『善逸、お前は俺の誇りだ』   作:マキシマムとと

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大変長い間失踪してしまい申し訳ありませんでした。
待っていてくれた貴方に最大級の感謝を込めて。


【注意】
前回の話の流れをぶったぎって申し訳ない。
説明もすっとばして時系列もかっ飛ばして今回のお話は過去(未来)の話になります。
そのあたりの説明が絶望的に下手くそで前書きに注釈する無力を笑ってもらえれば幸いです。



第 弐拾伍 話『金髪』

「う~ん。俺はさぁ。出会う前からお前の事を頭のおかしい奴だと思ってたんだけど、間違ってなかったみたいだねぇ?」

 

真っ暗な空間に目と口を備えた左手が浮かび上がった。

ギョロリと目玉が回って、思い出したように俺を捉える。

 

…え? えぇ!? キッショ! 気色悪ぅ!!

前後の脈絡もクソもないし、え?

この状況、意味がわからないんですけど!?

 

あたふたしたいのに、あたふたする為の手足がない。なんだったら身体すらないんですけど、ナニコレ?

なんなのこれ夢?

夢ですよね!?

どうせ夢なんだったら■■■ちゃんといちゃラブする夢が見たいんですけど! なんでキモグロン200%の妖怪お手々にマウント取られなきゃならんのよ!?

て、え?

あれ?

■■■ちゃん?

んぅ?

■■■ちゃんって誰?

いや待てぃ俺よ!

■■■ちゃんは俺の嫁だろうがよ。

何十年連れ添ったと思ってんのさ、今さら…ん?

えと?

…あれ?

なんで、名前が…??

 

と、目に見えて混乱を極めている俺に手首の化物の指が突き刺さる。

 

「思念が五月蝿いから、静かになるツボ押しとくねぇ?」

 

真っ暗闇な空間のなかで、光源も無しに明るく存在を示している左手首。その中指が持ち上がり、何もない空間に第二間接まで埋まる。

それだけで、俺の精神が抑え込まれた。

 

「うっわ~、やっぱり気色悪い。お前の精神って本当にとんでもなく変態だねぇ? 爺の精神と子供の精神が混在して、それで成り立ってるんだもの」

 

完全に意味がわからん。

パニックしたい気持ちが強いんだけど、物理的(?)に押さえられてるせいか、逃げ道が見えない。

 

「まぁいいや。時間も無いし、力も弱い、説明も出来ない。俺に許された権利は一つだけ」

 

悍ましい声なのに、何故かその音が不快じゃない。

その事に、やっと気付いた。

 

…あ、れ?

 

なにか、引っ掛かったような。

おかしな音。

鬼なのに…。

 

「ん~…どこかな、どれかなぁ?」

 

言葉を垂れ流しながら、手が這い寄る。

急に嫌なイメージが脳に浮かぶ。

真っ暗な空間で、俺の生首だけが見えない地面に固定されていて、手首の怪物が動けない俺の口の中に入ってくる。

 

「う、ごぐげ…う゛う゛う゛!!」

 

気持ち悪い。

気色悪いし気味悪いし、なんなのこれ。

こんな最低なのって■■■■山で蜘蛛に噛み付かれて追いかけ回された時くらい…?

 

おかしい。

 

さっきから知っているハズの記憶と、知らないハズの記憶がぐちゃぐちゃに混ざりあって、境目が。

俺を保つための境界がどんどん曖昧になってーーー。

 

「あー。嫌だなぁ。キライな野郎の中でごしごしシコシコ動き回るってのは、やっぱり嫌なのに、身体が反応しちゃう所がまた最低で………あ。みぃつけた♡」

 

気が抜けるように突き抜けた喜色の感情。

自分の内側から伝わってくるソレに、怖気と快感が背骨から沸き起こる。

 

「なるほどねぇ? だから今なんだ」

 

熱が一ヶ所に集まっていく。

ドクンドクンと血液の流れを感じながら。

意識はたった一つの場所へ流れ込み、その意識が虚空の中に臓器を創造する。

 

すると臭う。

常人なら匂うと書いたり、香ると感じるその果実の臭いが。

俺の中から溢れ出す。

 

「ここが分岐点なんだねぇ。お前の運命に刻まれた、唯一の」

 

思い出す。

その臭い。

 

 

 

 

 

「消えろよ」

 

アイツの声。

 

「わかるだろ?」

「朝から晩までビービー泣いて恥ずかしくねぇのかよ」

「愚図が」

「お前みたいな奴に割く時間がもったいない」

「先生はな凄い人なんだ」

 

アイツの、声。

俺の兄弟子。

たった一人の、血の繋がらない兄弟。

 

「でもじいちゃんは…」

 

俺が言うと、途端に桃が飛んできて髪を濡らす。

 

あぁ。

最悪だ。

『お母ちゃん』に怒られる。

本当に最悪だよ。

兄弟子だかなんだか、知りもしない男が。

『お母ちゃん』の為の髪を汚しやがって。

 

 

ーーー赦せないーーー

 

 

そうだよな。

これは、この剣は。

俺の正義は。

 

意識が切り替わる。

まるで夢のように、俺の意識に呼応して桃の果樹園が掻き消えて和風の室内が浮き上がる。

俺はその部屋を縦に落ち。

そしてーーー。

 

 

「雷の呼吸」

 

 

合理的で、公正で。

 

 

「漆ノ型」

 

 

誰から見ても完全な。

 

 

「火雷神(ほのいかづちのかみ)」

 

 

斬った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱い。

(弱すぎる)

 

所詮は裏切り者。

(なんで、音が変わってない)

 

じいちゃんの仇を、俺が討った。

(人間と鬼と、同じ音がするハズがないのに)

 

俺は正しい、雷の呼吸の正統な継承者として。

(弐ノ型から陸ノ型まで。なんでだよ、これじゃまるで稽古だ)

 

俺はアンタを越えて、鬼のいない世界をーーー!

 

 

 

「ーーーーーーーーー」

 

 

 

聞こえない。

(聞きたくない)

 

アンタが残す最期の言葉なんて、聞こえるハズない。

(音の羅列だ。ただの雑音)

 

俺の耳なんか、腐って落ちればいい。

(温かい。なんで、こんなにキレイな音………)

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

内蔵が痙攣してる。

半世紀も生きれば、どんな人間にも一度か二度はそんな経験もあるものだが、この身体には初めての体験で。

 

ーーーつまり。

 

「うっっっっっぶボぁぁぁぁぁ!」

 

寝る前に食べた量が少なかったのが幸いか。

胃液のキツイ臭いと一緒に、桃の実と汁が台所のゴミ捨てに吐き出された。

うぇぁ、ばっか野郎。

桃なんか食べたのかよ俺は。

んなもの、食うなよぉぉぉぉぉ。

 

えずきながら、五臓六腑がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる感覚に耐える。

咄嗟に行ったのは、呼吸。

今の俺は何歳だ?

明らかに手が小さいし指先の艶が違う。力の伝え方も無茶苦茶で、脳の命令とは少しだけズレた動きをする。

 

それでも、だとしても呼吸。

 

(諦めるな)

 

恩師の声。

死んでも。

あぁそうか。

文字通り【死んでも】忘れなかったじいちゃんの声に、俺は従う。

 

雷の呼吸。

まず、基礎となる全集中の呼吸を馴染ませる。

 

器が弱くて、肺が裂けそう。

うぎぎぎぎ。

痛いなぁ。

俺は痛いのは嫌なんだよ。

 

もう本当に、泣きそうって言うか既にとっくに涙腺崩壊してるんだけどね、肉体に引っ張られて精神も軟弱じゃくじゃくだから嗚咽が凄くってぜんっぜん全集中の呼吸出来ないんだけどもうこれ諦めても良くない?

 

ダメ?

 

じいちゃん、相変わらずスパルタですわね。

よよよよよぉ。

 

少し落ち着いたら水で口を濯いで、それから寝所に倒れた。

一応呼吸は続けるように努力してるけど、正直ムリだ。

けど、その間にも少しずつ記憶が整理されていく。

 

何がどうしてこうなったのか。

 

五十歳くらいかな?

その程度まで生きた記憶と、まだ五歳の肉体。

たぶん脳ミソがぐにゃぐにゃ動きまくってるのをリアルに体感してるのは、この辺りの超常現象とどうにかして折り合いをつけようとしてる感じなのかな?

 

脳がそんな感じだし、あー。

なんというか、台風の後の海かな?

波風がスンゴイ強いし、普通は危ないから近寄っちゃダメなんだけどな? 俺そんな海でボケ~っと浮かんだことがあるんだよね。

波がザッパザッパ顔にかかるから、脱力してても目だけはしっかり閉じて。とにかく浮かぶだけなんだけどさ。

それに近い感じ。

 

動かないハズのお布団様がザンバラザンバラうねってるんだわ。

ちょっとこれぁ立てないね、うん。

 

なんであんな日に海で浮かんでたんだろ?

戦争かな?

ナンとかカンとかいう鬼の始祖を倒した後にデカイ戦争があったのは覚えてるし。

んー。

けどやっぱ詳細がわからぬですわ。

発生源が不明の知識や記憶ばっかりなのに、五十前後まで生きた事だけは断言できる。

 

…なんで?

記憶があやふやだったら確信なんて持てなくない?

なくなくないのか?

あるあるないのか?

う~ん、意味がわからぬです。

 

 

 

それより熱も出てきたのかな、イヤに寒い。

このままバカになって今のこの異常な記憶を忘れられれば幸いなんだけど、台所から漂ってくる桃の臭いが俺の逃げ道を塞ぐんだよね。

 

…獪岳。

 

そう、獪岳。

この胸の痣に刻まれた名前。

世界一愛おしい妻の名前を差し置いて、俺の脳ミソを占領するクソ野郎の名前。

 

信じられねーよ。

獪岳が俺に関わった時間なんて人生の一割もない。

それなのに、なんでこんな所にまで。

 

 

『獪岳さんを迎えに行きましょう』

 

 

妻の声だ。

そうだ。

あの後ずっと立ち止まる余裕なんて無かった。

二度に渡る大戦をくぐり抜けて、子供もどうにか健やかに育ち、家族全員が五体満足に生き抜いて孫にまで恵まれた。

それで、そこで。

ようやく獪岳の夢を見るようになったんだ。

 

『■■城で、貴方は獪岳さんの音を聞いた』

 

遠い過去。

埃が積もって、手に取ることすら億劫なそれを、君の手が優しく撫でた。

 

『出会う前から獪岳さんの音を捉えていて、その音を頼りにして城を探索したのだと、若い頃の貴方は仰っていました』

 

俺にはもう見えなくなった記憶だけれど、君が言うなら。

 

『そして貴方はこうも仰っていました【"鬼の音"は"人間の音"と全く違う】と』

 

それは………そう、だったのだろうか。

 

『確かに仰っていましたよ。人間に戻った私に、あの頃の。鬼だった頃の私の音も好きだったけど、今の音は心がポカポカして、お日様に温められているみたいな音でもっともっと好きだ…でしたか?』

 

ニヤリと微笑む妻。

無性に恥ずかしさが込み上げた。

 

そう。

そう言って背中を押してくれたんだ。

 

そしてアイツの事を調べた。

確か…ウブヤシキ?

どこだったかな、いや?

人の名前だったような気もするが、そこに行ったのかその人に会ったのか。戦禍を共に潜り抜けた友人と再開して、そして。

 

『■■城での戦闘には幾つか疑問に思える点が…』

 

そして。

桃の香りがする少年とすれ違ったのだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「忌み子だったそうよ」

 

何故か、その言葉が耳についた。

 

場所はどこだったかしら。

妻夫木殿と呼ばれる華族の家の前だったのは覚えているから、きっと使用人か何かが叩いた陰口の一つ。

 

「産まれた時から胸に黒いひび割れみたいな痣があってねぇ」

 

【カワイソウに】

と呟いた口で、気色悪そうに言葉を繋げる。

通常ならば所詮は人間の営みの一種だし、些事にあげることすら馬鹿馬鹿しい雑音の一つだったのだけれど、次の一言が私の琴線にふれたの。

 

「髪の毛は異人とそっくりの金色だったんですって」

 

周囲を気にして慎重に囁いた言葉。

不貞を臭わせ、権力への叛逆を秘める情報に、相手方がひゅっと息を漏らす音。

 

「大丈夫よ、産んだのが正妻様だったならそれこそ大事だけど、所詮は私達と大差ないアレの子供でしょ?」

 

忌み子だろうがなんだろうが、棄てられる時期がホンの少し早まっただけだ。

 

声はそう言って忍び笑いした。

赤子にとってのホンの少しがどれだけ生死を左右するかを、十二分に理解した上で、クスクスと。

愉しげに。

 

 

 

嗚呼…気持ちが悪い。

ニンゲンはやっぱり気持ちが悪い。

 

 

 

気持ちが悪いニンゲンの髪は、やっぱりダメ。

ドロドロと艶のない脂にまみれて、みるに耐えない程の穢れを纏っている。

早く助けてあげないと。

今は幸いな事に太陽が弱い。

山間に日が沈んで、力のない夕焼けの残光がうっすらと漂う程度だから、きっと少し位は大丈夫。

 

ゴメンなさいね?

本当はもっと優しく、時間をかけて丁寧に髪を梳いて。

それからーーーあら?

あらあら、やっぱり。

この感じは灰汁で洗髪した後ね。

仕上げは卵白。

怖気がするほどに古くて臭い。

 

はぁ…可哀想に。

どんなにちっぽけなケダモノが付属していたとしても、髪に罪はないけれど。けれど。

 

このざっとした洗髪。

 

酷いわねぇ。

洗髪の後は椿の油で固めて…。

嗚呼…嗚呼………。

なんて、古臭いのかしら。

 

ぬるま湯で優しく髪を梳かしてあげれば、たったそれだけでも美しい髪が再生されるのに。

もちろん、貴女みたいに古いやり方で封じ込められた髪だとそれだけでは不十分なのはわかってるわ。

出来れば重曹で洗ってあげたいわよね。

しっかりと皮脂と臭いを削ぎ落として、それから柑橘類で配合した調髪剤で労ってあげる。

そうすればきっと、本当の貴女に出会える。

 

…けれど、今回はそんな気分になれなくて。

 

「ごめんなさいねぇ?」

 

悲しいけれど仕方がないから、手早く口に髪を巻き付けて肉を黙らせる。

強引な私を、どうか憎んで。

 

 

 

「貴女は知ってるかしら?鬼にとって大切なのは『誰を喰らうか』と『どこを喰らうか』結局の所がこの二つなの」

 

 

 

だけど大半の鬼はそれを理解していない。

だから、ある程度まで人を喰らった挙げ句それ以上は喰らえないという無様を晒すのよね。

 

私の場合は『主に女性』が捕食対象。

ま、髪なのよね。

大切なのは性別よりも髪。

けれど男性よりは女性の方が髪を大切にする人の比率が高いから、結果的に女性が主な対象になる。そういう話。

だから私が食べる部分も決まってる。

 

 

おでこ。

 

 

前髪の生え際と、眉毛の間。

口付けするのも難しいほど、額の面積が狭い人の場合は眉毛の生えている肉を毛根ごと喰い千切って捨てるんだけど、基本的にそこまでしなくちゃならない人に出会うことは少ないわね。

 

ほとんどの場合は問題ないの。

だからゆっくりと額を舐めながら、髪の美しさを堪能する。

 

あらあら。

本当にダメで、クサイ肉よねぇ。

だけど悲しいわね、これが普通なの。

肉ってば、何時だって私から逃れようとしてもがくでしょ?

それはやっぱり鬱陶しいから、私は私の髪の毛の全てを相手の身体に巻き付けて動きを封じるの。

 

この段階ではまだそこまで煩くないから、口も髪で縛る程度でいいわ。少しだけ漏れだす呻き声が心地良いの。

 

 

舐めて、キスして。

 

 

そして額がふやけて来た頃に少しだけ噛るの。

 

 

少しよ?

 

ホンのわずかに血が出る程度に噛んで、肉と血を通して髪の持つ究極の美と生命の躍動を味わう。

 

 

なのに、肉の方が煩くて。

 

 

肉体そのものは完全に拘束してあるから身動きなんて出来ないんだけど、声がね。

 

髪の質を保つためには命が必要で、その命を繋げるためには肺の活動が欠かせない。だけど煩いのは嫌いなの。

 

少しだけなら心地よい演奏のように感じられるんだけど、あまりに度が過ぎるとハッキリと耳障りだし、切っても切ってもなくならない枝毛を相手にしているような不快感に繋がってしまう。

 

だから声帯を震わせる事が出来ないように、胸と声帯の間に穴を開ける。細くした髪の毛を差し込んで、その細胞を少しずつ増殖させる事でストローみたいな穴を空けるの。

そうすれば声帯を経づに生命活動に必要な酸素の供給が成立するでしょ?

 

だからこれで、一安心。

良かったわね、五月蝿い肉が静かになって。

私の愛情が伝わったのね。

貴女の艶も少しだけ良くなったわ。

 

心臓と肺の動きは煩いけれど、やっぱりこの程度の音楽は私の心には心地良いから。

 

 

だからまた食事を再開する。

ゆっくりと。

傷口を労るようにキスして、舐めあげて。

そしてまた噛る。

少しずつ、少しずつ。

だけどすぐに頭蓋骨に至るでしょ?

そこまで行ってしまうと後は僅か。

 

 

カリカリ、カリカリ。

 

 

骨の表面を何度か噛って。

それで私の食事は終わり。

 

ポキリと首を捻って折って。

そして髪の生命力が、私に流れ込んで一つになる。

嗚呼…満たされる。

私の中が、ホンの少しだけ満たされる。

悲しいわね。

もっともっと、貴女に愛情を注いであげたかったわ。

 

結い上げて、油で固めて。

誰かの造り上げた誰かのための髪型に憎しみを覚えながら。それから思い浮かんだ気持ちと向き合う。

 

『髪の毛は異人とそっくりの金色ーーー』

 

この髪の付属品は、確かにそう言っていたし、この辺りで忌み子を棄てる場所には何故か心当たりがあった。

だから。

 

そう。

 

あれは本当に、ホンの気紛れ。

色違いの髪の毛がどんなものなのか、少し興味を引かれただけ。

少し立ち寄って、見つけられなければそれで御仕舞いになる小さなお話。

 

 

 

この先のお話は、そんな手違いの積み重ねなのよ。

きっと。

 

 

 




原作(一週目)の善逸は妻夫木家の血を引く捨て子。
最低限の乳離れが出来た頃、正妻が嫡男を産んだことでお家騒動に発展。母親が縁(怨念?)を込めて我妻の姓を書いた名札を添えて人里に捨てられた。

今回(二週目)の善逸も生まれは同じなんだけど忌み子だったので生まれてすぐに山に捨てられた。
そのため今回の彼は我妻姓がありません。

そういう設定です。
本作中で説明できる自信がないし、説明無しでそのまま突っ走るのが目に見えているので書いてみました。



善逸くんは原作でも屈指の謎キャラだと思うんですよね。

子供ってのは親や周囲の人間を観察し、それを模倣することで人格を形成する、というのが作者の持論なのですが、そう考えたときに『生まれたときから孤児だった善逸くん』はあまりにも善良過ぎるんですよね。

基本的に人間は他人に厳しい。
自分自身や、その延長にある身内にならいくらでも注げる愛情も、他人相手には一滴も与えたくないし、なんだったら嫌いな奴は殺したいし無視したい。
人間なら誰しもそんな醜い部分があると思っています。

余裕が無いであろう最下層の人間であれば、その本能はより強烈なものになる筈です。
そんな環境で人格が形成された筈なのに、彼のその言動は常に善意に満ちている。

ありえるのか、と。
もちろん底辺に近い生活を強いられた人の中にも強靭な精神を持ち、他人に愛を注げる素晴らしい人格者が存在しないわけではありません。
しかし、善逸の過去を振り返ると桑島のじいちゃん以外に家族と呼べる人が現れないのです。


引っ掛かるのが魘夢戦で垣間見た善逸の無意識空間。
そして最後、漆ノ型の名称が何故『火雷神』だったのか。


本当に彼は謎です。
この小説を書く前から彼について考えていて、筆が止まったときも、今この瞬間も考えていますが謎が尽きません。


◇


それはそうと年末ですね。

色々あって書き留めたので今日から三ヶ日が終わる程度の間は1日1話更新していきます。
失踪期間については活動報告の『ワニ先生に宛てた謝罪文』に記載しときます。暇な人はどうぞ見てやってください。

それでは、明日からしばくの間ヨロシクお願いします。
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