『善逸、お前は俺の誇りだ』   作:マキシマムとと

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第 参拾玖 話『清らかな泥』

『その日、私の人生が終わりました』

 

書簡は、その文言から始まっていた。

 

抜け作(虎柱)調教(しつけ)が終わって、ようやく始まった柱合会議。

最初の議題は空白となった風柱の補填。

 

「では、まずは柱の空席について。風柱の空席は宇髄天元を音柱として当てる。異論はあるかな?」

 

お館様の問いかけに、ほぼ全ての柱の意識が少なからず虎柱に向かいましたが、当人は座したまま沈黙を持ってそれに応えました。

 

それはそうでしょうね。

行冥くんは別枠としても、それ以前から在籍していた柱と比べれば、それこそ比較にならない量の仕事をこなしている天元くん。

それにいいようにあしらわれて。それでまだ難癖が付けられるなら、それこそ首に輪と紐を通して柱に括りつける以外に使い道がありませんもの。

 

「では天元、これより君を音柱に任命する。

といっても、君は優秀だからね。柱になったからといって殊更に仕事が増えるという事はない。

 

しかし、それでも君は柱となった。

これからはむしろ、これまでのような無茶は控え、然るべき時に然るべき働きが出来るよう自分の体調に気を配って欲しい」

 

「そのお言葉、有り難く頂戴いたします」

 

言葉少なく、それでも瞳に矜持の光を輝かせ、天元くんがその任を拝命しました。

瑞々しい肌、隆々と…まだまだこれから固さと太さを増す筋肉。

そして若さなどでは説明付けられぬ、ひとかどの風格。

この子も行冥くんと同じように、これからの鬼殺隊を導いて行くのでしょう。

 

 

 

それから百鬼夜行に伴う被害の確認や鬼の動向、担当地区での細やかな情報を全体で共有し、最後に風柱の件で虎柱が口を開きました。

 

「俺が引き受ける! と…言いたい所なのだが」

 

議題は戦死した風柱の継子、粂野匡近の処遇。

 

「知っての通り、俺は虎の呼吸。そして、それ以前に人にモノを教える事が出来ん! 出来るのは殴るか怒鳴るかの二択だ。アイツも俺が匡近を引き取ると言えば青ざめて首を振るうだろう!」

 

そこまで言ってから、自分で面白くなったのか気まずさを吹き飛ばしたかったのか。

麻痺毒を受けた事など無かったかのように豪快に笑うバカ猫柱。

汚ならしい唾が飛ぶので、その予兆を感じて身を引きながら。

 

「ならば、私がお引き受けいたしましょうか?」

 

汚物を袖で防ぐついでに手をあげました。

大人しく、控え目に。

灰色の羽織を纏う小柄な身体。

それを更に押し込めるようにして、前髪で目を隠した醜い柱。

 

泥柱こと私、稲井雪菜が。

 

「雪菜、ありがとう。君は既に冨岡義勇を任せているけれど、構わないのかい?」

 

「ふふ、ご心配ありがとう御座います、お館様。けれど大丈夫、義勇はとっても良い子ですから。それに一人見るのも二人見るのも同じですもの」

 

虎と泥。

どちらも呼吸の基本となる五種類の呼吸法から派生したと定義されているものの、その実は本家となる型の模倣としての側面が強い。

…と、周知されております。

それに、それこそ私は『泥』ですもの。

 

ですからこの馬鹿虎は、隣に座していた私の背を叩いて快諾を示します。

 

「雪菜ならばそう言ってくれると思っておったぞ!」

 

「痛いので叩かないで下さい。あと何度も言っておりますが私を名で呼ぶことを許可した覚えはありません」

 

隠す気すら失せる嫌悪感。

それに気付く素振りすらなく空返事をする虎柱。

一見すると何時もの光景を眺めながら、その人は口元を歪めておりました。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

会議が終わった際の感想はーー無ーーでしたね。

私の人生も、もうすぐ終わり。

任務を守って鬼に喰われるか、鬼から逃れてもっと大きなモノに喰われるか。

 

まったくつまらない人生しか歩めなかった自分に辟易しておりました。

さてさて、今日から明日の朝までこの豪雨が止む事も無いそうですし、もしも雨に包まれて死ぬのなら、それもまた悪くは無いでしょう。

雨の終わりまで生き残ったとて、その先など知れております。

 

いっそ上弦にでも出会えば良い。

私の技…あの御方から受け継ぎ、汚しながらも磨き続けてきた技がどこまで通用するのか。

 

私もじきに四十の大台に乗る。

どれだけ健康に気を付け、鍛練によって肉体を補強しようとも限界はもう間近に迫っております。

そう思えば、ただ衰えて去る前に死ねる此度の百鬼夜行も悪くはない。

 

そう気持ちを切り替えて席を立った私を、お館様が呼び止めました。

 

人払いが終わり、お館様は私にだけ魅せる笑顔で陰湿に微笑んでくださいましたわ。

 

「雪菜、義勇の様子はどうかな?」

 

冨岡義勇。

 

継子として懐に抱えてもうじきに一年が経つ、私の希望。

その存在を胸に浮かべれば、ただそれだけでこの無情な世の中に救いを見出だせる。

 

「どうもこうもありません…あの子は何時だって素晴らしい。剣の才も然ることながら、その心根の美しさ。変えられない過去…あの自虐的な思考。あの子は追い込めば追い込むほど、極まり磨かれる。流石は私の敬愛するあの御方の教え子、私の弟弟子を名乗らせるには申し分ない逸材です」

 

「『泥』の後を任せるのかな?」

 

…稀に、お館様は戯れられる。

私の逆鱗を知りながら、子猫のような無邪気さを装って。

私の臓物を素手で撫でる。

 

「ふふ、雪菜は怒った顔も素敵だね」

 

「この賤しい汚泥に、何を仰るやら」

 

最近はいけません。

殺意や破壊衝動と言った無駄な感情が、どうしようもなく止められない。

あの子には何度も何度も、それこそ人格を矯正する程に言い含めておきながら。

 

どう誤魔化そうとも収まりがつかない感情の荒ぶりを見透かして、彼が懐から書を取り出し、こちらに寄越した。

 

「これは下弦の陸、の…!」

 

そこに書かれていたのは下弦の陸に関する情報でした。

名称から始まり使用する鬼血術に思考の習癖、果ては予想される本日の出現地点に至るまで、事細かに記載された密書。

 

まさか、本当に実在したとは。

古くからまことしやかに囁かれていた『柱への片道切符』が。

今、この手に。

 

「ーーー雪菜」

 

畏れを孕むその声に、鍛え上げた筈の身体が一度だけ震えました。

 

「受け取ってもらえないだろうか。

雪菜は本当に頑張り屋さんだ。あの高名なる水柱・鱗滝左近次の最後の継子として彼の技の真髄を継承し、先の激戦を潜り抜けた。

そしてその後、女性でありながら鬼殺隊の顔である柱へと至りて、はや十年。

 

君のお陰で生き延びた隊士の話は事欠かない。

その献身に報いるには些か不足しているけれど、きっと雪菜の役に立つと思うんだ」

 

聞くべきではない。

頭の中にある凪の部分、鱗滝様の教えが頑なにお館様の声を拒む。

だと言うのに。

 

目で促されるまま、まるで不可思議な鬼の術で操られているかのように、私の手がそれを受け入れた。

 

「ねぇ、雪菜」

 

その響きが脳の奥深くに入り込む。

 

「水柱をどう思うかな?」

 

まるで無防備なその場所へ、私の外に有りながら。

私が閉じ込めてきた憎悪()に触れる。

 

「水柱・明朗翼」

 

目の前の存在が、ゆっくりと頬の筋肉を弛緩させて、笑顔の真似をする。

お館様は人間だ。

人間のはずだ。

ならば、何故その笑顔を真似であると思ったのか。

今でもわからないけれど、確かにアレは笑顔を真似しただけの偽物だと、私にはそう思えたのです。

 

「今の隊士が水柱を何と呼んでいるか、知っているかな?」

 

問いかけの、その先が恐ろしくて。

けれど、お館様は私を待ってはくれなかった。

 

「水蜘蛛だよ」

 

「……」

 

「まるで水面を滑るアメンボのように見えるらしい。

自分より弱い獲物を見つければ誰よりも素早く襲いかかり、自らの危機に際しては他の誰をも置き去りにしてその場から消え去るとか」

 

知っている。

私は誰よりも奴の醜態を知っておりますとも。

 

「彼を見る度に一般の隊士は口にする」

 

『なぜ、あんなクズが柱なのか。水の呼吸など鬼から逃げ惑う為の技能でしかないではないか』

 

もしくはーーー

 

『あぁ、俺も水柱になりたい。水柱になって楽に金を稼ぎたい』

 

ほかにもーーー

 

「止めて下さい」

 

 

今だから正直に書きます。

 

 

私は水柱になりたかった。

あの御方の継子としてあの御方の技を完全に受け継ぎ、他のどの呼吸よりも水の呼吸…いえ、鱗滝左近次様の技こそが至高であると証明したかった。

 

けれど現実は非情です。

女としての非力が、凡人としての限界が、私という存在の矮小その物が、あの御方の技を受け止めきれませんでした。

 

「あの(ゴミ)の話は耳にしたくもありませぬ」

 

滑稽なこと極まりない。

ゴミだクズだと喚いた所で、相手は偉大なる基本の呼吸にして、遥かな昔より脈絡と受け継がれ続けた水の柱です。

 

泥でしかない私が何をほざいた所で、それは己を塵以下の大間抜けであると唄うに同じ。

自らの惨めを思い知りながらーーー。

 

「おや?」

 

と。

鼠を見つけた猫のように、お館様の目が光りました。

 

「塵だなんて酷い台詞だ。まさか雪菜はあんなネモハモナイ噂をマニウケテいるのかい?」

 

その意味が、音の羅列によって表現さえる言葉が理解できませんでした。

ネモハモナイ、根も葉も…ない?

マニウケテ、真に…受けているのか?

 

『なにを、ふざけた事を言っているのか』

 

危うくその台詞が口をつきそうでした。

 

「仮にも柱である雪菜が、同じ仲間である彼を中傷するだなんて信じられない。いや、でも大丈夫。きっと連日の激務で疲れているだけさ」

 

ーーー仮にも、と仰った?

お館様は『仮にも』と。

 

 

 

…泥柱だから?

 

私が泥で、あの塵が水だから?

 

だから『仮にも』…と?

 

 

 

あれが仲間?

同じ仲間?

中傷ですって?

 

 

連日の激務??

 

 

あのクズが仕事をしていれば、私はここまで疲れていない。

あのカスが仕事をしていれば、私はここまて追い込まれていない。

あのザコが真に柱であったなら、私はここまで狂いはしない。

 

 

もし鬼になったなら、きっとこんな気分なのでしょうね。

何もかもが気に障る。

大声をあげて喚きたい。

肉を殴り、引き裂き、喰らい、潰したい。

 

 

気が付けば十余年もの間封じ込めていた怨嗟を吐き出しておりました。

醜く、惨めな敗者の陰口。

 

長く、強く、何よりも陰湿に。

私が一等嫌う女の一部。

 

お館様はほんのりと微笑みながら私の愚痴をただ聞いておりました。

 

十分か、一時間か。

喉の渇きに耐えかねて、ようやく私が止まりました。

 

 

常に意識して守り通してきた心の凪など、跡形もありません。

恥ずべきです。

あの御方の跡を継ぐ者として、この上のない醜態。

 

「大変な無作法を…本当に。申し訳、御座いませんでした」

 

消えてなくなりたい。

その思いから、ただでさえ小さな身体を出来得る限り小さく纏めてお館様に一礼し、即座に反転して畳を滑り、襖に指をかけたその時。

 

「今日は雨が強いね」

 

お館様がそのように呟きました。

 

「これでは鴉も飛べやしない」

 

「たいそう視界も悪いだろうね」

 

「山崩れが心配だよ」

 

「あぁ、そう言えば」

 

「彼に任せた任務があった」

 

「藤襲山の裏手は少し脆くて」

 

「長雨の日は地盤が緩んで山が崩れる危険があって」

 

「万が一にも、鬼が逃げ出したらいけない」

 

「監視小屋があってね」

 

「まさか柱にまで至っている彼が」

 

「もし寝こけていたとしたら」

 

「『相応の罰』が必要だけれど」

 

「もちろん『私』は彼を信じているから」

 

「たった『一人』でもしっかりと任務を」

 

「達成してくれるだろう」

 

気が狂いそうでした。

震えているのは私の視界なのか、指なのか判別がつきません。

 

「そう言えば」

 

間を開けて、お館様の言葉が私の首に巻き付きます。

 

「今日の雪菜の任務は遊撃だったね」

 

あえて担当区域をもたず、臨機応変に。

本来なら連絡役となる鴉も無しに、割り振られるような仕事であっただろうか。

 

「君の柱としての嗅覚を信じなさい」

 

「『悪い鬼を』」

 

「『見つけ出して』」

 

「きっと、君なら『成し遂げてくれる』と」

 

「信じているよ」

 

胃が痙攣しておりました。

呼吸の力によって強引にそれを押し留めた所までしか記憶にありません。

日中には業務をこなしていたはずです。

新しく継子に受け入れた風柱の忘れ形見を、貴方に紹介したはずなのですが。

 

気付けば自室にて、この手記を前にしておりました。

 

 

 

義勇。

 

 

 

私の大切な継子。

貴方の階級は丙でしたね。

 

一年、鬼が少ない時期にも地を這うようにしてその痕跡を辿り、休みなど無視して懸命に人の命と人生を守った、その証。

 

もし、なんらかの事情で水柱が空席になったなら、お館様はきっと強引に、理由をでっち上げてでも貴方を二階級特進させて甲に据え、柱としての役割を授けるでしょう。

 

炎の呼吸、炎神・煉獄槇寿郎の護国の功と、水柱・明朗翼の怠慢による威信の失墜。

それがあっても、まだ水への信仰とも言える信望は無くならない。

 

 

 

 

義勇、確かに貴方はまだ未熟です。

要領が悪くて頑なで、無茶を押し通しては無駄に身体を痛め付ける。

 

貴方はきっと『水柱』という称号を前に酷く戸惑うでしょう。

けれど、どうか受けて欲しい。

 

いつだったか、貴方は私を評してくれましたね。

 

「師範は世界一の剣士だ」と。

 

あの義勇が。

口数が少なく、他者の感情の機微に疎い貴方が。

真剣に考えて私に与えてくれた言葉。

 

嬉しかった。

人生を、これまでを生きてきて良かったと誇れるほど、嬉しかったのです。

 

私も貴方と同じです。

極みなどとは程遠い、凡人の成せる凡庸な剣だと、自らを評価しておりました。

 

義勇。

 

貴方は至高ではない。

けれどそこに向かい続ける金剛石よりも美しい決意がある。

そして私が磨り減らして無くしてしまった心が。

人を愛し、信じるという人間の美が貴方には有ります。

 

貴方の魂は、やがて鬼殺隊のすべてに浸透し、必ずや鬼を倒す為の力に変わるでしょう。

 

私のすることは間違っております。

一昼夜、寝ることすら忘れて考えて。

冷静に俯瞰して、己の愚行を理解しても、それでも。

私の手の中で冷たくなった命の重みが、その積み重ねが、私から止まるという選択肢を無くしました。

 

知って欲しい。

私から見た貴方は惚れ惚れするほどに清廉です。

しかし、世を生きるならば汚泥が必要になる事を。

 

私は、自らを『泥』と評しながら、結局の所『他人(汚れ)』を受け入れられなかった。

他者の不真面目を見付けては怒り、その根底にあったはずの『人の人生』に寄り添う努力を放棄した。

 

その結果が、この様です。

 

いえ。

そんな反面教師の役割など詭弁にすぎません。

ただ、ただ。

貴方に私を知って欲しかった。

清い私も、汚い私も。

きっと、私は

 

 

この手記が貴方の手にあると言うことは、既に私はこの世から去っている事でしょう。

 

義勇。

私のような愚かで醜い存在ですら柱として立てたのです。

貴方なら、きっと。

 

私が至らなかった場所へ、悲願へと辿り着けると信じております。

 

 

 

さようなら。

私の継子になってくださって、有り難う御座いました。

 

                 泥柱 稲井 雪菜』

 

 

 

 

【冨岡義勇殿へ】

 

そう書かれた封の中。

俺の手には、彼への手紙。

そして俺の前には、消えかけた焚き火の炎。

 

燻りながら待っている。

燃え上がるための枯れ葉を、枯れ木を。

そして、紙を。

 

俺はその手紙を封筒に戻しーーー。

 

 

 




煉獄家についての考察。
最終選別の時点で、

槇寿郎 27歳(推測)
杏寿郎 13歳
千寿郎  7歳(推測)

としております。
瑠火さんが千寿郎君が物心つくかどうか、という頃に死去されたそうなので推測上4~5年前が他界した時期だと思われます。

その後、炎の呼吸による細胞の壊死が始まり、精神的にも限界を迎えた槇寿郎さん。
原作通りの展開の場合、最大で見積もって8年間(短ければ5年程度か? どっちにしても長い)もの長期間に渡り職務怠慢及び職務放棄をしていた事になります。

ソースとしては鬼滅の刃【外伝】での杏寿郎が向かった柱合会議に胡蝶しのぶさんの姿があったので、ほぼ確定。

現実的に考えて、許されますか?

行界さん、天元さん、実弥くん、その三人が槇寿郎を批難していますが、それは結局の所が愚痴止まり。

現実的にあり得ないように見えても、原本とそれに附随するスピンオフは現実です。

となると、その有り得ない怠慢が許されるだけの技能を持つか、それが許されるだけの功績を持っている。
その上で炎柱の罷免を認めない第三勢力が存在する…か。

あくまでも推測上の年齢からの考察なのですが、こうして考えてみると面白いと思いませんか?
私は面白いです。


さて。
ここで大正(年代的に考えたら本当は明治なのですが)こそこそ噂話!

今回は泥の呼吸についてですよ!

泥柱である雪菜様は水の呼吸の使い手です。
しかし、小柄な体躯と細い筋肉のせいで水の型の多くを使いこなす事が出来ませんでした。

しかし、そこで諦めないのが彼女の魅力。
雪菜様は水以外のあらゆる型を研究し、女性の非力や骨格に適した技を抜き出し、それを更に己に適合させる形に改良して泥の呼吸の型に取り込みました。

呼吸法こそ水のまま、型の原型こそ他流の型。
しかしその実は全くの異形。

しかし、世は非情です。
彼女の才覚や傷付いた肉体を抉るような苦痛を越えて作り出した泥の呼吸は時代にそぐいませんでした。

何故ならその凄さを理解できる人があまりにも少なかったから。


悲鳴嶼さんが入隊するまでの間、呼吸の常中を使用出来たのは槇寿郎殿と雪菜様の二人だけ。


果て無き修練は認められず、それでも無くならない憧憬が歩みを止めず。
しかしその傍らで。
あるものはつかの間の平穏を謳歌し、あるものは惰眠を貪る。

だからこそ、その内に鬼才を秘めた弟弟子との出逢いは彼女の救いとなり、破滅を呼んだのでしょうね。



さて、次はとうとう義勇さんのお話ですって!
うん?
本編は進まないのか、ですって?

仕方ないんだよ!
色々あるんだから!

では次回、第 肆拾話『二人の継承者』
お楽しみに!
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