゲェ!桐生院 翔!?」

 

「なんであいつがここにいるんだ!?」

 

俺を見て驚いているトレーナー達、この驚きようから察するに葵の事件を知ったのだろう。本当に視線がウザイ

 

「・・・なんだよ。俺がここにいちゃ悪いのかよ」

 

ギロリと睨むと他のトレーナー達は萎縮してしまい、黙り込む

 

「ちょっと、なにうちのトレーナーを睨んでるんですか」

 

「あ?」

 

いきなり俺の前に出てきたのは気の強そうなウマ娘。後ろにはあわあわしている男トレーナーがいる

 

「お、おい。気にするな」

 

「トレーナーは悔しくないんですか!あなた、私のトレーナーにあやまっ・・・て・・・」

 

言葉を行き詰まらせるウマ娘。なんだよ、ちょっと睨んだだけでこれかよ

 

「ワーワーギャーギャー、全員うるせぇんだよ。静かに観戦させろ。いいな?返事は!」

 

「「は、はい!」」

 

「わかればいい」

 

ただでさえ、機嫌が悪いんだ。これ以上なんか言ったらぶん回す。そう思いながらコースの柵に手をかけた

 

「おーおー。いつもより機嫌が悪いんじゃないか?お前」

 

俺に話しかけてきたのは・・・思い出した。確か『スピカ』とかいうチームのトレーナーだ。

 

「えぇ。昨日と今日でストレス溜まってるので」

 

「それは良くないな。酒飲みながらでいいなら悩みを聞くぞ?」

 

「いいえ、結構です。というか、そう言って他人に奢らせて自分の好きなお酒を飲みたいだけですよね」

 

「ギクッ!」

 

図星かよ。どいつもこいつもいい性格してやがる。まったく

 

「それで?道場破りのまがい事をしているウマ娘は誰なんです?」

 

「ん?あの子だよ」

 

そう言って指をさした方向にいたのは髪に神輿についているようなしめ縄を髪留めにしているポニーテールのウマ娘だ。なるほど見た目は強者感を漂わせていた

 

「あいつが道場破りね・・・」

 

「名前はナリタブライアン。実力は・・・見ればわかるよな」

 

先輩が言ったときにナリタともう一人が走り出している。重賞を取ったウマ娘は先行し、ナリタは5馬身ほど離れていた。典型的な差しのスタイルで行く奴かと思いながら見ているとすぐに二人が前を通過していく

 

結果としてはナリタブライアンは負けた

 

最終コーナーで前と大差をつけられそのまま逃げられると思ったが、ラストのストレートで前との差を一気に埋め、そのまま抜くと思ったが突然失速してしまった

 

「最後はスタミナ切れによる失速か…」

 

「・・・」

 

「どうだった。あの子の走りは」

 

感想を求めてくるトレーナーに自然とこう言っていた

 

「ダメですね。特に、今のまま走り続けると確実に」

 

「確実に・・・なんだ?」

 

「死にますよ。あのウマ娘」

 

静止する声を無視し、練習場から去る。あんな半端者では駄目だ、あんな奴では話しにならない。俺はナリタブライアンを確実に敗者にできるウマ娘は知っている奴でたった一人・・・いや最近見つけた奴を入れて二人ぐらいしか思いつかなかった。頼めば走ってくれると思うがその前に気になってしまった事を片付けよう

 

最後のストレート、前との距離が僅かな差になった瞬間、ナリタブライアンが失速したその理由が知りたくなった。

原因があるとしたら、失速した時に見せた悲しそうな顔だ。そうと決まれば緑の悪魔に過去のデータを調べてもらおう。急いで俺は、たづなさんに電話した

 

 

 

 

「また・・・ここでもまた、なのか?」

 

また私の前で灯が消えた。消してしまった。暗闇に飲まれて消えていく様を見るのは…何度目だろう

 

「・・・どこへ行っても、誰に挑んでも満たされないのなら・・・ならばもう・・・ここにいても」

 

「いた。やっぱり考え事してるやつは校舎裏にいるよな」

 

密かに決心した私の背後にいたのは一人の男だった

 

 

 

 

「ナリタブライアン・・・だよな。見てたぞ、あの模擬レース」

 

「胸のバッジ・・・トレーナーか。なんだ?スカウトならお断りだ」

 

「雑魚だったろ、相手。だが、なんで抜かなかった。お前の脚力と体力なら最終コーナーからの立ち上がりで相手を差し、大差をつけて終わりだったはずだ」

 

「・・・答える義理はない」

 

そう言って去ろうとするブライアンに道中で考えた予想を一発食らわせてみることにした

 

「あくまで予想なんだが、お前は今まで強敵が身近にいないが故に本気を出せる相手がいなくて勝利に餓えてるんじゃないのか?だから重賞を獲った奴と模擬レースを挑んでいる・・・違うか?」

 

「・・・なんだと?」

 

食いついた。あとは一か八かの推測とハッタリだ

 

「悪いがお前の経歴を調べさせてもらった。幼い頃からレーススクールを転々としているようだな」

 

転々としたスクールの名前も載ってたぞと付け加えて、ブライアンの顔を見ると会った時より強く・・・と言い方はおかしいとは思うがそれほど睨んでいた

 

「転々としている数がおかしすぎると思ってトレセンに来る前のスクールに電話して確認した。そして当時、お前の担当だった奴はお前の去り際に言った言葉が忘れられなかったようだぞ。『ここでは満たされない。熱を失ったレースで競っても意味がない』ってな」

 

「『熱を失った』ってのが競争心だとするなら。どのスクールもお前と同等、それ以上の実力者がいなかった。だからお前はトレセンに来た。だが・・・ここに来ても満たされることはなかったみたいだな」

 

「それで?お前なら私の渇きを満たせるというのか?」

 

「あぁ、おそらくな。だがその前にそうだな・・・賭けでもしないか?」

 

「賭けだと?」

 

「あぁ、そうだ。2日後にさっきの練習場に来い。そこで俺が手配した奴と全力でレースをしろ。お前が勝ったら俺は勝負を挑んだ代償としてトレーナーやめてやるよ」

 

「・・・ほう」

 

「ただし、お前が負けたら1ヶ月の間、お前のトレーナーとして活動する。俺のトレーニング指示は絶対服従。さぁ、どうする?」

 

 

 

 

 

 

なんなんだ、この男は。何故、私の気持ちがわかっているような口振りで話す。しまいには賭け勝負を挑んでくるとは。イラつく。なにが、おそらくだ。何も知らないやつが私の何がわかるんだ

 

「別にやらなくてもいいんだぞ。その時は負け犬のナリタブライアンって学園中に言い回して、お前のプライドをズタズタにしてやるから」

 

「・・・いいだろう。その勝負受けて立つ!」

 

「勝負成立、だな。じゃあ、予め渡しとくぜ。申請書」

 

渡されたのは綺麗に二つに折られた紙、今すぐにでも目の前で切り裂いてやりたがったが我慢した

 

「じゃあ、二日後・・・あぁ、そうだ。負けても勝負は無しってことにはできないぞ。レコーダに録音してあるからな。せいぜいがんばれよ、自称最強のナリタブライアン」

 

最後に私を侮辱して、高笑いしながら去る男の背を見ていた私は、男が視界から消えるまで、握りしめた右手から血が流れ出ている事に気づくことはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前、いいか?頼みがあるんだが・・・明日、ある奴を負かしてほしい。・・・誰だっていいだろ?最近、お前の面倒をみてなかったし。だから、練習の成果がどれほどのものか・・・見させてもらう」

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