神様に気に入られた男は今日も学園で土をいじる 作:飽き性なSS作家
「って訳なんだが・・・みんなやってくれるか?」
例の件について彼らと話をするとみんなが
「じゃあ、頼む。報酬は今日中に前払いするから楽しみにしていてくれ」
そう言った途端にみんなが土下座する。うーん、極端すぎるよ君達。どんだけ日本酒好きなの。兄さん心配だぞ、お菓子につられて密猟者に連れて行かれないかぐらい心配だよ
彼らと話した後、軽く畑仕事をして朝食の時間になったため、カフェテリアに来たのだが・・・
ヒソヒソ、あの人・・・
他のウマ娘に嫌な注目されている気がする。俺、何かしたか?
「翔サーン!グッドモーニングデース!」
「おわっ!タイキ、いきなり抱き着くな!」
タイキに後ろから抱き着かれ、背中に異様な感触を感じて身震いする。こんな状況でそんなことされたら余計に視線が強まる一方だ
「ソーリー、翔サンを見たら居ても立ってもいられませんでしたので、つい」
「わかったから、放してくれない?恥ずかしいんだけど」
って言っても、タイキは放してはくれなかった。諦めてそのまま引きずって歩く・・・なんだか急に寒気が・・・
「・・・!」
「ハヤヒデ!ブライアンの機嫌が凄く悪いんだけど!というか怖いよ!」
「ふふっ、これはおもしろくなりそうだ」
妹があの二人を見た瞬間、機嫌が悪くなった。今まで、誰にも歩み寄ることも、興味も示さなかった妹がここまで変わった。それほど、彼が気にかかって・・・
「止めないの!?なんか、ナイフを投げ・・・って今投げようとしてる!駄目だよ、ブライアン!!」
前言撤回。妹は完全に彼の事を憎悪しているようだ。私は妹が罪を犯す前に、チケットと共に妹を拘束しに向かった
「翔サン!」
「翔サーン」
うーん。あれから一週間、タイキのスキンシップ(ハグ)が激しい。心のリミッターが解除されたせいか、場所と人の目を気にせずにしてくる。そして何より・・・
ブライアンの機嫌があきらかに悪い。なんか時代劇で「殿の敵ッ!」って言って切りかかってきそうな程、機嫌が悪い。オグリはいつも通り・・・
「・・・解放してくれ」
俺の野菜を盗み食いする。そして今、オグリキャップ捕獲機第七号に捕らわれ、ビヨンビヨーンと上下に動いている。ウサギのくくり罠を参考に作ったのだが、一号機から六号機まで捕獲用の縄がただのロープだったため、簡単に抜け出したり、切られていた
だったら思いきって、バンジージャンプに使われるゴムを使った結果、逃げれなくなったのだが・・・やはり暴食の女王は罠を見破る能力を持っていた為、あまり機能しなくなっていた
諦めるしか・・・いや、それでは駄目だと自分自身を鼓舞し、更に考え抜いた結果。装置はこのままにし、オグリが罠を回避した時、獣鬼に罠を強制発動させて、捕まえることを思い付き、今に至る。・・・たまにあいつらが引っ掛かる時はあるのだが、他の仲間が助けに来るので問題はない・・・よな?
「ところでトレーナー。最近、メジロアルダンがしつこく聞いてくるんだが・・・。タイキシャトルと
「なんだそれ?知らないし、してないぞ。そんなこと」
更に上下に動きながら、話しかけてきたオグリ。絶対この状況を楽しんでるだろ、と思いながら先程のうまぴょいという聞きなれない単語の意味を考えたが、あのふざけた歌ぐらいしか思いつかなかった
「そうか・・・じゃあ、明朝になってから寮までタイキシャトルを送ったのは事実か?それもお姫様抱っこをして」
それを聞いて、俺は雷に打たれたような気分になった。馬鹿な、あの時間帯は誰も起きてはいないはず、だとしたら誰に見られた
「知らね。ちなみに・・・いつからそんな話が?」
オグリに悟られないよう顔と声のトーンを変えないように話した。飯以外鈍感なオグリだ、バレたりはしないはず
「トレーナーがタイキシャトルと賭け事をした後日に話が出回っていたようだぞ」
「ああ・・・だからか」
カフェテリアの一件以来、こそこそ話している奴が多いなとは思っていたがそうゆう事か。おまけに俺の靴箱に『人でなし!』『男の敵!』『バクシーン!』と書かれた紙が置かれていたのもそのせいか
「わかったなら・・・降ろしてくれないか?なんだか・・・さっきからボーっとしてきたんだ・・・」
「バカ!それを早く言え!」
ちなみにこの後、ぐったりしたオグリを看病したのだが・・・罠を仕掛けた代償として苺をたらふく食われました。食堂の皆さんごめんなさい・・・夕食に予定していたデザート、パイナップルに変更です。・・・過去最高額、200万のパイナップルです・・・美味しく調理してあげてください
別に小遣い稼ごうって思って、作ってないんやからな!
「えー。今日はダンスレッスンを始め・・・はぁあああ・・・」
開始早々、俺はため息をつく。スタジオ借りたのはいいが・・・教えるのは嫌なんだよな
「おい、トレーナー。こんなくだらない練習より、私は」
「走りたいんだろう?俺もそうしたいんだが、週に一度はダンスレッスンしないと駄目なんだと」
おかしな話だが、ウマ娘はレースに三着以内に入るとウイニングライブ、要はアイドルの真似事をしなければならないのだ。
競争にエンターテインメント性を高めようとお偉いさん方が模索した結果がこれとは、相当頭がイカれてると思う
「文句は言わずにやってくれ。それに・・・ウイニングライブは意外とバカにはできないんだよな」
「なんだと?何故だ」
「ウイニングライブは第二のレースでもあるんだよ。例え話だが、ある時クラシックの皐月賞に出走したいウマ娘がいた。実力は強い方、だけど、出走権を賭けた前哨戦で惜しくも落ちてしまった。しかし、出走権が与えられました。さて、何故でしょう?わかった奴から手を上げて」
「ん」
「はい、オグリ」
「上に直談判した」
「それで出れたら全員苦労しねぇよ。次」
「ハイ!」
「タイキ」
「巨額のマネーでURAを買収しマシタ!」
「50万ドルponとくれたぜ。って、ほとんどオグリと変わらないぞ」
「・・・運がよかった。それだけだ」
付き合ってられんと言わんばかりの冷静な表情でブライアンは言った。まぁ、正解って言えば正解なんだが
「正解は「抽選よ♪」・・・来たなら声出せよ、マルゼン」
いつの間にかスタジオに上がり込んでいたウマ娘。名前はマルゼンスキー、生徒会長の良き相談役であり、それに並ぶ程の実力者と噂されている・・・が、それとは裏腹に皆が口にはしないのだが、喋り方がおばちゃんみたいだと言われてもいる。そんな彼女がここにいるのには理由がある
「いいじゃない。私と貴方の仲なんだから、昔みたいにマーちゃんて呼んでもいいのよ」
「・・・。まぁ、こいつの言うとおりで、前哨戦で負けたとしても抽選で入れる。だが、抽選リストに載るのは観客の人気が高いやつだけ。だから、ウイニングライブでダンスと歌を披露して、少しでも人気を稼ごうと努力する奴もいる。って言っても、抽選枠はたったの十枠しかないから、負けてもいいなんて考えるなよ」
突然の話に俺は呆れた顔をしながら続きを話した。正直言ってこいつ、妙に馴れ馴れしいのだ。俺が学園に来て右も左もわからず道に迷っていた時、初めて会ったのにもかかわらず、こいつは俺の手を躊躇なく握って引っ張りながら学園を案内をした。それ以降、ちょくちょく農園に来て差し入れとか持ってきてもらっていたのだが、俺に良くする理由がわからないから、若干不信感を抱いている
「それで?私を呼んだのはこの子達にダンスを指導する為で良いのかしら」
「ああ。ここの先輩でもあるお前の指導なら、ブライアンもちゃんと聞くはずだからな。ちなみにこいつは見ての通り、暴れウマだから気をつけろよ」
「おい」
「大丈夫よ。あなたが心配するほどの子じゃないのはわかっているから」
「・・・。じゃあ、後は頼んだ。三人ともみっちりしごかれろよー」
そう言って俺はスタジオを後にする。後ろで何かを言われた気がしたが、気にせず農園に向かう。・・・品種改良した作物のデータを今日中に送信しないといけないからな!ダンスなんてやってられるか!!
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
「ん・・・。・・・マジか」
タイキの走行タイムをマイル、中距離、長距離の三つに分けて測定した結果、重賞を狙えるタイムがマイルしかなかった。・・・体が大きい割には持久力がないってのはどうなんだって思うが・・・ただ、ラストのストレートでの爆発的な加速は今のところ、チームにはない長所とも言える
「ど、どうデスカ。トレーナー・・・」
「お前、意外と体力なかったんだな」
スパッと言い放った言葉にタイキは余程のショックを受けたのか、ヘナヘナ~と倒れていく。
「まぁ、マイルだと重賞狙えるからいいとしよう。・・・はい、王手」
「なっ・・・!!」
うねりにうねって、諦めたのか。黙ってブライアンは走り出した。ちなみに今日のブライアン、十五連敗
「さて、オグリは・・・。うん、問題なしだな」
最初の頃はタイムにバラつきがあったが、かなりの数を走った成果が少しずつ出てきている。課題の五秒以内の範囲に収まる事が多くなった。課題は達成しているがとりあえず、メイクデビューまでこれを続けてもらおう
♪~
携帯の着信音が聞こえたので画面を見るとあいつからの電話だった。内容は把握できていたのですぐに切った
「ホワイ?出ないのデスカ?」
「んー。電話、イコール、呼び出しだからな。はー・・・悪い、ちょっと行ってくる。タイキ、ブライアンが来たらマイルの距離でいいから併走トレーニングやっといてくれ」
「分かりマシタ!」
「・・・入るぞ」
ドアを開けた先には書類の束を高速で処理している
「ん?ああ、すまない。あと少しで終わるから、座って待っていてくれ」
「別にいい、用件だけ聞いたらすぐに帰る」
そう言うとシンボリルドルフは急に書類を取る手を止め、立ち上がり、俺の前まで歩いてきた
「・・・ふぅ。では、単刀直入に聞こう。先週から君とタイキシャトルの関係性についての話が絶えなくてね。その中で気になる話があった。不純異性交遊をしたのではないか、とね」
先程の穏やかな雰囲気が一変し、シンボリルドルフから威圧感を感じるようになった
やはり、その件か。まったく、最近の世代というやつは、なぜそこまで話を飛躍させるんだか
「言っとくが、俺はそんなことしていない。まぁ、門限破ってまで俺に会いに来たバカはいたが、少し話をしていただけだ」
「証拠は?」
「そう言うと思って持ってきた。ほら」
俺は懐からレコーダーを取り出し、あの日の会話を聞かせた。会話が終わった時のシンボリルドルフはただ、頷いているだけだった
「確かに。これを聞く限り、話していただけのようだ。だが・・・門限を知っていながらだけではなく、トレーナー寮の規則すら破っているのはよろしくないな」
「あのまま帰したとしても、また別の日に来ると判断しただけだ、他意はない」
「・・・。とりあえず噂の真偽を確かめた以上、生徒会や理事長でこれ以上、話が出回らないようにする。だが、生徒をトレーナー寮で匿った処分は受けてもらうことになる、そのつもりで」
「どうぞ、謹慎でも何でもご自由に。じゃあ、あいつらが待ってるから失礼するわ。じゃあな、
彼女の昔の名前を言ったのを最後に生徒会室を出ていく。出てからすぐに、俺は何故かブライアン達が待っているであろう練習場に足を早めていた。まるで、殺し屋から追われて逃げる映画の登場人物のように
「ルナ・・・か」
イスに腰掛け、幼き頃の自分の名を小さな声で復唱し、あの時の言葉を思い出す
私がトゥインクルシリーズに一線を引き、周りが皇帝とおだて上げていた中、圧倒的な速さで私を撃ち落としたウマ娘がいた。トレセンにもいない、URAにも登録されてないウマ娘は非公式とはいえ、私に勝利したと同時に、この言葉と共に深い霧の中に消え、姿を消した
だが、あの白を基色とし、太陽のような紅い隈どりの模様が入った勝負服が遥か先に消えていく光景は今でも鮮明に思い出してしまう
そして・・・ジャパンカップで初めて負けた後、私から去っていった君のことも
「くっくっ・・・君はいつ、彼女達を率いて私を落としに来るのかな?生徒会長は本当につまらない立ち位置なんだ。だから・・・そろそろ我慢の限界だよ」
私は窓から見えた彼の後ろ姿を睨み、いつか彼に、この煮えたぎる憎悪をぶつけられる日が来ることを楽しみにしながら、語りかけていた
生徒会長との話以降、結果としては俺とタイキの疑惑は生徒会と理事長の働きによって、事態の収拾がついた
だが、規則は規則の為、タイキには六枚分の反省文の提出。俺は一週間の謹慎が与えられた
一週間で済んでよかったですね、と暴力兄がウマ娘との逢瀬による失態を犯したことが判明し、罰を与えられたことで、上機嫌になっている葵に言われ、頭に来たのでヘッドロックを決めたことは二人だけの秘密だ
謹慎が解除されしだい、畑に向かい。オグリによる被害を見なければ。・・・まさか、とは思ってはいるのだが、作物が全滅してない事を祈ろう。本当に