神様に気に入られた男は今日も学園で土をいじる 作:飽き性なSS作家
「・・・これはまた。でっかく作ったなー」
そう言うと獣鬼達は嬉しそうにはしゃぐ。本当、彼らに頭が上がらないことがまた一つ増えた。だが・・・
「だけど、道具を使って生徒を脅かすのは
そう言った途端、ギクリッと思ったのか。全員、フリーズした。これは俺の謹慎が解かれ、少し校内を歩いていた時に変な噂を聞いてしまったのだ
『旧校舎近くで大量の刃物が浮いたまま、生徒一人に向かって飛んできた』と生徒一人が興奮気味に喋っていたが、その隣を歩いていた俺は冷や汗が止まらなかった。そんな現象が起きる原因は一つしか考えられなかったからだ
「今度から生徒がいたら道具を向けるな。わかったな」
少々威圧しながらそう言うと彼らはすごい速さで首を上下に振った。それにしても驚かされた生徒は大丈夫だろうか。話にはその娘の名前が出なかったから。知る機会があったらその娘に謝罪の品を用意しなければいけないなと、そう思いながら道具の磨耗具合を確認しに行った
余談だが、オグリによる被害額合計、六百万だった。何故かって?あいつ、カフェテリアのデザートで出されたパイナップルに味を占めただけではなく、隣のビニールハウスで栽培していたスイカまで食いやがった!
俺は怒った。かの暴食葦毛を罰せなければと。そして何食わぬ顔で畑に来たオグリを見つけ、オグリ目掛けて一直線に走った。オグリは俺を見た瞬間、まずいと思ったのか全力で逃げだした。俺は全身全霊でオグリを追い、捕まえたと同時にパロスペシャルを決めてやった。虐待とか知ったことではない。無駄に散っていった
そして6月。オグリにとって運命の一戦、メイクデビューが開催された
会場は新たに生まれるスターの走りを見たいが為に大混雑となった。まぁ、どっちかというと前者の次に見たいものもあるだろう。なにせ、今日走るウマ娘は全員、
初めて見る奴も古参勢達も、走っているウマ娘を凝視するだろう。胸についたたわわな果実が揺れながら走り去っていく姿、今日は晴れているが、雨の日は素肌にくっついた体操服によって体のラインがくっきり浮き出る現象を目の当たりにする
まぁ、俺はそんなのには興味がない。あるのは・・・誰が、新たな伝説の玉座を作り上げるのか。ただ、それだけ
「さて、オグリ。・・・オグリ?」
「むっ?なんふぁ、トレーファー?」
「・・・誰が走る前に焼きそば食っていいと言った!ってか、その焼きそばどっから持ってきた!?」
走る前に飯をくらうバカがどこにいる!?・・・ここにいたわ
「なんでぇ。ウチの焼きそばにケチつけるってか?」
なんか葦毛が増えた!って、こいつ
「何やってんだよ。ゴルシ」
学園のトリックスター、ゴールドシップだった。何を考えてるのかわからないと生徒、トレーナーから長い事言われ続けているウマ娘。そんな彼女がなんで割烹着着て、焼きそばの旗を持ちながら売人やってんだ
「そりゃ、年に数回のイベントだ。少しでも、ゴルシちゃんブランドを広めるにはちょうど良いんだよ」
「そういえば・・・お前、去年も何かやってたな。確か、おにぎり屋だったか?」
「いや。茶碗蒸し屋だ」
「なんで茶碗蒸し?!お客様にぬるい物を提供する気か!?」
「ふっ、ゴルシちゃんがそんなミスするわけないだろぉ~。最初から冷たいやつを提供したんだよ」
得意顔で言っているが、買ったやつがどんな顔をしたのか。ちょっと想像がつく。その経験を踏まえての焼きそばなら、よく考えた方だろう
「まぁ、焼きそばだったら冷えてもおいしい・・・なんだこの焼きそばは!野菜はぶつ切り、ソースがかかってる所が偏りすぎだし、麺は中華麺じゃなくて、うどんじゃねぇか!?」
「あ、わかっちゃったか。仕方ねぇだろ、中華麺頼んだつもりが何故かうどんにすり替ってたんだからよ」
「じゃあ旗も・・・替えが効くはずもないか。お前の事だし、で?そんな雑な料理を処分するのに困ったから暴飲暴食の女王、オグリンに食わせてたと」
「あったり。じゃあ」
「金払わんから安心しろ。さぁ、帰った帰った」
「そんなわけにはいくかってんだ。払わないと」
「払わないと・・・なんデスカ?」
ゴルシが後ろを向く前に顔面を掴まれ、そのまま宙に浮く。もちろん、顔面を掴んでいるのはタイキだ
「いでででっ!?ちょ、なんだよこいつ!?」
「最近、契約したタイキシャトル。気をつけろ、そこいらのウマ娘とは違ってかなりのパワー型だから」
「オグリキャップの時からおかしいと思ってたが、お前、農園経営はどうしたんだよ!?」
「絶賛分業中。ってか早くしないとトマトのように潰れちゃうぞ」
タイキの本気は木の幹さえも破壊するからな。ハグで、だけど
「ふっ、わかってないな。翔、ウマ娘国際条約第一条」
「そんな条約知らないし、知りたくもない。タイキ」
「ハイ!なんデショウ?」
「とりあえず、外に放り出しておいてくれ」
「おいてめぇ!」
「わかりマシタ!」
ゴルシの顔から手を離すとすぐに服の襟首を掴み、ダッシュで去っていった。この失敗を生かすなら、とりあえず料理教室にでも通うんだな、ゴルシよ
「トレーナー」
「オグリ、お前も「食べる?」・・・頂く」
オグリが差し出したのは、野菜がしっかり焼けていてソースも均一にかかっている物だった。オグリにしては気が利くなと思ったが、体操服についていたソースの染みと出ている腹を見た瞬間にその気は失せ、俺はオグリを叱っていた
『さぁ、始まりました!今年度、初のメイクデビュー戦!実況は私、赤坂と』
いつもの宣言というか、恒例の実況者の放送が聞こえる中、俺はブライアンとタイキと共にVIPルームで観戦しようとしていた
「お前、なんでこんな部屋に入れるんだ?」
「ん?いつもは普通の観客席で見るけど、今日はお前らがいるからな。上に頼んで空いている席に無理やり入れてもらったんだよ。それに持っている地位は有効に活用しないとな~。それに」
「兄さん!また父さんを恐喝したでしょ!?」
「席が空いていることを知らせてくれた礼も言わなきゃいけないし」
癇癪を起しながらこちらに向かってくる妹、葵とハッピーミークがいた
「いやー、
「珍しくラインしたと思ったら、こんな事の片棒を担がせられるなんて。兄さん、少しは桐生院家の地位を考えてください!」
「知るか、そんなこと。ある地位は有効に活用するのが俺のモットーだ。ってか、お前うるさい。周りを見てみろ」
そう言われて、ハッとしたのか周りを見渡す葵。視界には他の観客がこちらを見ているはずだ。ただの部屋ならともかく、ここはVIPルーム。高い金払ってここにいる連中だ。場違いな連中だと思われている
「もしかして、桐生院家の人ですか?」
そう思っていた時だった。三十代ぐらいの男性がグラスを持ちながら、こちらに歩み寄ってきた
「そうですが・・・」
「!やっぱり!じゃあ、そちらの人があの皇帝、シンボリルドルフの伝説の礎を作り上げたトレーナー、桐生院 翔さんですよね!」
その言葉でその場が凍り付いたかのように静まった。この男があのシンボリルドルフのトレーナーだと
「すみませんが、この人は桐生院 翔ではありません。この人は桐生院
先程とは違い、冷静な対応をするこいつの妹の葵。どういうことだ、こいつは翔と名乗っていたじゃないか。トレーナーに目を向けると奴は男から顔を背け、少し震えているように見えた
「いや、でも」
「しつこいですね。これ以上追及するようでしたら・・・」
鋭い目つきで男を睨みつけると男は萎縮したのか、その場から去っていった
「・・・兄さん」
「・・・大丈夫」
トレーナーは深呼吸をしてから再び、妹に向き合った
「トレーナー。さっ「ちょっと・・・二人だけにしてあげてください」お、おい」
先程の事を追及しようとした時、葦毛のウマ娘に押され、私とタイキシャトルは外の観客席まで押し出された
「すみません。こうでもしないと翔さんに突っ掛かりそうなので・・・」
「あの・・・翔サン。昔、なにかあったのデスカ?」
タイキシャトルの言い分に私も心の中で賛同する。こいつも明らかにあいつの様子がおかしいと思ったはずだ
「わかりません。ただ・・・、翔さんは研修生時代の時にシンボリルドルフの担当をしていたとトレーナーが言っていたので」
だとするなら、シンボリルドルフの担当だった頃にあいつに一体何があったのだろうか
?なんだ?この嫌な感じは・・・