神様に気に入られた男は今日も学園で土をいじる   作:飽き性なSS作家

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第4話

「えー。今日もよく集まってくれて、俺は嬉しい。じゃあ、一班は・・・」

 

勝負の日、早朝。俺は森の近くで彼ら(獣鬼)に指示を出していた。実際のところ、森を一部、囲う様に作られた農園の開拓はこいつらが手伝ってくれた。・・・って言っても、耕したりするのは全員出来るんだが、その後の工程ができるのは河童と貉と兎だけなので残りは開拓に回している。ウマ娘に見られたこともあったが農具が浮くだけのポルターガイスト現象を見ただけのため。基本、農園近くに来ることはない。一部を除いてだが

 

ちなみに、こいつらは結界の外に出られないわけではないのだ。少数だが、結界にある呪い、もしくは力に耐性がある奴がいる。その限られた個体が農園作業を手伝ってくれるのは本当にありがたく思っている

 

ちなみに彼らは結界を自らの手で破壊したりはしない。・・・いや、猿の奴が破壊しようとしたことがあったのだが、その前に破壊に使用した道具が細切(こまぎ)れになった

 

その光景を見た瞬間。俺はその猿に飛びかかり、腕の関節技を決めながら謝罪を要求し続けた。高かったんだぞ、その道具

 

「ワン」

 

「おー。今日もご苦労様」

 

シロがデカい手提げの収穫籠をくわえて来た。今、思えばこいつと初めて会った時もその場にいたような気がする。・・・あれ?そういえばあいつ等がいる結界内に入れたのもシロが来てからだったような・・・

 

「?」

 

「シロ・・・。お前、昨日の夜におやつをつまみ食いしただろ!」

 

俺はシロのほっぺをつねると餅のように伸びる。やめろ、やめろと前足をバタバタさせる姿を見ながら笑うだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

カフェテリアで私は調理された厚切りのリブロースステーキを切り、口に運ぶ。つい最近まで柔らかくて、肉の食感がないと思っていたが一昨日から急に固くなり、肉を喰らっていると実感できるようになった。だが・・・それがあの憎たらしい男のせいだと思うと・・・

 

私はナイフを持った手でテーブルを思いっきり叩くと周りの奴らが驚き、こちらを見る。私は気にせず、再び肉を切り始める

 

「らしくないな、ブライアン。なにをそんなにイラついているんだ」

 

前の空いている席に座るのは姉貴(ビワハヤヒデ)だった。らしくない?私に再び絶望を抱かせたくせに。なぜ、そこまで涼しい顔ができる

 

「らしくない?私らしいとはなんだ?」

 

「ブライアン?」

 

「私は・・・私は!姉貴に言われてここに来た。ここに来れば本物のレースもできて、私の渇望も埋まると!だが、結果はどうだ?本物のレースはおろか、誰もが私を前にして戦う意思もなくし、挑戦もしない!結局、私の中の渇きは強まる一方だ!!」

 

「落ち着け、ブライアン。私は」

 

「姉貴は・・・!姉貴は私を!」

 

「おー、おー。朝から騒がしいな。ここは憩いの場だぞ」

 

私を静止させたのはあのふざけた男だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく・・・騒がしいと思ったらお前かよ。どうした?まだ勝負してないのに」

 

「ちっ・・・!」

 

そう言ったとたん、舌打ちしてその場を去った。と思いきや、急に戻ってきて横幅10cmのステーキを口に放り込み、トレーを持っていった。まったく、ウマ娘ってのは飯に関しては真面目なのか?

 

「えー・・・そこ食わずに置いてかないのかよ」

 

「むしろ、置いて行ってほしかったのか?」

 

「まさか。あー、そのなんだ。ごめんな、あいつが不機嫌なのは」

 

「君のせいなんだろ?」

 

「・・・ああ、そうだ」

 

ビワハヤヒデは冷静に言い放つ。本来ならもっと罵声を浴びせらると周りは思っているのだろうが。こいつとは入学前に知り合った仲なので俺の性格を少しは理解している。だから、多少の問題は目をつむってくれたのだろう

 

「責めるわけではないが、もう少し言葉を選んだらどうだ?」

 

「あいにく、その時の感情に任せてるから無理だな」

 

「はー・・・まったく、私のトレーナーからブライアンと君の勝負の話を聞いてはいたが、あそこまで不機嫌になっているとは思わなかったよ」

 

「すまない・・・ん?勝負の話、誰にもしてないんだが、なんで知られてるんだ?」

 

「壁に耳あり障子に目あり、だ。そう言った話はすぐに伝わる」

 

「ちっ、話を広めたやつめ。余計なことしやがって」

 

乱暴にブライアンが座っていた椅子に座り、内ポケットから棒状の物を取り出すと一瞬、ビワハヤヒデが身構えた。真っ白な物なのでタバコと思ったのだろう

 

「・・・ああ、これタバコじゃないぞ。ほら」

 

口に含み、噛むとパキッと音を出した

 

「ココアシガレット。最近、再販してな。もう二度と食えないかと思ってたんだが、人生なにがあるかわからないもんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・広めたにしては、外野多すぎだろ」

 

練習場の周りは前回の二倍か競馬場の観覧席を埋めるほどの人と生徒がいた

 

「仕方ないんじゃないか?ナリタブライアンの人気にお前との賭け事だ。野次馬が集まるには充分だろ」

 

「善良な生徒が見るべき、聞くものじゃないだろ・・・で?あなたはなんでいるんですか?」

 

この状況に嫌気を感じている俺の隣に自然とスピカのトレーナー、沖野がいた

 

「ん?ああ、今回の話を聞いたトレーナー達と話し合って、俺が勝負の立会人になってな。だから勝負を近くで見なきゃいけない」

 

「・・・まさかだと思いますけど、トレーナー達でも賭け事してるんじゃないですか?ナリタブライアンが勝つか、俺が選択したウマ娘が勝つかで」

 

「ご名答。ちなみに俺はお前が勝つ方に賭けた。あとは言わなくてもわかるんじゃないか?」

 

「他はブライアン派か・・・まぁ、別にいいですけど」

 

「そう気を・・・おっと、どうやら来たみたいだぞ」

 

沖野が指を指した方向を見ると、俺を睨みながらこっちに向かって歩いてくるナリタブライアンの姿があった

 

「待ってたぞ。よく勝負をすっぽかさなかったな」

 

「当たり前だ。私がお前のような奴を背にして逃げるわけがない。それにお前みたいなふざけたトレーナーが選んだ奴などに負けるはずがない」

 

「あ?はっ、後で吠え面をかくんじゃねえぞ。どうせ、負けるのはお前だからな」

 

「その言葉、そのまま返してやる。それで?お前が選んだ奴はどこにいるんだ?逃げたのか?」

 

「・・・すぐ来る」

 

そう言った途端、外野が歓声の声を上げた。入り口を見ると勝負に無縁な奴が来ていた。その人物を見るとナリタブライアンはぎょっとした。まぁ、無理もないか

 

「まさか」

 

「いや、あいつじゃない。なんでお前が来てるんだ?シンボリルドルフ?」

 

「その前に双方共に私に言うことがあるんじゃないか?」

 

来たのは学園生徒会長であり、『無敗の三冠』を成し遂げたシンボリルドルフがこちらを見据えていた

 

「悪いがない」

 

「ないな」

 

俺とナリタブライアン、同時に反論してしまった。互いに何、被ってんだと言わんばかりの顔で睨みあう

 

「・・・君たちの勝負の話は聞いている。そして賭けの内容も・・・生徒会長としてこの勝負、すぐにでもやめさせたいところだが、やめさせても別の場所でやるのだろう?」

 

「ああ」

 

「当然だ。このバ鹿ウマに敗北をわからせてやらないと俺の気が済まない。それと、悪いが皇帝が出る幕じゃない。引っ込んでろ!」

 

俺はシンボリルドルフを睨み、引くよう促す。それに、ここまで話が広まっているならあの理事長にも伝わっているはずだ。だったら、呼び出しをくらっていてもおかしくはない。それがないという事は黙認されているとみていいだろう。なら、勝負を邪魔する部外者はこの場から去ってもらった方がいい

 

「・・・。はぁ・・・理事長から出来ることなら止めるように言われたのだが無駄のようだな。なら、この勝負の立会人になろう。そうすれば双方が納得できる審判ができると思っているがどうだろうか?」

 

去ると思っていたのだが、まさか立会人に立候補してきた。学園最強であるシンボリルドルフが立ち会うのなら、彼女の言うとおり、勝敗に文句は言えなくなるだろう

 

「そりゃいい。正直、立会人が一人だと不安だったからな。あんたも加わってもらうと助かる。お前はどうだ?」

 

「ふん。問題ない」

 

「では、双方が賭けるものを私に預けてもらおう」

 

シンボリルドルフが差し出した手に、俺はトレーナーバッジを、ナリタブライアンは申請書を渡す。そして、シンボリルドルフは申請書に不備がないかを確認した

 

「ふむ・・・内容、署名に不備はないな。確かに預かった」

 

「・・・どうやらやっと来たみたいだな。待ってたぞ、オグリキャップ

 

 

 

 

 

「待たせてしまってすまない。さぁ、始めようか」

 

 

 




ジェミニ杯Bランク制限で挑んでるのに勝てねぇ・・・何故だ

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