楽しみだから負けられない。
二次創作の薄っぺらいプライドにかけて、アニメ開始までにお気に入り登録1,000件を目標にして頑張るどん(O゚皿゚O)
戦いの舞台は花街の全体へと拡がっていた。
妓夫太郎の飛び血鎌、堕姫の八重帯斬り。
それらは広い空間でこそ最大限に能力を発揮し、二体の頚を同時期に切り離されなければ死なないという己の特性を活かす事が出来る。
そして何よりも、音。
藤の花の紫煙を引き裂いて、稲穂鈴の祀りの音色が鬼を払う。
「また毒が消された!」
「わかってんだよなぁ…!!」
鈴の音が響く度、鬼狩りに蓄積された毒が祓われる。
傷は消せないその音色が妓夫太郎と堕姫の精神を、いや、彼らの中にある鬼舞辻無惨の細胞を刺激するのだ。
それはあたかも龍の逆鱗に触れるかのように、効果云々を度外視して苛立ちと憎悪に視界が眩むほど。
姿は既に視認している。
京極屋の屋根の上、そこに舞い踊る狐の巫女。
幾度かの接触で、奴が未熟な踊り手であり既にして『神霊』などという仰々しい名の付いた『ナニカ』に呑まれている事は判然としている。
通常、呑まれた術者は弱い。
人としての感覚を無くし、『ナニカ』の傀儡として『ナニカ』がこの世を愉しむ為だけにさまようのだ、赤子の手をひねるように、簡単に殺せる。
「目障りなのよ!」
隙を見て、堕姫が帯を放つ。
その一撃に呼応して浮かび上がる幻影の狐面。
この世の流れから外れし、孤高な舞い女を守るように。
淡い物から濃い物まで、複数矢鱈に浮かび上がったその面、狐の群れが一様に構える。
(『水の呼吸・壱ノ型ーー水面斬りーー』)
一つの幽格ではなし得ぬそれを、口に傷持つ仮面を中核として意思無き幻影が成し遂げる。
その防壁があれば、手が余る。
余った炎の手は、堕ちた娘を打ち上げる。
「炎の呼吸・弐ノ型ーー昇り炎天ーー」
遅い。
この場に在する誰と比べても、遅い剣閃。
炎などとは片腹痛い。灯火のごとき残り火すら見せられぬ、呼吸の剣とは程遠い無幻の刃。
それが、奇術のように頚を落とした。
煉獄槇寿郎。
炎神の末路。
幻影にすら見放された、それすらも超える一閃。
「なんで、なんで!?」
斬り捨てられ、重量に引かれ、堕姫の頚が落ちる。
転がる先には狐の巫女。
堕姫の血を顔に散らした年端もいかない小娘。
その瞳は何も映さない。
しかし、頭の側面に掛けた狐面が、ひとりでに動いてその顔に被さった。
『…き、よき、よき』
脳の裏側に忍び込むような、悪寒。
『きよき、よき、よき、きよき、よき』
傀儡の腕を操り、『ナニカ』が堕姫を持ち上げた。
こしょこしょと、耳に残らない音を発して『ナニカ』が嗤う。
『ヨキ、ヨキ、ヨキ!!』
流し込まれる。
そう直感した。
得体の知れないナニカ。
道理から外れたナニカ。
こんなモノを崇めるの?
ここまでして鬼を殺したいの?
私達は、それ程までに許されないの?
…消される。
消滅を覚悟した堕姫を衝撃が襲った。
それは兄の血鎌。
三本の血鎌、二つは巫女を狙った牽制。
狙い通り、狐面の幻影と槇寿郎に落とされ、最後の一本が堕姫の顎を下から貫いて咥える。
衝撃をそのままに、巫女の手から離れた頚を妓夫太郎が掴んだ。
「悪ぃな、痛かったろ?」
その痛みの暖かさに、堕姫の涙腺が弛んだ。
◇
これぁ、詰んだなぁ?
妹の頚を抱きながら結論を投げた。
始めに出会った若い二人の鬼狩り。経験も膂力も剣の筋も、何もかもが浅い。だが、それを補って余りある連携の練度が、俺の手に余るほど煩わしい。
派手毛の迅速かつ合理的な判断に基づく無謀な突貫、それを白蛇が冷徹かつ精密な波打つ刃の一撃で補う。
どうせ俺らの情報は筒抜けだからなぁ?
いっそ開き直って、鬼の体力と膂力を武器に『円斬旋回・飛び血鎌』で強引に攻守を変えると、そこからがまた酷い。足らぬ膂力を補うように四本の腕を自在に操り、一つの個体として捌ききる。
毒さえ機能していればなんとでもなっただろうが、現実に『たられば』は無い。
俺ではこの二人は殺せない。
この二人と巫女だけならまだ倒せた。
妹は素早く、帯は広域を網羅する。
俺が二人組を抑えている間に妹で巫女の頚をちょん切れば、後は放置して仕舞い。だが、ここであの男。
妹の頚を易々と切り落とした派手毛の親父。
見えていて、対応できない。
視ているにも関わらず、見ることが出来ない。
俺はこれを知っている。
上弦の壱・黒死牟。
一度、嫌々だったが稽古という名の死合をさせられた事がある。
先の先、だとか言ったか?
至る事が出来た一部の存在にだけ扱える妙技。
生物の波動?意識?その間隙を突く技術らしいが、そんな絵空事を鬼の黒死牟様が行うならまだしも、二十・三十程度しか生きていない人間が、見るからに疲弊した肉体で放つだぁ?
静止中ならまだしも、宙を駆けての攻防の最中だぞ。
化け物だ。
いや、このオッサンだけなら、まだそれでも逃げる道もあった。
だが。
「遠雷・神速っ!」
雷小僧。
こちらはまだ見える。
見えるし、対応だって出来る。
だがなぁ。単純に早い。
速さは強さだ。
それに、技量の差を理解してやがる。
狙い難い頚ではなく、脚を斬り飛ばしやがった。
あーあー。
俺の大事が右足が、根元っから紫霧の中にドボンだぁ。
妹の身体と一緒、あっと言う間も無く消えちまう。
「は~………」
参ったぜ。
降参してお手々をポイと万歳すりぁ、妹だけでも見逃してくれねぇかな?
まったく。
「妬ましいなぁ?」
無くした片足は再生させない。
無惨様から頂戴した血は、そんな些事にぁ使えねぇ。
「お前らは五人、俺らは二人だ。しかも妹は頚しか残って無いときた。なぁ?羨ましいなぁ?」
ゆっくりと、血を集める。
…と、気が付いたな?
だが、お前は俺の支配下だからなぁ?
黙ってろなぁ?
「喋らせるな、雷月」
糞が、判断まで早ぇなクソ野郎が。
化け物野郎の号令で、雷小僧が蒼い稲妻の闘気を纏う。
は、はは。
そりゃ速いわけだぜ。
なんだこの活力の暴圧は。
技術云々を虚仮にしてやがる。
単純完全な、死の宣告。
時間が足らねぇ。
せめて、妹だけは、コイツだけは…!
鬼に、祈りなど無い。
神に見放され、無惨に拾われて。
終わった人生を見返すために、終わっている鬼生で神を呪うのだ。そこに祈りなど、入る筈がない。
だから、だからこそ。
それは妓夫太郎にとって奇跡だった。
「なんというザマだ、妓夫太郎」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は己の現状把握能力の限界を、痛みと共に痛感した。
白い帽子を被った細身の男性。
脈絡。
それは『つながった道筋、つながり』を意味する。
そういう意味では、ソレが脈絡無く現れた出でたこの現実は、実に正しく歯車を回していると言えるだろう。
【鬼舞辻無惨】
千年もの時を越え存在し続けている、鬼の始祖。
咄嗟に珠身常を防御に回したのが正解だった。
ギリギリで致命傷を回避した。と思う。
左目の上の皮膚が食い破られたように痛む。
けど、まだ大丈夫だ。
痛い、痛みを感じる。
その感覚が有る限り、大丈夫だと思う。
「私はショーを見る予定だったのだ」
平淡な声。
怒りなど微塵も感じさせない音の波。
「お前が鬼狩りとなり十年と少し。私は待っていた。何一つ価値を持たない屑籠のような世界で、私の妨げとなる命が潰えるのを、ただただ座して待っていたのだ。わかるか、槇寿郎?」
わかるか、妓夫太郎。
その声色の、根源に根を張る混沌の憎悪。
「何故殺せない?何故殺されている?お前は、お前の目は何の為に数字を刻んでいるのだ。まったく、上弦であるからという理由であまやかしすぎたか。それにしても、耳障り…ではないな、存在そのものが私に障る」
なんとかして見上げた先で、無惨が手を振り払うと、真菰の頭が砕けた。いや、それを護っていた狐の面が。
『ーーーー!!』
筆舌にし難い獣の声を放ち、神霊の気配が消える。
倒れ伏す真菰に追撃すら加えない。
その必要が無いのだ。
「癪に障るモノを二つも集めた事だけは誉めてやってもいい。もっとも、それを私に排除させた時点でお前の価値は塵以下の汚物と大差ないが。本当に、嘆かわしい。何故だ、何故私が汚物ごときに触れねばならぬのだ。お前はなんの為に存在しているのだ。なぁ?」
妓夫太郎、妓夫太郎、妓夫太郎!!
「神霊。ハッ…カスが、よくもそのように大層な名を騙ったものよ。
肉袋に寄生せねば世に干渉する事すら叶わぬ魑魅魍魎の類いが、小賢しい術を弄してこの鬼舞辻の術理を妨げるとは、身の程を知れ」
怒りを紛らわせる程度の感覚で、杏寿郎と伊黒が舞台から跳ね落とされる。紫煙で見えないが、死んではいないと信じる事しか出来ない。
「そして槇寿郎。百年ぶりに現れた人外の極み。お前のせいで私の慟哭は十年以上も引き伸ばされた。お前には理解できないだろう、その罪がどれほど重たいか」
「理解できよう筈もなし」
対峙する槇寿郎殿の身体から、音が聞こえる。
砂粒が、僅かしか残されていない命の砂粒が落ちて舞う音。
「鬼の始祖、鬼舞辻無惨とお見受けする」
「いかにも」
「我が一族の受け継ぎし自壊の業、愚かで惨めなこの炎の呼吸を持って、お前を討つ」
「ハッ、出来るのか槇寿郎、立っているのがやっとなのだろう?」
ニヤリと嗤い、妓夫太郎に管を突き刺した。
「私の役に立て、これが最後だ」
注がれた血に比例しない。
ボコボコと音まで立てて歪に盛り上がる肉の塊。
堕姫の頚を抱えたまま、妓夫太郎の身体が内側から張り裂ける。
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咆哮、突進。
もとより技量には劣る妓夫太郎の使い道としては悪くない。相手が煉獄槇寿郎でなかったならば。
必然としてかわされ、頚に刃を受ける。
しかし、通らない。
その刃には活力が無いから、妓夫太郎の分厚い頚の肉を斬るには不足しているから。
このままでは千日手だ。
いや、それにすら至れない。
このまま同じ手順を繰り返すだけで、槇寿郎に残された命の時間はガリガリと削られる。
だから。
そうか、だからか。
俺は理解した。
俺がこの場に残った必然を。
「全集中」
立ち上がり、活力を叫ぶ。
珠身常が通用した事は僥倖だった。
不快そうに顔を歪ませて、気紛れ程度に気の抜けた攻撃を俺に向ける無惨。その中で致命傷になり得るモノだけを切り払い、活力を渦巻かせる。
雷の呼吸の本質は願いの変換。
だとすれば、俺と善逸の優劣はどこで決まるのか。
善逸と
脚に指令を送ってそれを活力に変換すると言えば簡単に聞こえるが、地形によって指示を送る筋肉の部位は微妙に変化する。
その僅かな変化はしかし、電気信号での視点で見れば山と谷ほどもの差となり使用者の感覚を狂わせる。
そして、変換の拍子を見誤れば雷の型は崩れ去り、俺のように微妙なズレであれば技の威力と精度が大幅に激減する。
これこそが善逸が放つ壱ノ型の強さの根源。
完全なる感覚の持ち主。
珠身常は己の丹田に雷の珠を作り出す技術。
その珠は俺の過剰な呼吸から生まれる活力の余波を凝縮して発動する。
本来なら拍子がズレて、変換に失敗し霧散するだけの活力の残りカスを集め、練り込み、輝く一つの珠と成す。
その珠の役割は技の威力の増大…を、本領としない。
その特性は肉体操作。
俺の未熟な技術を補い、相手と場所に、機に合わせた最適な筋肉の稼働、その道筋を迸る。呼吸の扱いにばかり傾倒した俺にとって頼みの綱となる俺だけの呼吸の業。
だが、その用途はまだある。
藤襲山で行った合同訓練。
そこで知った呼吸。
俺は基礎となる四つの呼吸を修めた。
水以外の全て。
しかし、どう足掻いてもそれを並列に起動させる事が出来なかったのだ。
一つの呼吸を成す為には、もう一つの呼吸の箱を閉じる。
活力を生み出す箱を四つも抱えておいて、そこから得られる膂力は一箱づつが限界だった。
「呼法変幻・流転」
四つの呼吸を一息で巡らせる。
身体の中に、その道筋を通す。
「珠身常」
それを用いて、道筋を固定する。
そして、箱に穴を開け、繋ぐ。
空いた穴が塞がるのかは知らん。
空けたことでどうなるのかも知らん。
最悪今ここで死んだとしても、俺は知らん。
一つの箱しか開けられないのなら、強引にでも全ての箱を繋ぎ活力を取り出せば良いのだ。
「なんだ、これは?」
さて、なんだろうな無惨さん。
無学な俺に教えてくれよ。
穴から血が溢れる。
ははぁん?
水の呼吸が無いから基盤が軟弱なんだ。
だから、自壊していく。
己の活力に肉体が、耐えられない。
「日の呼吸?」
活力だけを見れば、近いものはあるだろうな?
なんたって四箱分の活力だ。
だが、違う。
本物を見たお前になら理解できるだろう?
これが擬物でしかない真実を。
だから、教えてやろう。この
「
日の有るところに影がある。
煌々と輝く奇跡の技の、その残りカス。
お前ごときなら、それで十分死ねる。
だから、今ここで死んでくれ、無惨。
「
命を食い破る命の業が、悪鬼に届いたかどうか。
なぁ。
誰か、俺に教えてくれよ。
真菰を護る狐面の軍団、名称は潜群護影。
完全に中二病入ってますが、これは作者の責任ではありません。
何故なら完璧に中二世代の方が作成兼命名者なので。
作中で一行だけ触れましたが真菰と胡蝶カナエさんは狭霧山で出会っています。
即時に意気投合。
てぇてぇって奴やね。