『善逸、お前は俺の誇りだ』   作:マキシマムとと

24 / 50
前回の補足。

その①

黒死牟さんが炭十郎を見た際の感想で『老化』を見抜いていましたが、老化の程度はまだ日常生活に差し障るほど酷くはないです。
余命三年程度は残ってますし。

黒死牟さんの基準は縁壱なので、普通の感覚とのズレがデカイんですね。

その②

たんじろパパのお仕事がどれだけ大変だったかを再確認するために炭焼きという職業について調べていた(昔調べたことがあるが、作者の記憶力はサイコロステーキ以下略)。

するとそこで鬼滅の舞台が大正三年頃になる、という記述を発見。手鬼の台詞から逆算するとそうなるらしい。
作者の記憶力は以下略なので、数年間違えて覚えている可能性があるが数年は許していただきたい。

つまり、この作中での舞台は明治末期であることが確定しました。
これにより23巻に描かれていた物語が未来の出来事であると推測でき、場所については【東京】と確定しています。
時代の把握については『あらすじ』がお仕事をしていますし、場所については最終話、吾妻喜照登場のページに記載有り。

あらすじ冒頭の『炭を売る少年』から炭焼きと仮定→山中に住居があり、八人家族である可能性が高い。
ここまで情報が揃えばあとはローラー作戦で一発です。

その③

たんたんのママが青い彼岸花を知っていたのは事実ですし、たんたんが青い彼岸花を見たことがあるのも同じ。
詳しくは公式ファンブックの下巻に書いてあるので、嘘だと思う人はこれを機に購入しましょう。

そして購入するのなら下巻だけ買うより上下揃えたほうが精神的に満足感が出ますよね。
上下を揃えたならいっそ、画集も揃えたくなるのが人間ですしお寿司。

最近はコロナで不景気でしょ?
お金を回すのも人類の務め!

???「さぁ…書店へ…赴け………!!」




第 弐拾肆 話『カミカミ』

 

炎舞 幻日虹 火車 輝輝恩光 飛輪陽炎 斜陽転身 日暈の龍・頭舞い 陽華突 灼骨炎陽 烈日紅鏡 碧羅の天 円舞 …すべての技が美しい。

 

鬼狩りであった頃に夢に見て、嫉妬に狂い、鬼に果てる迄に求めた至高の剣技。

 

神楽。

なるほど確かに神楽なのだろう。

そのようにして受け継がれて来たのだろう。

しかし、この男は理解している。

ヒノカミ神楽は、鬼を滅する為の剣であると。

 

「円舞…飛輪陽炎……そして、灼骨炎陽…か…」

 

あの頃の記憶。

いや、あの男の記憶だけは赤子の生き血よりも鮮やかに脳に焼き付けられている。

目の前の男の剣は、縁壱が使った剣と似て非なる剣だった。

 

縁壱の剣を受け継ぎ、私と無惨様に滅ぼされた日の呼吸の剣士とも、違う。

技の精度や型では無い。

手にした武器の形状による扱い方…それとも違う。

 

日の呼吸の剣はもっと苛烈であった。

一刀に魂を込め、一撃に命を捧げる。

 

この男は、ヒノカミ神楽は違う。

一撃の火力が薄れたわけではない。

ただ、繋がっているのだ。

 

「火車…炎舞……烈日紅鏡…なるほど………」

 

途切れない、終わらない。

私が受けようとも、逸らそうとも、弾こうとも変わらない。

どのように剣を変えそうとも、この剣舞は途切れない。

恐らくこの身に剣を受けようとも、ヒノカミ神楽が止まる事はない。

機によって出足を変え、場によって剣線を変えて。

しかしてその全てが間違ようもない鬼殺し。

 

「縁壱め…縁壱め…縁壱め………!」

 

何度、私の臓腑を汚すのか。

これは、無惨様を殺す為の型。

 

 

 日の呼吸・拾参ノ型

   【ヒノカミ】

 

 

名を付けるなら間違いなくこうなるであろう。

己よりも劣った人間に受け継がせた、人間の為の【神殺し】その技法。

無惨様を大地に縫い止め、太陽の光を待つ。

姑息な、そしてなんと言う傲慢か…!

 

「ーーー貴方は、誰を見ておられる」

「……!」

 

男が放った技は碧羅の天。

日輪の如く円を描く強烈な一撃。

…だが、遅い。

一歩足を引けば、畳を切るだけに終る無様な…?

 

縁壱であれば、そのようなーーー!?

 

足元が爆ぜる。

これは、音の呼吸と同質の…活力の浸透…!

私の体勢が崩れた一瞬。

そこで、流々とうねりながら貫き通す龍の連撃。

 

ーー日暈の龍・頭舞いーー

 

出来る。

この男、刃を交える毎に剣士としての格が上がる。

されど。

 

「弐ノ型・珠華ノ弄月」

 

技の起こり、相対する者の狙い。

それらを看破する我が六眼の前に死角など…?

 

連撃を完全に受け流し無効化した。

その視界の色が変化する。

違う。

色ではない、明度。

明るさが、変わって…………!

 

上方。

戦闘開始前に私が吹き飛ばし、家の梁に食い込ませていた戸が落ちてくる。

恐らく、先程の活力の浸透と爆発。

足元と、己の攻撃を欺瞞とした第三の攻撃…!

 

意識が分散する。

それは…間隙。

 

「…!」

 

これは…先の先か。

完全に見失った。あの一瞬で…!!

 

「伍ノ型・月魄災渦」

 

刀を構えたまま、振ることなく広範囲を斬り裂く。

選ばれた者に打ち勝つために編み出した、未熟を補う為の児戯。それでも、恥を晒そうとも。

 

敗北だけは許されない。

 

「………」

 

我が剣を受けた戸が粉々に砕け散り、同時に粉塵が巻き上がる。

精神を整え、目を閉じて探る。

 

気配は…無い。

 

「素晴らしい…」

 

再び開いた私の目が捉えたのは、手の甲の赤。

当然、傷は既にない。

しかし、これこそが私から流れ落ちた脆弱の露呈。

 

いつ斬られたのかすらわからない一撃に、私は燃え上がるような高揚を感じた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

…遅い。

 

家族を守りながら道を下る。

殿(しんがり)に立ち、家族と後方の鬼、その両方を意識しながら、僅かに生まれた余地で思考する。

 

ーーー遅い。

 

それは集団の歩みに対してであり、己の判断に対して。

 

 

 

 

『貴殿方に危険が迫っております』

 

産屋敷あまねと名乗る女性は私に告げた。

鬼の存在。鬼殺隊の成り立ち。そして竈門家の立ち位置。

その話に嘘は見られなかった。

 

私は己を知っていた。

見える世界が常人のモノとは違う事。

持つ膂力が常人のソレを凌駕している事。

 

幼い頃は不思議だった。

身体が出来た頃には図に乗った。

そして当たり前に間違えて、牙が折れた。

 

折れて、鬱屈して。

やがてヒノカミ神楽へ没頭した。

それは知れば知るほどに難しく、美しかった。

合理によって構成された一連の舞踊に魅せられ、のめり込むように舞を極めた。

そうした経緯を経て、初めて心にゆとりを持てたが…その頃には語り合うべき相手はこの世に居なかった。

 

その間に妻を娶り、子を授かって。

その時にも妻を見殺しにしかけた。

 

事有る毎に、私は己の"遅さ"に歯噛みしていた。

 

『伏して御願い申し上げます。どうぞ御力添えを』

 

何故、あの時に『是』と答えられなかったのか。

 

「私は……」

 

突如、歩みが止まる。

先頭を任せた長男、炭治郎が何かを感じ取ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

未討伐ー悪鬼目録ー

 

【下弦の参・肋骨邪髪】

 

人の髪の毛に執着した女の鬼。

己の髪を操って鋏の形を作り出し、それを用いた攻撃が主。

更にそこから"飛ぶ切断"を放つ事が確認されている。

 

優れた身体能力を持つため、柱の追撃からも二度逃れている。

一般人や階級の低い隊士には難しいが、飛ぶ切断の軌道は単純であり、ある程度の技量があれば対応可能。

 

性質は常の如く残虐。

戦闘になった場合、先ずは周囲の安全確保を徹底せよ。

 


 

 

鬼狩りから逃れる鬼、それらはこうして鬼殺隊全体へと情報が共有され、特殊な能力に頼った鬼であればあるほどに、その概要を暴かれて討伐への段階が加速する。

 

故に、下弦の参の消滅はほぼ確定していた。

あえて表記するならば"原作"が本格的に始動する七年後までには、どう足掻いても肋骨邪髪の名はこの世から消失している。

それが定め。

 

本来の、あるべき世界の。

 

 

 

ーーーだが。

 

 

 

「千恵…さん?」

 

最初に気付いたのは妹の禰豆子だった。

 

「おね…がい……」

 

当然この人の事は俺も知っている。

いつも俺たち家族に優しくしてくれる、町一番の絹ごし豆腐を作るナモナ豆腐店の看板娘だ。

半年前に子供を流産して、それでも最近やっと元気を取り戻して。昨日は俺の頭を撫でてくれた。

 

その人が。

月明かりがあるとはいえど、ここは深い山の一本道だ。

なんで、こんな時間に、こんな場所に…。

 

臭いがする。

これは……火葬の時にも嗅いだ臭い?

肉よりも、髪が燃えた時の臭いに近いような。

 

「逃げて…!」

 

突然だった。

千恵さんの艶やかな黒髪が渦巻いて、ハサミの形に変化したと思ったら[バチン]と音がして、鎌鼬のような風に似たナニカが俺の顔目掛けて飛んできた。

 

白炭を打ち付けたような、甲高い音。

俺には見えなかったけど、父さんの斧がさっきのナニカを切り落としたんだと思う。

 

『あーぁ。やっぱり強いじゃないの』

 

千恵さんから、千恵さんじゃない声がする。

臭いが、強くなる…!

 

髪の一部が、さらに形を変えていた。

口の形。

そこから声がする…!

 

『ダメよ、おじ様。私を探してはダメ。黒死牟様から逃れてここに来た時点で、貴方が私の手に負えない事は確定している。もしこれ以上私を探すなら、千恵には死んでもらうわよ?』

 

長虫のようにしっとりとした殺意を見せて、髪が千恵さんの首に巻き付いた。

 

『ふふふ、それでいいのよ。そうだ…貴方、この世で一番美しいものはなんだと思う?』

 

「ひ、ひぃ…」

 

ぞわり、ぞわり。

撫でるように、労るように。

殺意が、千恵さんの首で遊んでいる。

 

答えなんて、最初から聞いていない。

空気でわかる。

これは獣だ。

人間と同じ言葉を扱うだけ。

ただそれだけの獣だから、会話にはならない。

 

『正解は、人間の髪』

 

髪で出来た口が増える。

 

『綺麗な髪を梳かしている時が一番幸せと感じる』

更に。

『洗髪をして』

更に。

『椿の油をつけて』

口々に、邪悪を垂れる。

 

『優しく乾かしてまた髪を梳かす』

『一本一本枝毛を切って』

『また髪を梳かす』

 

 

 

『『『それなのに…!』』』

 

 

 

生き物…なのか?

千恵さんの髪から漏れだした悪意。

これは、本当に…生き物が発する感情なのか?

 

『千恵は子供を身籠った』

 

その言葉の意味が、理解できなかった。

鬼が、言う。

その意味が。

 

『本当に悪い子。子供なんて身籠ったらせっかく美しく仕上げた髪が痛んでしまうのに。可愛そうな千恵。愚かな千恵』

 

気分が悪い。

臭いのせいだ。

きっと、臭いのせいで、こんなにも酷い吐き気がする。

 

『だから、私が流してあげたのに。なのに本当に愚か。もう一度子供を作ろうとするなんて』

 

「…嘘でしょ?」

 

唖然として、禰豆子の呟きが聞こえた。

千恵さんは…ただ、涙を流して。

 

『あらあら。いいのよ感謝なんて、私は千恵の髪に幸せになってもらいたかっただけ』

 

俺はの身体の中で。血が燃える。

轟々と、骨も肉も、何もかも焼き付くす、業火…!

 

『ほら…人は老いるじゃない?髪の艶は失われるし、白髪も混じる、そして少しずつ抜けてしまう』

 

鬼の戯れ言を聞き流しながら、思考が今迄になく加速する。

 

ーーー糸。

 

臭いが見える。

おぞましい気配が臭いとなり、増強された知覚がそれを視覚に落とし込む。だから見える。

黒い糸。

千恵さんに絡み付いた、醜悪な線。

 

六目の鬼から逃げる際、お父さんから持っていくように手渡された七支刀が、俺の手の中でギリギリと鳴く。

 

ヒノカミ様も、怒ってる。

怒って、怒って、俺の手を真っ赤に溶かす!

 

『千恵はね、今が最高なの。子供なんて孕んで、もう駄目だと思ったのに。どうしてかしら、今の髪は本当に美しい』

 

柔らかく、背中に手が触れた。

お父さん。

その意志が、思考が。

感じ取れた気がした。

 

俺が、やる。

 

鬼の意識がお父さんに集中している今だからこそ、俺が動かなくてはならない。

 

こわい。

鬼がこわい。

命を左右する事になる、未知が…怖い!

けどーーー。

 

『だから死んでね、千恵。これで貴女の髪は美しいままで時が止まる!!』

「っがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

一瞬だった。

千恵さんを縛る黒い糸の中に、一瞬だけ白い『隙の糸』が見えた気がして。だから俺は力一杯に七支刀をぶん投げた。

 

真っ直ぐ、真っ直ぐだ!

ヒノカミ様!!

 

願う。

非力で、未熟で、俺の背中は小さすぎて。

だから、精一杯を助けて!

なんだっていい。

誰だっていい!

千恵さんを、護って!!

 

 




下弦の鬼・肋骨邪髪。
これをオリジナルだと思ったのなら、残念ながら貴方はワニ先生検定に落第します。

このタイミングでオリ鬼をぶちこめるような肝っ玉が作者くんにあるハズが無いんだよなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。